オペラに行って参りました-2017年(その1)

目次

一流と市民の間 2017年1月7日 町田イタリア歌劇団「椿姫」を聴く 
新年のお楽しみ 2017年1月8日 Voce D'oro Professionale「ニューイヤー・ガラ・コンサート~名曲はゆとりの香り~2017」を聴く
「ポイントを押さえている」ということ 2017年1月22日 新国立劇場「カルメン」を聴く 
指揮者とカルメンの問題 2017年2月3日 藤原歌劇団「カルメン」を聴く
レスピーギ!! 2017年2月4日 東京オペラ・プロデュース「ベルファゴール」を聴く
スリム・バタフライ 2017年2月11日 新国立劇場「蝶々夫人」を聴く
高水準の演奏だとは思いますが・・・、 2017年2月19日 東京二期会オペラ劇場「トスカ」を聴く
若さのパワーと課題 2017年2月26日 新国立劇場オペラ研修所公演「コジ・ファン・トゥッテ」を聴く
25年ぶりの再演 2017年3月5日 日本オペラ協会「よさこい節」を聴
チャンスを生かせるのか 2017年3月17日 文化庁/昭和音楽大学「オペラアリア・コンサート」を聴く

オペラに行って参りました。 過去の記録へのリンク

2017年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2017年
2016年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2016年
2015年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2015年
2014年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2014年
2013年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2013年
2012年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2012年
2011年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2011年
2010年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2010年
2009年 その1 その2 その3 その4   どくたーTのオペラベスト3 2009年
2008年 その1 その2 その3 その4   どくたーTのオペラベスト3 2008年
2007年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2007年
2006年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2006年
2005年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2005年
2004年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2004年
2003年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2003年
2002年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2002年
2001年 その1 その2       どくたーTのオペラベスト3 2001年
2000年            どくたーTのオペラベスト3 2000年

鑑賞日:2017年1月7日

入場料:自由席 3000円

主催:町田イタリア歌劇団

オペラ3幕、日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
ヴェルディ作曲「椿姫」 (La Traviata)
原作:アレキサンドル・デュマ・フィス
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ

会場 町田市民フォーラム3Fホール

スタッフ

指 揮 山本 達郎
ピアノ 土屋 麻美
合 唱 町田イタリア歌劇団
演 出 川島 慶子
舞台監督 原田 統

出 演

 

ヴィオレッタ 田原 ちえ
アルフレード 及川 尚志
ジェルモン 木村 聡
フローラ 水戸 瞳
アンニーナ 織田 麻美
ガストン子爵 須藤 章大
ドビニー男爵 佐藤 靖彦
ドゥフォール男爵 幸田 敦
医師グランヴィル 平岩 英一
ジュゼッペ 柳亭 雅幸
使いの者 大倉 修平

感 想

一流と市民の間-町田イタリア歌劇団公演「椿姫」を聴く

 市民オペラに時々伺います。ここでいう「市民オペラ」とは、地方公共団体がかなり関与していて、補助金を出したり、広報誌で合唱団員を募集するのを手伝ったりするような公演で、主役は藤原歌劇団や二期会の公演で主役が務められそうな一流歌手が登場したりもします。逆にそういう市民オペラに出演できる人は一握りで、それ以外のオペラをやりたい人は仲間内で小さい公演を打ちます。そのようなオペラは相当やられているようなのですが、オペラの公演情報に詳しいどくたーTをしても、実態はよくわかりません。
 
町田イタリア歌劇団は、そのような歌手グループによる小団体で、もともと「町田オペラ小劇場」という名で活動していた団体が発展したもののようです。主催者の柴田素光さんがかなりアクティブなプロデューサーのようで、年に5,6回オペラ公演を打っている。もちろんピアノ伴奏ですし、舞台装置も最低限にものしかないというもののようですが、このような発表の機会を与えてもらえるのは、若い歌手にとってはもちろんありがたいことですし、地域にとっても意味ある事のように思います。
 
会場の町田市民フォーラムホールは、小田急町田駅からほぼ10分のところにある席数が約180という小ホールで舞台も狭い。ここで「椿姫」を上演するというのは、視覚的にはかなり厳しい。特に第一幕。この場面は着飾った合唱団員がバックコーラスで盛り上げるところですが、10人ほどの合唱団員では貧弱さは隠しようがない。しかしながら、舞台と客席とがとても近いので、舞台の熱気がすぐさま伝わるというメリットもありました。特に今回は、客席が180といえどもほぼ満席で若干の補助席が出るほどだったので、舞台と客席の一体感という観点ではよいものだったのだろうと思います。
さて、肝心の演奏ですが、歌手たちの力量の差が否応なく示された公演だったと申し上げます。さらに申し上げれば、オペラ歌手と、なかなかオペラ歌手になり切れていないソリストとの差と言うべきか。
 
ジェルモン役の木村聡もよかったです。柔らかい表情の作り方で厳父というよりは慈父という感じの役作りでした。表現力も納得いくもの。ただその分、声が出るポジションがちょっと後ろで、そこが音楽の流れに若干抵抗していた感があります。もちろん、つるつる行くのがよいわけではないので、何とも言えないのですが。
 
 田原ちえのヴィオレッタ。敢闘賞と申し上げましょう。細かいところの処理がかなり雑で、ブレスの取り方なども変なところがありましたし、歌いきれなかったところも数々ありましたが、基本的に高音はきっちり出ていましたし、聴かせどころに大きな破たんはありませんでした。その意味では悪くはないのですが、「神は細部に宿る」というのは本当で、細かいところをきっちり処理していかないと、オペラっぽく聴こえない。音楽の流れが寸断されてしまうところがあって、違和感が残りました。
 
 脇役陣では、幸田敦のドゥフォールに存在感があり、また、アンニーナの織田麻美がはっきりした表現でよかったと思います。それ以外の脇役陣は音楽的にはきっちり役目を果たしていたと思いますが、強い印象はありません。
 
 伴奏ピアニストの土屋麻美。前奏曲は本当に表情のない演奏で、大丈夫かな、という感じだったのですが、伴奏ピアニストとしては経験豊富な方のようで、歌が入り始めるとがぜん調子が出てきました。歌手と上手にやり取りしながら表情を作って秀逸。立派に舞台を支えました。
 
 一つ気になったのは乾杯の歌でのバックコーラス。女声7人と男声2人からなるコーラスが舞台後方で、男声脇役ソリストが舞台前方で合唱を歌うのですが、男声が強すぎます。これはもちろん、男声と女性コーラスとの力量差なのですが、この声量差があるのであれば、女声コーラスを前に出して歌わせるようにしないとバランスが取れないと思いました。
 
 全体的に言えば、歌手間の力量差が相当あって気になるところも多々あったわけですが、歌手たちのオペラを歌いたいという気持ちが小さいホールの中に充満しており、その気持ちにほだされる公演だったと申し上げましょう。

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鑑賞日:2017年1月8日

入場料:自由席 4000円

主催:ヴォーチェ・ドーロ・プロフェッスィオナーレ

Voce D'oro Professionale ニュー イヤー ガラ コンサート
~名曲はゆとりの香り~2017

会場:いずみホール

出演

ピアノ あずま みのり
ソプラノ 小林 真由美
ソプラノ 柴山 晴美
ソプラノ 久田 み子
メゾソプラノ 立川 かずさ
メゾソプラノ 三橋 千鶴
テノール 青地 英幸
テノール 浅原 孝夫
テノール 小林 祐太郎
テノール 渡辺 敦
バリトン 平尾 弘之  

 プログラム

番号 作曲家 作品名 歌手
  宮城道雄~上眞行 春の海~1月1日 全員
1 レオンカヴァッロ 朝の歌 渡辺 敦
2 ドリーブ カディスの娘たち 久田 み子
3 グノー 春の歌 柴山 晴美
4 ヴェルディ 歌劇「椿姫」よりジェルモンのアリア「プロヴァンスの海と陸」 平尾 弘之
5 ララ グラナダ 小林 祐太郎
6 ソンドハイム ミュージカル「スウィーニー・トッド」よりジョアンナの歌う「緑の鳥」 三橋 千鶴
7 ビゼー 歌劇「カルメン」より、ホセのアリア「花の歌」 浅原 孝夫
8 サン・サーンス 歌劇「サムソンとデリラ」よりデリラのアリア「あなたの声に心は開く」 立川 かずさ
9 グノー 歌劇「ポリュークト」よりポリュークトのスタンス「心地よい泉よ」 青地 英幸
10 ピアソラ フィナーレ 小林 真由美
休憩
11 ドニゼッテイ 歌劇「愛の妙薬」よりアディーナとネモリーノの二重唱「ラ・ラ・ラ」 柴山晴美/青地英幸
12 プッチーニ 歌劇「マノン・レスコー」よりデ・グリューのアリア「見たこともない美人」 渡辺 敦
13 ヴェルディ 歌劇「仮面舞踏会」よりレナートのアリア「お前こそ心を汚すもの」 平尾 弘之
14 ヴェルディ 歌劇「海賊」よりコッラードのアリア「初恋の頃には」 小林 祐太郎
15 ヴェルディ 歌劇「リゴレット」よりマントヴァ公爵とジルダの二重唱「ジョヴァンナ、私、後悔しているわ」 浅原孝夫/久田み子
16 ガーシュイン 歌劇「ポーギーとベス」よりセリナのアリア「うちの人は逝ってしまった」 立川 かずさ
17 ソンドハイム ミュージカル「リトルナイトミュージック」よりデジレの歌う「悲しみのクラウン」 三橋 千鶴
18 プッチーニ 歌劇「つばめ」よりマグダのアリア「ドレッタの夢」 小林 真由美
アンコール レハール オペレッタ「メリー・ウィドウ」よりダニロとハンナの二重唱「唇は閉ざしても」 全員
アンコール ヴェルディ 歌劇「椿姫」よりアルフレードとヴィオレッタの二重唱「乾杯の歌」 全員

感 想

新年のお楽しみ-「Voce D'oro Professionale ニュー イヤー ガラ コンサート~名曲はゆとりの香り~2017」を聴く

 ヴォーチェ・ドーロ・プロフェッスィオナーレのニューイヤーガラコンサート、この何年か、毎年聴かせて貰っています。このコンサートの魅力は、メジャーなオペラ公演等ではあまりお目にかかれない歌手の歌を楽しめることと、選曲もちょっと変わっていることです。例えば、三橋千鶴の指向性はこのガラ・コンサートに通うことでよく分かりましたし、亡くなられた藤澤眞理さんが素晴らしいバリトンであることもこのコンサートで知りました。本年は常連の西本真子がお休みで、代わりに久田み子が初登場、バリトンもこれまた常連の笠井仁に代わって平尾弘之の登場となりました。
 
 久田については悪い歌だったとは全く思いませんが、彼女の個性がピンとくるような歌でもなかった、というのが本当のところです。ただ、私自身としては滅多に聞くことのない「カディスの娘たち」を聴けたのは収穫だったと思います。平尾に関しては、ヴェルディのオペラアリアを二曲歌ったのですが、1月7日町田で歌ったばかり(私の聴いた町田イタリア歌劇団のソワレ公演)の「プロヴァンス」のほうがよく、「仮面舞踏会」のレナートのアリアは今一つだった感じです。またその「プロヴァンス」にしてもオペラの中で歌うのと、コンサートピースとして取り上げるのではもちろん違っていて、私自身としては昨日オペラの中で聴いた木村聡の「プロヴァンス」のほうに感動いたしました。平尾のプロヴァンスはコンサートの中で歌うせいか、お行儀が良すぎる感じ。昨晩のオペラではもっと感情が迸っていたかもしれません。
 
 滅多に聴けない曲や初めて聴く曲も結構多かったです。私自身としてはレオンカヴァッロの「朝の歌」とグノーの「春の歌」は初めて聴く曲ですし、三橋千鶴の歌った二曲のソンドハイムのミュージカルナンバーも恥ずかしながら初聴です。青地英幸の歌った「ポリュークト」のアリアも初めて。ピアソラの「フィナーレ」という曲も初めてでした。後半の曲は前半ほど知らない曲ではありませんが、それでも「海賊」のアリアは滅多に聴きませんし、「ポーギーとベス」のセリナのナンバーも久しぶりです。
 
聴いていて楽しめたのは、「カディスの娘たち」、「春の歌」、「プロヴァンス」、「グラナダ」、「緑の鳥」、「あなたの声に心は開く」、「ラ、ラ、ラ」、「海賊のアリア」、リゴレットの二重唱、「うちの人は逝ってしまった」、「悲しみのクラウン」です。特によいと思ったのは「春の歌」、「あなたの声に心は開く」、「ラ、ラ、ラ」、「悲しみのクラウン」です。青地の声の素敵さや柴山の巧さは例年のこと。立川かずさは昨年から登場し、昨年の歌は全然ピンとこなかったのですが、本年は両方の曲とも感情の表出が見事で雰囲気もあり、とてもよかったと思いました。

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鑑賞日:2017年1月22日
入場料:B席 11664円 2F 3列1番

主催:新国立劇場

オペラ3幕、日本語字幕付原語(フランス語)上演
ビゼー作曲「カルメン」(Carmen)
台本:アンリ・メイヤック/リュドヴィック・アレヴィ

会場:新国立劇場オペラ劇場

スタッフ

指 揮 イヴ・アベル
管弦楽 東京交響楽団
合 唱 新国立劇場合唱団
合唱指揮 三澤 洋史
児童合唱 TOKYO FM 少年合唱団
児童合唱指揮 米屋 恵子/金井 理恵子
ダンサー 新国立劇場バレエ団
演 出 鵜山 仁
美 術 島 次郎
衣 裳 緒方 規矩子
照 明 沢田 祐二
振 付 石井 潤
再演演出 澤田 康子
音楽ヘッドコーチ 石坂 宏
舞台監督 斉藤 美穂

出 演

カルメン エレーナ・マクシモワ
ドン・ホセ マッシモ・ジョルダーノ
エスカミーリョ ガボール・ブレッツ
ミカエラ 砂川 涼子
スニガ 妻屋 秀和
モラレス 星野 淳
ダンカイロ 北川 辰彦
レメンダード 村上 公太
フラスキータ 日比野 幸
メルセデス 金子 美香
アンドレ 大久保 憲
オレンジ売り 鈴木 涼子
ボヘミヤン 千葉 裕一

感 想

「ポイントを押さえている」ということ-新国立劇場「カルメン」を聴く。

 カルメンの見どころの一つは、まずカルメンがどうやってホセを誘惑するかだと思います。そこにどこまで説得力があるか。
 
 2014年公演の時も同じような文を書きました。あのときのケモクリーゼというメゾ。カルメンとしてはちょっと華やかさに欠けているなという印象でした。今回のマクシモワのカルメン、ケモクリーゼよりは美人だと思うし、歌も考えられているとは思うけれども、やっぱり色気が足りない感じがします。セギディーリャ一曲で、ホセの気持ちをすっかり自分に引き付ける必要があるわけですが、そこまでホセをまよわせる歌だったか、と申し上げればそれは違う感じがいたしました。役作りが中途半端なのかもしれません。
 
  カルメンの役作りには大きく二方向があると思います。一つは「お色気むんむん系」、もう一つは、「自立した女系」で、マクシモワの指向性は基本後者だと思います。後者を志向して、それでもなおホセの心を虜にできる歌、というのは実際にはかなり難しそうです。マクシモアのセギディーリャは、端的に申し上げれば男っぽい歌だったと思います。かっこいいけど、色気はあまり感じさせない。あるいは、音楽的には知的なアプローチを試みているけれども、それがホセを巻き込めない、というところでしょうか。彼女は昨年「ウェルテル」でも聴きましたが、あの時のシャルロットのアプローチと似たようなアプローチをしていたのでしょう。あの時のシャルロットはこのような知的なアプローチがうまくいっていると思いましたが、今回の第一幕に関しては、空回り感が強いというところでしょうか。
 
 しかしながら、これは一幕の話であって、二幕以降はこの方向性がうまく回りだします。ホセに対して冷たくし始めると、ぴったりはまるのです。カルメンの見どころがもし第4幕にあるとするならば、4幕のマクシモアカルメンとジョルダーノのホセの二重唱はすごく迫力がありました。それまで颯爽としたダメ男だったホセが、ぐっと存在感を増していく。あの幕切れの二重唱は、二人のバランスが大切ですが、ぴったりかみ合っていて、表情も見ごたえがありました。よかったと思います。
 
 ジョルダーノのホセ。これはとても立派。先月、デュトワ指揮のN響で聴いたマルセロ・ブエンテのホセが全然いけてなかったので、とりわけそう思うのかもしれません。ジョルダーノに関して申し上げれば、音楽的にはとても素晴らしいし、(例えば、「花の歌」の表情の繊細さ。切々感が身に染みる表現。第一幕のミカエラの二重唱での表情、終幕のカルメンの二重唱でのやるせない激情など)ダメ男感が増してくると演技もどんどん冴えてきました。第4幕で、舞台に落ちている花を蹴飛ばして怒りを表現する演出は、初めて見たような気がします。再演演出の沢田康子の指示なのか、それともジョルダーノ自身のアドリブなのかはわかりませんが、あのような細かい演技がホセの感情をより見るものに感じさせた、というのはあったと思います。
 
 プレッツのエスカミーリョ。よかったです。見た目もかっこいいし、歌も巧み。エスカミーリョは「闘牛士の歌」以外ほとんど歌わないので、そこでほとんどが決まるわけですけど、いい雰囲気だったと思います。
 
 砂川涼子のミカエラ。こちらも上々。砂川といえば、パミーナもミミもリューも素晴らしいからミカエラが良いのは当然想像できるのですが、やっぱり素晴らしいと思います。砂川の魅力は、きっちり計算をしてポイントを攻めてくるところですね。今回はマクシモワもしっかり計算した歌唱だったと思いますが、計算が鼻につく。一方。砂川もしっかり計算した歌唱なのですが、そうであっても巧さに圧倒されてしまうというところでしょうか。第一幕の登場のシーンが巧みで、ホセとの二重唱がかわいさいっぱい。それでありながら、ミカエラのアリア「何を恐れることがありましょう」での強い意志の表出。どれをとっても素晴らしいと思いました。
 
 脇役陣では、妻屋秀和のズニガは当然、星野淳のモラレスも軽妙な歌唱演技で楽しませてくれました。北川辰彦のダンカイロ、村上公太のレメンダードも軽い歌唱で良好。日比野幸のフラスキータ、金子美香のメルセデスも悪くなかったと思います。
 
 合唱は、タバコ工場の女工たちの合唱「天まで昇るタバコの煙」の直前の男声合唱がバラバラでどうなることかと思ったのですが、女声合唱が傷を修復して秀逸。新国立劇場合唱団の合唱は、全体的にはいつもながらの巧みさを感じたのですが、演技をしなかったデュトワ/N響の合唱(こちらも新国立劇場合唱団)よりはアンサンブル的美としてはやや粗いかもしれません。また、最初の児童合唱は女の子が入っていないためか、標準的な児童合唱よりも男性的に聴こえました。
 
 イヴ・アベルの指揮は、昨年12月のデュトワと比べて速度感のメリハリがついている感じがしました。前奏曲や、第4幕の合唱などはやや速いスピードで推進力を示しましたが、アリアなどでは結構ゆっくりも振るといった感じです。デュトワ/N響の演奏のほうがまとまり感はありますが、舞台で演技していることを踏まえると、アベルの解釈のほうが実際に即しているのかもしれません。
 
 全体としてはポイントを押さえた、まとまりのある演奏でした。よかったと思います。
 

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鑑賞日:2017年2月3日
入場料:D席 5800円 3F L3列28番

主催:公益財団法人日本オペラ振興会/公益財団法人日本演奏連盟

文化庁文化芸術振興費補助金 舞台芸術創造活動活性化事業

2017都民芸術フェスティバル参加公演

藤原歌劇団公演

オペラ3幕、日本語字幕付原語(フランス語)上演
ビゼー作曲「カルメン」(Carmen)
台本:アンリ・メイヤック/リュドヴィック・アレヴィ

会場:東京文化会館大ホール

スタッフ

指 揮 山田 和樹
管弦楽 日本フィルハーモニー交響楽団
合 唱 藤原歌劇団合唱部
合唱指揮 須藤 桂司
児童合唱 東京少年少女合唱隊
児童合唱指揮 長谷川 久恵
ダンサー 平富恵スペイン舞踏団
演 出 岩田 達宗
美 術 増田 寿子
衣 裳 半田 悦子
照 明 大島 祐夫
振 付 平 富恵
舞台監督 菅原 多敢弘

出 演

カルメン ミリヤーナ・ニコリッチ
ドン・ホセ 笛田 博昭
エスカミーリョ 須藤 慎吾
ミカエラ 小林 沙羅
スニガ 伊藤 貴之
モラレス 押川 浩士
ダンカイロ 安藤 玄人
レメンダード 狩野 武
フラスキータ 平野 雅世
メルセデス 米谷 朋子

感 想

指揮者とカルメンの問題-藤原歌劇団「カルメン」を聴く。

 12月のN響定期の演奏会形式、1月の新国立劇場公演に引き続き3か月連続の「カルメン」鑑賞となりましたが、正直申し上げれば、今回の藤原公演が一番残念な公演でした。音楽的にも演出的にも気に入らない。
 
  まず、指揮者の山田和樹がいけません。山田は才能のある指揮者だとは思いますが、今回がオペラ指揮、デビューということ。であるならば、もう少し慎重な演奏を試みたほうがよかったのではないか、という気がします。やりたいことがいろいろあることは分かるし、もちろんそれは結構なことですが、歌手やオーケストラが理解してついてきてくれなければどうしようもない。さらに申し上げれば、慌てている感が結構あって、音楽が早くなりすぎるきらいがある。結果としてアンサンブルが乱れます。今回、第一幕の女声合唱が乱れたり、第二幕の密輸団のコミカルな五重唱などが乱れたりしたのは、歌手たちの実力がないというよりは、山田の振り方が的確ではなかったというのが大きいような気がします。もっと落ち着いて丁寧に刻む指揮のほうが巧くいくのではないでしょうか。
 
 歌手は何といっても主役のカルメンが足を引っ張りました。あるオペラ好きの知人と幕間に会いましたが、彼はニコリッチのことを「発声が悪い、音程が悪い、リズム感が悪い」とけちょんけちょんにけなしていましたが、まあそういわれても仕方がない部分が確実にあります。身体が大きくて存在感があり、派手な顔立ちですから「カルメン」という雰囲気はよく出ています。また、前回の新国「カルメン」でダメ出しをした「セギディーリャ」でのホセの誘惑の感じもうまくいっていたと思いますが、音楽的には全く好きになれません。低音に迫力があることは悪いことではないけれども、音が下がるのはどうかと思うし、歌のポジションの取り方だって、もっと高いところで華やかさを出したほうがカルメンの妖艶さが強調されると思います。彼女の声が低いので、彼女の歌から合唱に引き継がれるとき、その時の音の違いが気になってしまいます。とにかく聴いていて、全然納得いかないカルメンでした。
 
  一方笛田博昭のホセ。こちらは立派すぎる。最初から最後までピンと張った歌でほとんど崩れがありません。歌のポジションの取り方もまさにホセならここだろう、というところにしっかりはまり、決めも見事です。惜しむらくは立派すぎるんです。例えば「花の歌」。あの素晴らしい「花の歌」をコンサートで聴かされたら大ブラボーだと思いますが、オペラの流れの中では、立派すぎてちょっと違うんじゃない、という感じ。もう少しダメ男感が出ていたほうがよいと思います。この辺の表現は、新国で聴いたジョルダーノのほうが上だと思います。その笛田も第三幕はかなりダメ男になっておりました。
 
  小林沙羅のミカエラ。頑張っていました。小林の声質はミカエラには軽すぎるのではないか、という気はしましたが、おそらくいま彼女のできる最高のパフォーマンスを見せたのではないかと思います。もちろん新国立劇場で聴いた砂川涼子の域には全然達してはおりませんが。
 
  須藤慎吾のエスカミーリョ。闘牛士の歌の最初の部分はもう少し響いたほうが良いかな、という気がしましたが、あとはまあまあだったのではないでしょうか。

  脇役陣では、押川浩士のモラレスが、今一つうまくいっていない感じ。密輸団員の重唱は第二幕の「仕事を思いついた」も、第三幕の「カルタの歌」もアンサンブルに乱れがみえました。指揮者のテンポ感と歌手のテンポ感とにずれがあって、合わなかった感じがします。
 
  合唱も新国立劇場のほうが上です。合唱のまとまりが今一つ欠けている感じがして如何かな、と思いました。
 
  演出はカルメンというドラマの本質はついているのでしょうが、くどい感じがしました。「カルメン」は血なまぐさいオペラではありますが、それを強調しすぎるのは悪趣味だと思います。カルメンの本来の時間帯は、第一幕が午後から夕方、第二幕は夜遅く、第三幕は深夜から夜明け、第四幕は真昼でしょう。そのどの時間にも血の象徴である赤い月が出ていて、カルメンもホセもその「赤い月」に憑かれているという設定。演出家の意思は分かるけれども、それをここまで強調する必要があるのかな、というところです。音楽と関係ないところでは、例えば、第一幕冒頭の衛兵たちは、下層民を殴っているし、第二幕のリーリャス・バスティアでは、女たちが取っ組み合いのけんかをしている。こういうところも血生臭さの象徴なのでしょうが、見ていて気持ちの良いものではありません。それでいながら、第一幕のタバコ女工のけんかのシーンでは、取っ組み合いがほとんどない。また、衛兵の交代や、第四幕前半の闘牛士の入場などはもう少し見せられると思うのですが、そちらは割とあっさりしています。私の趣味とは違う演出でした。

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鑑賞日:2017年2月4日
入場料:B席 6000円 2F 3列36番

主催:東京オペラ・プロデュース合同会社

平成28年度 文化庁文化芸術振興費補助金 舞台芸術創造活動活性化事業

東京オペラプロデュース第99回定期公演

オペラ2幕、日本語字幕付原語(イタリア語)上演
レスピーギ作曲「ベルファゴール」(Belfagor)
台本:クラウディオ・グアスタッラ

日本初演

会場:新国立劇場中劇場

スタッフ

指 揮 時任 康文
管弦楽 東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団
合 唱 東京オペラ・プロデュース合唱団
合唱指揮 中橋 健太郎左衛門
演 出 馬場 紀雄
美 術 土屋 茂昭
衣 裳 清水 崇子
照 明 成瀬 一裕
ヘア・メイク 星野 安子
舞台監督 八木 清市

出 演

ベルファゴール 村田 孝高
カンディダ 橋爪 ゆか
バルド 上原 正敏
ミロクレート 羽山 晃生
オリンピア 河野 めぐみ
マッダレーナ 羽山 弘子
フィデリア 前坂 美希
ドン・ピアージョ 森田 学
メニカ 金井 理香
老人 鹿野 章人
少年 辰巳 真理恵

感 想

レスピーギ!!-東京オペラ・プロデュース「ベルファゴール」を聴く。

 レスピーギがオペラを作曲していることは知っていましたが、ほとんど聴いたことはありません。2013年にTOPが上演した「ラ・フィアンマ」が唯一の経験です。正直なところ、プッチーニ以降のイタリアオペラはあまり興味がないし、自分から積極的に探して聴こうとは思いません。でも、TOPがまたレスピーギを取り上げるということになれば、聴きにいかざるをえまい。正直、ぎりぎりのスケジュールの中、行ってまいりました。

 そして、思ったのは、「レスピーギだなあ」ということです。

 我々がレスピーギと言ってまず思い浮かぶのは、「ローマ三部作」や「リュートのための古代舞曲とアリア」でしょう。今回のこの「ベルファゴール」には、その両方を彷彿とさせる部分が含まれていました。三管の管弦楽に打楽器の多用や金管の咆哮は、まさに「ローマ三部作」の味ですし、所々で聴こえるバロック的な響きも面白い。ワーグナーの影響は当然あるのでしょうが、それ以外にもドビュッシーのペレアスとメリザンドを彷彿とさせる部分や、皮肉な響きにはプロコフィエフ的なところもあり、20世紀に活躍した作曲家の作品だな、と思いました。

 ただ、面白い作品か?と問われれば、そこは首をかしげざるを得ません。音楽的には、ローマの三部作ほど決まっている感じはしませんし、台本も喜劇であるならば、もっと書きようがあると思うのですが中途半端な感じがします。経験としては面白かったですけど、あまり知られていないのは仕方がないのだろうな、という感じです。

 歌い手にとっては大変です。喜劇的作品であるにもかかわらず、軽妙な歌はほとんどなく、かなり声を張り上げることを要求される作品です。

 そこを主役のベルファゴールを歌った村田孝高とカンディダ役の橋爪ゆかが頑張りました。村田は声の大きい方という認識はありましたが、表現力に秀でているという認識はあまりなかったのですが、今回の悪魔役、声も、表情も、表現も大変すばらしかったと申し上げてよいと思います。このベルファゴールという役、要するにブッフォ役なのですが、古典的なブッフォ特有の軽妙な早口はほとんどなく、ワーグナー張りの声が求められます。そこに敢然と立ち向かって、歌いこなしたところ、大変すばらしいと思いました。

 橋爪ゆかのカンディダも立派でした。彼女はワーグナーを得意にしている方ですが、ワーグナー歌唱の応用みたいなところがあるのかもしれません。ドラマティックな表現が素晴らしかったと思います。

 一方で、上原正敏のバルトは、役柄が上原の声からすると重すぎる感じで、かなり苦労している感じでした。脇役勢は羽山晃生ミロクレート、羽山弘子マッダレーナ、前坂美希フィデリアがそれぞれ存在感を示していたと思います。

 このオペラの本来の時代は、中世のマキャベルリの時代で、馬場紀雄の演出もそれを前提にしているものと思いましたが、オペラの内容からすると現代に時代を映して、現代風のオペラに仕上げたほうがよかったような気がします。船乗りのバルトにはセーラー服を着せ、マッダレーナとフィデリアにはミニスカートをはかせる感じですね。もちろんベルファゴールは背広姿で登場。そのほうがレスピーギの音楽やオペラの内容には似合っているように思いました。

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鑑賞日:2017211
入場料:Z席 1620円 4F L16

主催:新国立劇場

オペラ2幕、字幕付原語(イタリア語)上演
プッチーニ作曲「蝶々夫人」Madama Butterfly)
台本:ルイージ・イッリカ/ジュゼッペ・ジャコーザ

会場 新国立劇場・オペラ劇場

指 揮 フィリップ・オーギャン
管弦楽 東京交響楽団
合唱指揮 三澤 洋史
合 唱 新国立劇場合唱団
演 出 栗山 民也
再演演出 澤田 康子
美 術 島 次郎
衣 裳 前田 文子
照 明 勝柴 次朗
音楽ヘッドコーチ    石坂 宏 
舞台監督 大澤 裕

出 演

蝶々夫人 安藤 赴美子
ピンカートン リッカルド・マッシ
シャープレス 甲斐 栄次郎
スズキ 山下 牧子
ゴロー 橋浦 健
ボンゾ 島村 武男
神官 大森 いちえい
ヤマドリ 吉川 健一
ケート 佐藤 路子

感 想

スリム・バタフライ-新国立劇場「蝶々夫人」を聴く

 全体的に見れば、まずまずの出来だったと申し上げてよいと思います。無事故だったとは申しませんが、音楽にとって影響の出るような事故は皆無だったと申し上げてよいのでしょう。この栗山民也の舞台は新国立劇場6回目の登場ということで、スタッフが長所も短所も知り尽くしているというのはあるのでしょう。今回の脇役陣はうち吉川健一のヤマドリはこの舞台初経験のようですが、それ以外は全員過去何らかの形でこの舞台に関係しています。その経験がよい演奏に結びついている、ということはあると思いました。

 東京交響楽団の演奏が素敵でした。指揮者のフィリップ・オーギャン、特別個性的という感じはしませんでしたが、オペラをよく知っている職人タイプの指揮者のようで、ポイントポイントでしっかりオーケストラを歌わせます。東京交響楽団は最近充実度著しいですから、指揮者に合わせて生きの良い音を流してくるという感じです。それでいて、歌手に寄り添う姿勢も忘れていない様子で、全体としてはよくまとまった、あえて申し上げるならプッチーニ先生が書いた音楽的あざとさがくっきり浮かび上がるような演奏でした。Braviと申し上げてよいと思います。

 さて蝶々夫人の安藤赴美子。新国立劇場では2007年岡崎他加子以来10年ぶりの日本人蝶々さんということで、おおいに期待したのですが、「蝶々夫人」としては軽量級な感じでした。ありていに申し上げれば声量が足りない。繊細に歌わなければいけない部分の表情などはとても素敵なのですが、声を張らなければいけないところの迫力が今一つ不足しています。そのような自分の特徴を知って無理をしないで制御すれば、それはそれなりにいい演奏になっただろうと思いますが、やっぱり頑張ってしまうんでしょうね。頑張ると声が乱れます。特に高音をフォルテで歌わなければいけないところは金切り声になる傾向があって、今一つ残念でした。

 さらに申し上げるなら、音楽のコントロールも今一つ知的とは言えない部分がある。一番聴かせどころである「ある晴れた日に」。自分の設計通りに歌えなかったようで、ブレスの位置が変な部分が2か所ありました。余裕のないブレスになってしまい、ブレスの後のフレーズがうまくいかなかった感じでした。

 リッカルド・マッシのピンカートン。こちらもすごく良いとは思いませんでしたが、それなりにしっかりと歌われていた印象です。第一幕前半の蝶々さんをお妾さんに買おうとするシーンの表現はチャラ男的で好色な感じも出ていてよかったと思いました。考えてみると、日本人テノールがピンカートンを歌うと、上手に好色さを出せないんです。ピンカートンといえば不実な男の代表みたいにみられるんですが、その根本には好色がある。そんなの当然のことなんですが、それを歌で感じられたのはよかったと思います。

 甲斐栄次郎のシャープレス。2011年、2014年に続く三度目の登場。手慣れた、落ち着きのある歌唱。安心して聴ける歌でした。

 山下牧子のスズキ。上手いです。山下スズキは、2009年の二期会公演での歌唱が素晴らしく、その印象がまだ残っているおります。今回はその時ほどの驚きはもうありませんが、安定感はありますし、演技・歌唱ともやっぱり素晴らしいと思います。「花の二重唱」などは、安藤蝶々夫人も無理しなくてよい部分なので、二人の声がよくはもって、とても素敵でした。

 その他脇役陣もこのプロダクションで歌われている方が多く、手慣れた感じです。松浦健のゴローも定評あるところですし、島村武男のボンゾも何度も歌われていて、舞台を支えます。合唱団のメンバーだって何度も歌っている。そのような舞台をよく知ったメンバーに支えられてまとまりが形成されていたような気がします。

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鑑賞日:2017219
入場料:B席 8000円 4F R130

主催:公益財団法人東京二期会/公益財団法人日本演奏連盟

オペラ3幕、字幕付原語(イタリア語)上演
プッチーニ作曲「トスカ」Tosca)
台本:ルイージ・イッリカ/ジュゼッペ・ジャコーザ

会場 東京文化会館・大ホール

指 揮 ダニエーレ・ルスティオーニ
管弦楽 東京都交響楽団
合唱指揮 佐藤 宏
合 唱 二期会合唱団
児童合唱指揮 金田 典子
児童合唱 NHK東京児童合唱団
演 出 アレッサンドロ・タレヴィ
舞台美術 アドルフ・ホーレンシュタイン
照 明 ヴィニチオ・ケリ
装置再構成    カルロ・サーヴィ 
衣裳再構成    アンナ・ビアジョッティ
舞台監督 村田 健輔
公演監督 大野 徹也

出 演

トスカ 大村 博美
カヴァラドッシ 城 宏憲
スカルピア 今井 俊輔
アンジェロッティ 山口 邦明
堂守 峰 茂樹
スポレッタ 高梨 英次郎
シャルローネ 高橋 祐樹
看守 大井 哲也
牧童 野沢 晴海(NHK児童合唱団)

感 想

高水準の演奏だとは思いますが、、、、-東京二期会オペラ劇場「トスカ」を聴く

 私は大村博美と相性が悪いようです。二期会を代表するソプラノの一人ですから、これまでも何度も聴いてきましたけど、いまだかつて感心したことがありません。今回もその例にもれず、感心することはできませんでした。基本的に声質そのものが好きではない。更に申し上げれば歌い方も好きになれない。例えば、トスカが登場する最初の第一声はもっと華やかに響かせてほしい。そうでないと恋する女の可愛らしいジェラシーを表現できないのではないでしょうか。大村は総じて声がこもりがちで、イタリア語の発音がはっきり聞こえてこないのも如何なものかと思います。以上を含めて大村博美という歌手の特徴で、それを気にしなければ立派な歌唱なのでしょう。演技はよかったと思いますし。でも声質や歌い方は気になってしまう。トスカといえば、昨年の藤原歌劇団における野田ヒロ子の名唱や、一昨年の新国立劇場公演でカヴァーキャストからの突然の登場ながら、しっかりとした歌を聴かせた横山恵子のような素晴らしい歌唱の記憶が頭に染み付いているので、今回の大村程度の歌では満足できないのかもしれません。

 一方、城宏憲のカヴァラドッシ、よかったです。宏憲は美声と力強さを兼ね備えているのが特徴なのですが、今回のカヴァラドッシ、無理に声を張り上げないで歌いました。結果として柔らかい表現になり、聴いていてすんなり入ってくる歌唱だったと思います。カヴァラドッシも声を張って歌う表現はもちろんありだとは思いますし、まったく声を張らないことはもちろんあり得ないのですが、そこに力を注ぎすぎると、カヴァラドッシのもつ本質的軟弱さが見えなくなってしまうような気がします。今回の城のように柔らかく歌うと、響きも柔らかくなり、トスカを想う心がぐいと迫るような気がします。私は今回の城のアプローチ、支持したいと思います。

 今井俊輔のスカルピア。敢闘賞でしょう。立派なスカルピア。でも今井の若さが先に立ってしまってスカルピアの老獪さは表現できなかったのもまた事実です。もちろん表情などは悪役風にしっかり作っていましたし、自分自身で考えた役作りであることもその通りなのでしょうが、歌を聴いているとあまり憎らしいと感じられません。第二幕の歌唱はとても綺麗な歌唱で、すごく立派だなと思うのですが、上手すぎて親近感を覚えてしまうような歌。スカルピアはこれではいけない気がします。昨年聞いた藤原歌劇団の折江忠道のスカルピア。歌そのものはたぶん今井が上です。でもその老獪さというか憎々しい表情はすごいものがありました。今井にはまだスカルピアには若い、ということなのかもしれません。

 脇役陣はアンジェロッティの山口邦明がよかったと思いましたし、高橋祐樹のシャルローネも不気味な感じがよかったです。高梨栄次郎のスポレッタはもっと皮肉っぽい表情が出ればさらに良いと思いました。

 峰茂樹の堂守。ちょっと立派すぎる感じ。堂々として、自分の歌うべきところはしっかり歌わせていただきます、という感じの歌唱でした。確かに立派な歌唱。でも私はそこが気に入らない。堂守という役はトスカの第一幕では、いろいろな部分のつなぎ役で、自分だけ歌えればそれでOKという役ではないと思います。もう少し周りを見ながら微調整しながら歌えば、もっと舞台が締まったのでは、と思いました。

 以上、いろいろと気になる部分はあるのですが、全体としては見ごたえ・聴きごたえのある舞台でした。その功績は指揮者とオーケストラに差し上げましょう。ルスティオーニという指揮者、メリハリのしっかりした劇的な音楽づくりをして見せました。デュナーミクの広がりがあるし、テンポも歌手に合わせて微妙に変えている感じ。音作りに引き締まった感が常にあって、「トスカ」というオペラの持つドラマ性を上手に作っていたと思います。特にフォルテで鳴らせるときの迫力がパワフルでした。

 惜しむらくは第一幕の後半、「テ・デウム」が始まり、スカルピアのモノローグが出る部分。オーケストラの音量の絞り方がやや足りなかったこと。ここがもっと絞れれば、今井スカルピアのモノローグがもっと浮かび上がって聴けたのではないかという気はします。それを別にすればオーケストラがかなり舞台を助けていました。

 舞台はローマ歌劇場から借りてきたもの。オーソドックスな演出ですが、舞台はシックな美しさを感じさせられるものでよかったです。

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鑑賞日:2017226
入場料:指定席 4104円 1F 1843

主催:文化庁/新国立劇場

制作:文化庁/新国立劇場オペラ研修所

オペラ2幕、字幕付原語(イタリア語)上演
モーツァルト作曲「コジ・ファン・トゥッテ」Cosi fan tutte)
台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ

会場 新国立劇場・中劇場

指 揮 高関 
管弦楽 藝大フィルハーモニア管弦楽団
チェンバロ 河原 忠之
合 唱 東京藝術大学・
演 出 粟國 淳
装 置 横田 あつみ
照 明 稲葉 直人
衣裳コーディネーター    加藤 寿子 
舞台監督 高橋 尚史

出 演

フィオルディリージ 宮地 江奈(18期)
ドラベッラ 小林 紗季子(9期終了)
グリエルモ 大野 浩司(17期)
フェルランド 水野 優(19期)
デスピーナ 竹村 真実(17期)
ドン・アルフォンゾ 氷見 健一郎(18期)

感 想

若さのパワーと課題-新国立研修所公演「コジ・ファン・トゥッテ」を聴く

 新国立劇場オペラ研修所の昨年度からのテーマは「アンサンブル」の充実のなのだそうです。

 オペラ研修所の終了公演は昨年が「フィガロの結婚」で、本年が「コジ・ファン・トゥッテ」だったわけですから、この研修目的から言えばうなずける選択です。ことに「コジ・ファン・トゥッテ」は、二重唱、三重唱、四重唱、五重唱、六重唱と登場人物の数だけアンサンブルのパターンがあり、重唱の中も男性同士も、女性同士も、男女混合の組み合わせがあるわけですから、研修の終了公演としてうってつけの演目といえるでしょう。

 そして、アンサンブルは総じて立派であり、皆さんよく研修して臨んだな、というのが分かる演奏でした。もちろんこのアンサンブルがもっと自由闊達になり、合わせています感が少なくなっていけば更に素晴らしいわけですが、それは今後の課題ということでよいでしょう。

 アンサンブルの稽古は自分一人ではできないわけで、同じカリキュラムで学んでいる仲間であるからこそ深められるという部分が確実にあります。たぶん、研修所から巣立っていったメンバーが今回の練習ほどアンサンブルに時間をかけられることはもう生涯ないのではないかという気がします。それだからこそのアンサンブルであったと思いますし、一方で、そうであればこその、さらに一段高みを目指したアンサンブルを聴きたかったな、という気持ちがないわけではありません。

 そうは申し上げても歌手たちのアンサンブルにかける意気込みは伝わってきました。それに比較して、今一つだったのはオーケストラです。今回ピットに入ったのは、藝大フィルハーモニアですけれども、三日目というせいもあるのか、演奏がだらけていました。凡ミスも多かったですし、アンサンブルの揃い方だって、出演者と比較するとかなり散漫な印象。指揮の高関健はしっかり振っていて、歌手たちのコントロールも的確にされていましたが、オーケストラは「笛吹けども踊らず」みたいな部分があって、残念でした。

 ソリストで一番魅力的だったのは、ドン・アルフォンゾ役の氷見健一郎でした。深みのあるバス声なのですが、響きが美しく美声です。声帯が柔らかいんだろうな、と思わせるような声。バスは役としては威厳のある役から悪役、道化役までいろいろな役柄があるから、必ずしも今回の氷見のような声が一番良いかどうかはよくわかりませんが、ドン・アルフォンゾという役にはまさにぴったりと申し上げてよいと思いました。歌いっぷりも丁寧で、ほれぼれしました。

 フィオルディリージとドラベッラは、宮地江奈のフィオルディリージのほうが魅力的でした。小林紗季子の声質とか歌い方はドラベッラとしてはちょっと崩れているのではないかという印象。彼女はオペラ研修所の卒業公演の「カルメル会修道女の対話」で素晴らしいクロワッシー修道院長を演じたことで記憶に残っているのですが、ロマン派や近代物のほうが似合っている方なのかもしれません。宮地江奈のフィオルディリージは丁寧な歌唱でよかったと思います。前半の「巌のように動かず」も後半の長大なロンドもそつなくまとめました。ただし、一つ申し上げるなら、悪くないけどものすごく魅力的だったかと言われれば、考え込まなければいけない感じです。そこが物足りなかったといえば言えるかもしれません。

 デスピーナの竹村真実。歌は悪くないのだけれども、デスピーナというスーブレット役としてみたときは、物足りない感じです。もっとコミカルに大げさに演じてもよいのではないかという気がいたしました。

 フェルランドとグリエルモですが、モーツァルトの様式美を相対的に感じさせられたのは水野優のフェルランドでした。大野浩司のグリエルモはよいものはよいのだけれどももっと丁寧に歌ったほうがよいのではないのかな、と思うところが何か所かありました。

 粟国淳の演出ですが、こちらは好調です。特別奇をてらったものは何もありませんがロココ的雰囲気があって、かつこのオペラの対称性をしっかり意識した舞台になっていました。

 結構辛口に書きましたが、悪い舞台では決してありませんでした。新国の研修所のメンバーは基本的な能力が高いと思います。オペラ歌手としての引き出しはまだ少ないのでしょうが、素材がよく十分な教育も受けているわけですから、あと何年後かは日本のオペラ界を背負っているはずです。筈ではなく、事実そうなってほしいなあと思う次第です。

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鑑賞日:201735
入場料:D席 3000円 2F 375

主催:公益財団法人日本オペラ振興会/公益財団法人日本演奏連盟

文化庁文化芸術振興費補助金 舞台芸術創造活動活性化事業

2017都民芸術フェスティバル参加公演

日本オペラ協会公演

日本オペラシリーズ No.77

原 嘉壽子 追悼

オペラ2幕、字幕付原語(日本語)上演
原 嘉壽子作曲「よさこい節」
台本:原 嘉壽子
原作:土佐 文雄

会場 新国立劇場・中劇場

指 揮 田中 祐子
管弦楽 東京ニューシティ管弦楽団
合 唱 日本オペラ協会合唱団
合唱指揮 河原 哲也
児童合唱 多摩ファミリーシンガーズ
演 出 岩田 達宗
美 術 二村 周作
照 明 大島 祐夫
衣 裳    半田 悦子
振 付 出雲 蓉
舞台監督 菅原 多敢弘
総監督補 郡 愛子
総監督 大賀 寛

出 演

純信 清水 良一
お馬 沢崎 恵美
慶全 小山 陽二郎
お徳 木村 圭子
久万 西野 郁子
弥七 市川 和彦
小林 悦子
中川 悠子
太田 祐子
柳仙 川久保 博史
歌京 別府 真也
行基上人 豊島 雄一

感 想

25年ぶりの再演-日本オペラ協会公演「よさこい節」を聴く

 日本のオペラ作曲家で代表的な方といえば、團伊玖磨や清水脩、林光、三木稔と何人も挙げられますが、女流といえばまず原嘉壽子(1935-2014)が挙げられます。2014年79歳で亡くなりましたが、生涯に作曲したオペラは19作。かなり多作でありますが、再演されている例はあまり多くはなく、聴けるオペラは何でも聴く方針のどくたーTにしてもかつて聴いたことがあるのは、「シャーロック・ホームズの事件簿-告白-」ただ一作です。

 日本オペラ協会で彼女の代表作の一つである「よさこい節」が再演されると聞いて、勇んで聴いてまいりました。もちろん初聴です。

 よさこい節といえば、「土佐の高知のはりまや橋で坊さんかんざし買うを見た、よさこい、よさこい」という歌詞が有名ですが、この「よさこい節」は正調の「よさこい節」の替え歌だそうです。この「坊さん」とは、四国八十八箇所の第三十一番札所、竹林寺の僧を指しています。 江戸時代末期(安政)の頃、この寺には、鋳掛屋の娘・お馬(当時16歳)が、僧たちの洗濯物を届けに出入りしていた。寺の僧たちの中には、仏に仕える身でありながら、若くて美しいお馬に心を奪われてしまう者もあらわれる訳です。 その「お馬に心を奪われた僧」というのが、『よさこい節』でも歌われた「坊さん」であり、はりまや橋で髪飾り(かんざし)を買ったのは、美しい娘・お馬の気を引くため、ということですね。

 かんざしを買った寺の僧とは誰なのか、それについては実はよくわかっていないらしいのですが、一番単純なのは、竹林寺の住職であった純信がかんざしを買い、それが町中の噂になってしまったため、愛し合っ純信とお馬が駆け落ちしたというヴァージョンですね。しかし、高知県在住の作家・土佐文雄は、異説であったお馬に恋い焦がれていた若き修行僧・慶全がかんざしを買ってお馬に贈ったけれども、拒否されて慶全が純信を逆恨み(嫉妬)して「純信が若い娘にかんざしを買っていた」と噂を広め、純信を立場的に追い詰めたというのを小説にしました。

 三角関係こそオペラの華ですから、オペラ作曲家原嘉壽子も当然そちらの話に乗ってこのオペラを作曲したようです。

 音楽的には、基本モチーフがよさこい節ですし、内容もオペラの正道と申し上げてもよい三角関係が引き起こす悲劇ですから、聴いていてわかりやすいですし、聴きやすい作品ではありました。台本に関していえばかなり下世話。噂話の内容など、品がないと申し上げてよいほど。でもそのほうが、真実が見える部分があるのでしょうね。原嘉壽子はそれが分かっていたということなのでしょうね。

 演奏の良し悪しはよく分からないのですが、まず感心したのは田中祐子の指揮ぶりです。かなり身を入れた指揮で、特にダイナミックな表現や、劇的な表情での身振りや大きく手を振る指揮ぶりは、音楽を盛り上げるのに有用だったと思います。気持ちのこもった指揮は聴いていて気持ちがよいと思いました。

 歌手陣も総じて良かったと思います。

 まず最初に褒めるべきはヒロイン馬を演じた沢崎恵美でしょう。沢崎は日本オペラのスペシャリスト的イメージがある方ですが、今回も聴いていてすごいな、と思いました。何を言っても、日本語が分かりやすい。今回は字幕付きの上演だったわけですが、彼女の歌詞は、字幕を見なくてもほとんど理解可能なレベルで、まず、そこがすごい。さらに申し上げれば、所作が日本娘っぽく、声も演技も引き込まれるような雰囲気がありました。更に馬という役は、強い女として原は描きました。その強さの表現も納得いくものでした。

 対する慶全を歌った小山陽二郎も素敵でした。慶全は若き修行僧で、煩悩だらけの男なわけですが、小山はもっている軽い声を駆使して、軽薄な慶全像を構築して見せました。第一幕前半のバカな雰囲気の出し方も納得いくものでしたし、寺の仏像を盗んで質に入れ、かんざしを準備するところの悪的な表情も見事だったと思います。このオペラの魅力の一つは、第二幕冒頭の慶全のモノローグだと思いますが、小狡い悪役のモノローグとしては聴きものであると思いました。

 清水良一の純信もよかったと思います。三枚目や悪役が多いバリトンに原はヒーロー役を与えました。清水の純信は最初の立派な住職の雰囲気と、お馬と恋仲になった後も激情に流されない大人の雰囲気を見せて見事だったと思います。

 脇役陣では、純信・お馬の噂話を広め、非難するお徳を演じた木村圭子に存在感があり、また、よさこい節のソロを歌う弥七役の市川和彦が見事だったと思います。

 演出は岩田達宗。岩田は結構凝った演出をして外すことも多いのですが、今回のよさこい節はよかったと思います。それぞれの役柄に役柄に見合った演技を指示したようで、ストーリーを理解するのを助けるような演出だったと思います。行ってよかった公演でした。

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鑑賞日:2017年3月17日

入場料:A席 1800円 1F 22列8番

主催:文化庁/昭和音楽大学
後援:公益社団法人日本演奏連盟

文化庁委託事業「平成28年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
芸術団体との連携を通じたオペラ人材育成~新進歌手及び地域の歌手の歌唱機会創出~

披露演奏会
~オペラアリア・コンサート~

会場:テアトロ・ジーリオ・ショウワ

出演

指揮 大勝 秀也
管弦楽 テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
ソプラノ 永井 陽奈
ソプラノ 高畑 和世
ソプラノ 山邊 聖美
ソプラノ 三好 真緒
ソプラノ 牧野 元美
ソプラノ 福士 紗季
ソプラノ 迫田 美帆
ソプラノ 小山 瑠美子
ソプラノ 佐竹 しのぶ 
ソプラノ 熊谷 綾乃
テノール 山下 玲皇奈
バリトン 市川 宥一郎
メゾソプラノ(賛助出演) 丹呉 由利子
テノール(賛助出演) 角田 和弘
テノール(賛助出演) 小山 陽二郎

 プログラム

番号 作曲家 作品名 曲名 歌手
1 モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」 序曲
2 モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」 伯爵夫人のアリア「愛の神よ、安らぎをお与えください」 永井 陽奈
3 リッチ兄弟 歌劇「クリスピーノと代母」 アネッタのアリア「こんな時に喜びはない」 高畑 和世
4 プッチーニ 歌劇「ラ・ボエーム」 ムゼッタのアリア「私が街を歩くと」 山邊 聖美
5 モーツァルト 歌劇「イドメネオ」 イリアのアリア「たとえ父を失い」 三好 真緒
6 ヘンデル 歌劇「エジプトのジュリアス・シーザー」 クレオパトラのアリア「つらい運命に涙あふれ」 牧野 元美
7 グノー 歌劇ロメオとジュリエット」 ジュリエッタのアリア「私は夢に生きたい」 福士 紗季
8 モーツァルト 歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」 フィオルディリージのアリア「岩のように動かず」 迫田 美帆
9 ドニゼッティ 歌劇「ランメルモールのルチア」 エンリーコのアリア「残酷で不幸をもたらす怒りを」 市川 宥一郎
10 プッチーニ 歌劇「ラ・ボエーム」 ミミ、ロドルフォ、ムゼッタ、マルチェッロの四重唱「さようなら、愛の甘い目覚めよ」 迫田美帆/山邊聖美/角田和弘/市川宥一郎
休憩
11 オッフェンバック 歌劇「ホフマン物語」 ジュリエッタとニクラウスの二重唱「美しい夜、おお恋の夜(舟歌)」 小山 瑠美子/丹呉 由利子
12 リヒャルト・シュトラウス 歌劇「ナクソス島のアリアドネ」 ツェルビネッタのアリア「偉大なる王女様」 佐竹 しのぶ
13 グノー 歌劇「ファウスト」 マルグリートのアリア「ああ、私が微笑んでいるのが見える(宝石の歌)」 小山 瑠美子
14 ヴェルディ 歌劇「椿姫」 アルフレードのアリア「燃える心を」 山下 玲皇奈
15 ヴェルディ 歌劇「リゴレット」 マントヴァ公、マッダレーナ、ジルダ、リゴレットによる四重唱「美しい恋の乙女よ」 福士紗季/丹呉由利子/小山陽二郎/坂本伸司
16 ガーシュイン ミュージカル「キャンディード」 クネゴンデのアリア「着飾って煌びやかに」 熊谷 綾乃
17 ヴェルディ 歌劇「椿姫」 アルフレードとヴィオレッタの二重唱「友よ、いざ飲み明かそうう(乾杯の歌)」 佐竹 しのぶ/小山 陽二郎
アンコール ヨハン・シュトラウス オペレッタ「こうもり」 「ぶどう酒の燃える流れに」 全員

感 想

チャンスを生かせるのか-文化庁/昭和音楽大学「オペラアリア・コンサート」を聴く

 今回のこのコンサートは、若手歌手の育成を目的として昭和音楽大学が獲得した補助金によって助成されるものです。「芸術団体との連携を通じたオペラ人材育成~新進歌手及び地域の歌手の歌唱機会創出~」。このタイトル通り「新進歌手及び地域の歌手に歌唱機会を創出したのが今回のコンサートです。もちろん誰でも出演されるわけではなく、世界的なソプラノであるマリエッラ・デヴィーアを招聘し、そのマスタークラスを受講し、公開オーディションで選ばれた8名と、首都圏以外に拠点を置いて活動し、その地域でしか活躍の機会を与えられていない若手歌手のうち、審査に合格した4名が出演しました。

 もちろん、演奏の機会を与えることはとても大事です。とりわけ、今回のようにフルオーケストラをバックにオペラアリアを歌える機会は若い歌手にとってまさに得難い機会ですので、このような舞台を用意した文化庁・昭和音楽大学を称賛しなくてはいけません。

 しかし、そのせっかくの機会をうまく利用できていたか、ということになると、利用できていた人もいるがそうでもない方もそれなりにいた、というのが本当のところでしょう。大きな舞台でオーケストラをバックに歌うというのは、なかなか大変なことのようです。

 まず感じたのは緊張して声が委縮していた方が多かったなということです。女声は特に総じて丁寧に歌っていて、歌に破たんが出てこないのですが、声が前に飛んでこなかった方が何人かおられました。ハートが弱いのは舞台に出る方としてある意味致命的です。また、譜面をなぞっては歌っているのでしょうが、その上の役を身体に入れる、とか、表現をどうするのか、というところになると、何を考えて歌われているのかはっきりしないな、という方もいらっしゃいました。

 逆に小さな破たんがあったとしても、生き生きと歌われれば聴き手も楽しめて、この歌手は見どころがあるな、ということになると思います。今回の舞台は、今回選ばれて登場した若手歌手にとってまさにチャンスだったと思います。そのチャンスを生かすためには、もっと伸び伸びと歌われる必要があるのではないかと感じたところです。

 そんな中でどくたーTが注目したのはデヴィーアオーディション組では牧野元美と迫田美帆、地域歌手では佐竹しのぶと熊谷綾乃です。牧野はクレオパトラのアリアをしっかりとした響きで技巧的にも素晴らしく聴かせてくれました。迫田はフィオルディリージの大げさなアリアを表情豊かに歌って見事でした。佐竹と熊谷はどちらも関西二期会のソプラノ。ツェルビネッタのアリアもクネコンデのナンバーも、若くないと様にならない曲ですが、技術的な裏付けがないと歌えない曲でもあります。その意味でこの二人は少なくともこの曲に関しては、しっかりさらっているようで、自信をもって的確に歌いこなしました。素晴らしかったと思います。 

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