オペラに行って参りました-2012年(その3)

目次

若さの可能性と限界 2012年5月3日  武蔵野音楽大学オペラ公演「魔笛」を聴く 
台本をもっと読みこんで  2012年5月19日 二期会ニューウェーブ・オペラ劇場「スペイン時間」/「子供と魔法」を聴く
オペレッタ「魔笛」   2012年5月26日  東京オペレッタ劇場「魔笛」を聴く  
豪華絢爛 2012年6月2日  藤原歌劇団「スペシャルコンサート2012」を聴く 
突出した魅力  2012年6月7日  新国立劇場「ローエングリン」を聴く 
一寸した企画の楽しみ  2012年6月22日  病気とたたかう子供たちのために「オペラガラ」チャリティコンサート vol.12 を聴く 
これまで上演されなかった理由  2012年6月23日  東京オペラ・プロデュース「エロディアード」を聴く  
アマチュアの意地と限界  2012年7月8日  ガレリア座「ヴェニスの一夜」を聴く 
スタイリッシュなエグさ  2012年7月14日  東京二期会オペラ劇場「カヴァレリア・ルスティカーナ」/「道化師」を聴く 


オペラに行って参りました。 過去の記録へのリンク

2012年  その1  その2  その3       
2011年  その1  その2  その3  その4  その5  どくたーTのオペラベスト3 2011年 
2010年  その1  その2  その3  その4  その5  どくたーTのオペラベスト3 2010年 
2009年  その1  その2  その3  その4    どくたーTのオペラベスト3 2009年 
2008年  その1  その2  その3  その4    どくたーTのオペラベスト3 2008年 
2007年  その1  その2  その3      どくたーTのオペラベスト3 2007年 
2006年  その1  その2  その3      どくたーTのオペラベスト3 2006年 
2005年  その1  その2  その3      どくたーTのオペラベスト3 2005年 
2004年  その1  その2  その3      どくたーTのオペラベスト3 2004年 
2003年  その1  その2  その3      どくたーTのオペラベスト3 2003年 
2002年  その1  その2  その3      どくたーTのオペラベスト3 2002年 
2001年  前半  後半        どくたーTのオペラベスト3 2001年 
2000年            どくたーTのオペラベスト3 2000年  

    鑑賞日:2012年5月3日
入場料:B席 3FA列32番 2500円

武蔵野音楽大学オペラ公演

主催:武蔵野音楽大学

全2幕 日本語字幕付き歌唱原語(ドイツ語)台詞日本語上演
モーツァルト作曲「魔笛」K.620 (Die Zauberflöte)
台本:ヨハン・エマヌエル・シカネーダー
日本語台本:宮本益光

会場:武蔵野音楽大学ベートーヴェンホール

スタッフ

指揮  :  本名 徹次   
管弦楽  :  武蔵野音楽大学管弦楽団 
合唱  :  武蔵野音楽大学オペラコース合唱団 
合唱指導    栗山 文昭/横山 琢也 
演出  :  十川 稔 
美術  :  升平 香織 
衣裳  :  渡辺 園子 
照明  :  奥畑 康夫 
音響効果  :  渡邉 邦男 
舞台監督  :  菅原 多敢弘 


出演

ザラストロ  :  松中 哲平 
タミーノ  :  曽我 雄一 
夜の女王  :  本松 美和 
パミーナ  :  前川 依子 
侍女T  :  飯塚 茉莉子 
侍女U  :  島谷 尚子 
侍女V  :  吉田 静 
パパゲーノ  :  望月 一平 
パパゲーナ  :  今村 朱里 
弁者/僧侶T  :  細岡 雅哉 
僧侶U    照屋 篤紀 
モノスタトス  :  鈴木 俊介 
童子T  :  山 美帆
童子U  :  平田 里子
童子V  :  山西 さや香
武士T  :  橋本 晃作 
武士U  : 

岸本 大 


感想

若さの可能性と限界−武蔵野音楽大学オペラ公演「魔笛」を聴く

 武蔵野音楽大学のオペラ公演は三年に一度です。そこが、東京芸大や昭和音大とは違います。その代わりダブルキャストのうちAキャストは、教員や武蔵野音大の卒業生で、現役でオペラ歌手として活躍されている方を選び、Bキャストは、若い卒業生や大学院の在学生で固めています。合同練習があるでしょうから、その時、若い歌手に現役バリバリの方々のパフォーマンスを見て勉強してほしい、というのが、恐らく大学の意図でしょう。

 その意図が上手く伝わったのか、本日の演奏、全体的にはなかなかレベルの高い演奏だったと思います。若い歌手たちが十分に時間を取って、細かいところまでよく纏めて来たな、というのが率直な感想です。全体のまとまり、という点に関して申し上げれば、ここ何年かのなかでは最高の「魔笛」の演奏ではないかと思えるほどでした。

 まず感心したのは、本松美和の「夜の女王」です。本当にしっかりした「夜の女王」でした。2曲のアリアともに、十分に聴ける水準で歌われた「夜の女王」を聴いたのは久しぶりのような気がします。特に、最初のアリア「恐れるのではない、若者よ」が出色の出来。このアリアは、なかなか聴かせられるレベルに仕上げるのが難しく、もう1曲の「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」が上手に歌えても、こちらは失敗する、というケースが良くあるのですが、本松はそんなことはありません。バランスのよい歌唱で、きっちり歌いあげました。

 コロラトゥーラの部分は勿論正確でしたが、それ以上にゆっくりした部分と、技巧的な部分の対比が素晴らしく、技巧的な部分に入った途端、パッと華やかになったところが良かったと思いました。「復讐は〜」は、第1曲目のアリアほどの完成度ではなかったと思いますが、メリハリのきっちり効いた歌唱で、コロラトゥーラの部分は文句なし。前半の「ザラストロを殺すのだ」というところも良い。惜しむらくは、細かい音符の取り扱いが若干雑だったところでしょうか。

 パミーナの前川依子もよい。後半は若干疲れたのか、ややよろける部分も見受けられたのですが、第2幕のアリアは、乙女の悲しみを表現して出色のものだったと思いますし、第1幕のパパゲーノとの二重唱「愛を感じる男たちには」は、パパゲーノの一寸生硬な歌に対して、パミーナの柔らかい表現に非常に感心しました。

 三人の侍女たちは、アンサンブルはしっかりしていたのですが、低音部を受け持つ二人の声がやや籠もり気味で、如何にも古いタイプのメゾソプラノのように聴こえてしまったのが一寸残念。若い方なのですから、もっと軽く低音を響かせて声を籠もらせないようにした方がよいと思いました。

 男声は、女声のレベルよりは一段落ちるというのが正直なところ。経験の足りなさが要所に出ていて、それがほほえましいというか、残念というか、現在の限界ということかもしれません。

 パパゲーノがその典型。この役を歌った望月一平は、いま武蔵野音大大学院の二年生だそうですが、本格的なオペラの舞台を踏むのは初めてなのでしょう。硬くなっているのが見え見えでした。歌は正確なのですが、それだけで終わってしまっていて、パパゲーノという役に期待される俗的な雰囲気の出方が足りない感じです。演技も自分から演じているというよりも、やらされている感が強くていまひとつ。こういう舞台上の間の微妙な感覚は、多分経験でしか身につかないものでしょうから、今後の経験に期待したいと思います。

 タミーノの曽我雄一も今一つ線が細い感じ。「何と美しい絵姿」のアリアは表面的には美しく歌えているのですが、どこか今一つ踏み込みの足りない表現で、何か物足りない。「魔笛」というオペラの主人公はタミーノなのですが、魅力的なアリアは、夜の女王やパパゲーノにたくさん与えられていて、タミーノは今一つ優遇されていないのですが、その優遇されていないところであっても、存在感を示して見せるのがプリモ・テノールの役割でしょう。しかし、曽我は存在感が埋没した感じがありました。

 ザラストロの松中哲平は立派。地声も低い方で、それだけに、ザラストロのアリアも低い落ちついたポジションで歌われて良好。最低音である「へ音」は流石に十分な響きにはなっていませんでしたが、逆に言えば、それ以外の音は響きで飛んできたわけですから大したものです。ただ、声質がざらざらしていて、ザラストロの「徳」を表現するには、一寸違うのかも知れないな、と思いました。

 モノスタトスの鈴木俊介。キャラクターテノールとしては、もっと踏み込んだ歌唱と演技があっても良かったのかな、と思います。

 その他の脇役陣についても思うのは、まず、「若いな」ということ。それが舞台を盛り上げる方向にもつながっていましたし、一方で、その限界も感じられたと思います。そう言う中で、一寸違うな、と思わせたのが、細岡雅哉の弁者です。雰囲気がオペラ慣れしている感じで、皆が結構緊張している感じが強い中で、この方だけが肩の力が抜けているように思いました。

 本名徹次の指揮はオーソドックスなもので、きっちり舞台をナビゲートしていました。技術は所詮学生オケですから、ヴァイオリンの響きが今一つ美しくない、であるとか、いろいろあるのですが、全体でみれば良好と申し上げて良いと思います。

 もうひとつ付け加えておきたいのは、今回の台詞部分、宮本益光の台本。全部聴くのは初めてでしたがなかなか面白いもの。特に彼の持ち役であるパパゲーノの台詞は特に結構でした。

 いろいろあげつらってきましたが、今後に期待が持てる若手の歌を何人も聴くことが出来、楽しかったです。これで2500円ですから、大学オペラ通いは止められません。

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鑑賞日:2012年5月19日 
入場料:S席 1F16列33番 13000円

平成24年度文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)

二期会ニューウェーブ・オペラ劇場公演

主催:公益財団法人東京二期会

音楽喜劇全1幕 日本語字幕付き原語(フランス語)上演
ラヴェル作曲「スペイン時間」 (L'heure Espagnole)
台本:フラン=ノアン

音楽幻想劇全2部 日本語字幕付き原語(フランス語)上演
ラヴェル作曲「子供と魔法」 (L'enfant et les Sortjlèges)
台本:シドニー=ガブリエル・コレット

会場:新国立劇場中劇場

スタッフ

指揮  :  ジェローム・カルタンバック   
管弦楽  :  東京交響楽団 
演出  :  加藤 直 
装置  :  増田 寿子 
衣裳  :  太田 雅公 
照明  :  齋藤 茂男 
振付  :  山田 うん 
ヘアメイク  :  川端 富生 
舞台監督  :  菅原 多敢弘 
公演監督  :  三林 輝夫 
公演監督補佐  :  多田羅 迪夫 


「スペイン時間」出演

コンセプシオン  :  経塚 果林 
ゴンザルヴェ  :  高柳 圭 
トルケマダ  :  吉田 伸昭 
ラミーロ  :  門間 信樹 
ドン・イニーゴ・ゴメス  :  狩野 賢一 

「子供と魔法」出演

子供  :  澤村 翔子 
お母さん  :  遠藤 千寿子 
中国茶碗/とんぼ  :  福間 章子 
火  :  守谷 由香 
お姫様  :  湯浅 桃子 
夜鳴き鶯  :  飯生 優子 
安楽椅子/ふくろう  :  伊藤 光 
こうもり  :  辻  由美子 
りす  :  清水 多恵子 
牝猫  :  志岐 かさね 
牡猫/柱時計  :  野村 光洋 
肘掛椅子/木  :  岩田 健史 
ティーポット  :  木野 千晶 
小さな老人/雨蛙  :  新津 耕平 
羊飼いの少年  :  久利生 悦子 
羊飼いの娘  :  金澤 梨恵子 

感想

台本をもっと読みこんで−二期会ニューウェーブ・オペラ公演「スペイン時間/子供と魔法」を聴く

 二期会ニューウェーブ・オペラ劇場は、二期会オペラ研修所を終了して3年までの若い歌手から、オーディションで選ばれた歌手を中心に作り上げられるオペラの舞台だそうです。今回は52期から54期生が中心です。 取り上げられた演目は、なかなか上演されることのないラヴェルの2作品、「スペイン時間」と「子供と魔法」。「子供と魔法」に関しては、録音はありますが、舞台上演を見るのは本当に初めて。若い歌手たちがどのような音楽を作るのか、期待して伺いました。

 一方、「スペイン時間」は本年3月、新国立劇場・オペラ研修所公演でも取り上げられました。奇しくも、若い歌手たちの競演になったわけです。従って、双方を比較しないわけには行きません。全体的に見れば、かなり肌合いの違う演奏に仕上がっていました。指揮者の違いがもろに出た、と申し上げたらよいのかもしれません。

 今回のカルタンバックは、一言で言えばバランス型の指揮者ですね。オーケストラからバランス良く音を引き出します。また、東京交響楽団の管楽器陣が上手なものですから、指揮者の指示に従って、バランス良く音を鳴らします。こういう演奏を聴くと、ラヴェルがどういう風な音楽を書いているのかがよく見えてきます。風通しがよく、すっきりとして上手い演奏です。

 対する3月の飯守泰次郎指揮、東京シティフィルの演奏は、もっとケレンミの強い演奏でした。ラヴェルの持つスペイン風味わいをより前面に出した演奏とでも言うべきか。個々の奏者の技量は明らかに東京交響楽団が上です。音楽としての仕上がりも今回の方が上なのでしょう。唯、今回のカルタンバックの演奏はスマートすぎて詰まらない、という感じがして、音楽としての味わいは、飯守の方が面白かったように思います。

 今回の「スマートすぎて詰まらない」というのは、実は歌手陣についても言えます。特に男声陣。「スペイン時間」における4人の男声陣は、それぞれ別の音楽的特性が与えられ、その音楽的特性の対立が、舞台の上での役割の対立に繋がっている訳ですが、彼らはこのオペラのそういう構造を理解して歌っているのかな、と思わせるほど対立を見せて来ないのです。

 「スペイン時間」の男声の役柄的キーは、ラミーロにあるわけですが、門間信樹のラミーロは歌唱はともかく、演技的に見えるものは何もない、と申し上げても過言ではない。新国立劇場オペラ研修所公演で、この役を歌った西村圭市は、もっと演技に工夫を凝らして、きっちり笑いを取っていましたが、門間の演技は喜劇なのに笑えないものでした。

 同じことが、ドン・イニーゴ・ゴメスについても言えます。ドン・イニーゴ・ゴメスは古いドイツオペラの象徴であり、それが翻弄されるところに、このオペラの面白さの一端があるわけですが、狩野賢一の歌唱・演技は誇張が少なく、ドイツ的味わいの軽いもので、そこも残念です。3月の後藤春馬の方が、面白く見せました。

 コンセプシオンの経塚果林も今一つの部分があります。コンセプシオンは、夫のいない時間に浮気をしようとしたら、邪魔ものが入って浮気が出来なくて焦る役柄ですから、もっと焦りの表情が出て当然だと思うのですが、音楽的な正確さが先に立ってしまって、前のめりの焦りを感じることができませんでした。

 こういう風に見て行くと、若い歌手は未だそれなりなのですね。みな、一所懸命練習し、それを舞台で表現して見せてはいるのですが、今一つ台本の読み込みが甘いのか、喜劇オペラとしてのおかしみや味わいをお客さんに聴かせる域には達していませんでした。そういう意味ではベテランはやはり違います。今回の舞台でトルケマダを歌った吉田伸昭は経験豊富です。声の調子が今一つの感じで、音楽技術そのものでは、登場した5人の中で一番完成度に乏しいものでしたが、役柄としての立ち位置は一番決まっていました。

 後半の「子供と魔法」、こちらは音楽的なスマートさは「スペイン時間」よりも劣ったほころびの多い演奏でしたが、演奏の楽しさはこちらの方がずっと上で良かったです。

 カルタンバック/東京交響楽団の演奏は、前半と同様で、解析的に音を鳴らすバランスのいいもの。その構築は正に見事なもので、内声の見通しもつくような演奏で良いものでした。

 一方、歌手陣は前半のように解析的音楽に組み込まれるのではなく、オーケストラを伴奏として使用していました。そのため、若い歌手陣の溌剌とした感じがより飛び出して、結果として完成度は下がっても、音楽として楽しめるようになったのでしょう。

 歌手陣は、総じて低音系が良く、高音系が今一つの感じでした。

 主役の「子供」を歌った澤村翔子がよい。艶やかな低音がヒューッと延びる感じが素敵でした。このオペラは何と言っても子供が軸になりますから、子供が良いと魅力的に聴こえます。その意味でも澤村の頑張りを讃えたいと思います。それ以外の出演者も、それぞれの音楽の特徴を掴んだ歌唱で良かったです。高音を歌うソプラノの中には、聴かせどころが必ずしも魅力的に響かない方もいましたが、ラヴェルのゴタ混ぜの音楽をスマートに表現できたのではないかと思います。

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鑑賞日:2012年5月26日 
入場料:自由席 5000円

東京オペレッタ劇場公演

主催:東京オペレッタ劇場

全2幕 日本語上演
モーツァルト作曲「魔笛」K.620 (Die Zauberflöte)
台本:ヨハン・エマヌエル・シカネーダー
日本語訳詞・台本:角 岳史
編曲:中原 達彦

会場:赤坂区民センター・区民ホール

スタッフ

指揮  :  角 岳史   
管弦楽  :  東京オペレッタ劇場アンサンブル 
演出  :  角 岳史 
美術  :  牧野 良三 
照明  :  望月 太助 
メイクデザイン  :  清水 悌 
舞台監督  :  畑崎 広和 
プロデューサー  :  宮前 日出夫 


出演

ザラストロ  :  伊藤 純 
タミーノ  :  小貫 岩夫 
夜の女王  :  針生 美智子  
パミーナ  :  砂田 恵美 
侍女T  :  三宅 理恵 
侍女U  :  杣友 恵子 
侍女V  :  牧野 真由美 
パパゲーノ  :  押川 浩士 
パパゲーナ  :  里中 トヨコ 
モノスタトス  :  与儀 巧 


感想

オペレッタ「魔笛」−東京オペレッタ劇場「魔笛」を聴く

 「オペレッタ」を字義通り訳すると、小さいオペラになります。時々、学生などがボランティアで、子供相手に自作の音楽劇などを見せる例がありますが、これが字義通りのオペレッタですね。でもオペレッタと言えば、通常は、オッフェンバックあたりを始まりとする、歌唱と踊りと台詞で繋ぐ音楽劇、というのが一般的な定義だと思います。「東京オペレッタ劇場」という団体が考える「オペレッタ」だって当然後者のものです。これまで上演してきた作品が、オッフェンバックの「赤いリンゴ」、シュトラウスの「こうもり」、レハールの「メリー・ウィドウ」ということからも明らかです。

 そう言う団体が、400席ほどの小ホールで「魔笛」をやるという。出演者の顔ぶれを見ると、このメンバーなら、二期会本公演でも何とかなりそうな面々です。ただ、重要な役である童子がいなければ、弁者や武士、僧侶もいない。合唱もなさそうです。どんなふうになるだろうと、興味を持って赤坂まで伺いました。

 で、オペレッタ「魔笛」の意味ですが、これは間違いなく、19世紀パリに始まる「オペレッタ」という形式を18世紀ドイツのモーツァルト作曲のジングシュピールに敷衍したものです。勿論「魔笛」は歌と台詞で繋ぐジングシュピールだけあって、オペレッタの形式に乗りやすいということはありますが、間違いなくオペレッタになっていました。

 具体的に申し上げるならば、@全てが一貫して日本語で歌われ、演技された。A基本的には、オリジナルの「魔笛」の物語に従っているけれども、台詞にはギャグやくすぐりが盛りだくさんで、通常のオペレッタと同様、台詞部分には時事ネタがふんだんに盛り込まれている。また、自虐ネタや楽屋落ちネタも含まれ、思わず、声を出して笑ってしまうようにおかしいギャグもありました。B構成が変幻自在。即ち、主要なアリアや重唱は残されているものの、カットは大胆。ストーリーの展開上、どうしても除けないのに、当該役柄の無い歌(例えば、三人の童子の歌)については、アンサンブルの演奏だけになったり、他の役柄の人が歌ったりします。例えば、パパゲーノを助ける三人の童子によるフィナーレの重唱は、三人の侍女が歌うなどですね。

 通常の魔笛の2倍以上の台詞を言って、正味2時間10分ほどの上演時間でした。

 台本は、とても楽しいもので、特に三人の侍女のガールズ・トーク的な下世話さが特に見事です。また、沈黙しているタミーノに向かって、「いいよなタミーノは、お前は、2幕になってから、ほとんど台詞言っていない、台詞覚えなくていいから楽だよな」というパパゲーノの楽屋落ち的ギャグや、夜の女王の第一のアリア「ああ、怖れおののかなくてもよいのです、わが子よ!」 のあとに、「高音すぎて、何を言っているか分からなかったと思いますから、説明します」といって、侍女が歌の内容を説明するところなどもいいですし、「夜の女王」に対する口さがない侍女たちの批評が「更年期のヒステリー」みたいなところも、ズバリ的を射ています。

 惜しむらくは、ザラストロを高潔に描きすぎているところ。あそこまで下世話にしているのですから、もう少し、ザラストロも人間臭くして、そのいやらしさを感じさせた方が良かったように思います。またザラストロを取り囲む出演者、例えば弁者、僧侶、武士などをみなカットしたため、ザラストロの周囲の言葉が全てザラストロに集中してしまったのも如何かな、という感じはしました。

 歌唱面は、皆実力者ですし、同じ役を何回も歌われた経験のある方ですから、基本的な部分はしっかりしていました。しかしながら、必ずしも丁寧な歌いっぷりではなく、粗っぽい部分はそれなりにありました。あと全体にヴィヴラートを掛け過ぎです。400人規模の会場ですから、あのメンバーの声だったら、少し抑制気味で歌われても会場全体を十分に響かせられます。、無理に強い声を出して、音楽的にバランスが取れない方が如何かと思いました。

 そういう意味で私が一番満足できなかったのは小貫岩夫のタミーノです。彼の歌い方は昔からあんな感じですから変えられないのでしょうが、折角いい声をしているのだから、もう少し、抑えた響かせ方をした方が絶対上品なタミーノになると思います。

 夜の女王役の針生美智子は、コロラトゥーラの技術は健在です。唯、中低音部分の硬さが足りない感じで、女王の威厳が今一つ不足しています。勿論、「更年期のヒステリー女」という役柄作りの上であのような歌い方をしていたとすれば大したものです。

 ザラストロの伊藤純は、低音が立派に響き、二つのアリアは良かったです。唯、全体の立ち位置は上記のとおり、立派すぎて嫌味でした。ところで、伊藤純と言うから、誰かと思ったら黒木純さんでした。改姓したのですね。知りませんでした。

 砂田恵美のパミーナ。素直な歌いっぷりで良かったです。2幕のアリアもいいですが、1幕のパパゲーノとの二重唱がチャーミングだったと思います。

 押川浩士のパパゲーノ。沢山台詞がありましたが、よく活躍されました。歌唱もなかなか順調でした。惜しむらくは、アドリブが無かったことです。第2幕のフィナーレで、パパゲーナがいなくなってしまって、首を括ろうとする時、「誰も止めない」と歌っているときに、会場から「止めろ」と声がかかりました。押川はそのまま聴こえなかったふりをして、歌を続けてしまいましたが、オペレッタなんですから、一回音楽を止めて、「止めていただきありがとうございます。でも、それではお話が続きませんので、・・・」とか何とかいって盛り上げたらよかったのにな、と思いました。

 里中トヨコのパパゲーナ。最初のナレーションから始まって、沢山の活躍。名前の無いザラストロの侍女から、パパゲーナの名前を貰って、「パパパの二重唱」という繋がりはよかったのではないかと思いました。

 与儀巧のモノスタトス。とてもよかったです。Bravo!歌も良かったのですが、モノスタトスというマイノリティの虐げられた悲哀をここまできっちり演じた例は、そう多くはありません。高く評価します。

 三人の侍女。こちらも良かったです。最初のアンサンブルは一寸ずれていましたけど、こちらも本来のオペラとは違って狂言回しの役割で、色々なところで登場してガールズ・トークを繰り広げるところがおかしい。三人ともよかったのですが、コメディエンヌとしての魅力は、第一の侍女を歌った三宅理恵に一番感じました。

 以上休日の午後、「魔笛」オペレッタバージョン、とても楽しむことが出来ました。Bravi。

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鑑賞日:201262
入場料:
自由席 5000円

主催:公益財団法人日本オペラ振興会

藤原歌劇団 スペシャルコンサート2012

会場:杉並公会堂 大ホール

スタッフ

ピアノ 奥谷 恭代  
渡辺 まどか  
監修・お話 牧野 正人  
企画   若林 勉   

出 演/プログラム

 

出演者   

作曲者 

作品 

曲名 

伴奏 

1  牧野 正人(バリトン)  ロッシーニ  セビリャの理髪師  フィガロのアリア  「私は町の何でも屋」  奥谷 
2  鳥木 弥生(メゾソプラノ)  マスネ  ウェルテル  シャルロットの「手紙の歌」  「ウェルテルよ、誰がいえましょうか この手紙」  渡辺 
3  村上 敏明(テノール)  ドニゼッティ  ラ・ファヴォリータ  フェルナンドのアリア 「天使のような乙女」  奥谷 
4  

大貫 裕子(ソプラノ)/
柴山 昌宣(バリトン) 

ドニゼッティ  ドン・パスクァーレ  ノリーナとマラテスタとの二重唱 

「用意はできたわ」 

奥谷 
5  上本 訓久(テノール)  チレア  アルルの女  フェデリコの嘆き  「ありふれた話」  奥谷 
6  久保田 真澄(バス)  モーツァルト  ドン・ジョヴァンニ  レポレッロのアリア  「奥様、これが恋人のカタログ」  奥谷 
7  須藤 慎吾(バリトン)  ヴェルディ  ルイーザ・ミッラー  ミッラー(父)のアリア  「伴侶を選ぶのは神聖なこと」  渡辺 
8  砂川 涼子(ソプラノ) ヴェルディ  ルイーザ・ミッラー  ルイーザのアリア  「神よ、私を罰して下さい」  渡辺 
9 

砂川 涼子(ソプラノ)/
村上 敏明(テノール)/
須藤 慎吾(バリトン) 

ヴェルディ  ルイーザ・ミッラー  ルイーザとミッラーとロドルフォの三重唱  「お父様、最後の別れをお受け下さい」  渡辺 
10  廣田 美穂(ソプラノ)  ヴェルディ  アッティラ  オダベッラのアリア 「神聖で限りない祖国愛です」  渡辺 

休憩      

11 大貫 裕子(ソプラノ)  プッチーニ  トゥーランドット リューのアリア  「ご主人様、お聞きください」  奥谷 
12  柴山 昌宣(バリトン) マスカーニ  仮面  タルターリアの街自慢のアリア 「それは、一本の道です」  奥谷 
13  佐藤 美枝子(ソプラノ)  ドリーヴ  ラクメ  ラクメのアリア「鐘の歌」  「若いインドの娘はどこへ行く」  奥谷 
14  松浦 健(テノール)  ジョルダーノ  アンドレア・シェニエ  シェニエのアリア  「五月の晴れた日のように」  奥谷 
15  立野 至美(ソプラノ)  ヴェルディ  運命の力  レオノーラのアリア  「神よ、平和を」  渡辺 
16  角田 和弘(テノール) ヴェルディ  運命の力  ドン・アルヴィーノのアリア  「人生とは不幸の中の地獄だ」  渡辺 
17  野田 ヒロ子ソプラノ)  ヴェルディ  ドン・カルロ  エリザベッタのアリア  「世のむなしさを知る神よ」  渡辺 
18  堀内 康雄(バリトン)  ヴェルディ  ドン・カルロ  ロドリーゴのアリア  「終わりの日が来た〜私は死にます」  渡辺 
19  高橋 薫子(ソプラノ)/
森山 京子(メゾ・ソプラノ) 
ロッシーニ  タンクレディ タンクレディとアメライーデの二重唱  「ほっといてくれ、あなたに耳は貸さない」  奥谷 

感想

豪華絢爛-「藤原歌劇団 スペシャル・コンサート2012」を聴く

 若林勉が企画した藤原歌劇団のガラコンサート、昨年に引き続き二度目の開催となりました。昨年は、「藤原歌劇団、日本オペラ協会ガラコンサート2011」と称して、震災の影響で使えなくなった新宿文化センターの代わりに、パルテノン多摩で行われたわけですが、今年は杉並公会堂に場所を移し演奏されました。登場するメンバーも昨年に引き続き出演された森山京子、高橋薫子、佐藤美枝子、牧野正人、柴山昌宣、久保田真澄と、今年初めての出演となった鳥木弥生、村上敏明、大貫裕子、上本訓久、須藤慎吾、砂川涼子、廣田美穂、松浦健、立野至美、角田和弘、野田ヒロ子、堀内康雄、の合計18人、実に豪華絢爛なコンサートになりました。

 それだけに時間に余裕がありませんでした。開演14時、途中10分間の休憩を挟んだだけでしたが、終演が16時30分になり、最終撤収完了が17時とのことで、アンコールを演奏している余裕が無く、観客も追われるように外に出されました。最後慌ただしかったのが一寸残念です。

 選曲は、昨年よりも渋いものとなりました。昨年も日本オペラのアリアなど、必ずしも人口に膾炙した曲だけ取り上げられたわけではありませんが、今年は更に珍しい曲が多く、私自身としても初めて聴く曲も少なくありません。それだけに、登場した歌手の皆さんが、現状の自分の力量と、「イタリアオペラ」の老舗、「藤原歌劇団」の特徴を見据えた選曲をされてきたのだろうと思います。全体的には高水準で、それぞれの歌手の持ち味がよく表れた素敵なガラ・コンサートだったと思います。

 最初は、司会役兼業の牧野正人による「何でも屋の歌」。今回歌われた曲の中で、一番有名なアリアかもしれません。またこの曲は牧野の最も得意とする一曲で、高音部分を華やかに伸ばす部分や、早口の切れなどは流石に素晴らしいもので、大いに結構でした。「何でも屋の歌」で良くやるように、会場中ほどのドアから登場したのですが、舞台の階段を上がろうとしたときに、足先が躓いて驚いたのか、一瞬切れるべきでないところで切れてしまったのがご愛敬。

 鳥木弥生の「手紙の歌」。良かったと思います。ところで、私は、鳥木が「手紙の歌」を歌うのを聴くのが、今年2回目です。前回は、感情の昂り方が今一つ人工的な感じで好きになれず、今回は、そういう人工的な感じは全くしなかったのですが、昂り過ぎた感じがありました。表現の微妙な難しさがあるのでしょう。

 村上敏明「ファヴォリータ」からのアリア。ご自身は初めて舞台にかけた曲だそうで、細かいところが十分磨き切れていなかったと思われているそうですが、それでもあの歌・声は、観客の熱狂を呼べるだけの力量があると思います。Bravoです。

 大貫・柴山の「ドン・パスクァーレ」二重唱。コミカルな曲を得意とする柴山と、軽い声の大貫のバランスが絶妙で良かったです。特に大貫の細くてピンと張った高音は、とても素晴らしいものでした。

 上本訓久の「フェデリーコの嘆き」。会場からは沢山のBravoを貰っていました。それだけのものは確かにあるのでしょうが、表現が一本調子の感じがしたのと、声の出し方が、胸で押す感じが強く、私の好みとは異なった表現になっていました。

 久保田真澄の「カタログの歌」。立派でした。でもはっきり申し上げれば詰まらない。久保田の歌は端正過ぎる感じがしました。この曲は、ドンナ・エルヴィラを馬鹿にする感じというか、下品な雰囲気が欲しいと思います。

 須藤慎吾のミラーのアリア。立派な歌。須藤の美声は今後の藤原歌劇団を引っ張るバリトンの魅力に溢れているように思います。惜しむらくは、最後の高音の決めが上手くいかなかったことです。

 砂川涼子のルイザのアリア。落ちついた名唱。この手の抒情的な表情の歌を歌う時の砂川の力量は抜群だと思います。

 三重唱。良かったです。藤原の若手実力者三人の三重唱ですから、旬の魅力に溢れていました。ソプラノとテノールの密着した感じと、バリトンの一寸離れた感じがまたよく表現されていたように思います。

 廣田美穂のアッティラのアリア。廣田の力量を感じさせる立派なもの。ただ、曲に親しみがないせいか、廣田が2月に歌ったアヴィガイッレ(ナブッコ)のアリアを聴いたときほどは、興奮できませんでした。

 後半に入って、大貫裕子のリューのアリア。繊細な表現がみずみずしい結構な表現でした。リューと言えば、砂川涼子が最も得意とする役の一つです。砂川リューは、芯の強さを感じさせる表現をしますが、大貫リューは、もっと儚い健気さを感じさせる表現でした。これはこれで、凄く魅力的だと思います。

 柴山昌宣の「街自慢のアリア」。多分初めて聴く曲。マスカーニに「仮面」というオペラがあることすら知らなかったくらいですから。でも大変面白いと思いました。こういう表現をする曲を歌わせると、柴山の力量は本当に素晴らしいと思います。Bravoです。

 佐藤美枝子の鐘の歌。佐藤のためにあるような曲です。最初のハイE音が金切り声に聴こえてしまったのが玉に傷ですが、あとは無難にまとめた感じです。佐藤の「鐘の歌」を10年前に聴いた時は、もっとピンとしていたような印象があるのですが、今回はその感じはなかったです。それでもこれだけの難曲をあれだけ歌えるのですから素晴らしいと思います。

 松浦健のシェニエ。正直申し上げて今一つ。ヴィヴラートを効かせすぎです。

 立野至美の「神よ、平和よ」 彼女の一番得意とするアリアだと思います。この曲を彼女よりもっと魅力的に歌えるソプラノは沢山いると思いますが、自分の世界の中で、きっちりと表現して見せるとこが、彼女の真骨頂なのだろうなと思います。良い歌唱でした。

 角田和弘の「天使のようなレオノーラ」。いい声ですし、表現も見事なものを持っている方ですが、傷も多い歌唱でした。不調だったのかもしれません。

 野田ヒロ子、エリザベッタのアリア。今回の一番の収穫かもしれません。リリコスピントの落ちついた声が、とても魅力的に響きます。艶やかで、表現にも深みがあってとても立派なエリザベッタだと思いました。文句なしにBravaです。

 堀内康雄の「ロドリーゴの死」。日本を代表するヴェルディ・バリトンのロドリーゴ。流石に貫禄だと思います。表現の味は、一寸他の方には出せない何かがあるのだろうと思います。満喫いたしました。

 高橋、森山のタンクレーディの二重唱。高橋は藤原の本公演でアメライーデを歌って、大いに沸かせましたから良いのは当然のところでしょう。一方、森山もロッシーニを得意とする方。この二人が合わさると、ロッシーニの魅力が光ります。ちゃんとデュエットが響き合って進行していて、ロッシーニの作曲の技巧が見渡せるような二重唱で、とても素晴らしいと思いました。

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鑑賞日:2012年6月7日 
入場料:C席 3F3列51番 7560円

主催:新国立劇場

オペラ3幕、字幕付原語(ドイツ語)上演
ワーグナー作曲「ローエングリン」(Lohengrin)
台本:リヒャルト・ワーグナー

会場:新国立劇場オペラ劇場

スタッフ

指揮  :  ペーター・シュナイダー   
管弦楽  :  東京フィルハーモニー交響楽団 
合唱  :  新国立劇場合唱団 
合唱指導    三澤 洋史 
演出  :  マティアス・フォン・シュテークマン 
美術・光メディア彫塑・衣裳  :  ロザリエ 
照明  :  グイド・ペツォルト 
音楽ヘッドコーチ  :  石坂 宏 
舞台監督  :  大澤 裕 


出演

ハインリッヒ国王  :  ギュンター・グロイスベック 
ローエングリン  :  クラウス・フロリアン・フォークト 
エルザ・フォン・ブラバンド  :  リカルダ・メルベート 
フリードロヒ・フォン・テルラムント  :  ゲルト・グロホフスキー 
オルトルート  :  スサネ・レースマーク 
王の伝令 :  萩原 潤 
4人のブラバンドの貴族  :  大槻 孝志
  :  羽山 晃生
  :  小林 由樹
  :  長谷川 顕 
4人の小姓    前川 依子 
  :  友利 あつ子 
  :  丸山 真木子
  :  松浦 麗

感想

突出した魅力−新国立劇場公演「ローエングリン」を聴く

 フォークト。圧倒的な魅力でした。声が何と言っても美しい。特に柔らかい声で優しく歌う時の声は本当に素敵なものです。それでいて、会場の隅々まで澄んだ音が通ります。エルザに対する愛の囁きのリリックな響きは、惚れ惚れすると申し上げましょう。ワーグナーの長丁場をこれほど美しく歌い続けられるなんて、本当に凄いと思いました。そしてこの方、柔らかい表現だけではありません。力強い表現も、あの美声でしっかりやってくるところがまたすごい。デュナーミクも幅が広いです。メリハリが効いている上、芯もしっかりしている。ソット・ヴォーチェで歌っても、芯がしっかりしているので、音楽の造型が崩れることが無いのです。もう、Bravo以外の何物でもありません。久しぶりに、本当に凄いテノールを聴いた気がします。

 このフォークトと比べてみると他の歌手が霞んで聴こえるのは仕方がありません。その中で、美声とバランスの良さで立派だったのは、ハインリッヒ国王を歌ったグロイスベックです。この方の声も美しい。いわゆる、バッソ・プロフォンドの声で、低音が良く響きますが、その深みのある艶やかな音が実に結構でした。あのような声で歌われると、王の品格を感じさせられます。神性を持った白鳥の騎士の品格と対比してもなかなかのものでした。

 美声という点でもう一人忘れてはならないのは、王の伝令を歌われた萩原潤です。萩原は力のあるバリトンですが、今回は、声量も声質も外人勢に全く引けを取っていませんでした。歌っている時間が短いですから、息切れしなかった、ということはあるのでしょうが、美しい声を響かせるという点では、フォークト、グロイスベックに並んで賞賛されるべきであると思いました。

 美声ではありませんが、悪役としての存在感が良かったのが、オルトルートを歌ったレースマークです。メゾソプラノですから当然なのかもしれませんが、この方の響きが一番魅力的なのは低音部です。従って、エルザとやり合って、高音で叫び合う様な所は、ぎりぎりのところで歌っている感じがあって、今一つなのですが、低音のモノローグ的に歌う部分や、第2幕前半のテルラムントとの二重唱は、暗い怨念が歌にしっかり現われていて、見事なものでした。

 レースマークほどではありませんが、グロホフクキーも頑張りました。この方、声はあまりよろしくない。普通のバリトンとは違った癖のある声です。しかし、歌唱の骨格はしっかりしていて、響きはきっちり飛んでくる感じでした。私自身は、悪役のバリトンは美声で魅力的であって欲しい、と思うのですが、悪役としての小物感がぬぐえない感じがしました。テルラムントという役柄からすれば、そういう歌い方が適切なのかもしれません。

 今一つ感が、一番強かったのはエルザを歌ったメルベートです。勿論ワーグナーのソプラノですから、スピントの効いたドラマティックな表現の優れた歌手ということでしょうし、ローエングリンがもう少し普通のテノールだったら、彼女の歌い方でもいいのかもしれませんが、ローエングリンの歌に対して、エルザの歌は下品な感じが付きまといます。フォークトの歌は上述のように、ある意味天使的な美しさでした。エルザは、そのローエングリンに対して愛の葛藤を感じるのですから、必ずしもローエングリンのような立派さは必要ないと思いますが、それでも、もっと品の良い歌い方があってよいように思います。

 ビブラートの振幅の広いのも気になりますし、割と表現が一本調子で、愛する乙女の部分と、ローエングリンへの疑惑が膨らんできたときの歌い方の違いがはっきりと見えてこなかったのも、如何なものかなと思いました。

 とは言うものの、全体としては音楽的にはそれなりに纏まっていたと思います。その纏まりの接着剤として有効に働いていたのは、合唱団だと思います。新国立劇場合唱団、いつものことながら力があるなと思います。ローエングリンの合唱は要するに群衆であり、名もなき人たちの声の集合です。でも、散開している合唱団のメンバーが、ひとたび合唱の音を作り始めると、あっという間に纏まって、盛大な声となって響き渡ります。そのパワーは割目するに十分なものがありますし、ハーモニーのバランスも良いものでした。

 今回4人の小姓の合唱も、合唱団員4人によってなされたわけですが、こちらも凄くバランスの良い合唱で、特に外声の二人がしっかりしていて良かったです。

 もう一人褒めるべきは、指揮者のシュナイダーです。もの凄く特徴的な音楽づくりをするわけではありませんが、流石にワーグナー演奏のプロだけあって、バランスの良いオーケストラドライヴをされます。東京フィルは、ファンファーレにおけるトランペットやホルンの乱れは勿論あって、完璧ではないのですが、ファゴットやチェロなどの低音楽器系の底鳴りがよく、深みを感じさせるもので結構でした。

 オーケストラと合唱とが、必ずしもバランスが良いとはいえないソリストを上手くつないで、まとまりを感じさせる音楽に仕上げたな、という感じがしました。その意味で、シュナイダーは大Bravoです。

 シュテークマンの演出。人の動かし方などはよく考えていましたが、舞台上の大道具はシンプルかつ少ないもの。ロザリエの舞台美術も、光や映像を上手く使った美しいものでしたが、結果として抽象的な感じが拭えませんでした。シュテークマンはの意図はこの抽象性にあったと思いますが、ローエングリンの物語が舞台の中から浮かび上がってくる印象は小さかったように思います。どう演出してもワーグナーになってしまう、というのがワーグナーのオペラの特色ではありますが、「ローエングリン」の場合は、もう少し具象的でも良かったのかな、と感じました。

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鑑賞日:2012年622
入場料:指定席 1F13列19番 4999円

主催:病気とたたかう子供たちのためのチャリティコンサート実行委員会

病気とたたかう子供たちのために オペラガラ チャリティコンサート vol.12

会場:渋谷区文化総合センター大和田さくらホール

スタッフ

ピアノ 河原 忠之  
ナビゲーター 朝岡 聡  
 
   

出 演/プログラム

 

出演者   

作曲者 

作品 

曲名 

1  全員  ジーツィンスキー    ウィーンわが夢の町 
2  柴山 晴美(ソプラノ)  ヨハン・シュトラウスU世    ワルツ「春の声」 
3  和田 茂士(バリトン)  グノー  ファウスト  ヴァランティンのアリア 「門出を前に」 
4  

羽根田宏子(ソプラノ)

プッチーニ  トスカ  トスカのアリア 

「歌に生き、恋に生き」 

5  林 美智子(メゾソプラノ)  ビゼー  カルメン  カルメンのハバネラ  「恋は野の鳥」 
6  秋谷 直之(テノール)  レオンカヴァッロ 道化師  カニオのアリア  「衣裳をつけろ」 
7  柴山 昌宣(バリトン)  マスカーニ  仮面  タルターリアの街自慢のアリア 「それは、一本の道です」 
8  岩森 美里(メゾソプラノ) サン=サーンス  サムソンとデリラ  デリラのアリア  「君の御声にわが心は開く」 
9 

樋口 達哉(テノール)

プッチーニ ラ・ボエーム  ロドルフォのアリア  「冷たい手を」 
10  羽根田敦子(ソプラノ)  プッチーニ  蝶々夫人 蝶々さんのアリア 「ある晴れた日に」 

休憩      

11

羽根田宏子(ソプラノ)/
和田 茂士(バリトン) 

オッフェンバック  地獄のオルフェウス ユリディスとジュピテール(ハエ)の二重唱 「何か肩に触ったかしら」 
12  柴山 晴美(ソプラノ)/
林 美智子(メゾソプラノ)
ドリーヴ  ラクメ  ラクメとマリカの「花の二重唱」 「おいでマリカ、花をつけた蔦は」 
13  岩森 美里(メゾソプラノ)  武満徹  作詞:武満 徹   「小さな空」 
14  秋谷 直之(テノール)/
樋口 達哉(テノール)/
岩森 美里(メゾソプラノ)
プッチーニ  トゥーランドット  カラフのアリア  「誰も寝てはならぬ」 
15  柴山 昌宣(バリトン)/
和田 茂士(バリトン) 
ドニゼッティ  ドン・パスクァーレ  パスクァーレとマラテスタとの二重唱  「そっと今すぐ庭へ出て」 
16  羽根田敦子(ソプラノ)/
羽根田宏子(ソプラノ)/
岩森 美里(メゾソプラノ)
平井康三郎  作詞:小黒 恵子    「うぬぼれ鏡」 
17  全員 サルトーリ    「君と旅立とう」 

アンコール

18  全員  新井満 訳詞:新井満   「千の風に乗って」 

感想

一寸した企画の楽しみ-「病気とたたかう子供たちのために オペラガラ チャリティコンサート vol.12」を聴く

 ソプラノ歌手の羽根田敦子さんが、かつて自分のお子さんが小児医療機関において献身的な治療と看護を受けた経験から、小児医療機器の寄付を目的にはじめられたコンサートです。第1回が1992年で、それから断続的に続けられ、今回は2010年3月以来の開催になります。歌は間違いなく健康にとってよいことですし、又、病気とたたかう子供たちにとっても、歌の収益で、少しでも医療機器が増えることは嬉しいことだろうと思います。こういう企画をやり続ける皆様に心から敬意を表します。

 そういうチャリティの目的は目的として、演奏会それ自身ですが、相当に愉快なものでした。特に後半が爆笑もの。必ずしもオペラに親しみのないお客様に見せるには良く考えられたプログラムと企画でした。歌唱に関して申し上げれば、それぞれそれなりに問題があり、100%満足、という訳には行かなかったのですが、企画と心意気にはBraviを申し上げます。

 朝岡聡の司会は非常に上手。朝岡自身がオペラ好きのフリーアナウンサーとして有名ですが、基本知識のある方の説明にだけのことはあって、分かりやすくユーモアのある説明に終始しました。グッド・ナヴィゲーションでした。多分、オペラの中身について知識のない方でも、それなりにコンサートを楽しめたとすれば、半分位は朝岡の貢献だと申し上げても間違いではないでしょう。

 勿論河原忠之のピアノが立派なことは毎度のこと。現在日本でナンバーワンの伴奏ピアニストであることは、ほぼ疑いのないところです。

 さて、歌唱ですが、良かったものといまいち感のあるものが半々ぐらいの感じでしょうか。個別の寸評です。

 導入の「ウィーンわが夢の町」は、カップルで舞台に入ってくるのですが、最初の柴山夫妻は良かったのですが、その後は何となく混乱した感じで今一つ感の強いものとなりました。全員が揃えば、ユニゾンでもそれなりの魅力が出る筈なのですが、きっちりあっておらず、曲の雰囲気が立ち上らない感じでした。

 そのもやもや感を吹き飛ばしたのが、柴山晴美の「春の声」です。柴山の声で、会場の雰囲気が一変しました。コロラトゥーラにおけるヴィヴラートのコントロールがとてもよく、冬のウィーンが春にスパッと切り変わった感じがしました。登りの細かいテンポの取り方など、必ずしも完璧ではない部分もあったのですが、高音の張りが素敵で、大変素晴らしい歌だと思いました。Bravaです。

 和田茂士のヴァランティン。悪いものではなかったと思います。しかし、声の出し方が、胸を押して力んでいる感じが強く、もう少し柔らかい表現の方が、この曲には合っているのではないかという気がしました。

 羽根田宏子のトスカ。全体にフワフワ感の強いトスカになりました。音程の安定感が今一つで、そのため曲の輪郭がぼけて聞こえます。もう少し、きっちり上がる、きっちり下がるをしっかりやって、曲のメリハリをつけた方が、トスカのこの曲を歌った心意気が示せるように思いました。

 林美智子のハバネラ。上手に歌って当然の一曲で、その通り上手でした。若干の歌い崩しがあるのですが、そこが、林美智子節になっていて彼女のカルメンの個性なのでしょう。いい歌唱だったと思います。

 秋谷直之の「衣裳をつけろ」。絶唱です。しかし、今一つ物足りない感じでした。上手なんですけど、泣きが足りないというか、感情の爆発が不十分と申しましょうか。声量的にもこの歌を歌うには、もう少し欲しい感じがします。

 柴山昌宣の街自慢のアリア。先日の藤原歌劇団のガラコンサートでも楽しんだ曲の再演。今回は、ピアニストの河原も参加して、立体的なものとなりました。こういう曲を歌わせると、柴山は今日本一ではないでしょうか。本当に愉快で楽めます。お客さんもほとんどの方が初めて聴かれた曲だと思いますが、柴山と河原の掛け合いの妙で大爆笑。Braviでした。

 岩森美里のデリラ。いわゆるどすの利いた表現。これはこれで一つのスタイルなのでしょうが、あそこまでやられると、ダリラの妖艶さ、というよりも、それ以上の怖さを感じてしまいました。岩森は低音の響きは素晴らしいのですが、反対に高音は上に重しが載せられた感じが強く、ダリラの華やかな部分の表現が響かない感じでした。

 樋口達哉の冷たい手を。それなりのスタイルは保っていましたが、声がひっくり返ったりしたところもあり、今一つの演奏。最後のハイCのアクートも下がっていました。

 羽根田敦子の「ある晴れた日に」。全体的にとぼけた演奏になっていました。表現にメリハリをつけて欲しいです。また、旋律線が今一つ見えにくいので、もっと輪郭を明確にした歌い方が必要ではないかと思いました。

 後半に入って、羽根田宏子と和田茂士の二重唱。和田茂士は本当にハエの衣裳で登場。「ズィズィズィ」と愛を語るところが楽しいです。羽根田宏子は、妖艶なマダムの雰囲気でなかなか結構。ただ、このハエの二重唱は、コロラトゥーラ・ソプラノの曲に対するパロディでもあるのですが、コロラトゥーラ的な技巧はほとんど感じられませんでした。

 ラクメ、「花の二重唱」。音楽的には本日の白眉だと思います。ソプラノとメゾソプラノの関係が見事で、バランスも良く美しいアンサンブルになっていました。音程のしっかりした二人が組んでお互いのバランスを整えると、こんな素敵な演奏になるのだというお手本みたいな歌で、素敵でした。Braviです。

 「小さな空」。岩森美里の歌唱。感情が籠もり過ぎていて怖いほど。私には支持できない歌唱でした。実際のところ、この曲はもっとあっさりと歌った方が、曲自体が持っているのんびりとした雰囲気が立ち上ってきます。岩森のように歌いに行ってしまうと、歌の特徴が声の個性に殺されてしまい、折角の味わいが感じられなくなってしまいます。

 その迫力のある岩森が舞台に残っているところに、秋谷・樋口の両テノールが登場です。二人は斉唱したり、二人で別れながらも「誰も寝てはならぬ」を歌います。しかし、そこに、アルト声で、岩森が「誰も寝てはならぬ」で入ってきます。そうなると体格的にも勝っている岩森美里の独壇場の感じになります。司会者の朝岡聡が言うように、女王様とお付きの家来のような感じで、面白くみられました。

 和田マラテスタと柴山ドン・パスクァーレとの早口の二重唱。大変素晴らしく感心しました。アンコールを受けて二度やったのも当然のところか。

 女声三人による「うぬぼれ鏡」。歌の良し悪しというよりも感情表現を聴く曲のような気がします。変に可愛らしく面白かったです。

 「君と旅立とう」もバランスが悪い。岩森美里が本気でフォルテを出すと、周りの方々の声はほとんど聴こえませんでした。全員で高らかに歌い上げる難しさを感じました。

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鑑賞日:2012年6月23日
入場料:B席 2F2列27番 6000円

平成24年度文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)

主催:東京オペラ・プロデュース

東京オペラ・プロデュース第90回定期公演

J・マスネ没後100年記念公演

オペラ4幕、字幕付原語(フランス語)上演
マスネ作曲「エロディアード」(Hérodiade)
台本:ポール・ミリエ/アンリ・グレモン

日本初演

会場:新国立劇場中劇場

スタッフ

指揮  :  飯坂 純   
管弦楽  :  東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団 
合唱  :  東京オペラ・プロデュース合唱団 
合唱指導    伊佐治 邦治/中橋 健太郎左衛門 
演出  :  八木 清市 
美術  :  土屋 茂昭 
衣裳  :  清水 崇子 
照明  :  成瀬 一裕 
振付 :  中原 麻里 
舞台監督  :  佐川 明紀 


出演

エロディアード  :  福田 玲子 
サロメ  :  鈴木 慶江 
預言者ジャン  :  星 洋二 
エロデ王  :  杉野 正隆 
ファニュエル :  佐藤 泰弘 
ヴィテリウス :  和田 ひでき 
大祭司  :  白井 和之
バビロニアの娘  :  木村 綾子
神殿の使者  :  西塚 巧

感想

これまで上演されなかった理由−東京オペラ・プロデュース公演「エロディアード」を聴く

 録音や放送を含めて、全く初めて聴く作品です。マスネが、19世紀フランスオペラの代表的作曲家であることは間違いないのですが、日本で上演されるのは「マノン」、「ウェルテル」、「サンドリアン」の三作にほぼ限られ、新国立劇場のマスネシリーズも、五十嵐喜芳が芸術監督だった2000年前後に、「ドン・キショット」、「マノン」、「ウェルテル」と三年連続で上演されて以来、止まっています。マスネやフランスオペラに関して、日本は比較的冷たいのかもしれません。勿論日本はベルカント・オペラにも冷たいですし、ドイツオペラだってそれほど上演されている訳ではないので、仕方がないのかもしれませんが、そういった環境の中では、マスネの出世作は、東京オペラ・プロデュースが取り上げようと思うまでは、誰も手が出せなかった、ということはあるのかもしれません。

 もうひとつは、作品の規模もあると思います。基本的に、フランスオペラの伝統的形式であるグランド・ペラの影響が強く、バレエのシーンが非常に多い。Wikipediaによれば、劇中バレエだけで、「エロディアードのバレエ音楽」というタイトルで、オーケストラの演奏会に取り上げられることもあるそうです。またオーケストラの規模も大きく、基本三管構成で、その他にオリジナルであれば、コントラバス・サクソフォーン、テナーサックス、アルトサックスが用いられ、コルネットを中心とした金管が活躍する部分も多いです。打楽器も沢山必要です。

 今回ピットに入った東京オペラ・フィルの編成は、資金的な理由か、オリジナルの編成よりかなり小さくなり、サックスはアルトサックスだけ、ハープも1台のみ、バスクラリネットも省略というものでしたが、サックスやトランペットのファンファーレは実に印象的なものであり、あのオーケストラに対抗するとなれば、ワーグナーを歌えるような強靭な声がなければとても歌えるものではありません。以上を総合的に考えれば、この作品を日本人だけで上演するのは、かなりチャレンジングであり、これまで上演されなかったのはある意味当然、今回東京オペラ・プロデュースが取り上げたのは、言うなればドン・キホーテ的と申し上げてもよいかもしれません。

 さて、それだけの難曲ですから、頑張って歌いきってほしいところですが、歌手に関して申し上げれば、ほとんどの方が「ボロボロ」と申し上げるしかありません。皆さん、自分の限界のところで強靭な声を出そうとしているのは分かるのですが、逆にぎりぎりのところで歌われているので、一寸した変化にもついていけない。もう少し頑張らずに、声を上手くコントロールするやり方はないものかと、ずっと思って聴いておりました。でも、あのトランペットやサックスの音に負けずに歌おうとすれば、あれぐらい頑張らないとだけということなのでしょうか?

 タイトル役の福田玲子。いただけません。そもそもメゾソプラノ役であるエロディアードをソプラノが歌うところに無理があるのでしょう。彼女はドラマティックな強靭な声の持ち主であることは分かるのですが、彼女の声が伸びる音域よりもこの役柄の主要な音域が低いのでしょうね。一つのフレーズの中で、高い音と低い音とで無意識のうちなのか意識してかは知りませんが、声の出し方を変えて音程をキープしようとします。結果として一つのフレーズの中で二つの音色が出たり入ったり入り混じって、聴いていてとても気持ち悪く思いました。

 サロメ役の鈴木慶江。良かったです。今回の出演者の中で一人気を吐いていたと言う感じです。声が美しく伸びやかで、力強く歌うべきところとそうでないところのメリハリもしっかりしていて、大変結構な歌唱でした。登場のアリアとなる「美しく優しい人」が美しく、その後何曲か歌われたアリアも皆立派なものだったと思いました。

 星洋二の歌う預言者ジャン。いくらなんでも、という感じでした。多分体調も悪かったのだろうと推測しますが、上行音型で強く歌おうとすると地声が出てしまうのはいただけません。とにかくフォルテシモになると、無理をしているのが一目瞭然で、聴いていて何とかならないものかとずっと思っておりました。

 杉野正隆のエロデ王。いまいちです。杉野もあそこまで頑張らなければ、もう少し音楽をコントロールできる方だと思うのですが、結局喉一杯使って無理やり声を張り上げるので、音楽の制御が効かなくなっていました。

 ファニュエル役の佐藤泰弘。登場の部分でとちり、前半ははらはらするところもあったのですが、どんどん調子良くなっていった感じです。深く艶のあるバス声は健在でした。皆あれだけ必死に声を出している感じが強いのに、佐藤だけは比較的余裕があるように聴きました。バスであれだけの声が響かせられるのは、尊敬に値します。

 脇役系で一寸だけ申し上げたいのは、白井和之の大祭司です。白井は東京オペラ・プロデュースの脇役で良く出演される方ですが、本業は大手不動産会社に勤めるサラリーマンとのこと。その方が、本業歌手の方に伍して、あれだけの歌を歌われたのは凄いことだと思います。

 演出は、廻り舞台上に三つに分けた壁を作り、舞台を廻しながら場面交換をするというやり方。抽象性の高い舞台でしたが、分かりにくさは感じませんでした。

 以上頑張りすぎてバランスを崩した舞台というのが本当のところ。みんなで強靭な声を響かせ合うのを聴くのは、オペラを聴く醍醐味なのですが、もう少し全員がセーブして、もっとまとまりの良さを目指しても良かったのではないでしょうか。そう出来なかったのは指揮者の責任なのでしょうね。飯坂純にはこういう作品へのアプローチの仕方を考えて欲しいと思いました。

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鑑賞日:2012年7月8日
入場料:B席 2F2G列17番 2000円

主催:ガレリア座

ガレリア座第24回公演 

オペレッタ・プロジェクト17

オペレッタ3幕、日本語訳詞上演
ヨハン・シュトラウスU世作曲「ヴェニスの一夜」(Eine Nacht in Venedig)
台本:フリードリッヒ・ツェル/リヒャルト・ジュネー
日本語台本:杉浦 まり/三浦 真弓


会場:ルネこだいら 大ホール

スタッフ

音楽監督/指揮  :  野町 琢爾  
管弦楽  :  ガレリア座管弦楽団 
合唱  :  ガレリア座合唱団 
芸術監督/演出  :  八木原 良貴 
美術監督  :  長谷部 和也 
衣裳  :  ガレリア座衣裳部 
照明  :  寺西 岳雄 
舞踏監督/振付 :  藤井 明子 


出演

ウルビノ大公  :  丹下 知浩 
デラックア  :  北 教之 
バルバラ :  大林 弘子 
カラメッロ  :  釜田 雄介 
アンニーナ :  小柴 亜希子 
パパゴーダ :  佐藤 尚之
チボレッタ  :  君島 由美子
エンリーコ  :  小林 靖広
バルバルッチオ  :  榎本 健太郎
テスタッチオ  :  林 猛 
アグリコーラ  :  久保 直子 
コンスタンティア  :  高橋 佳子 
ノットブルガ  :  原 美緒 
チェントゥーリオ  :  藤本 純也 
バルビ(語り役)  :  内藤 明日香 

感想

アマチュアの意地と限界−ガレリア座公演「ベニスの一夜」を聴く

 一般に市民オペラでアマチュアが担当するのはオーケストラと合唱。それ以外の指揮や演出などのスタッフ、ソリストはプロにお願いするのが普通です。勿論地方オペラでは、ソリストもその地にすむ音楽の教員などが演じることは良くあることですが、音楽を職業としていない本当のアマチュアだけで、オペラを作り上げるのはなかなか難しいことですし、実はほとんどないと申し上げても良いほどです。

 しかし、東京は日本の首都。主要なスタッフ、キャスト、ソリストからオーケストラに至るまで、ほとんど全てがアマチュアの手作りでやっているオペラ団体が実は二つあります。一つは東京大学歌劇団、そしてもう一つがこのガレリア座です。東大歌劇団は学生中心の団体、ガレリア座は社会人中心の団体という違いはありますが、創立年代がガレリア座が1993年、東大歌劇団が1994年とほぼ同時です。

 そして7月8日は、その東大歌劇団とガレリア座が公演を行う日となりました。東大が八王子で「ナブッコ」、ガレリアが小平で「ヴェニスの一夜」。私は、どちらを聴きに行くべきか、と迷い、久しく聴いていない「ヴェニスの一夜」を選びました。

 訊いた結論は、思ったほど悪くないな、ということです。というよりも、アマチュアでもここまでやれるんだ、と感心した、と申し上げても良いかもしれません。

 勿論問題は山積しています。例えばオーケストラ。基本的な技術に問題がある方が多いです。普通のアマチュア・オーケストラだと、その個々人の技術的な問題をパワーでごまかしてしまうことが多いのですが、ガレリア座は、そういう音楽的難所を真面目にこなそうとします。そういう意識は大事なのでしょうが、結果として音の輪郭がぼやけています。序曲が典型的でした。オーケストラの縦の線を揃えようと、お互いが聴きあいながら調節しているのですが、その結果音楽のスピード感が失われ、もやっとした印象の演奏になりました。プロのオーケストラだって、縦の線が合わないことはしばしばあるわけですが、プロはそれを合わせるためにスピードをあまり落とさない。そういうところに、アマチュア・オケの力量を見ました。

 合唱も基本的には実力と練習が足りない感じです。合唱団の実力はアマチュア合唱団の標準レベル、というところか。勿論合唱団員といえども、演技が要求される訳ですから、大変なことはよくわかるのですが、練習不足の曲が直ぐ分る、というのは、如何なものか。一番よろしくなかったのは、「南国のバラ」におけるバレエに付ける合唱。特に女声は音程にも問題が多く、完成度もお世辞にも高いとは言えないレベルでした。

 ソリストだってそう。主要役で、ほとんど破綻なく歌えたのは、アンニーナ役の小柴亜希子位かもしれません。それ以外の方々、特にテノール系のソリストは、それぞれに美声ではありましたが、トラブルもあった様子です。一番問題なのは、このオペレッタを歌いきれるだけの喉の体力がなかったということだと思います。丹下知浩にせよ釜田雄介にせよ第3幕はかなりヘロヘロな感じでした。

 かつて、ある歌手の方が仰っていましたが、アマチュアの歌手とプロの歌手との一番の違いは、プロは調子が悪い時の歌い方を知っていること、なのだそうです。今回のアマチュアの歌手が調子が悪かったと言う訳ではないのですが、この歌い方、危ないな、と思わせる部分はいくつもあり、こういうところをそつなくこなすのが、プロなのだろうな、思わずにはいられませんでした。

 しかし、それでも立派だと思います。まず出演者がオペレッタとは何か、ということを自分ながらに解を用意して、それに沿った歌唱演技を行っているのが良い。オペレッタは歌だけではなく、台詞の部分も大切ですが、チボレッタを歌われた君島由美子や、パパゴーダを歌われた佐藤尚之の演技は、オペレッタ的雰囲気が良く出ていて面白かったと思います。また、オペレッタでは、コケにされるバスが大事ですが、北教之のデラックアは、オーバーアクションの演技にしても、「トリッチ・トラッチ・ポルカ」にオリジナルの歌詞を付けて歌う、「いない、いない、どうしたらいい?」における困惑の表情などは、オペレッタを見る楽しみを十分に感じさせられるものでした。

 また、主要歌手は、皆ボイス・トレーニングや声楽指導をきちんと受けている方のようで、小柴の軽い高音の伸びは非常に魅力的なものでしたし、丹下にしろ釜田にせよテノール歌手たちも、はまった時のリリコ・レジェーロの声は、素人の域を超えているものでした。

 また、オーケストラ、ソリスト、合唱のバランスもはまった時は大変立派で、これは凄いな、と思わせる部分もありましたし、第2幕のアンニーナとカラメッロの二重唱のようにとても甘い雰囲気が魅力的なものもありました。

 舞台は簡素ながらも、オペレッタの雰囲気を十分感じさせられるもので、変に抽象的ではないところが良かったです。演出もオーソドックスながら、歌手たちの動かし方が、如何にもオペレッタ的であり、歌手たちの演技も、合唱団員も含めて堂々としたところが良かったです。

 ちなみに曲構成は、オリジナルのストーリーに沿いながら、シュトラウスの色々な音楽を追加したもの。上記の「南国のバラ」や「トリッチ・トラッチ・ポルカ」はその一例ですが、他にもありました。「ヴェニスの一夜」は、オリジナルの音楽だけつなげると、1時間30分位で演奏できるものと思いますが、今回の上演は15分の休憩を2回挟んで、3時間40分弱の上演時間となりました。この盛り沢山さは、構成を担当した八木原良貴のオペレッタ愛を感じさせられるものでした。

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鑑賞日:2012年7月14日

入場料:D席 5000円 5FR1列17番

平成24年度文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)

主催:公益財団法人東京二期会

東京二期会60周年記念公演

オペラ1幕・字幕付原語(イタリア語)上演
マスカーニ作曲 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」(CAVALLERIA RUSTICANA)
台本:ジョヴァンニ・タルジョーニ・トッツェッティ/グイード・メナーシ

オペラ2幕・字幕付原語(イタリア語)上演
レオンカヴァッロ作曲 歌劇「道化師」(I Pagliacci)
台本:ルッジェーロ・レオンカヴァッロ

会場 東京文化会館大ホール

スタッフ

指 揮 パオロ・カリニャーニ  
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
合 唱 二期会合唱団
合唱指揮 佐藤 宏
児童合唱 NHK東京児童合唱団
児童合唱指揮 金田 典子
演 出 田尾下 哲
装 置 幹子S・マックアダムス
衣 裳 小栗 菜代子
照 明 沢田 祐二
アクション  :  渥美 博 
舞台監督    村田 健輔 
公演監督 多田羅 迪夫

出演者

カヴァレリア・ルスティカーナ

サントゥッツァ 清水 華澄
ローラ 澤村 翔子
トゥリッドゥ 大澤 一彰
アルフィオ 松本 進
ルチア 池田 香織

道化師

カニオ 片寄 純也
ネッダ 高橋 絵理
トニオ 上江 隼人
ペッペ 与儀 巧
シルヴィオ

与那城 敬

感 想

スタイリッシュなエグさ−東京二期会オペラ劇場公演 「カヴァレリア・ルスティカーナ」・「道化師」を聴く

 大澤一彰、素晴らしいテノールだと言う噂を聴いておりました。これは本当でした。軽くてすっきりした高音がとても魅力的です。冒頭のシシリアーノ。あれを聴いただけで、この方の凄さが分かってしまいました。カヴァレリア・ルスティカーナは、しばしば聴くオペラですが、トゥリッドゥをあんな風に歌った方はいたかな、そんな風に思ってしまうほど新鮮でした。勿論全部聴いてしまうと、細かいトラブルはありましたし、完璧という訳ではなかったのですが、あの素敵な美声を聴かされてしまうと、一寸位のミスは、いいではないかと鷹揚に思ってしまいます。それだけ衝撃的でした。

 サントゥツァ役の清水華澄は貫禄です。声の出し方が頑張りすぎている部分があって、必ずしもベストバランスな歌唱だとは思わなかったのですが、存在感がたっぷりあって、一方で、低音の虚無的な深みが良いように思いました。オペラ全体でみたときのキーロールの役割を十分に果たしていて良かったです。

 「ママも知る通り」は、メゾソプラノのアリアとしては割と有名なものですが、私自身はあまり好きな曲ではありませんし、これまで何度か聴いた中でも、特に素晴らしかった、という印象の無いアリアです。今回の清水の歌唱も、必ずしも素晴らしかったと言う訳ではないのですが、どこか、心を動かされる部分があって、一寸感心いたしました。

 池田香織のマンマ・ルチア。スタイリッシュなマンマ。マンマ・ルチアと言えば、いつもは、もっともっと老けたメイクをして、おばあさんであることを強調する演出が多いと思うのですが、今回は年齢を強調しない。池田の歩き方なども割合普通の感じでした。

 今回の「カヴァレリア・ルスティカーナ」の演出は、このマンマ・ルチアが象徴的です。全体的にモノトーンで、イタリア的明るさというか、暑さを強調しない。勿論トゥリッドゥの男臭さや、ローラの美人ぶりはあるのですが、心理劇の側面を意識している、と言ったらよいのかもしれません。シシリア島の広場は、何もない灰色の舞台であって、状況を示すために、木の椅子と机を持ちこみます。その机と椅子も基本は黒と灰色で、机や椅子の動きだけで、舞台が作られて行きます。

 シンプルだけどもスタイリッシュ。カヴァレリア・ルスティカーナとしては、一寸面白い舞台と申し上げても良いのかもしれません。しかし、その無機的でスタイリッシュな舞台が、カヴァレリア・ルスティカーナの音楽に乗り、歌手が動き始めると、ぐっとえぐみの強い舞台に替わってきます。すっきりさせるように見せながら、実は全然すっきりしていない。田尾下哲の演出は、舞台のすっきりさに敢えて対抗して、カヴァレリア・ルスティカーナというオペラが持つのエグさを強調しているようです。

 この田尾下の演出を強力にサポートしていたのが、カリニャーニ指揮の東京フィルの演奏でした。カリニャーニは、メリハリをしっかりつけた豊饒なな音楽作りを示し、オーケストラをドライブしました。デュナーミクの強弱が明確で、「カヴァレリア・ルスティカーナ」という作品の輪郭をクリアに示していましたが、音楽自身の持つエネルギーは無機的なものとは程遠く、どちらかと言えば下世話で、シシリア島の血の流れや興奮を強くさせるものでした。

 フィナーレでトゥリッドゥが決闘で倒されると、決闘の場所になっていたテーブルが大きく回され、死体が、観客の前に晒されます。そこにオーケストラの最後の音がかぶる時、ドラマの力を感じる思いがしました。

 という訳で、良くできた舞台だったのですが、惜しむらくは、松本進・アルフィオの不調。途中、声が無くなった部分もありましたし、また声質も、彼の良い時の声よりは痩せていて、迫力に欠けていました。野卑で血の滾りを外見的には見せていたようですが、声はそれに伴っていない感じで残念でした。

 以上「カヴァレリア」は素敵なテノールを聴けて良かったのですが、「パリアッチ」は、もっと面白く聴けました。こちらは演出の効果が大。

 良く、ヴェリズモ・オペラは、新聞の三面記事やテレビのワイドショーで取り上げられるような下世話な事件を取り扱うと言われるわけですが、田尾下哲の舞台は、正にテレビのワイドショーのスタジオでした。トニオが登場して、例の口上を司会者席で言った後、再現ドラマとしての「道化師」が始まります。再現ドラマはスタジオの中心で行われ、後ろには、観客がワイドショーで良くあるひな壇に座ってみていると言う寸法ですね。だから、カニオの「衣裳をつけろ」はひな壇の観客の前で歌うのですね。

 一方で、シルヴィオは、テレビ局のディレクターで、ネッダと浮気をしている、という想定。即ち、テレビ局で起きた悲劇をワイドショーで再現している、という形。唯、この再現ドラマは、最初再現ドラマだった筈なのが、いつの間にか現実になってしまって、カニオとネッダとシルヴィオがスタジオの中でお互いを殺し合って終わると言うものでした。私であれば、その後ディレクターが登場して、「カット」の演技をさせて、全員を立ち上がらせてカーテンコールに持ち込みますが、田尾下は、死んで幕、の方がインパクトが強いと思ったのでしょうね。三人が舞台の上で倒れて幕がおりました。

 歌唱に関して言えば、高橋絵理のネッダがまず魅力的。ピンと張った強靭な声がとてもよく、「鳥の歌」の高音の響きがとても良いと思いました。又、コロンビーナに扮してからの演技・歌唱ともコケティッシュな魅力があって素晴らしいと思いました。高橋についてはデビューの2004年国立音大オペラ「フィガロの結婚」伯爵夫人以来の聴取となりましたが、割目すべき成長を感じたと申し上げます。未だ30台前半の若手。今後に大いに期待できると、嬉しくなりました。

 片寄純也のカニオも良好。唯、片寄に関して言えば、カニオとしてはもう一段の余裕が欲しい感じがしました。睨みが利かない、というのか、もう一段迫力があってもいいのかな、という気がしました。一番の聴かせどころである「衣裳をつけろ」の嫉妬心が元になる混乱の表現が今一つおとなしいと思いましたし、道化師の悲しみも、もう少し前面に押し出せても良かったような気がします。

 上江隼人のトニオは、プロローグの歌唱からとても立派で良かったと思います。唯、ネッダにいいよって振られる部分は、もっと厭らしく、振られて傷つく様子ももっと表情豊かな方が良かったかな、と思う部分もあります。

 キャラクターの特徴をよく出しているという点で非常に素晴らしかったのが、与儀巧のペッペです。アルレッキーノに扮する前も、扮した後も、存在感のある声と演技でした。とてもよかったと思います。

 与那城敬のシルヴィオも歌唱は全然悪くないのですが、存在感という点で今一つかな、という気がしました。テレビのディレクターですから、目立ってはいけないのでしょうが。

 音楽全体としては合唱も良く、また「カヴァレリア」と同様、カリニャーニ指揮の東京フィルの演奏もメリハリのあるくっきりした演奏でとてもよかったと思いました。今回一番Bravoを貰っていたのがカリニャーニでしたが、それは当然のことだと思います。

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