どくたーTのオペラベスト3 2008

第1位 3月8日  藤原歌劇団公演
ロッシーニ作曲「どろぼうかささぎ」
字幕付原語上演  会場 東京文化会館大ホール

第2位 11月9日  日生劇場公演
モーツァルト作曲「魔笛」
字幕付歌唱原語、台詞日本語上演 会場 日生劇場

第3位 4月27日 南條年章オペラ研究室公演
ドニゼッティ作曲「ルクレツィア・ボルジア」
演奏会形式  会場 津田ホール

ベスト歌手
高橋 薫子(ソプラノ)

優秀賞 
R・シュトラウス作曲「ナクソス島のアリアドネ」(新国立劇場地域招聘公演/関西二期会、1/27)
ツィンマーマン作曲「軍人たち」
「(新国立劇場公演、5/7)
プッチーニ作曲「三部作」
(歌劇「三部作」実行委員会公演、8/10)
チャイコフスキー作曲「エフゲニ・オネーギン」東京二期会オペラ劇場公演、9/12)
モーツァルト作曲「コジ・ファン・トゥッテ」(国立音楽大学大学院オペラ公演、10/19)
ハイドン作曲「騎士オルランド」(北とぴあ国際音楽祭2008公演、10/23)
ストラヴィンスキー作曲「エディプス王」(NHK交響楽団第1634回定期演奏会、12/6)
(優秀賞は上演順)

選考理由

 2008年は、38回オペラを見に出かけ、41本のオペラを鑑賞いたしました(演奏会形式を含む)。

 本年も昨年と同様、バラエティに富んだオペラ上演があった、という印象が強い1年です。私にとって、41本中13本は、舞台上演を見るのが初めての作品でした。少しずつ、これまで聴けなかった作品を耳にしていく、これは大いなる喜びです。本年の私の鑑賞傾向もバラエティに富んだものとなりました。新国立劇場、東京二期会、藤原歌劇団を中心に東京オペラプロデュースやその他の中小団体、大学オペラ、良く分らないものまで結構広い範囲に及びました。私個人としては随分いろいろなところに出向いたな、というのが偽らざる印象です。

 そのせいか、全体としてはぼやけた印象の強い一年だったのですが、個別に見てみれば、決して悪い一年ではありませんでした。夫々の場面で、なかなか楽しめる上演があったと思います。その中で思うのは新国立劇場の不調です。若杉監督二年目の本年は、プログラムの構成には若杉色が出たと思いますが、上演そのものに感心できるものは余り多くなかったのは事実です。ノヴォラツスキー監督は随分批判を受けましたが、3年目はかなり良い舞台を作っていたと思います。若杉さんは体調も良くないようですが、来年に期待すべきなのでしょうか?

 今年もうひとつ痛感したのは、よい指揮者を招聘してある程度自由に指揮させることの重要さです。どんなに歌手をそろえても、指揮者の能力が低く、あるいは歌手に遠慮するとき音楽がつまらなくなります。それに対して、指揮者が確固たる見通しを持ち、ぐんぐん引っ張っていくとき、その演奏は聴き応えのあるものになります。そこも含めて、新国立劇場は人選を考えてほしいところです。

 さて、選択した優秀公演を簡単に総括します。

 新国立劇場地域招聘公演は、指揮者の音楽作りの魅力で選びました。歌手夫々の力量は、6月に聴いた東京二期会公演のほうが明らかに上でしたが、トータルのまとまりとしては、こちらが上で、飯守泰次郎の目の届いたコントロールの下、しっかりとしていました。

 余りぱっとしなかった新国立劇場でしたが、その中でやはり評価すべきなのは、「軍人たち」の日本初演でしょう。こういう現代オペラは私の本来の感性では十分楽しめないところがあるのですが、それでも立派な演奏であったことは間違いないことですし、新国立劇場こそこのような新しいチャレンジをする意義があると思いますので、これを評価したいと思います。なお、現代オペラという意味では、「ムツェンスク郡のマクベス夫人」の頑張った上演があり、菊池美奈の熱演が印象に残っているのですが、全体としては優秀賞のレベルではないということで割愛します。

 プッチーニの三部作一挙公演も聴き応えのある演奏でした。特に「外套」と「ジャンニ・スキッキ」。とりわけジャンニ・スキッキはオールスター・キャストで楽しめたと思います。9月に入ると二期会の「エフゲニ・オネーギン」がありました。このエフゲニ・オネーギンは、奇抜な演出で定評のあるコンヴィチュニーの演出で話題になったわけですが、そういう表面的な奇抜さよりも、タチアーナにスポットライトが当たりがちのこのオペラの主人公がエフゲニ・オネーギンであることを明確に示したところに意義があると考えています。

 学生オペラでは昨年に引き続き国立音大大学院オペラを取り上げます。この上演こそ指揮者を中心としたベクトルにぶれがない上演の典型で、歌手の力量が少し足りなくても、オーケストラの技術が若干未熟でも音楽としては上級のものになりうることを示しました。私はこのようなひたむきさこそ、音を楽しむ「音楽」の根本だろうと思っています。

 ハイドンの「騎士オルランド」は作品としては必ずしも面白いとは思わなかったのですが、寺神戸亮のコントロールの下、日本、外国の混成キャストのチームワークのよさで、素敵な上演を作り上げたことを評価します。

 「エディプス王」も歌手よりも指揮者の音楽統率力の素晴らしさを称えたいと思います。流石にデュトワです。

 ベスト3は、優秀作品にも増して、私の琴線に触れたものです。

 第3位は、南條年章オペラ研究室の「ルクレツィア・ボルジア」にいたします。これは、ピアノ伴奏の演奏会形式上演で、本来ならばベスト3に入るのは難しいと思います。それにもかかわらず第3位に入れたのは、佐藤亜希子の名唱、それにつきます。若手で、大きなプロダクションの主演の経験のない佐藤ですが、その実力は侮れないものがあります。

 第2位は、日生劇場公演の「魔笛」にします。これは上岡敏之の音楽コントロールのよさと歌手陣のレベルの高い歌唱とチームワークのよさによって、素晴らしい公演になりました。

 今年のベスト1は、藤原歌劇団の3月公演、「どろぼうかささぎ」にさし上げます。日本で聴けることは恐らくないだろうと思っていたロッシーニの隠れた名作が日本のプロダクションで見られたこと、それだけでも素晴らしいことですが、マエストロ・ゼッダの素晴らしい音楽作り、ニネッタを歌った高橋薫子とジャンネットの五郎部俊朗の名唱と高水準の上演でした。尚、日本人キャストの方が、フォルテ・シラクーザの外人コンビよりも良かったことを付記しておきます。

 ベスト歌手は高橋薫子でしょう。上記10作品のうち、「どろぼうかささぎ」ニネッタ、「ジャンニ・スキッキ」ラウレッタ、「騎士オルランド」エウリッラで安定した歌唱を聴かせ、そのほか、12月新国立劇場「ドン・ジョヴァンニ」ゼルリーナも良かったです。本当に活躍した一年でした。

 2008年のオペラ公演におけるT的ベストは以上のとおりです。尚、例年の如く本選考に賞品はありません。選ばれた方・上演には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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