オペラに行って参りました-2020年(その1)

目次

自分の知らない邦人オペラ 2020年1月9日 東京室内歌劇場「昔噺人買太郎兵衛」/「安寿と厨子王」を聴く
一つの方向性としては理解できるが・・・ 2020年1月11日 日本オペラ協会「紅天女」を聴く
ちょっとひねったガラコンサート 2020年1月19日 遊音楽企画「立川ニューイヤーオペラガラ2020」を聴く

オペラに行って参りました。 過去の記録へのリンク

2020年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2020年
2019年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2019年
2018年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2018年
2017年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2017年
2016年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2016年
2015年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2015年
2014年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2014年
2013年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2013年
2012年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2012年
2011年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2011年
2010年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2010年
2009年 その1 その2 その3 その4   どくたーTのオペラベスト3 2009年
2008年 その1 その2 その3 その4   どくたーTのオペラベスト3 2008年
2007年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2007年
2006年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2006年
2005年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2005年
2004年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2004年
2003年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2003年
2002年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2002年
2001年 その1 その2       どくたーTのオペラベスト3 2001年
2000年            どくたーTのオペラベスト3 2000年

鑑賞日:202019
入場料:自由席 4800円

主催:一般社団法人 東京室内歌劇場

東京室内歌劇場コンサートオペラ 邦人作品シリーズ第七回

オペラ1幕、原語(日本語)上演
間宮 芳生 作曲「昔噺人買太郎兵衛」
台本:
若林一郎

オペラ1幕、原語(日本語)上演
牧野 由多可 作曲「安寿と厨子王」
台本:
まえだ純

会場:品川区立総合区民会館「きゅりあん」小ホール

昔噺人買太郎兵衛

スタッフ

指揮 新井 義輝
ピアノ 松浦 朋子
打楽器 清田 裕里恵
演 出 澤田 康子
制作統括 前澤 悦子

出 演

太郎兵衛 杉野 正隆
おもん 赤星 啓子
次郎作 櫻井 淳

安寿と厨子王

スタッフ

指揮 新井 義輝  
ピアノ 朴 令鈴
打楽器 清田 裕里恵
演 出 島田 彌六
制作統括 前澤 悦子

出 演

安寿 藤原 千晶
厨子王 飯田 聖美
井口 雅子
宮﨑 二郎 新海 康仁
宮﨑 三郎 野村 光洋
太夫 杉野 正隆
小萩 櫻井 日菜子
律師 河野 鉄平

感 想

自分の知らない邦人オペラ-東京室内歌劇場「昔噺人買太郎兵衛」/「安寿と厨子王」を聴く

 10年ほど前の自分のオペラ選択の基準は、新国立劇場、東京二期会、藤原歌劇団、東京室内歌劇場、東京オペラ・プロデュースの在京5団体のオペラ本公演は全部聴く、でした。実は上演のダブル・ブッキングがあったり、自分の時間の都合がつかなかったりして達成した年は一度もないのですが、ほぼ達成した年は何度かあります。私が東京室内歌劇場を初めて聴いたのは2002年の第100回公演、サリエリの「ファルスタッフ」ですが、そこから、2011年2月のシューマン「ゲノフェーファ」まで、いろいろな作品を見せてもらいました。そのころの東京室内歌劇場は、舞台も豪華でしたし、規模も大きかったと思います。しかし、文化庁の補助金不正受給問題から活動が下火になり、それと共に、自分が東京室内歌劇場の公演に行くこともなくなりました。

 しかし、弱体化した組織を立て直した会員たちがいて、2012年からは調布市のせんがわ劇場での「東京室内歌劇場スペシャルウィーク」が開始され、比較的規模の小さいオペラやオペレッタが上演され始めています。また、2013年からは、邦人作曲の短いオペラ二本立てによる「邦人作品シリーズ」が開始され、今回で7回目となりました。

 私自身は、東京室内歌劇場が活動を再開したころは、あまり情報もなく、行くこともなかったのですが、ようやく私の耳にも活動が届き始め、一昨年にスペシャルウィークの「天国と地獄」で6年ぶりに再聴し、今回に至ります。

 さて「昔噺人買太郎兵衛」は1959年にNHKのラジオ・オペラのために書かれた作品で、演奏時間が30分枠に入るということで、約27分の作品。舞台初演は1961年ですが、その後再演を重ねています。「こんにゃく座」の旗揚げ公演もこの作品だったそうですし、杉理一さんのニュー・オペラ・プロダクションでも数回取り上げていますし、東京室内歌劇場でも1980年以来何度も取り上げています。再演回数の点で言えば、間違いなく間宮芳生の代表作と申し上げられます。しかし、私はタイトルこそ知っていましたが、聴いたのは初めて。聴いてみて、1960年代の日本の作曲家のオペラへの意識というものをいろいろと感じることができたと思います。

 当時間宮は日本民謡に対して関心が深く、その研究は例えば合唱曲の「日本民謡集」や「合唱のためのコンポジション」に影響を与えているわけですが、それらの作品の一つの特徴は、「囃子言葉」を素材にするということでした。「昔噺人買太郎兵衛」も内容は「狂言」であり、音楽的には非旋律打楽器を多用し、メロディックではないところが、「合唱のためのコンポジション」以上に土着性というか日本らしさを感じさせるものでした。「文楽オペラ」(即ち舞台上では文楽人形が演じ、歌手は舞台袖で歌うというスタイル)として上演することもよくあるようですが、確かに動きが様式的な部分はありました。

 しかしながら、今回の上演は「文楽オペラ」をモチーフにしているといわれれば、そうかもしれない、とも思いましたが、そこまで形式的ではなく、普通の舞台だったのかなとは思います。歌唱の良し悪しは全く分かりませんが、赤星啓子のおもんは非常に「おかめ」的で、この作品にぴったりはまっていた印象です。また櫻井淳の次郎作も悪くなかったし、杉野正隆の太郎兵衛の困惑した感じもよく分かりました。ただ、この作品歌手たちがかなり交錯するので、もっと文楽や狂言らしさを取り上げて、動きをもっと様式的にした方がよかったような気がします。

 後半演奏された「安寿と厨子王」は牧野由多可によって1978年に書かれた作品です。

 牧野由多可は日本近現代音楽史の中の重要な作曲家の一人のようですが、自分自身では全く聴いたことがなく、その特徴も知りません。Wikipediaの記載を見ても音楽的な特徴については、「主に現代邦楽の分野で活躍した。」としかなく、よく分からない、というのが本当です。ただ、「安寿と厨子王」という作品名だけは知っていました。原作は説教節の「さんせう太夫」を基本に、森鴎外の「山椒太夫」を参考に作っているようです。ちなみに「山椒太夫」はオペラの題材としては好まれるもののようで、小山清茂が日本オペラ協会の委嘱によって書いた「山椒太夫」(1995年)と、原嘉壽子が水戸芸術館の委嘱でかいた「さんせう太夫」(1996年)もあります。

 作品としては、日本の作曲界も既に日本オペラに対するいろいろな試行が一通り終わった時期の作品ということもあり、「昔噺人買太郎兵衛」ほど先鋭的ではありませんでした。もちろん和のテイストの作品であり、説教節で知られる節回し「安寿恋しやホウヤレホー、厨子王恋しやホウヤレホー」などは母の歌う重要なモチーフとして使用はされてはいましたが、説教節の引用がとても多いという感じは自分はせず、全体的にメロディーが立って、聴きやすい作品だと思いました。打楽器も基本旋律楽器のヴィブラフォンを使っていました。

 演奏に関して言えば、声の響きで新海康仁の二郎が頭抜けている感じがしました。また冷酷な表現で、三郎の野村光洋もよかったと思います。安寿の藤原千晶は、その自己犠牲の表現が真に迫っている感じがして、よかったのかな、と思いました。ほかのメンバーも特に悪い感じはなく、チームとして割と整った演奏をしていたのではないかと思いました。

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鑑賞日:2020年1月11日
入場料:B席 3F2列19番 8000円

2020都民文化フェスティバル参加公演

主催:公益財団法人 日本オペラ振興会/Bunkamura/公益社団法人 日本演奏連盟

日本オペラ協会公演~日本オペラシリーズNo.80

オペラ3幕、日本語字幕付原語(日本語)上演、新作初演
寺嶋 民哉 作曲「紅天女」
原作:美内すずえ「ガラスの仮面」より
脚本・監修:美内すずえ

会場:Bunkamuraオーチャード・ホール

スタッフ

指揮 園田 隆一郎
オーケストラ 東京フィルハーモニー交響楽団
石笛・御笛 横澤 和也
二十五弦筝 中井 智弥
合唱 日本オペラ協会合唱団
合唱指揮 河原 哲也
演出 馬場 紀雄
特別演出振付 梅若 実 玄祥
美術 川口 直次
衣裳 さとう うさぶろう
照明 奥畑 康夫
舞台監督 八木 清市

出 演

阿古夜・紅天女 小林 沙羅
仏師・一真 山本 康寛
杉尾 真吾
伊賀の局 丹呉 由利子
楠木 正儀 岡 昭宏
藤原 照房 渡辺 康
長老 三浦 克次
お豊 松原 広美
楠木 正勝 斎木 智弥
こだま 飯嶋 幸子
しじま 古澤 真紀子
お頭 普久原 武学
お滝 鈴木 美也子
久藏(旅芸人) 馬場 大揮
権左(旅芸人) 嶋田 言一
クズマ 照屋 篤紀
烏天狗 金田 弘明、川口 晃平

感 想

一つの方向性としては理解できるが・・・-日本オペラ協会「紅天女」を聴く

 偶然ですが、昨年末から日本オペラづいていて、四作品を連続で聴きました。最初は昨年の12月25日に松井和彦作曲「金の斧・銀の斧」、明けて、本年1月9日に「昔噺人買太郎兵衛」/「安寿と厨子王」の二本立て、そして、今回の「紅天女」です。その中で見れば、今回の「紅天女」、いろいろな意味で群を抜いています。先の三本はいずれも「室内オペラ」に分類できるのですが、「紅天女」は明らかにグランド・オペラ、上演時間も休憩抜きで三時間越えという長大さ。登場人物も役名の付いた人だけでも18人。そのほか、合唱団もメンバーでも一言ソロのある役名の付いた方が何人もいますので、そこまで入れたら、25人ぐらいになりそうです。また、新作・初演にもかかわらず、渋谷オーチャードホールで五日間連続上演というのも、最近の日本オペラでは考えられない規模です。

 「紅天女」は美内すずえの漫画「ガラスの仮面」の作中劇であるそうですが、私は「ガラスの仮面」を読んだことはなく、実はどんな話か知りません。しかし、日本漫画史上、極めて重要な作品であるという知識はあり、また、非常に人気の高い作品である、ということは知っています。

 今回の作曲の経緯は、日本オペラ協会総監督の郡愛子が、二十年来の友人という美内すずえに、「紅天女」のオペラ化を打診し、快諾されたことに始まるようです。日本オペラ協会はこれまでも様々な作曲家に委嘱して、数多くの新作歌劇を上演してきた歴史があるわけですが、今回は、美内が台本を書き、美内の世界観を守る条件で、いわゆるクラシック音楽の作曲家ではない寺嶋民哉に作曲を依頼したようです。出てきた音楽は、基本甘く聴きやすいもの。これまでも聴きやすいオペラ作品を目指した新作オペラは数多くあったと思いますが、その中でも群を抜いている感じです。私の知る限り、日本オペラ作品の中で、ここまで聴きやすい作品はなかったのではないかと思います。ありていに言ってしまえば、マイクを使わないミュージカルであり、もっと申し上げるなら、歌謡曲をつなぎ合わせたようにも聴こえる作品です。

 もちろん、こういった方向性の作品はオペラの客層を変化させる可能性があると思いますし、観客の裾野を広げる可能性もあるので、もちろん大切ではあると思います。しかし、音楽としての力がどれだけ感じられる作品だったかと問われれば「?」をつけざるを得ない。いろいろなところが安易に作られ過ぎているように聴こえるのです。どこかで聴いたことのあるようなメロディーがつなぎ合わされ、不協和音は少なく、筝や石笛で和のテイストは出ているものの、それはあくまでも14世紀日本を舞台にする作品だから登場しているのであって、音楽的な必然性から盛り込まれたようには聴こえないのですね。

 さらに長すぎるのも賛成できません。長くても様々な登場人物に負担を分担しているのならまだいいと思いますが、本作品は、阿古夜・紅天女と一真に焦点が当たり、二人の負担が多い。歌唱技術的にはさほど難しいことをしているわけではないようですが、長時間張った歌を歌わなければならない、というのが大変だろうと思いました。現実に声の疲れも聴かれました。

 今回の舞台、場面転換を多用していました。具体的には、舞台が変わる度に中幕を下ろして、その前で誰かが繋ぎの歌を歌い、その間裏では舞台転換を行います。これは、ストーリーの進行を視覚的に見せるという点で効果的であったと思います。しかし、それが多すぎるので落ち着かないのと、舞台転換の時の音が前で繋ぎの演奏をしている人を邪魔もしており、そのあたりの対策も必要です。

 以上、厳しく書いてきましたが、舞台は綺麗でしたし、演奏は見事だったと思います。川口直次の舞台はやはりきれいです。特に第三幕の禁足地における絵柄、中心にそびえたつ大きな梅の木の下で歌う紅天女の絵姿は壮大さと、少女漫画的な美を兼ね備えたもので、見ごたえがありました。また、作品に込められたメッセージは、「地球温暖化対策」や「生物多様性の確保」を問われている現代にこそ通じるものがあって、そこは現代オペラとしての役割を果たしていると思います。

 演奏について触れると、小林沙羅の紅天女・阿古夜と、山本康寛の仏師・一真の2人がどちらも見事な演奏を披露しました。

 阿古夜は紅天女が憑依した現身(うつしみ)でありますが、小林は紅天女を歌う時と阿古夜を歌う時では歌い方を変え、紅天女の時のドラマティックな表現と、阿古夜を歌う時のリリックな表現の双方とも見事で、その対比が光りました。第三幕では阿古夜から紅天女に変身しますが、そこでの歌い方の切り替えはさすがと申し上げるしかありません。咽喉に負担をかけなければいけない部分も多々あったと思いますが、小林はバランスよく歌い、最初から最後まで美しい立ち姿と素晴らしい存在感で魅了してくれました。Bravaです。

 一真を歌った山本も秀逸な歌唱。もともとロッシーニの歌唱などで歌唱技術の難しい曲の処理に長けている人なので、この程度の難易度の曲であればどうということはないということはありますが、甘い声で歌う愛のアリアなどは蕩けそうに聴こえます。だから、阿古夜と一真の二重唱は特に甘くて魅力的。原作の少女漫画テイストを感じることが出来ました。ただ、山本は喉に対する負担のバランスが必ずしもうまくいっておらず、第三幕でのクライマックスでは持ち味の軽い高音がほとんど聴けなかったのが残念です。

 脇役陣では、まず松原広美のお豊と三浦克次の長老が要所要所でしっかりした存在感を示して見事。特に松原はアリアもよく、立派でした。物語のアクセントという意味で存在感を示したのは、伊賀の局を演じた丹呉由利子。その夫役・楠木正儀を歌った岡昭宏も立派なアリアを聴かせました。その他の方々もそれぞれの力量を発揮しておりました。

 園田隆一郎の解釈は中庸であり、初演としては妥当なものだったと思います。二十五弦や石笛の演奏技術も見事でした。

 いろいろ不満なところもあったのですが、全体としては楽しみました。そもそも新作オペラの初演です。不慣れで上手くいかなかった部分もあると思いますし、作品として改良する余地もあると思います。それが再演の時改良されていることを期待したいと思います。

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鑑賞日:2020年1月19日
入場料:自由席 3500円

主催:公益財団法人 立川市民文化振興財団/遊音楽企画

立川ニューイヤーオペラガラ2020

会場:立川RISURUホール・小ホール

出 演

ソプラノ 宮地 江奈
メゾ・ソプラノ 山下 裕賀
テノール 前川 健生
バリトン 高田 智士
ピアノ 藤川 志保
司会 長井 進之介

プログラム

作曲家 作品名 曲名 演奏者
モーツァルト フィガロの結婚 三重唱「何たること!その女たらしを追い出せ」 宮地江奈(スザンナ)/前川健生(バジリオ)/高田智士(伯爵)
皇帝ティートの慈悲 セストのアリア「私は行く、だが愛しい人よ」 山下裕賀
ドニゼッティ アルバ公爵 アンリ・ド・ブルジュのアリア「清く美しい天使」 前川健生
ロッシーニ   猫の二重唱 宮地江奈/山下裕賀
セビリアの理髪師 フィガロのカヴァティーナ「私は町の何でも屋」 高田智士
フィガロとロジーナの二重唱「私なのね~私を騙しているのではないの?」 山下裕賀(ロジーナ)/高田智士(フィガロ)
セミラーミデ セミラーミデのアリア「麗しい光が」 宮地江奈
チェネレントラ 四重唱「黙って、静かに」 宮地江奈(クロリンダ)/山下裕賀(ディーズベ)/前川健生(ドン・ラミーロ)/高田智士(ダンディーニ)
休憩
ビゼー カルメン ハイライト  
ハバネラ「恋は野の鳥」 山下裕賀(カルメン)
ホセとミカエラの二重唱「母の便りは」 宮地江奈(ミカエラ)/前川健生(ホセ)
乾杯の歌「諸君の乾杯を喜んで受けよう」 高田智士(エスカミーリョ)
花の歌「お前の投げたこの花は」 前川健生(ホセ)
ミカエラのアリア「何を恐れることがありましょう」 宮地江奈(ミカエラ)
ホセとエスカミーリョの二重唱「俺はグラナダの闘牛士」 前川健生(ホセ)/高田智士(エスカミーリョ)
ホセとカルメンの二重唱「あんたね、俺だ」 山下裕賀(カルメン)/前川健生(ホセ)
アンコール
レハール メリー・ウィドウ ワルツ「唇は閉ざされても」 宮地江奈(ハンナ)/高田智士(ダニロ)
ヨハン・シュトラウス二世 こうもり 葡萄酒の流れる中へ 全員

感 想

ちょっとひねったガラ・コンサート-遊音楽企画/立川市民文化振興財団「立川ニューイヤーオペラガラコンサート2020」を聴く

 ここ数年、正月は、小林祐太郎さんが主宰するVoce D'oro Professionaleの「ニュー イヤー ガラ コンサート~名曲はゆとりの香り~」というコンサートを聴いていたのですが、主宰者の御不幸の理由で、本年から開催されなくなりました。そんな中で、このコンサートを偶然見つけたので、伺うことにしたものです。

 ガラ・コンサートは沢山の歌手が出演して、それぞれが顔見世的に1-2曲歌うというパターンが多いと思いますが、このコンサート、男女各二名が、ソロ、二重唱、三重唱、四重唱と様々なパターンで歌うという形式です。ガラ・コンサートというよりは、もう少し真面目な演奏会の印象です。

 演奏された最初の曲が「フィガロの結婚」の第一幕7番の三重唱。「フィガロの結婚」をよく知っている人にとっては、凄く重要な曲であることは分かりますが、ガラ・コンサートの最初の曲としてふさわしいかと言われれば、どうなのだろうと思う曲です。そういう選曲をするところが「ひねったところ」と書いた理由です。前半に歌われた曲は、私にとっては珍しい曲はほとんどないのですが、しかし、重唱で歌われた曲はオペラの中で聴くことはあっても、コンサートで取り上げられることは滅多にない曲ばかりで、その意味では新鮮でした。

 前半で歌われたアリアは、本日の歌手たちにとってそれなりにチャレンジングな曲だったと思います。その中では山下裕賀のセストのアリアが一番聴きごたえがありました。次いで、宮地江奈のセミラーミデのアリアでしょうか。前川健生の「アルバ公爵」のアリア。盛り上がる曲ではありますが、もっとリリックな表情を強く出した方がこの曲の味が出るような気がします。高田智士の「何でも屋」。雰囲気はよかったのですが、曲のむつかしさに声と舌捌きがついていっていなかったところがあり、課題を残しました。

 猫の二重唱。二匹の猫のキャラクターの作り方でよくもなり悪くもなる曲で、その意味で歌手の創造力が試される曲ですが、今回は、二匹の猫の気の合い方が今一つで、重唱になってから、何とか最後まで空中分解せずに持ちこたえたというところ。セビリヤのフィガロとロジーナの二重唱。これはBravi。ロジーナの溌溂した表現もフィガロの雰囲気も見事なもので、山下がロジーナを歌う六月の日生劇場「セビリアの理髪師」が楽しみです。チェネレントラの四重唱。テノールが嵌っていない。前川はロッシーニ歌いではないことを図らずも証明してしまった感じです。

 後半のカルメン・ハイライト。こちらは出演者にとっても歌いやすかったり歌いなれていた、ということもあるのでしょう。全体的な仕上がりはこっちの方がよい。

 山下裕賀のカルメンは、彼女が大学院での研究テーマとして取り上げている、というだけあって見事。ハバネラもよかったし、フィナーレの二重唱もよかった。ただ、フィナーレの二重唱はこれまで聴いてきたこの曲の中では比較的おどろおどろしくありませんでした。ここが若い歌手の経験が見えた、というところかもしれません。

 前川ホセも立派。前半のベルカント物より、彼にはこのような役柄が似合っているし、仕上がりもよい感じです。ミカエラとの二重唱、花の歌、終幕の二重唱とどれも素敵な歌唱でした。宮地江奈はこれまで彼女を聴いてきた印象からすると、ミカエラにはちょっと軽いかなとも思っていたのですが、さにあらず。魅力的な役作りでよかったです。高田智士のエスカミーリョもよく、若い人たちの力量を楽しめました。

 以上演奏的には満足できたのですが、会場は今一つでした。空調の音が響いて耳障りなこと耳障りなこと。リスルホールの管理者は、その改善を図った方がよいと思いました。

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