オペラに行って参りました-2016年(その2)

目次

指揮者の勝利 2016年3月20日  神奈川県民ホールオペラシリーズ2016「さまよえるオランダ人」を聴く 
今一つ乗れない 2016年4月9日 新国立劇場「ウェルテル」を聴く
怒りの表現について思う  2016年4月10日  府中シティ・ミュージック・ソサエティ5周年記念公演「椿姫」を聴く 
熱い音楽、暑苦しい音楽 2016年4月17日 新国立劇場「アンドレア・シェニエ」を聴く
十八番  2016年4月23日  藤原歌劇団「愛の妙薬」を聴く 
スカルピア! 2016年4月30日 日本橋劇場「トスカ」を聴く
25年続けるということ  2016年5月1日  心の歌・愛の歌 オペラ「電話または三人の恋」&コンサートを聴く 
音楽的な不満はあるけれども  2016年5月14日 M&Yカンパニー 魅惑のオペラシリーズvol.5「こうもり」を聴く
パワフル  2016年5月21日 野田ヒロ子ソプラノリサイタルを聴く
声の迫力と質感  2016年5月29日 BOKオペラカンパニー第2回公演「カヴァレリア・ルスティカーナ」/「パリアッチ」を聴く

オペラに行って参りました。 過去の記録へのリンク

2016年  その1  その2   その3  その4  その5  どくたーTのオペラベスト3 2016年 
2015年  その1  その2   その3  その4  その5  どくたーTのオペラベスト3 2015年 
2014年  その1  その2   その3  その4  その5  どくたーTのオペラベスト3 2014年 
2013年  その1  その2   その3  その4  その5  どくたーTのオペラベスト3 2013年 
2012年  その1  その2  その3  その4  その5  どくたーTのオペラベスト3 2012年 
2011年  その1  その2  その3  その4  その5  どくたーTのオペラベスト3 2011年 
2010年  その1  その2  その3  その4  その5  どくたーTのオペラベスト3 2010年 
2009年  その1  その2  その3  その4    どくたーTのオペラベスト3 2009年 
2008年  その1  その2  その3  その4    どくたーTのオペラベスト3 2008年 
2007年  その1  その2  その3      どくたーTのオペラベスト3 2007年 
2006年  その1  その2  その3      どくたーTのオペラベスト3 2006年 
2005年  その1  その2  その3      どくたーTのオペラベスト3 2005年 
2004年  その1  その2  その3      どくたーTのオペラベスト3 2004年 
2003年  その1  その2  その3      どくたーTのオペラベスト3 2003年 
2002年  その1  その2  その3      どくたーTのオペラベスト3 2002年 
2001年  前半  後半        どくたーTのオペラベスト3 2001年 
2000年            どくたーTのオペラベスト3 2000年  

鑑賞日:2016年3月20日
入場料:6000円 C席3F6列20番

平成27年度文化庁劇場音楽堂等活性化事業(共同制作支援事業)
主催:神奈川県民ホール(公益財団法人かながわ芸術文化財団)/公益財団法人びわ湖ホール/iichiko総合文化センター(公益財団法人大分県芸術文化スポーツ振興財団)/公益財団法人東京二期会/公益財団法人神奈川フィルハーモニー管弦楽団/公益財団法人京都市芸術文化振興財団/公益財団法人九州交響楽団

全3幕、字幕付原語(ドイツ語)上演
ワーグナー作曲「さまよえるオランダ人」(DER FLIEGENDE HOLLÄNDER)
台本:リヒャルト・ワーグナー

会場 神奈川県民ホール 大ホール

スタッフ

指 揮 沼尻 竜典
管弦楽 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
合 唱 二期会合唱団/新国立劇場合唱団/藤原歌劇団合唱部
合唱指揮 三澤 洋史
     
演 出 ミヒャエル・ハンペ
装置・衣裳 ヘニング・フォン・ギールケ
照 明 齋藤 茂男
音 響  :  小野 隆浩(公益財団法人びわ湖ホール) 
演出補  :  伊香 修吾 
舞台監督 幸泉 浩司

出 演

オランダ人 青山 貴
ダーラント 妻屋 秀和
ゼンタ 橋爪 ゆか
エリック 福井 敬
マリー 小山 由美
舵手 清水 徹太郎

感 想

指揮者の勝利−神奈川県民ホール 「さまよえるオランダ人」を聴く

 ワーグナーはあまり得意ではないので、聴きに行く機会は少ないのですが、それでも「さまよえるオランダ人」は今回で6回目になります。それで、この6回をトータルで見た時、今回の「オランダ人」が私にとってはベストになります。例えば昨年の新国立劇場の飯守泰次郎の演奏は良かったと思うのですが、それでも今回の神奈川県民ホールの演奏には敵わないと思う。何故か。今回の演奏は、色々な意味で荒々しくスリリングだったのですね。これが私にとっては新鮮でした。

 そういう演奏を組み上げた指揮者の沼尻竜典が今回の最大の立役者だったと思います。沼尻の演奏は、一言で申し上げれば武骨でした。メリハリの付いた、スフォルツァンドを多用した表情の出し方が、音楽の荒々しさを引き出していたのではないでしょうか?「さまよえるオランダ人」は荒海が背景にあります。激しい嵐の音楽が春風駘蕩しているわけがありません。そう思えば、武骨な音楽の方がこの作品にあっている、ということなのだろうと思います。

 神奈川フィルは必ずしもノーミスという訳ではなかったようですが、基本的には音がくっきりと浮かび上がるような硬めの演奏で終始しました。それが実に魅力的な音色を作り上げていたと思います。大変素晴らしい演奏だったと思います。

 演出も良かったです。ハンぺの演出ということで、どこか、ヨーロッパのオペラハウスの舞台をレンタルしたのかと思ったのですが、どうもびわ湖ホールと神奈川県民ホール用のオリジナルのようです。演出は頗る写実的。船の甲板が舞台というよくあるパターンで船の舳先が奥に向いています。舳先の先にはぐるりと舞台を取り囲むようにスクリーンが巡らされ、そこに高波の押し寄せる海の映像や、幽霊船が近づいて来る様子の映像を写すというものです。

 この船の甲板はそのまま第二幕のダーラントの家の広間になり、その時は映像がどこかの田舎の納屋のようになります。また、ゼンタとオランダ人との二重唱では、星空を映したりして、スクリーンへの映像投影を変えることで、場所の雰囲気を出そうとしていました。

 なお、演出の基本コンセプトは「ワーグナーの見た夢」だったように思います。舵手の一人が、冒頭から舵の前に倒れています。この男はオペラが終わるまでずっとその位置におり、最後にゼンダが身を投げると、如何にも今起きた風の感じで、立ち上がるのです。「オランダ人」は、ワーグナーの遭難経験がモチーフになっているそうですが、今回の演出は、この倒れている舵手こそがワーグナーであり、「嵐にあって見た夢」だったのでしょう。

 そう思うと、音楽と演出は非常に密接な関係にあり、沼尻はこの演出を意識した音楽的表情を作っていったということなのだろうと思います。多分、それが頗る上手く行った。それが今回の成功のポイントだったに違いありません。

 歌手陣と合唱も良かったです。まず、合唱は、新国立劇場の「オランダ人」の合唱と感じが似ていました。今回の合唱のメンバーは、女声は二期会、男声は藤原歌劇団のメンバーが多かったのですが、それを繋いだのが、新国立劇場合唱団で、合唱指揮は、新国立劇場合唱団の三澤洋史が務めました。そういうことで、新国立劇場の「さまよえるオランダ人」の合唱と似た合唱に仕上がったのでしょう。なお、合唱の中身は優れたもので、日本のオペラ合唱の水準の高さを深く感じたところです。

 歌手陣、頑張っていました。私は日本人歌手にはワーグナーには合わないと思っているのですが、その私の偏見を吹き飛ばすような演奏。

 オランダ人の青山貴。良かったです。青山はもっと柔らかい歌い方をする方であるという印象を持っていたのですが、今日のオランダ人は暗く、硬い表現でした。その意味で、涸れも武骨な表現者だった訳ですが、それがオランダ人の屈折した感情を表現するのに丁度良かった、ということかもしれません。「オランダ人のモノローグ」で感心し、ゼンダとの二重唱も味があり、なかなか魅力的なオランダ人だったと思います。

 妻屋秀和のダーラントも秀逸。ダーラントはこの作品の中で最大の俗人ですが、その俗っぽさの表現が実に見事。妻屋と言えば、新国立劇場の「アラベッラ」でヴァルトナー伯爵を歌った時も強く感じたのですが、こういう俗っぽい役をやらせると、見事にはまります。Bravoでした。

 橋爪ゆかのゼンダ。多分、今回の主要メンバーの中で声の力が一番ないのが橋爪だろうと思います。それで、一寸怖いもの見たさのところはあったのですが、終わってみればなんのなんの。大変立派なゼンダでした。表情などはかなりいっぱいいっぱいのところはあったと思いますし、音のコントロールも完璧とは言えないところがあったと思います。でも、あの「ゼンダのバラード」のマッドな表現は、そう容易に出来るものではありません。また、重唱でも緊張感のある場を作り出すことに成功していました。十分に敢闘賞と申し上げて良い歌唱でした。

 福井敬のエリックは、福井節が確実にありましたが、最近時として感じる声の乱れは今回はなく、大変立派なエリック。ベテラン、小山由美のマリーも素敵な演奏でした。清水徹太郎の舵手も若々しいテノール声で良かったです。

 以上、オーケストラの音楽と演出とが有機的に結びつき、そこに、歌手陣や合唱の歌が上手く嵌りこんだ、見応えのある公演でした。

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鑑賞日:2016年4月9日
入場料:7776円 C席4F2列39番

主催:新国立劇場

全4幕、字幕付原語(フランス語)上演
マスネ作曲「ウェルテル」(Werther)
原作:ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ
台本:エドゥアール・プロー/ポール・ミリエ/ジョルジョ・アルトマン

会場 新国立劇場 オペラ劇場

スタッフ

指 揮 エマニュエル・プラッソン
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
合 唱 新国立劇場合唱団
合唱指揮 三澤 洋史
児童合唱 TOKYO FM少年合唱団
合唱指揮 米屋 恵子
演 出 ニコラ・ジョエル
美 術 エマニュエル・ファーブル
衣 裳 カテイア・デュフロ
照 明 ヴィニチオ・ケリ
音楽ヘッドコーチ :  石坂 宏
演出助手 :  ステファン・ロッシュ
舞台監督 大仁田 雅彦

出 演

ウェルテル ディミトリー・コルチャック
シャルロット エレーナ・マクシモリ
アルベール アドリアン・エレート
ソファー 砂川 涼子
大法官 久保田 真澄
シュミット 村上 公太
ジョアン 森口 賢二
ブリュールマン 寺田 宗永
ケッチェン 肥沼 諒子

感 想

今一つ乗れない−新国立劇場「ウェルテル」を聴く

 私が中学生だった40年前、「若きウェルテルの悩み」は中学生の必読書のようになっていて、私も読み始めたのですが、主人公に全く共感できなかったことを覚えています(ストーリーは完璧に忘れました)。長じてオペラを聴くようになり、マスネが「若きウェルテルの悩み」を原作にしたオペラを書いたことは知っていましたが、ほとんど聴く機会はなく、最初に実演に接したのが、2002年の新国立劇場公演です。この演奏に関しては、外題役を歌ったサッヴァティーニが良かった、という何となくの印象だけを覚えていました。それから14年。この作品に縁がなく、14年ぶりで聴くことになりました。

 演奏全体を聞いての率直な感想は、「うーむ」ですね。主要なアリアは知っていますが、ストーリーも忘れていましたし、主な曲以外の音楽もほとんど初めて聴く感じで、そもそも入り込むのが大変、という部分がある訳ですが、それ以上の「よそよそしさ」というか何とも言い難い「居心地の悪さ」をこの音楽に感じました。それは例えば、ストーリーのもじもじ感がオーケストレーションのぶ厚さとすり合っていない、といったところですね。暗いオペラと言ってしまえればそうなんでしょうが、ウェルテルの女々しさをマスネの音楽は常に内向きにうじうじと描く。まあそういうところが自分の体質に合わない感じです。

 エマニュエル・プラッソンの演奏作りは結構メリハリも利いている感じだし、オーケストラも良く鳴らして悪くないのだけれども、オーケストラから立ち上ってくる音からはフランス音楽的な洒脱さは余り感じ取ることが出来ませんでした。どちらかと言えば、武骨でパワフルという印象でした。「ウェルテル」の音楽がこういうものなのだ、と思って聴けば立派だと思いますし、もっとしゃれた音楽のアプローチもあるのではないかと思えば、多分そうなのだろうな、とも思います。

 演出はシック。ニコラ・ジョエルというオペラ演出界の大物の舞台ですが、エマニュエル・ファーブルの舞台美術、カティア・デュフロの衣裳と相俟ってとても素敵な舞台演出でした。ごくごく普通の読み替え無しのストレートな舞台ですが、美的に西洋絵画的で、フランスの田舎の雰囲気が良く出ていたと思います。第一幕の田舎の夏の雰囲気などは本当にぴったりはまっていました。児童合唱は楽譜の指示通り6人だけでしたが、6人だけにしたことによる見た目のよさは確実にあったように思います。

 歌手陣に関しては、断然日本人の脇役陣を買います。まず村上公太、森口賢二のシュミットとジョアンがよい。この二人の明るさが、本質的に暗いこの作品の一服の清涼剤になっているわけですが、歌が素直でストレートな分、聴いていて気持ちが良いです。声の美しさを聴く作品ではないとはいえ、この二人のような歌は大事なのだろうな、と思った次第。

 砂川涼子のゾフィーも良い。中声部がしっかり必要で、それでいて見た目は可憐という役をやらせると、砂川涼子は本当に嵌ると思います。素敵でした。また、久保田真澄は役の雰囲気を出していましたし、6人の子供たちは、そこそこ力も声量もあって素敵だったと思います。

 主役のウェルテルを歌ったディミトリー・コルチャック、あのような表現を求められていることは分かるのですが、私の好みではありません。ウェルテルは内容が暗いので、明るい声のテノールが端正かつ情熱的に歌うと一番魅力的になるとは思うのですが、コルチャックは声は明るいのですが、端正じゃない。崩れた歌い方で情熱を表現するので、あまり魅力的ではありません。特に第一幕。脇役の村上公太が明るく明晰な歌唱をするので、対照的に粗さが目立ちます。一番有名な「オシアンの歌」などは情熱を表に出し過ぎないので良いのですが、前半はイマイチだったと思います。

 シャルロットのエレーナ・マクシモリはまあまあ良かったと思います。シャルロットは割と抑制した役で、秘めたる情熱を歌うのは第三幕からですから歌いやすい、ということはあるのでしょうが、最初の小さな盛り上がりと、第三幕の「手紙の場」の歌い方の対比で見て行くと、上手に盛り上げて言ったなという印象です。

 アドリアン・エレートのアルベールも良い。第三幕のシャルロットにウェルテルに対してピストルを渡すように言う場面などは見応えがありました。

 以上細かく見て行くといい部分も沢山あるのですが、どうもしっくり馴染めた感じがしないのは、やはり原作が好きじゃないのと、マスネの音楽の作り方が今一つピンと来ないというのが影響しているのでしょう。もう一度聴けば、感じ方が変わるのでしょうか?

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鑑賞日:2016年4月10日
入場料:B席1F 33列51番 5000円

主催:府中シティ・ミュージック・ソサエティ
共催:公益財団法人府中文化振興財団 府中の森芸術劇場

府中シティ・ミュージック・ソサエティ5周年記念公演

全3幕、日本語字幕付原語(イタリア語)上演
ヴェルディ作曲「椿姫」(La Traviata)
原作:アレクサンドル・デュマ・フィス
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ

会場:府中の森芸術劇場どりーむホール

スタッフ

指 揮 柴田 真郁  
管弦楽   エルデ・オペラ管弦楽団 
合 唱    エアフルト合唱団
合唱指導    中瀬 日佐男
バレエ    渡辺郁子バレエスタジオ 
演 出 小澤 慎吾
舞台美術  車田 幸道
衣 裳  :  エフ・ジー・ジー株式会社
照 明  :  三輪 徹郎 
舞台監督  :  大澤 裕

出 演

ヴィオレッタ   ティツィアーナ・ドゥカーティ
アルフレード   中鉢 聡
ジェルモン   折江 忠道
フローラ   中村 春美
アンニーナ   沢崎 恵美
ガストン子爵   澤ア 一了
ドゥフォール男爵   別府 真也
ドビニー侯爵   ディ・ピエトロ・パオロ・アンドレア
グランヴィル医師   矢田部 一弘
ジュゼッペ  :  菊池 大翼 
使者  :  水澤 聡 
召使    青山 弘昭 

感 想

怒りの表現について思う-府中シティ・ミュージック・ソサエティ5周年記念公演「椿姫」を聴く

 ジェルモンは怒っているんですね。それはそうかもしれない。自分の最愛の息子が、娼婦に奪われてしまったわけですから。歌詞を見て行けばそれは勿論明らかなのですが、ジェルモンは田舎の紳士という扱いで、怒りは内に秘めてヴィオレッタに分かれることを求める、というのがよくある演出だと思います。でも今回の演出は違っていました。ジェルモンがヴィオレッタに対してもはっきり怒りを示す。ふうむ、これは私にとっては一寸新鮮でした。ただ、それが良いか、と言われると、あまり賛成できません。

 私は「椿姫」の一番の聴きどころは、第二幕のヴィオレッタとジェルモンの二重唱だと思っているのですが、そこはジェルモンが怒りを表に出すよりも、内に秘めながら、ヴィオレッタの気持ちを聴く方がこの二重唱が上手くまとまると思います。今日の演奏は、ジェルモンは勝手に怒っていて、ヴィオレッタはおろおろとして、それでいてジェルモンの怒りと違ったところに呼応しているように見えて、ちぐはぐな感じがして私はどうにも気に入らない。ジェルモンは、ヴィオレッタのことを理解しながらも、それでも娼婦を息子に娶らせるわけにはいかない、という雰囲気を出してほしいと思いました。

 折江忠道は例えば先日のスカルピアでもそう思ったのですが、バリトンの敵役を憎らしげに表現するのが上手な方です。確かにジェルモンは敵役ではありますが、頑固であっても温厚で常識人の田舎の紳士であるというのが私のイメージです。それが誤っていると言われるとどうしようもないのですが、本日の表現は私的には今一つだと思いました。

 もちろんヴィオレッタに問題が多かったことが噛み合わない最大の原因でしょう。ティツィアーナ・ドゥカーティ、かつてはイタリアでも鳴らした方だそうですが、少なくとも今回の演奏は全く感心できませんでした。筋力が衰えているのでしょうか、色々なところでのコントロールが甘いです。フレージングもぎくしゃくしていますし、高音は伸びない。ピアノの表現も今一つのところが多い。確かに、上手く嵌ると過去の栄光が見えるところがあるのは否定しませんが、全体的に言えば、今、彼女に歌わせなければいけない理由が私には分かりませんでした。「ああ、そは彼の人か」はかなりボロボロでしたし、二幕の二重唱もバリトンと噛み合わず、三幕の「さよなら、過ぎ去った日々」もぎくしゃくしていたし、「巴里を離れて」の二重唱も今一つでした。かつて、吉田秀和はホロビッツの演奏を「ひび割れた骨董品」と評しましたが、私にとって、ドゥカーティの演奏は、正に「ひび割れた骨董品」でした。

 中鉢聡のアルフレードは、アルフレードの雰囲気は良く出ていました。ただ、技術的なことを申し上げれば、例えば、第二幕冒頭のアリアのカバレッタはボロボロでしたし、それ以外ももう工夫して歌った方が良いかなと思う部分はありました。しかしながら、二幕後半から三幕は、怒りの表現が、彼の体質にあっているようで、非常に見事でした。「パリを離れて」の二重唱は、ヴィオレッタは余り感心しなかったのですが、アルフレードは良かったと思います。

 脇役陣では、中村春美のフローラは声が足りない感じでしたが、それ以外は上手な人が多かったと思います。沢崎恵美のアンニーナ、澤ア一了のガストンはどちらもとても素晴らしく、別府真也ドゥフォールも大変良かったと思います。ドビニー、グランヴィルも結構で、聴き応えがありました。

 柴田真郁の指揮は、流石にオペラで鍛えられている人だけあって、歌手のテンポの動かしに対して、敏感に対応していたと思います。オーケストラの指揮に対する反応も悪くなく、そういう意味での支えはしっかりできていたと思います。まずまずの演奏でした。

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鑑賞日:2016年4月17日
入場料:C席 6804円 4F 3列46番

主催:新国立劇場

オペラ3幕、字幕付原語(イタリア語)上演
ジョルダーノ作曲「アンドレア・シェニエ」(Andrea Chenier)
原作:ジュール・バルビエ/ポール・ディモフ
台本:ルイージ・イッリカ

会場 新国立劇場・オペラパレス

指 揮 ヤデル・ビニャミーニ
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
合 唱 新国立劇場合唱団
合唱指揮 三澤 洋史
     
演出・美術・照明 フィリップ・アルロー
衣 裳 アンドレア・ウーマン
照 明    立田 雄士 
振 付 上田 遙
映像制作 ジャン=マルク・ファン=デン=ブローク
再演演出    澤田 康子 
音楽ヘッドコーチ 石坂 宏
舞台監督 斉藤 美穂

出 演

アンドレア・シェニエ カルロ・ヴェントレ
マッダレーナ マリア・ホセ・シーリ
ジェラール ヴィットリオ・ヴィテッリ
ルーシェ 上江 隼人
密 偵 松浦 健
コワニー伯爵夫人 森山 京子
ベルシ 清水 華澄
マデロン 竹本 節子
マテュー 大久保 眞
フレヴィル 駒田 敏章
修道院長 加茂下 稔
フーキエ・タンヴィル 須藤 慎吾
デュマ 大森 いちえい
家令/シュミット 大久保 光哉

感 想

熱い音楽、暑苦しい音楽-新国立劇場「アンドレア・シェニエ」を聴く

 テノールを聴く醍醐味は、力強い声で情熱的に高音を歌うところにあると考えている方々がいます。これは分からないではない。確かに、上手なドラマティック・テノールは聴き手の気持ちを熱くするところがある。ワーグナーの作品のテノールなどは正にその典型で、ヒロイックに歌ってこその魅力、というのはよく分かります。イタリア・オペラでは「アンドレア・シェニエ」はその典型で、「ある日、青空を眺め」のようなアリアは、テノーレ・リリコ・スピントやドラマティコにとって欠かせないコンサートピースになっています。

 カルロ・ヴェントレは、アンドレア・シェニエとして素晴らしい歌唱を聴かせてくれたと思います。力強く、情熱的な歌唱は十分で、「ある日、青空を眺め」は勿論立派でしたし、マッダレーナと共に断頭台に登ろうとする終幕の二重唱に至るまで間然とすることにない歌唱で、会場を大いに沸かせました。ヴェントレの素晴らしいところは、情熱的に歌うところだけではなく、柔らかい表情も的確に出せるところで、そこの切り替えも含めて感心できるものでした。新国立劇場の「アンドレア・シェニエ」は三度目になるわけですが、私としては、シェニエとして満足すべき初めての歌手に出会った、という印象です。Bravoです。

 マリア・ホセ・シーリのマッダレーナは、声質的にもう少し明るい方が、伯爵令嬢としての雰囲気が出るのではないかとは思いました。若干声が籠って聴こえるところがあったりもしました。そういう意味では最高のマッダレーナであるとは思いませんが、2010年の時のノルマ・ファンティーニよりは安定している印象です。

 ヴィッテリオ・ヴィテッリのジェラールはさほど特徴的であるとは思いませんでしたが、役柄の位置取りが上手な感じで、舞台に上手く嵌っているという印象です。冒頭のモノローグの表情や、「祖国の敵」のアリアはジェラールの葛藤を感じさせるもので良いものだったと思います。

 日本人脇役陣は総じて良好。何度も歌っている人が多いということが関係しているのでしょうが、森山京子のコワニー伯爵夫人、清水華澄のベルシ、松浦健の密偵、上江隼人のルーシェ、竹本節子のマデロン、と皆それぞれの役目を果たす歌唱で立派でした。合唱もいつものことながら良好で、流石新国立歌劇場合唱団、という印象です。

 ヤデル・ビニャミーニという指揮者は初めて聴く方ですが、「アンドレア・シェニエ」というオペラの情熱を上手く制御しながら、オーケストラと歌手に分配しているような感じで、盛り上がります。情熱的な歌と相俟って舞台を盛り上げるのに大いに貢献していた、と申し上げても良いのではないでしょうか。

 という訳で、非常に盛り上がった立派な舞台だと思うのですが、それだけに、私自身は「アンドレア・シェニエ」というオペラがあまり好きではない、ということを再認識してしまいました。情熱的なテノールも張りのあるソプラノも勿論結構なのですが、それだけで押されてしまうと、おなかいっぱいと思ってしまうところがある。熱い音楽は素敵ですが、それを通り越して暑苦しく感じてしまうところがあります。それは歌手の責任はもちろんなく、指揮者の責任は一端はあるのかもしれないですが、多分違い、作曲家に持っていただかなければいけない責任なんでしょう。

 要するにベクトルが同じ方向に向きすぎている。遊びがない。キャラクターが立つ密偵やコワニー伯爵夫人のような役も、流れに掉さすというよりも流れを加速する方向に働いているのですね。そういうところが私にとって暑苦しいのだろうと思います。

 その暑苦しさを加速するのが、アルローの演出。前々からあまり気に入った演出ではなかったのですが、その理由は余り分かっていませんでした。でも、今回この演出を見て納得できました。要するに「アンドレア・シェニエ」にしっかり合った演出です。即ち暑苦しさを助長する。この作品が好きな人にとってはとても良いと思うのですが、元々暑苦しいと思っている私のような聴き手には「ウーム」と思ってしまうのでしょう。


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鑑賞日:2016年4月23日
入場料:A席3F 1列46番 9800円

主催:公益財団法人日本オペラ振興会
共催:川崎・しんゆり芸術祭2016実行委員会

藤原歌劇団公演

全3幕、日本語字幕付原語(イタリア語)上演
ドニゼッティ作曲「愛の妙薬」(L' Elisir d'amore)
台本:フェリーチェ・ロマーニ

会場:テアトロ・ジーリオ・ショウワ

スタッフ

指 揮 園田 隆一郎  
管弦楽   テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ 
合 唱    藤原歌劇団合唱部
合唱指導    山舘 冬樹
演 出 粟國 淳
美 術  川口 直次
衣 裳  :  パスクワーレ・グロッシ
照 明  :  奥畑 康夫 
舞台監督  :  伊藤 潤

出 演

アディーナ   高橋 薫子
ネモリーノ   村上 敏明
ベルコーレ   月野 進
ドゥルカマーラ   谷 友博
ジャンネッタ   河野 めぐみ

感 想

十八番-藤原歌劇団「愛の妙薬」を聴く

 「愛の妙薬」は、色々なアディーナを色々な演出で何回も聴いています。2010年以降に限ったって今回で7回目。こんなに聴いているのは大好きなオペラだ、ということがあるのですが、高橋薫子の十八番だ、というのが何といっても大きいです。高橋は、1995年の藤原公演以来、三回になる藤原の本公演では全てアディーナを歌っていますし、それ以外でも新国立劇場の「青少年のためのオペラ鑑賞教室」や市民オペラなどでも歌っています。私は1995年の藤原公演で高橋のアディーナを聴いて大いに感心し、それ以来機会があるたびに聴き続けていますが、何度聴いても彼女のアディーナは素晴らしい。

 これだけ歌いこんでいると、本人のスタイルが固まっていて、おそらく色々なところが考えなくても出てくるレベルになっているだろうと思います。一言で申し上げれば彼女の世界に安心して浸かっていられるレベルです。特に、今回の演出は極めてオーソドックスで彼女自身も何度も歌っている粟國淳の舞台ですから、それだけ安心感も高いのでしょう。ポイントが全てしっかり嵌るような歌唱・演技で、とても立派です。高橋自身は、年齢的にはすっかりベテランの域に入り、かつてのように何を歌わせてもBravaという感じではなくなってきているのですが、アディーナは別格なのですね。衰えを全く感じさせない。本当に感心いたしました。

 では、この素晴らしいアディーナに対抗する他の出演者はどうかというと、残念ながら、物足りないと申し上げるしかありません。村上敏明のネモリーノ。はっきり申し上げれば彼の役ではないでしょう。村上は藤原を代表するプリモテノールで、高音の張りや英雄的な表現では素晴らしいものがあるのは確かですが、ネモリーノは、そんなところに聴きどころがある役ではありません。「人知れぬ涙」が代表的ですが、柔らかい抒情性でじわりと感動を与えるのがほんとうだろうと思うのです。「人知れぬ涙」に関しては、村上もそこは分かっている様子で、それなりに柔らかい歌唱になっているのですが、他は、ピアノの表現がない。ずっと強い表現で響かせるので、ネモリーノという一寸頭の足りない、でも純情でお人好しな役柄がどこかに飛んでいってしまう感じがします。また、強い声で歌い続けるので、時々高音がひっくり返りそうになります。もっと柔らかく歌えばそんなことにならないだろうに、とずっと思いながら聴いていました。

 月野進のベルコーレは悪くはないのですが、今一つの感じです。演技が一寸こじんまりしていて暗い感じがするのです。ポイントポイントに決めがないと申し上げても良いかもしれません。与えられている音楽が「アホ」なのですから、もっと大げさに演技して、能天気な感じを表に出した方がベルコーレらしくなると思いました。

 谷友博のドゥルカマーラは生真面目な感じが前面に出ている感じです。純情な田舎者をだますペテン師ですから、もっとうさん臭さが欲しい。ストレートな歌いっぷりで立派な表現なのですが、ドゥルカマーラはそれだけでは物足りないというところです。

 粟國淳の「愛妙」の舞台は多分初めて見るものだと思います。粟國の演出家デビュー作品だそうですが、オーソドックスながら、美しく、分かりやすい舞台に仕上がっていると思います。ただし、ブッフォ役の動かし方はまだまだだった時期なのかもしれません。上で、ベルコーレとドゥルカマーラの表現について批判的に書きましたが、これが演出家の要求であるれば、演出家にも責任の半分を背負って貰わなければいけません。

 園田隆一郎の音楽作りはオーソドックスで良好。合唱も手慣れた感じで素晴らしい。アディーナが素晴らしく、支えが良かったので、全体としては満足度の高い公演になりました

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鑑賞日:2016年4月30日
入場料:A席2F 5列16番 3800円

主催:日本橋オペラ

日本橋オペラ2016

全3幕、日本語字幕付原語(イタリア語)上演
プッチーニ作曲「トスカ」(TOSCA)
台本:ジュゼッペ・ジャコーザ/ルイージ・イッリカ
室内オーケストラ用編曲:佐々木修
会場:日本橋劇場

スタッフ

指 揮 佐々木 修  
管弦楽   日本橋オペラアンサンブル 
合 唱    沼田真由子/宮下あずみ/濱野奈津美/高島康晴/森谷健太郎/山田健人/伊東達也
演 出 十川 稔
美 術  升平 香織
衣 裳  :  岡本 孝子
照 明  :  谷口 雅敏 
舞台監督  :  手塚 優子

出 演

トスカ   福田 祥子
カヴァラドッシ   小貫 岩夫
スカルピア   斉木 健詞
アンジェロッティ   勝村 大城
堂守   金子 亮平
スポレッタ   堀越 尊雅
シャルローネ   上田 隆晴
看守   吉永 研二
羊飼い   宮下 あずみ

感 想

スカルピア!-日本橋オペラ「トスカ」を聴く

 「トスカ」を聴いていて思うのは、難しいオペラなんだな、ということです。三管構成の厚いオーケストラの音を前提にそれに負けないだけの強靭な声が要求されます。それも主役のトスカだけではなく、カヴァラドッシとスカルピアもそう。それだけに、主要三人が、それなりの声を持っていて、バランスされていないとないとなかなか格好がつかないところがあります。以上の根本的なところで、今回の日本橋オペラは首を傾げざるを得ない演奏だったと申し上げましょう。

 まずオーケストラが弱い。弦楽五部が各1名。それぞれの演奏者は、ヴィオラのN響フォアシュピーラー村松龍をはじめ、一流どころを揃えました。従って、アンサンブルは室内楽的精妙さがあり見事なんですけど、いかんせんボリュームが足りなすぎる。その不足分はピアノが補う訳ですが、弦楽五重奏をピアノがバックアップするというのは、聴きなれたオペラであるが故非常に不自然に感じます。また、「トスカ」というオペラは室内オペラ的側面はあるものの、例えば、第1幕後半でスカルピアが登場するシーンが代表的ですが、室内オペラ的なやり取りが、ぐっと広がるところがある。その前後の幅の違いに、聴き手を驚かせる部分があるわけですが、今日は合唱も薄いし、児童合唱も欠けているし、音楽的にも広がった感じがしませんでした。こういうところに、弦楽の薄さがもろに影響したように思います。

 歌手に関して申し上げれば、スカルピアの一人勝ちと申し上げて間違いありません。斉木健詞のスカルピアは声も良いし、声量も豊かでかつフォルムも明瞭で、非常に立派なスカルピアだったと申し上げてよいと思います。ただ、立派過ぎて、スカルピアの邪な部分や悪人的部分が目立たなくなっている。スカルピアってどうもそういう役のようで、歌詞は、思いっきり悪人ですが、歌うと悪人に聴こえない事例というのは、本当に多いです。そこを悪人ように聴かせるのが歌手の技量だと思うのですが、斉木健詞は未だ若いせいか、そこまでの表現はできなかったようです。

 もちろん、斉木スカルピアをかっこよく見せてしまったのは、トスカとカヴァラドッシの責任でもあります。まず小貫岩夫のカヴァラドッシ。全然似合っていませんでした。小貫岩夫はもっとリリックなテノールであって、声の張りで歌うタイプのテノールではありません。それが、カヴァラドッシのスタイルで歌うのですから、そもそも無理があります。「妙なる調和」をあんなにヴィヴラートが掛ってしまうというのは、声を張り上げ過ぎた結果でしょう。あんな風に声がわうわうとなってしまうような役は本来歌うべきじゃないのでしょう。それ以外の部分でも気負いすぎて空回りしている感じで、感心することは出来ませんでした。

 主役の福田祥子もいまいちのトスカ。トスカという役を咀嚼しきれていない。別な申し上げ方をすればトスカが福田に乗り移っている感じがしないのです。ぎこちない感じがかなりしました。昨年11月、新国立劇場「トスカ」において、横山恵子は主役の突然の降板により第2幕、第3幕だけを歌いましたが、その突然の変更にもかかわらず、しっかりトスカになり切っていましたし、今年1月の藤原歌劇団「トスカ」における野田ヒロ子は入念な役作りを行い、第一幕のカヴァラドッシへの嫉妬の示し方や、無邪気な表情の示し方など、アリアでない部分でも自然で明確なフォルムを作り、聴き手に強い印象を与えました。横山と野田とは造形的には全く違ったトスカだと思いますが、そういうトスカと比較すると今日の福田トスカはかなりボンヤリしたトスカで、聴き手に迫るものがなかった感じです。

 日本橋オペラは、福田がプロデューサーで自分が自分でやりたいものを選んでいると思います。資金面、その他の理由から、色々な制限があるのはよく分かりますが、そうであってたとしても、自分の舞台であることをもっと意識して、福田自身をアピールできるように舞台を作っていっただきたいところです。

 脇役陣ではアンジェロッティの勝村大城がよく、羊飼い役宮下あずみも悪くない。金子亮平の堂守は、掛け合いの部分でカヴァラドッシともっと合わせられることが出来ると思いますし、堀越尊雅のスポレッタは、もっと声が前に飛んでほしいと思いました。

 以上、スカルピアが立派でトスカとカヴァラドッシがしょぼい「トスカ」でした。私は「トスカ」が「カヴァラドッシ」ではなく「スカルピア」に惚れない理由が分からない、などと書くことが多いのですが、今回の公演がまさにそれでした。トスカは、あの魅力的なスカルピアに何故惹かれなかったのか。

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鑑賞日:2016年5月1日
入場料:自由席 4000円

主催:アンダント・ベーネ

心の歌・愛の歌-オペラ「電話または三人の恋」&コンサート

全1幕、日本語上演
メノッティ作曲「電話または三人の恋」(THE TELEPHONE)
台本:ジャン=カルロ・メノッティ

会場:小金井 宮地楽器ホール(大)

プログラム

《第一部》
THE TELEPHONE
電話
ジャン・カルロ・メノッティ作曲  
ルーシー 柴山 晴美
ベン 柴山 昌宣
ピアニスト 河原 忠之
演出 喜田 健司
照明 田中 あいみ
ベル・稽古ピアニスト 今野 菊子
スタッフ キタラヅカ有志
休憩
《第二部》
Belta crudele
残酷な美しさ
ロッシーニ作曲 柴山 昌宣
A Chloris
クロリスに
アーン作曲 柴山 晴美
Si mes vers avaient des ailes
もし私の歌に翼があれば
アーン作曲 柴山 晴美
Non t'accostrare all'urana
墓に近寄らないでほしい
ヴェルディ作曲 柴山 昌宣
Stornello
ストルネッロ
ヴェルディ作曲 柴山 晴美
MACBETH  "Pieta, rispetto, amore"
歌劇「マクベス」よりマクベスのアリア
「哀れみも誉れも愛も」
ヴェルディ作曲 柴山 昌宣
DON PASQUALE  "Signorina, intanta, fretta dove va?
歌劇「ドン・パスクワーレ」よりノリーナとドンパスクワーレとの二重唱
「若奥様、そんなに急いでどこへお出かけですかな?」
ドニゼッティ作曲 ノリーナ:柴山晴美
ドン・パスクワーレ:柴山昌宣
《アンコール》
竹とんぼに 作詩:岸田衿子
作曲:木下牧子
柴山 晴美
電話 作詞:薩摩 忠
作曲:湯山 昭
柴山 昌宣
小さな空 作詞/作曲:武満 徹 柴山晴美/柴山昌宣
バケツの穴 ドイツ民謡 柴山晴美/柴山昌宣
「ブラザーサン・シスタームーン」メインテーマ ドノヴァン作曲 柴山晴美/柴山昌宣


感 想

25年続けるということ-心の歌・愛の歌 オペラ「電話または三人の恋」&コンサートを聴く

 とても楽しめるコンサートでした。

 オペラやオペレッタは喜劇といえども、お客さんを笑わせるのは容易ではありません。オペレッタなどで「わっ」と笑いが湧くことがありますが、大抵は台詞で時事問題か何かを取り上げて、それを当て擦った時に起きる。演技を見て笑ったり、歌そのもので笑ったりすることはなかなかありません。今回は、笑える曲をたくさん集めた、という側面はあるにしろ、歌唱と演技で何度も会場を沸かせた。その意味で、滅多にない素敵なコンサートになったと思います。

 その三枚目役を上手くこなしたのが、柴山昌宣です。「電話」というオペラは、ソプラノ(ルーシー)がほとんど歌いっぱなしで、バリトン(ベン)は時々合いの手を挟むようにしか参加しない訳ですが、ルーシーが電話している最中のイライラしている様子の演技が最高におかしい。ポップコーンを零して拾い集める様子とかとてもおかしくし、終始クスクス笑っていました。歌唱もベンの気の弱そうな感じが良く出ていて、流石だなと思いました。

 柴山昌宣は声の貫通力で鳴らした人ですから、マクベスのアリアみたいな曲を歌わせれば、立派な王様にもなり切るわけですが、今回は、ピアニッシモから立ち上がった時の表情の広がりが見事であるとか、歌の多彩な表情を見事に歌ったところに注目したいと思います。ロッシーニやヴェルディの歌曲のピアニッシモの制御の巧みさは日本有数のバリトンのことだけはあると思いました。

 柴山晴美のルーシーは自然な表現で立派。電話で話しているところが歌になりすぎるとこのオペラの軽妙さは消えてしまいますが、柔らかい弱音を使いながら軽快さを保っており、そこが立派だったと思います。後半のアーンは彼女の得意曲でこれまで何度も歌っていますから安心してその音楽世界に入っていけました。

 「心の歌・愛の歌」のコンサートはお二人で25年間続けているそうですが、いつもは日本語の曲と外国の曲を半々ぐらいでプログラムを組みます。今回は歌劇「電話」が日本語で歌われたというものの、メインプログラムは全て外国の曲になります。日本の曲はアンコールかな、と思っていたら、正にそうでした。こちらも、「小さな空」や「竹とんぼに」のような正統な日本歌曲もありましたが、湯山昭の「電話」や「バケツの穴」のようにコミカルで楽しい歌も歌われました。湯山「電話」は表情を巧みに操らなければいけないので、結構大変な曲だと思いますが、そこは三枚目大得意の柴山昌宣ですから、当然の如く素晴らしく、また、「バケツの穴」の掛け合いによるとぼけたコミカルさは最高でした。

 ソロも良いけど、やはり二人が掛け合うものの方が更によかった気がします。25年続いてきたご夫妻の信頼関係が良い方向に繋がっているものと思いました。

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鑑賞日:2016年5月14日;

入場料:自由席 4000円


主催:M&Yカンパニー

全3幕 日本語訳詞()上演
ヨハン・シュトラウスU世作曲「こうもり」Die Fledermaus)
原作:アンリ・メイヤック/ルドヴィック・アレヴィ
台本:カール・ハフナー/リヒャルト・ジュネー


会場:いずみホール


スタッフ

指揮  :  新井 義輝   
ピアノ  :  谷塚 裕美 
合唱  :  M&Yカンパニー<こうもり>2016合唱団


出演

ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン  :  小林 祐太郎 
ロザリンデ  :  小林 真由美 
フランク  :  原田 圭 
オルロフスキー公爵  :  三橋 千鶴 
アルフレード  :  青地 英幸 
ファルケ博士  :  立花 敏弘 
アデーレ  :  西本 真子 
ブリント博士  :  渡辺 敦 
フロッシュ  :  木村 雄太 
イーダ :  生駒 侑子 


感想

音楽的な不満はあるけれども−M&Yカンパニー 魅惑のオペラシリーズvol.5「こうもり」を聴く

   音楽的なことを申し上げれば、色々と問題がありました。歌えずに落とした方もいらっしゃいますし、上向跳躍が失敗して、目的の音よりかなり下までしかたどり着けないとか、アンサンブルがハモらない、とか、そういう点では、まあ、あまり良い演奏とは言えないのかもしれません。しかしながら、舞台として見た時はかなり楽しめました。

 会場が小さいので、無理して声を張り上げなくても良いということがよい方に影響したのでしょう。歌詞がストーリーを理解するために困らない程度にはっきり聴こえました。これは大変うれしいことです。日本語を上演するオペレッタは、歌詞が聞き取れずにストレスとなることが意外に多いのです。今回は、アイゼンシュタインとロザリンデとブリントの三重唱で、ブリントの早口がはっきり聴こえない、とかはありましたけど、そういうところはそれほど多くなく、何を歌っていることがまずまず分かり、ストレスに感じることなく楽しめました。

 また、演出家はクレジットされておらず、どなたの演出かは分からないのですが、演出が非常に分かりやすい素直なもので、それも良かったと思います。舞台装置は椅子や机が準備されるぐらいで、いずみホールの壁がそのまま曝け出されていてホリゾントもない(ちなみにいずみホールは演奏会用ホールのため幕もない。従って、各幕終了は照明を落として示す)ものですが、それでも第一幕がアイゼンシュタインの家でやられていて、第二幕がオルロフスキー公爵の夜会で、第三幕が刑務所だということが分かる。初めて見た人が本当に分かるか、と言われれば疑問ではありますが、ちゃんと必要な説明を入れているので、きっちり舞台を見ている人であれば混乱することはないと思います。

 分かりやすさと言えば、細かいところがしっかりとして分かりやすいところも良かったと思います。例えば、ロザリンデがオルロフスキーの夜会に出かけるのを決めるのは、ファルケがきちんと誘っている。この部分は例えば、ロザリンデが置いてある手紙を見つけて、夜会に行く決心をするといった演出も良くされるところですが、今回は、ファルケがロザリンデを言葉でしっかり誘う、という風にされていました。もちろんオペレッタ的な時事くすぐりも入れてあり、よく組んで、お客さんに分かりやすく聴いて貰おうという意思がはっきり見えて好感を持ちました。

 音楽的な観点を含めた個人としての評価では、まずファルケ役の立花敏弘が良い。彼は司会などをやらせると上手にされる方ですが、ファルケという狂言回しの役は正に打ってつけで、それで歌も身のこなしも軽く、大変良かったと思います。

 アデーレ役の西本真子も良い。西本は声質的にはアデーレよりもロザリンデの方が似合っていると思いますが、一寸年増っぽい感はあったものの、アデーレの若々しい図々しさのようなものを上手に表現されていたと思いますし、二つのアリアの処理も見事で結構だったと思います。

 あとは、原田圭のフランク、三橋千鶴のオルロフスキー公もそれぞれ歌手の個性と役の個性とが上手く重なり合って、見事だった、と思います。アルフレード役の青地英幸は色男っぽさが今一つ足りない感じはしましたが、アルフレードの自意識過剰な感じは上手く出せていたのではないでしょうか。またイーダ役の生駒侑子は初めて聴く若手ですが、「ムゼッタのワルツ」をパフォーマンスとして披露して拍手を貰っておりました。

 アイゼンシュタインとロザリンデに関してはあまり良いとは思わなかったのですが、二人とも演技に関してはそれなりに様になっており(小林祐太郎のアイゼンシュタインの方が雰囲気が出ていました)、小さい小屋でオペレッタを上演するという観点からは十分な準備をされたのでしょう。

 以上、準主役級が歌唱・演技ともこなれていたこと。歌詞、台詞とも日本語が分かりやすかったこと。演出が分かりやすかったこと。以上から、良くまとまった舞台に仕上がっていました。オペレッタとしては、大変素敵な公演だったと思います。


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鑑賞日:2016年5月21日
入場料:自由席/4000円

主催:オフィスカランク

野田ヒロ子 ソプラノリサイタル

会場:グローバルユースビューロー本社6階サロン

出演

ソプラノ 野田 ヒロ子  
ピアノ 藤原 藍子
司会 フランコ酒井

プログラム

作詞/作曲 

作品名 

曲名 

プッチーニ  歌劇「妖精ヴィッリ」よりアンナのアリア  ああ、可愛い花よ、もし私がお前たちのように小さかったなら 
トスティ  歌曲集「アマランタの4つの歌」  放っておいて!
暁は光から闇を分かつ
むなしく祈り
何を語るのか、賢者の言葉は 
チマーラ    舞踏へのお誘い 
チマーラ    海のストルネッロ 
ヴェルディ  歌劇「オテッロ」からデズデモナのアリア  柳の歌〜アヴェ・マリア 

アンコール 

シャルパンティエ  歌劇「ルイーズ」よりルイーズのアリア  その日から 
リスト  愛の夢第3番変イ長調  『おお、愛しうる限り愛せ "O lieb so lang du lieben kannst"』S.298、 

感想

パワフル −「野田ヒロ子 ソプラノリサイタル」を聴く

 野田ヒロ子が、現在日本有数のソプラノ・リリコ・スピントであり、本年1月の藤原歌劇団「トスカ」では、本当に素晴らしい「トスカ」の名唱、名演技を見せてくれたのは記憶に新しいところです。その野田が、フランコ酒井さんの求めに応じて、80人規模のサロンでリサイタルを開くと聞き、伺ってまいりました。

 会場は、赤坂警察の裏のビルの6階で、ビルは休日のため施錠されており、入場するだけでも結構大変という、本当に隠れ家で行うようなコンサート。「セミクローズドコンサート」という感じで、それだけに濃密な時間を過ごすことが出来ました。

 開演時間がお昼の12時ちょうどという、演奏家にとっては早朝同様の時間。最初は声がまだ寝ている感じで、妖精ヴィッリのアリアは、未だアイドリング中という感じの歌でした。しかし、歌が進むにつれて、どんどん喉が柔らかくなっていき、フルスロットル可能になっていくという感じです。トスティの後半からは流石野田ヒロ子という歌で、大いに感心いたしました。

 チマーラの作品は野田級の歌い手にとっては、ほんの箸休めのような作品ですから、もちろんなんの問題もなく素晴らしい声を聴かせ、そして、最後の「柳の歌」。よかったです。今の野田の成熟と、曲の味が巧く混じり合っている歌で、聴いていて惚れ惚れしました。明らかに本日の白眉でした。

 アンコールは一曲目が「ルイーズ」のアリア。これまた大変立派なもの。そして、最後が、ピアノ曲としてあまりにも有名なリストの「愛の夢3番」の歌曲版。歌曲版を聴くのは初めてだったので、面白かったです。

 正味1時間強の演奏会でしたが、凄いと思ったのは、開演からアンコールまで野田はほぼ舞台に出ずっぱりだったこと。途中で、フランコ酒井の曲解説が入りますので、若干インターバルは取れるというものの、裏に引っ込むことは一度もなく、途中水を飲んで喉を潤すこともなく、一気に歌いきりました。1時間とはいえ、このプログラムで、こんなことが出来るのが流石に第一級のソプラノは違うな、という印象です。流石に最後の「愛の夢」は喉が疲れ始めていたようで、完璧ではなかったのですが、まあ、あれだけ歌い続けたのですから仕方がないでしょう。

 濃密な時間を過ごすことが出来ました。

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鑑賞日:2016年5月29日

入場料:自由席 3000円

BOKオペラカンパニー第2回公演

オペラ1幕・字幕付原語(イタリア語)上演
マスカーニ作曲 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」(CAVALLERIA RUSTICANA)
台本:ジョヴァンニ・タルジョーニ・トッツェッティ/グイード・メナーシ

オペラ2幕・字幕付原語(イタリア語)上演
レオンカヴァッロ作曲 歌劇「道化師」(I Pagliacci)

台本:ルッジェーロ・レオンカヴァッロ

会場 角筈区民ホール

スタッフ

指 揮 高野 秀峰  
ピアノ 松岡 なぎさ
合 唱 BOKヴォーカル・アンサンブル
合唱指導 松井 理恵/松岡 なぎさ
照明操作 原田 統
舞台監督    首藤 史織 

出演者

カヴァレリア・ルスティカーナ

サントゥッツァ 江口 順子
ローラ 神田 沙央理
トゥリッドゥ 福井 徹
アルフィオ 吉森 祐也
ルチア 田畑 佳奈

道化師

カニオ 及川 尚志
ネッダ 佐田山 千恵
トニオ 安東 玄人
ペッペ 小田 知希
シルヴィオ

吉森 祐也

感 想

声の迫力と質感−BOKオペラカンパニー第2回公演「カヴァレリア・ルスティカーナ」・「道化師」を聴く

 「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師」は、ともにヴェリズモ・オペラに分類され、作曲年代も近く、同時に上演されることが多いオペラです。確かに雰囲気も似ている。しかし、よく見ると違うところも多いです。

 例えば、ソプラノの位置づけ。「カヴァレリア」のサントゥツッアは主役と言えば主役かもしれないけれども、全然華やかさがない役です。メゾ・ソプラノによって歌われることも多い。それに対して「道化師」のネッダはスピント系のソプラノが歌う役ではありますが、華やかな役です。

 一方テノールはというと、「道化師」のカニオはドラマティック・テノールの代表役であって、中年の悲しみが表現できないと面白くありません。それに対して、「カヴァレリア」のトゥリッドゥは、若いイタリア男です。どう見たって考えなしに動く軽薄男です。

 何故、こんなことを書いたかと申しますと、今回の「BOKオペラカンパニー第2回公演」で、「カヴァレリア・ルスティカーナ」を聴いた時、それなりにまとまっていてまあまあかな、と思いました。しかし、「道化師」は凄かった。それも主役・トニオを歌った及川尚志が圧倒的な迫力と質感で、バランス的にはカヴァレリアの方が良かったのかもしれないけれども、「道化師」に非常に惹かれる結果となりました。

 及川カニオ、彼の声のぎりぎりのところで歌っていて、危ういところも何か所もあったのですが、結果として壊れるところはなく、レベルの高い歌唱で全編を通しました。他の方と一段違う声だという印象を持ちました。有名な「衣裳をつけろ」は張り裂ける思いがしっかり歌に乗っていましたし、錯乱してからの歌唱演技ともに凄絶なものがありました。文句なくBravoの歌です。

 トニオの安東玄人も悪くない。今回の舞台はセミステージ形式の演出なしの舞台だった訳ですが、トニオの復讐劇というスタイルを貫いていました。そのトニオの裏に回った時の悪辣ぶりの表現が非常に立派でした。カニオはトニオに乗せられるわけですが、それが上手く行った時の悪辣な表情の出し方が立派だったと思います。安東は惜しむらくは、高音と低音が同じトーンで出てこない。途中で声が切り替わってしまうのが、ちょっと残念でした。

 この二人と比較すると、ネッダの佐田山千恵、ちょっと力が落ちる感じです。「鳥の歌」などは決して悪くはないのですが、特に特徴的ともいえないし、最後カニオとの二重唱もカニオの迫力に負けているところがあり、頑張ってはいましたが、がっぷり四つという訳にはいきませんでした。

 「カヴァレリア・ルスティカーナ」で一番印象に残ったのは、マンマ・ルチアの田畑佳奈でした。落ち着いた雰囲気で、それでいてしっかり存在感があって、なかなか素晴らしいルチアだったと思います。ルチアは結構重要な役なのに、舞台上演では目立たせない演出が多い気がするので、今回のように、しっかりと声を聴かせてくれるような演奏は良いと思います。

 その他の主要役ですが、サントゥツァの江口順子もトゥリッドゥの福井徹も小さくまとまっている感じの歌唱で、「ママも知る通り」だって、カンツォーネだって悪くはないのだけれども、突き抜けたものはなく面白い歌唱とは言えないと思いました。

 これはアルフィオの吉森祐也もそうで、もっともっと荒々しくてよいと思いました。きちんと歌っているとは思うのですが、野卑さが足りない感じです。吉森は「道化師」でシルヴィオも歌ったのですが、シルヴィオであれば、あの歌い方でもいいのかなと思いますが、アルフィオは違うでしょ、という感じです。

 このアルフィオとトゥリッドゥですが、二人が出会って決闘に至るところの緊迫感が非常に薄いのですね。もっともっと男の意地をぶつけあって、決闘に持ち込まないとね。イタリア男が草食系ではさまになりません。

 合唱はアマチュアの11人で組んだ小編成。「カヴァレリア」も「道化師」の合唱は重要でそれなりに人数がいないと様にならないところがあるのですが、11人でよくあそこまで頑張ったなと言うところです。合唱それ自体はカヴァレリアの方が良かったです。

 「道化師」は本来児童合唱が入ります。児童合唱の部分は女声合唱が歌ったのですが、やはり声色を使っても童声と女声は音色が違います。その辺も「道化師」のまとまりが悪くなった原因かもしれません。

 あと褒めなければいけないのは、ピアノの松岡なぎさ。あの細い身体でピアノをガンガン鳴らします。「カヴァレリア」も「道化師」も強い声を戦わせるオペラなので、伴奏もそれに合うだけの強靭さが必要ですが、松岡の伴奏は、声に全く負けておらず、また細かいところもしっかり弾きこなしていて大いに感心いたしました。

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