どくたーTのオペラベスト3 2002

第1位 3月29日  新国立劇場
ワーグナー作曲「ワルキューレ」
字幕付原語上演  会場 新国立劇場オペラ劇場

第2位 3月15日  藤原歌劇団公演
ベッリーニ作曲「カプレーティとモンテッキ」
字幕付原語上演、会場 東京文化会館大ホール

第3位 10月28日  日本ロッシーニ協会公演
ロッシーニ作曲「ランスへの旅」
字幕付原語上演  会場 大田区民ホール・アプリコ

ベスト歌手
幸田浩子(ソプラノ)

優秀賞 
ワーグナー作曲「ニュルンベルグのマイスタージンガー」(二期会公演、7/27)
ドニゼッティ作曲「ランメルモールのルチア」
(新国立劇場公演、10/16)
ロッシーニ作曲「セヴィリアの理髪師」
(新国立劇場公演、10/31)

特別賞
ヒギー作曲「デッドマン・ウォーキング」(ニューヨーク・シティオペラ公演、9/21)

選考理由

 2002年は、30回31本のオペラを鑑賞することができました。個人的なことを申し上げれば、仕事でニューヨークに何度か出かけ、メトロポリタン・オペラハウスや、ニューヨーク・シティオペラを鑑賞できたのは大いなる喜びでした。本年もまた、オペラを鑑賞する喜びを与えてくれる公演がたくさんありました。特に本年は2月から4月、そして7月から10月にかけて印象深い公演が多かったと思います。

 私のベスト6は上に挙げた演奏ですが、その他にも素敵な演奏がいくつかありました。まず、2月8日東フィル・オペラコンチェルタンテシリーズの最終公演「ファウスト博士」に指をおります。私はこの作品の良さを結局のところ分らないのですが、沼尻竜典の指揮、東フィルの演奏は、歌手の好演も相俟って、輪郭の明瞭な演奏になっていて印象的でした。

 チョン・ミョンフンが指揮した藤原歌劇団と韓国歌劇団の共同公演「蝶々夫人」も注目すべき演奏でした。チョン・ミョンフンの音楽の作りと、東フィルの対応には瞠目するものがありましたが、いかんせん歌手が弱い。聴き手を納得させるには至らなかった、というのが本当でしょう。

 高橋薫子の2度にわたるプーランクの「声」。特に2度目の演奏は、高橋の研究の跡が窺えて好演でした。ただし、彼女のキャラクターにこの「女」という役が似合うとは、私にはどうしてもおもえないのです。

 新国立劇場の「椿姫」。流石のロストのヴィオレッタでした。新国立劇場の新制作の意気込みが分かる舞台作りでした。

 9月13日、小劇場オペラの「なりゆき泥棒」もなかなかの公演でした。大川繭、橋本恵子、羽渕浩樹等の熱演を評価しましょう。

 12月13日の「ナクソス島のアリアドネ」。児玉宏の見事な統率と、黒田博、白土理香、幸田浩子の好演が光りましたが、一方で成田勝美、岩永圭子の不調で全体としては締まらない公演で終わりました。

 優秀賞3公演は、それぞれに異なった魅力のある上演でした。

 二期会五十周年の記念公演「ニュルンベルグのマイスタージンガー」は、現在の二期会のレベルを明確にした点で高く評価いたします。正味で4時間30分をだれさせないで聴かせる技量は大したものです。ほとんど出ずっぱりで頑張った多田羅迪夫の好演は、最後息切れしたものの、高く評価しなければなりません。大島幾雄のベックメッサー、福井敬のワルターも良かったと思います。

 新国立劇場の新制作「ルチア」は、チンツィア・フォルテの名唱が印象に残りました。歌唱が正確で、技巧も高レベルで楽しめました。共演陣も総じてよく、全体として非常によくまとまった「ルチア」になっておりました。

 新国立劇場の再演「セヴィリアの理髪師」は、歌手の魅力でした。シラクーザの完璧な技巧によるアルマヴィーヴァ伯爵は大したものですし、ディドナートのドスの利いたロジーナも素晴らしいものでした。フィガロ、バルトロ、バジリオも好く、セヴィリアの理髪師の一つの典型を示すような演奏でした。しかしこの演奏の味わいは、私の好みではないのです。それで、ベスト3からは外すことにしました。

 ベスト3は、優秀賞で選択した公演には無い「+アルファ」があった上演です。まず第3位のロッシーニ協会「ランスへの旅」は、相乗効果の魅力と申し上げます。手作りの公演で、粗いところが無かったとは言えないのですが、登場した歌手たちが皆熱心で、お互いの技量をぶつけ合う熱気があり、聴きごたえのある演奏になっておりました。羽渕浩樹、馬場眞二、平尾憲嗣、家田紀子、高橋薫子、五郎部俊朗、今尾滋、三浦克次、羽山晃生などが好く頑張っていたと思います。

 第2位の「カプレーティとモンテッキ」は歌手の魅力です。公演全体としては細かいアラが色々あったとおもうのですが、そういった欠点もデヴィーアとガナッシの歌を聴いてしまえば、何処かに飛んで行ってしまう、そういう歌に魅力を覚える公演でした。ガナッシのロメオは見た目には全く似合っていないのですが、歌を聴けば説得されてしまう。オペラは歌、ということがよく分かる公演でした。

 第1位の「ワルキューレ」は、総合力です。私は演出はあまり感心しないのですが、準メルクルの音楽作りの素晴らしさは、特別評価すべきものです。この「東京リング」の魅力は半分以上、準の音楽作りの魅力だと思います。その上、今回の上演は、ワルキューレのひとりひとりに至るまで、音楽的に高レベルのところでまとまっていました。水準が高いのです。高い水準の中で更に素晴らしい音楽を聴かせてくれた人もいるわけですから、もう何を申し上げるべきでしょう。私はワーグナーの音楽を本質的に楽しめない聴き手なのですが、それでもこのレベルの高さは評価しないわけには行きません。

 特別賞は、ニューヨークシティオペラで聴いた「デッドマン・ウォーキング」に与えます。このベスト3は、サイトの趣旨から日本での上演のみが評価の対象になるので選考外なのですが、私が2002年に聴いた全てのオペラで一番感動したのが、「デッドマン・ウォーキング」でした。ディドナートの歌ったシスターヘレンは実に名唱でした。これを称えるために、「デッドマン・ウォーキング」を特別賞に選定いたします。

 ベスト歌手は藤村実穂子、多田羅迪夫、福井敬、幸田浩子が候補です。藤村はとても素晴らしいメゾで、本年のフリッカの歌唱もいいものだったのですが,昨年のフリッカ、エボリ公女の活躍からすれば、本年の日本での活躍は今一つ、ということで選外。福井の活躍も華々しいのですが、ここ数年の福井の活躍の中で、本年が特別に優れているとはいえないことから選外としました。あとは多田羅迪夫のハンス・ザックスと幸田浩子のツェルビネッタの勝負です。多田羅のザックスは説得力のある優れたものでしたが、幸田のほぼ完璧なツェルビネッタの前には兜を脱いでもらうしかありません。そんな訳で、本年のベスト歌手は、ソプラノの幸田浩子にすることに致しました。

 2002年のオペラシーンにおけるT的ベストは以上のとおりです。尚、本選考に賞品はありません。選ばれた方には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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