どくたーTのオペラベスト3 2012

第1位 11月23日 NISSEI OPERA 2012公演
モーツァルト作曲「フィガロの結婚」
字幕付原語上演 会場 日生劇場

第2位 10月2日  新国立劇場公演

ブリテン作曲「ピーター・グライムス」
字幕付原語上演 会場 新国立劇場オペラパレス

第3位  11月9日 日生劇場公演
ライマン作曲「メデア」
字幕付原語上演 会場 日生劇場

ベスト歌手
大隅 智佳子(ソプラノ)

優秀賞 
松村禎三作曲「沈黙」(新国立劇場公演、新国立劇場中劇場 2/14)
モーツァルト作曲「フィガロの結婚」
(藤原歌劇団公演、東京文化会館 3/3)
プッチーニ作曲「トゥーランドット」
(立川市民オペラ公演、立川市民会館大ホール、3/11)
ワーグナー作曲「ローエングリン」(新国立劇場公演、新国立劇場オペラパレス、6/7)
ベッリーニ作曲「夢遊病の女」(藤原歌劇団公演、新国立劇場オペラパレス、9/8)
ワーグナー作曲「パルジファル」東京二期会オペラ劇場公演、東京文化会館、9/17)
ドニゼッティ作曲「マリア・ストゥアルダ」オペラ彩公演、
和光市民文化センター「サン・アゼリア」大ホール、12/15)
(優秀賞は上演順)

別格
ストラヴィンスキー作曲「夜鳴きウグイス」/ラヴェル作曲「子供の魔法」(NHK交響楽団第1742回定期演奏会、NHKホール、12/1)

選考理由

  2012年を回顧すると、東日本大震災の復興がまだ進まないですとか、景気回復が思わしくないとか、あまりいい話はないわけですが、一方で、ロンドンオリンピックにおける日本選手団の活躍や、京都大学・山中伸弥教授のノーベル賞受賞など、文化・スポーツ面ではそれなりの一年であったようにも思います。

 オペラに関して言えば、エディタ・グルベローヴァが引退ということで、日本でのさよなら公演を行ったというのが大きな話題でした。そういったイヴェント的なものは別としても、本年の日本でのオペラ上演状況は、文化予算の切りつめられる中、例年並みの活動はされている印象です。私自身は、本年は43回オペラを見に出かけ、49本のオペラを聴取いたしました(演奏会形式も含む)

 私自身のオペラ鑑賞を概観すると、本年もここ数年来と同様に、バラエティに富んだオペラ上演を鑑賞した、ということになるかと思います。私の鑑賞記録を分類すると、49本中9本は、舞台上演を見るのが初めての作品でした。また公演主体も、新国立劇場、二期会、藤原のほか、市民オペラや大学オペラも色々見ました。かなりバラエティに富んでいると思います。初めて入ったホールも何か所かあります。

 そこで、2012年全体の傾向ですが、今年の特徴は、まず大学オペラがあまり良くなかったのが印象的です。市民オペラは、突出したソリストを連れてこれた団体は立派な演奏にまとめられることができたように思います。立川市民オペラの津山恵、荒川区民オペラの大隅智佳子、オペラ彩の小林厚子などが良い例でしょう。藤原、二期会の二大団体は、総じてレヴェルが高く、さすがに老舗の貫録を示しました。新国立劇場は、誰を呼んでくるかで結構レベルがバラバラですが、2011-12シーズンの掉尾を飾る「ローエングリン」と新シーズンの幕開けの「ピーター・グライムス」がともに立派な演奏でご同慶の至りです。

 選択した優秀公演を簡単に総括します。

 新国立劇場の「沈黙」はそれなりに不満もあるのですが、総じてみればよくまとまった演奏だと思いますし、小餅谷哲男のロドリゴがことに立派。経種廉彦、高橋薫子のモキチ、オハルのコンビもよく、いい演奏だったと思います。
 藤原歌劇団の「フィガロ」は、アルベルト・ゼッタの音楽づくりが魅力的で、歌手たちも総じて良く、またノーカット演奏であったことを含めて評価しました。
 立川市民オペラは、津山恵のトゥーランドットの大変素晴らしい歌唱でのランクインです。問題はカラフでしたが、カラフのミスキャストを吹き飛ばすような津山に大いに感動しました。
 新国立劇場「ローエングリン」は、連れてきた外人勢がみなよかったわけではありませんが、フォークトの力は圧倒的でした。日本人では、萩原潤の健闘が光っていました。
 藤原「夢遊病の女」はテノールがブレーキでしたが、それ以外の歌手はみんな立派で、特に主役のアミーナを歌った高橋薫子が実によく、リーザの関真理子も魅力的でした。
 二期会の「
パルジファル」とても立派。飯守泰次郎の音楽づくりが素晴らしく、歌唱も今の二期会の層の厚さを痛感させられる名演奏でした。ベスト3に入れなかったのは、単に私がワーグナーをあまり好まないから、その一点です。二期会は、夏のカヴァ/パリもよかったし、二月のナブッコも悪くはありませんでした。さすがに日本一の歌手集団です。
 オペラ彩「マリア・ストゥアルダ」は、まず、滅多に取り上げられることのないドニゼッティの名作を取り上げたことをまず高く評価します。そして、敵役エリザベッタを歌った小林厚子が最高に素晴らしかった。この二点からの選択です。

 N響ベスト3のトップに選んだので、こちらには入れなかったのが、12月定期演奏会の「夜鳴きウグイス」/「子供の魔法」です。シャルル・デュトワの洒落た指揮、NHK交響楽団の素晴らしい演奏、歌手たちの見事な歌唱(特に、ディアナ・アクセンティ、デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソンが素敵でした)で、当然ベスト3に選ばれる演奏でした。

 優秀作品の上を行くベスト3ですが、第3位は、日生劇場の「メデア」にしたいと思います。聴いていても、これは難曲だろうなと思う音展開、当たり前の不響和音、跳躍も激しく、オーケストラパートもあまり歌手のことは考えずに書かれているという感じで、生半可な練習では追いつかないと思います。しかしながら、下野竜也指揮読売日本交響楽団の演奏も、飯田みち代、宮本益光、小山由美、弥勒忠史、大間知覚といった歌手陣、みな見事なもので、聴きごたえ十分の音楽を作って見せました。

 第2位は新国立劇場の「ピーター・グライムス」にします。ウィリー・デッカーの演出がなかなか見事でしたし、外題役のスチュワート・スケルトンが見事な心理描写で、ピーターの疎外感を表現しました。スーザン・クリットンのエレンも立派でしたし、バルストロード船長の ジョナサン・サマーズを良い歌を聴かせました。日本人脇役陣もみな見事なもので、この作品の本質を明らかにした名演奏だったと思います。

 さて、第1位ですが、日生劇場の「フィガロの結婚」にします。はっきり申し上げれば、音楽的にはこの演奏が本年の第一位だとは思わないのですが、オペラが舞台芸術であるという観点で見た時、トータルではこれ以上感心した舞台はありませんでした。その意味で、演出の菅尾友をまず高く褒め称えたいと思います。勿論演奏も十分立派なもの。伯爵夫人はいまいちでしたが、萩原潤の伯爵、楠永陽子のスザンナ、折河宏治のフィガロと歌手もそろい、また広上純一指揮の新日本フィルも見事な演奏を聴かせてくれました。本年度のベストワンにふさわしいものだと思います。

 さて、今年のベスト歌手ですが、今年はソプラノですね。見事なトゥーランドット姫を歌った津山恵、マクベス夫人とリューで気を吐いた大隅智佳子、かっこいいスザンナが魅力的だった楠永陽子、エリザベッタの見事な歌唱に惹かれる小林厚子が候補です。この中では、私にとっては津山が一番衝撃でしたが、マクベス夫人とリューが見事で、私は聴いておりませんでしたが、メデアでも見事な歌唱を披露したと評判の大隅智佳子が本年のベスト歌手にふさわしいように思います。

 2012年のオペラ公演におけるどくたーT的ベストは以上のとおりです。尚、例年の如く本選考に賞品はありません。選ばれた方・上演には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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