どくたーTのオペラベスト3 2016

第1位  12月4日 新国立劇場公演
ロッシーニ作曲「セビリアの理髪師」
日本語字幕付イタリア語上演 会場 新国立劇場オペラパレス

第2位 9月10日 藤原歌劇団公演

ベッリーニ作曲「カプレーティとモンテッキ」
日本語字幕付イタリア語上演 会場 
新国立劇場オペラパレス

第3位  10月2日 新国立劇場公演
ワーグナー作曲「ワルキューレ」
日本語字幕付ドイツ語上演 会場 新国立劇場オペラハウス

ベスト歌手
佐藤美枝子(ソプラノ)

優秀賞 
プッチーニ作曲「トスカ」(藤原歌劇団公演 東京文化会館大ホール、1/30)
モーツァルト作曲「フィガロの結婚」(新国立劇場研修所公演、新国立劇場中劇場、2/21)
ヤナーチェク作曲「イエヌーファ」新国立劇場公演、新国立劇場オペラパレス、2/28)

ワーグナー作曲「さまよえるオランダ人」(神奈川県民ホールオペラシリーズ2016公演、神奈川県民ホール大ホール、3/20)
レハール作曲「メリー・ウィドゥ」杉並区民オペラ公演、杉並公会堂、7/23)
モーツァルト作曲「後宮からの逃走」NISSAY OPERA 2016公演、
日生劇場、11/20)
リヒャルト・シュトラウス作曲「ナクソス島のアリアドネ」東京二期会オペラ劇場公演、日生劇場、11/23)
(優秀賞は上演順)

特別賞
該当なし

選考理由

  2016年に私が観劇したオペラ上演は40回41本、昨年よりは少し多かったですけど、一昨年以前よりは少ないです。例年のごとく、諸事情で行かれなかった公演も多かったのですが、行った公演は、市民オペラ、大学オペラ、東京二期会、藤原歌劇団、新国立劇場の本公演までさまざまな上演を見ております。

 全体的な感想を申し上げれば、2015年も平均的には高水準。けれども、よろしくない公演もすくなからずあり、とにかく、聴かなければ分からない、というのが正直なところ。ベスト10以外では、東京オペラ・プロデュースの「青ひげ」、日本オペラ協会「天守物語」、新国立劇場「サロメ」、「夕鶴」などがよかったと思います。

 新国立劇場の好調は今年も継続しました。ローエングリンだけは切符が入手できず行かなかったのですが、1月「魔笛」に始まって、12月「セビリアの理髪師」に至る9演目、相対的には、「ウェルテル」、「アンドレア・シェニエ」、「ボエーム」が今一つではありましたが、それらを含めて、一定水準以上の公演を続けたこと、大変喜ばしいことだと思います。また、国内団体では、日本オペラ振興会が気を吐きました。私が伺えた4公演はどれも素晴らしいもので、日本のオペラ歌手の水準の高さを示すものになりました。一方で、東京二期会は、「トリスタンとイゾルデ」をオール日本人キャストで上演するという快挙を成し遂げましたが、残念ながら、公演のパフォーマンスとしては数年前の好調とは裏腹で、今一つの出来のものが続きました。その中で、「ナクソス島のアリアドネ」を成功させたのは喜ばしいことです。

 選択した優秀公演を簡単に総括します。

 藤原歌劇団「トスカ」。野田ヒロ子のトスカの渾身の演技・歌唱、そして折江忠道のいやらしいスカルピアの造形が素晴らしく、柴田真郁の音楽づくりもメリハリがはっきりしていて好演でした。
 新国立劇場オペラ研修所「フィガロの結婚」。楷書体の発表会的演奏でしたが、音楽と一体化した舞台という観点で見た時、そう滅多にお目にかかれないぐらい精緻に組み上げられていた舞台でした。アンサンブルがよく鍛えられているのが印象的でした。また粟國淳演出も最高に素晴らしい
 新国立劇場「イエヌーファ」。良く練られた舞台であり、外人勢は、ソロのモノローグ、レシタティーヴォ、重唱、皆それぞれに魅力があり、大変見応え・聴き応えのあるパフォーマンスでした。
 神奈川県民ホール「さまよえるオランダ人」。演出も指揮の方向性もすこぶる納得いくもの。合唱がまた素晴らしく、ソリストも青山貴・オランダ人、福井敬・エリック、橋爪ゆか・ゼンダ、妻屋秀和・ダーラントがみな整っており、名演だと思います。
 杉並区民オペラ「メリー・ウィドウ」。歌手陣、踊り、演出共によく、市民オペラの弱点をうまく隠すことができて、トータルの楽しさとしては出色の舞台。津山恵のハンナが本当にかわいらしい。
 NISSAY OPERA 2016「後宮からの誘拐」。粗削りのところはあるけれども、良くまとまった注目すべき演奏。若手、売り出し中の川瀬賢太郎の音楽性に感心し、決して歌手にとって歌いやすい演出ではなかったにもかかわらず、森谷真理が素晴らしいコンスタンツェを披露。そのほか、大槻孝志、鈴木准、志村文彦の男声陣が聴かせました。
 東京二期会「ナクソス島のアリアドネ」。カロリーネ・グルーバーの演出が斬新で興味がひかれる。東京交響楽団の室内楽的響きが素晴らしく、歌手では、前半の白土理香・作曲家、小森輝彦・音楽教師、後半では、林正子・アリアドネ、片寄純也・バッカスが見事。そのほか、多田羅迪夫の幹事長に存在感がありましたし、若手男声陣による道化の歌もよかったです。

 演奏会形式で素晴らしい演奏を紹介する特別賞は、本年はなしでいいでしょう。

 さて、どくたーTの選ぶ今年のベスト3ですが、いろいろと迷うところではありますが、第3位は新国立劇場「ワルキューレ」にします。昨年の「ラインの黄金」同様、フィンランド国立歌劇場からレンタルされたゲッツ・フリードリヒの舞台は、具象性と抽象性が良く溶け合った美しい舞台。飯守泰次郎の指揮が非常にダイナミックかつ推進力のある指揮で、澱みがなく音楽が霞まないところが素晴らしい。東京フィルハーモニー交響楽団も、澄明感のある演奏で良かったです。歌手陣は外人勢が素晴らしく、ジークムントを歌ったステファン・グールド、フンディングを歌ったペーゼンドルファー、ジークリンデのジョセフィーネ・ウェーバーが特によく、とりわけ、グールドの歌には圧倒されました。神奈川での「さまよえるオランダ人」とどちらを選ぶべきか迷ったのですが、新国立劇場の話題の舞台での好演なので、こちらを採ることにします。

 第二位は藤原歌劇団の「カプ・モン」。本年の国内団体のパフォーマンスではこれが最高だったと思います。オペラ研修所の「フィガロ」、神奈川の「オランダ人」、二期会の「ナクソス島」とどれも素晴らしかったのですが、トータルでのまとまりとレベルはこの公演に尽きるのかな、と思います。高橋薫子と向野由美子の二重唱が妖しいまでに美しく、男声陣もみな立派。オーケストラは必ずしも最高ではなかったのですが、ベルカント・オペラ好きとしては、これぐらいやられると、やっぱり選びたくなってしまいます。ということで、偏見的要素が入った二位。

 第一位は新国立劇場セビリアの理髪師」です。オーケストラが序曲で凡ミスをやって、どうなることかと思ったのですが、それ以外は本当に立派。男声三人がよく、特に売り出し中のロッシーニテノール・ミロノフの超絶技巧を聴けたのは幸せでした。ほかに、イェニスのフィガロ、ディ・パスクアーレのバルトロもロッシーニらしさを見事に表現していました。何度も再演されている舞台ですが、それが全体的にこなれているものになり、それが見ていての安心感につながったところがあります。話題の舞台ではなかったと思うのですが、自分としては今年一番聴けて良かった舞台です。

 ベスト歌手ですが、全体的な活躍をしているという意味では妻屋秀和でしょう。今年はザラストロ、ダーラント、バジリオなどが印象的でしたし、「セミラーミデ」におけるアッスールも見事だったと思います。本当にバス役ではなくてはならない存在です。しかし、彼は、一昨年にベスト歌手として選んでしまっているので、彼を除いて考えると、トスカ・野田ヒロ子、オランダ人・青山貴、ハンナ・津山恵、コンスタンツェ・森谷真理、プリマドンナ/アリアドネ・林正子、ロメオ・向野由美子、などが候補でしょうか。皆さん素敵だったのですが、二公演以上素晴らしい演奏を聴けた、という方がこの中にはいらっしゃらない。いろいろと考えてみると、重要な方を忘れていました。佐藤美枝子です。彼女は、1月の「魔笛」夜の女王で、立派な夜の女王を歌ってくださったのと、12月オペラ彩「ボエーム」で素晴らしいミミを聴かせてくださいました。ひとりだけ選ぶとすれば佐藤美枝子でよいと思います。

 2016年のオペラ公演におけるどくたーT的ベストは以上のとおりです。尚、例年の如く本選考に賞品はありません。選ばれた方・上演には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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