どくたーTのオペラベスト3 2004

第1位 9月19日  藤原歌劇団公演
ビゼー作曲「カルメン」
字幕付原語上演  会場 東京文化会館大ホール

第2位 7月19日  東京室内歌劇場公演
リヒャルト・シュトラウス作曲「インテルメッツォ」
字幕付原語上演 会場 新国立劇場中ホール

第3位 3月26日  新国立劇場公演
ワーグナー作曲「神々の黄昏」
字幕付原語上演  会場 新国立劇場・オペラ劇場

ベスト歌手
藤村実穂子(メゾ・ソプラノ)

優秀賞 
ヨハン・シュトラウス作曲「こうもり」(新国立劇場オペラ研修所公演、2/23)
ロッシーニ作曲「アルジェのイタリア女」
(藤原歌劇団公演、3/11)
ドニゼッティ作曲「ランメルモールのルチア」
(ラ・ヴォーチェ公演、8/7)
モーツァルト作曲「フィガロの結婚」(国立音楽大学大学院オペラ公演、10/10)
モーツァルト作曲「イドメネオ」北とぴあ国際音楽祭公演、11/12)
ヤナーチェク作曲「イェヌーファ」東京二期会オペラ劇場公演、12/3)
(優秀賞は上演順)

特別賞
シューベルト作曲「四年間の哨兵勤務」/「サラマンカの友人達」東京藝術大学学生オペラ実験工房公演、9/28)

選考理由

 2003年は、33回オペラを見に行き、37本のオペラを鑑賞いたしました(演奏会形式を含む)。この回数は、プロの評論家やマニアックなオペラファンの足下にも及ばないとは思いますが、まあまあよく聴いているのではないかと思います。とりあえず、新国立劇場から市民オペラや学生オペラまで幅広く聴いておりますし。全体的に感じることは、演奏の質とお金のかけ方や歌手のネームバリューは全然比例しないな、ということです。新国立劇場の公演が期待ほどは面白くなかった、というのがこのような感想を持つ原因です。一方で、それ以外の公演に面白いものが多かったとも言えます。

 本年全体の特徴は、リヒャルト・シュトラウスの作品の上演が多かったことがその一つとして挙げられます。2月の東京二期会オペラ劇場による「エジプトのヘレナ」に始まり、新国立劇場「サロメ」と「エレクトラ」、東京オペラ・プロデュースによる「カプリッチョ」、そして、東京室内歌劇場による「インテルメッツォ」と五作品が上演され、私も鑑賞致しました。これらは、どれも魅力的な公演でしたが、二つの日本初演作品、即ち「エジプトのヘレナ」と「インテルメッツォ」、そして、24年ぶりの再演となった「カプリッチョ」が特に魅力的だったのではないでしょうか。

 話題と言う意味では、賛否両論の演出で大いに盛りあがった東京二期会オペラ劇場の「ドン・ジョヴァンニ」がありました。私は、根が保守的なせいか、あの宮本亜門の演出をあまり買わない人なのですが、それ以上に、演出のみに議論が集中して、音楽の貧しさを論じた人が少なかったことが残念でした。

 新国立劇場は、ある一定の水準は確保しているとは思いますが、図抜けた上演が例年になく少なかった印象です。上には、特に印象に残った9作品を上げたのですが、その中で、新国立劇場主催公演が、「神々の黄昏」一つだけだったというのは、一寸寂しく感じます。

 優秀賞6公演は、それぞれに異なった魅力のある上演でした。

 新国立劇場オペラ研修所公演「こうもり」は、若手歌手の溌剌とした歌いっぷりを評価したものです。音楽全体としてみれば、それほどよい演奏ではなかったのかも知れませんが、昨年よりも明かに成長した研修生の歌いっぷりを見ることが出来て、私はとても幸せでした。

 藤原歌劇団「アルジェのイタリア女」は、かつての名イザベッラ・アグネス・バルツァの力が落ちていたことが残念でしたが、ポンネルの名舞台を見ることが出来ましたし、レガッツォ、ロベルト・デ・カンディア、斉田正子、牛坂洋美の優れた歌と、そして何よりもロッシーニの天才を聴けたことは大きな喜びです。

 夏のラ・ヴォーチェ公演「ルチア」は、新国立劇場のルチアの舞台と演出を借用しながらも、ランザーニの手堅い指揮と、イタリアオペラらしい味わいが魅力的でした。舞台上の息遣いとオーケストラの息遣いとがシンクロして、音楽全体が盛りあがってく様子を聴くことは、オペラを聴く醍醐味です。

 国立音大の大学院オペラは、児玉宏の音楽作りの魅力による評価です。要するに学生オペラではありますが、指揮者の音楽的コントロールが優れているために、凡百のフィガロとは一線を画した出来となりました。少なくとも、私がこの3年間で聴いた全てのフィガロの中で、一番気に行った演奏です。

 「イドメネオ」これまた優れた演奏でした。作品としては結構退屈な「イドメネオ」の音楽自体の持つ詰まらなさを上回る演奏の面白さを堪能させてもらいました。寺神戸亮は、柔らかさとドラマティックな表現を両立させようと考えて指揮していたようで、聴き手の知的好奇心を大いに刺激する演奏で関心致しました。波多野睦美の歌も良かったです。

 ヤナーチェク「イェヌーファ」は、いろいろと問題点は見えましたが、阪哲朗のきびきびした彫りの深い音楽作りと、ウィリー・デッカーの演出、そして、渡辺美佐子の歌唱は極めて優れているもので感心いたしました。津山恵の頑張りも良かったです。歌手は軽量級だったのですが、全体のまとまりがよく、流れも自然で、名作の魅力を上手に抽出したのではないかと思います。

 ベスト3は、優秀賞で選択した公演よりも更に音楽的魅力があった上演です。まず第3位の「神々の黄昏」はある意味では本年ナンバーワンの上演でしょう。指揮:準・メルクル、演奏:NHK交響楽団という組み合せは正に最強で、そこにクリスチャン・フランツ、ガブリエーレ・シュナイトといった本物のワーグナー歌手が歌う訳ですから、それは当然のことながら素晴らしい。また、準・メルクル指揮、キース・ウォーナー演出で「指輪」を統一的に上演したという点も高く評価しております。にもかかわらず一位にしなかったのは、私が聴いたのが初日でまだ堅さが完全に抜けていなかったこと、それに昨年は「ジークフリート」を一位にしたことから、他に良い演奏があればそちらを優先したいという考えから、3位にいたしました。

 第2位の「インテルメッツォ」は、今年のリヒャルト・シュトラウスラッシュの中で一番優れた演奏だったことから選びました。若杉弘の指揮がよく、又、釜洞祐子の歌が非常に優れておりました。シュトラウスの魅力を十二分に引き出した演奏と言うべきであり、私は大いに感心いたしました。

 第一位は藤原歌劇団の「カルメン」。これは、チョン・ミョンフンの指揮の魅力が第一です。前奏曲の疾走から終幕の幕切れまで、間然とするところがない。これは大したものです。またピットに入ったフランス国立放送フィルの演奏も流石で、作品の持つエスプリを上手に表現していたように思います。タイトル役の藤村実穂子は、最初、淡白なカルメンのように表現していたと思いますが、幕が進むにつれてどんどん迫力が増して行き、魅力的でした。ホセ役のチョン・イグンも良かったです。

 特別賞は、学生ながら、シューベルトの日本ではほとんど知られていないオペラを紹介してくれた東京藝術大学学生オペラ実験工房の公演を選びます。こういった地味な努力はとても重要です。

 ベスト歌手は、釜洞祐子か藤村実穂子、佐野成宏の何れかでしょう。その中で、知的アプローチが冴えていた「カルメン」と「神々の黄昏」のヴァルトラウテの優れた歌唱により、藤村実穂子を選びます。

 2004年のオペラ公演におけるT的ベストは以上のとおりです。尚、例年の如く本選考に賞品はありません。選ばれた方には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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