オペラに行って参りました-2018年(その2)

目次

ライバル心とチームワーク 2018年3月16日 新国立劇場「愛の妙薬」を聴く
素晴らしき哉、市民オペラ 2018年3月17日 立川市民オペラ「椿姫」を聴く
ドタキャンの影響 2018年3月18日 東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ「ノルマ」を聴く
なんてったってスペクタクル 2018年4月8日 新国立劇場「アイーダ」を聴く

オペラに行って参りました。 過去の記録へのリンク

2017年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2017年
2016年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2016年
2015年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2015年
2014年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2014年
2013年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2013年
2012年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2012年
2011年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2011年
2010年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2010年
2009年 その1 その2 その3 その4   どくたーTのオペラベスト3 2009年
2008年 その1 その2 その3 その4   どくたーTのオペラベスト3 2008年
2007年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2007年
2006年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2006年
2005年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2005年
2004年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2004年
2003年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2003年
2002年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2002年
2001年 その1 その2       どくたーTのオペラベスト3 2001年
2000年            どくたーTのオペラベスト3 2000年

鑑賞日:2018年3月16日
入場料:C席 6804円 4F 1列29番

主催:新国立劇場

新国立劇場開場20周年記念公演

オペラ2幕、字幕付原語(イタリア語)上演
ドニゼッティ作曲「愛の妙薬」(L'Elisir d'amore)
台本:フェリーチェ・ロマーニ

会 場 新国立劇場オペラ劇場

スタッフ

指 揮  :  フレデリック・シャスラン   
管弦楽  :  東京フィルハーモニー交響楽団 
チェンバロ  :  小埜寺 美樹 
合 唱  :  新国立劇場合唱団 
合唱指揮  :  冨平 恭平 
演 出  :  チェザーレ・リエヴィ 
美 術  :  ルイジ・ベーレゴ 
衣 装  :  マリーナ・ルクサルド 
照 明  :  立田 雄士 
再演演出  澤田 康子 
音楽ヘッドコーチ  :  石坂 宏 
舞台監督  :  高橋 尚史 

出 演

アディーナ  :  ルクレツィア・ドレイ 
ネモリーノ  :  サイミール・ピルグ 
ベルコーレ  :  大沼 徹 
ドゥルカマーラ  :  レナート・ジローラミ 
ジャンネッタ  :  吉原 圭子 

感 想

ライバル心とチームワーク・・・-新国立劇場「愛の妙薬」を聴く

 「愛の妙薬」は大好きなオペラで、これまで何回聴いたか分かりません。実演でも10回は絶対に超えている。20ぐらい行っているかもしれない。その中で素晴らしいパフォーマンスを何度も聴いてきました。しかしながら、外人歌手がアディーナを歌った舞台で、よかったことってあったかな、と思います。日本人アディーナであれば、高橋薫子、森麻季、光岡暁恵といった盤石のソプラノが何人もいるので、何度も感動的舞台を経験しているのですが。

 しかし、今回は違いました。外人ソプラノがアディーナを歌ったのを聴いて、初めて満足しました。更に申し上げれば、テノールもいい。ドゥルカマーラも素晴らしければ、ベルコーレもよく、その上合唱が新国立劇場合唱団ですから、もう文句のつけようがない。素晴らしい公演だったと申し上げられると思います。

 もちろん、指揮者とオーケストラがしっかり支えていたというのも大きかったと思います。シャスランはオペラを得意とする指揮者ですが、引っ張るタイプの指揮者ではなくて、歌手に比較的寄り添う指揮者のようです。演奏自身は中庸で無理がありません。楽譜の指示以上に緩急は付けていたと思いますが、それは台詞やストーリーに寄り添ったリーズナブルなもので、まったく違和感を感じさせません。やるべきことをやって歌手がしっかり歌える土台を下支えしているのよく分かりました。東京フィルの演奏も明晰で朗らか。余裕を感じさせる音楽で、「愛の妙薬」によく合っていると思いました。

 さて歌手陣ですが、まずアディーナを歌ったドレイがよい。正統的なリリコ・レジェーロのソプラノで、声質がアディーナにぴったりです。また容姿も可愛らしく、アディーナによく似合っていると思いました。力のあるソプラノのようで全体的に余裕たっぷりの歌唱。切れ味の良い端正な歌唱なのですが、ここぞという処の歌いっぷりが重くならず、それでいてアクートの高音がしっかり伸びていきます。アディーナのちょっと高飛車な感じも上手に出しており、それでいてネモリーノと上手く結ばれた時の表情も可愛らしく、大変満足しました。Bravaです。

 ネモリーノを歌ったピルグもよい。こちらも軽いテノールでネモリーノにぴったりの感じです。もちろん5年前に聴いたシラクーザのネモリーノほどの自在さはなかったかなと思いますが、十分に余裕のある自在な歌唱で素晴らしい。こちらも声もいいし、田舎の純朴な青年感をしっかり出していたと思います。「人知れぬ涙」はもちろんよかったのですが、例えば冒頭のカヴァティーナや妙薬が効かなくて焦っているときのオロオロ感もしっかり出ていて、そこもよかったと思います。

 このアディーナとネモリーノが重唱を歌うと、二人ともしっかり響かせようとするよいライバル心が働くのか、更に魅力的です。曲の終わりのアクート、二人でしっかり伸ばして見事に終わるところなど、力がある二人がやりあうからこそできるのだろうな、と頗る感心いたしました。

 ジローラミのドゥルカマーラ。こちらは五年前に引き続き再登場。低音が一部下がりすぎたのが玉に瑕ですが、全体としての雰囲気はさすがです。長大な登場のアリア「お聴きなさい、村の衆」。基本的に楽譜に忠実な歌唱で逸脱がないのですが(もう一つ申し上げれば、楽譜通りに最後まで歌いました。これは珍しい)、テンポの動かし方が巧いのでしょう。バッソブッフォの魅力がふんだんに現れていて、そこも素敵です。アディーナとの二重唱もしっかり受け止めている感じで、そこもよい。この作品はドゥルカマーラの存在感が全体に大きく影響するのですが、ジローラミはとてもいい感じでした。

 大沼徹のベルコーレも立派。ベルコーレはもっとキャラを立てたほうが道化役の雰囲気がさらに増すとは思いましたが、歌唱的には大変満足のいくものでした。吉原圭子のジャンネッタもしっかり存在感を示していました。新国立劇場合唱団は力量があることは申し上げるまでもないのですが、どんな部分でもしっかりと役割を果たし素晴らしかったと思います。

 お互い音楽的には丁々発止やりあいながら、しかしながらチームワークをしっかりとって魅力的な舞台に仕上げていった感じです。粗の少ない舞台で、愛の妙薬というオペラを聴く醍醐味をしっかりと味わいました。Braviです。

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鑑賞日:2018年3月17日
入場料:B席 2000円 2F 33列7番

主催:立川市民オペラの会、公益財団法人立川地域文化振興財団

立川市民オペラ公演2018

オペラ3幕、日本語字幕付原語(イタリア語)上演
ヴェルディ作曲「椿姫」(La Traviata)
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ

会場:たましんRISURUホール大ホール

スタッフ

指 揮 古谷 誠一
管弦楽 立川市民オペラオーケストラ
合 唱 立川市民オペラ合唱団
バレエ ジャパン・インターナショナル・ユース・バレエ
助演 立川市民オペラ2018劇団
バンダ 国立音楽大学有志
演 出 直井 研二
装 置 鈴木 俊明
衣 裳 下斗米 大輔
照 明 奥畑 康夫/西田 俊郎
舞台監督 伊藤 潤

出 演

ヴィオレッタ 鈴木 慶江
アルフレード 金山 京介
ジェルモン 牧野 正人
フローラ 中野 瑠璃子
ガストン子爵 川久保 博史
ドゥフォール男爵 東原 貞彦
ドビニー侯爵 照屋 博史
医師グランヴィル 山田 大智
アンニーナ 佐田山 千恵
ジュゼッペ 工藤 翔陽
フローラの召使 市川 宥一郎
使者 上野 裕之

感 想

素晴らしき哉、市民オペラ-立川市民オペラ2018「椿姫」を聴く。

 いろいろな意味でスリリングな公演でした。

 まずオーケストラの演奏がスリリング。昨年までオーケストラピットに入っていたのは、立川市のアマチュアオーケストラである立川管弦楽団でしたが、今年は「立川市民オペラオーケストラ」という名称で、立川市民オペラのために新たに編成されたオーケストラです。メンバーは立川管弦楽団員が多いようですが、その他、TAMA21オーケストラなどからも個人で参加されている方がいらっしゃるそうです。昨年の公演で、オーケストラはよく言えば「お客さん」感、悪く言えば「やらされ感」が強かったのですが、今回は自分から手を上げた方々による団体ということで少し前のめり感がでたのかな、という感じでした。

 それに対して指揮者が結構ある意味あざとい指揮をやって見せました。速い部分と遅い部分とをはっきりと振り分ける。例えば第二幕第二場。普通の演奏はもっと遅いです。しかし、古谷誠一はこんなに速くていいの、と言いたくなるぐらい高速演奏。早回しみたいで落ち着きがない感じがしました。しかしながら、オーケストラはぎりぎりでついて行く。もちろん弾き飛ばした部分、弾けなかった部分はあると思うのですが、音楽は壊れませんでした。そこは大したものです。一方で遅くするところはしっかり遅くする。メリハリはつくのですが、ちょっとやりすぎではないかと思いました。

 オーケストラの音色に関していえば、それはアマチュアの音です。美しさという点では不満が残りますが、この指揮者の振り回しに堪えて、しっかりと下支えをしたという意味で素晴らしかったと思います。

 さて市民オペラの華、合唱ですが、かなり頑張っていらっしゃいました。女声の人数が多すぎる感じがしますが、市民オペラのどこにでもある欠点で、仕方がありません。それでもドレスを着たご年配の女性が楽し気に歌われている様子は大変結構なものでした。

 ソリストは何を言っても牧野正人のジェルモンが素晴らしい。日本人バリトンでジェルモンと言えば牧野の名が最初に上がるぐらいの名手ですから上手なのは当然なのですが、他の歌手と比較するとまさに別格です。調子は必ずしも良い感じはしませんでしたが、経験が余裕を生んでいるのでしょうか。凄く説得力のある歌唱でした。「椿姫」一番の聴かせどころは、第二幕第一場のヴィオレッタとジェルモンの二重唱です。ここは、牧野が一所懸命手を差し伸べているのですが、ヴィオレッタはその手にすがる気がない感じで、結果として異質な二重唱になってしまったのが残念でした。

 ヴィオレッタはスリリングでした。はらはらさせられっぱなし、というのが本当のところ。鈴木慶江はかつて紅白歌合戦に出たのも見てますし、NHKニューイヤーオペラコンサートに出演したのも見ています。その歌唱はあまり感心できるものではなく、そのころ鈴木はオペラ界では全く無名でしたから、なぜこんな人が出演するのだと不思議に思ったものです。鈴木はその後、東京オペラ・プロデュースの公演などで時々歌っていますが、私自身は全く縁がなく、今回初めて彼女の舞台での歌を聴きました。

 正直申し上げてヴィオレッタを歌うに十分なスキルのある歌手ではありませんでした。もちろん最低限のことはこなしていて、音楽の流れを思いっきり寸断することはなかったのですが、出が遅れたり、音程が不安定だったりするところは枚挙にいとまがない感じで、これで最後までたどり着けるのか、と心配しました。確かに美人ですし、華のある方なので舞台は映えますが、歌があのレベルでは如何なものかと思ってしまう。アジリダの技術が乏しく「ああ、そは彼の人か~花から花へ」は華やかさに欠け、感情表現が消化されていないのか、第二幕第一場のジェルモンとの二重唱は、ヴィオレッタの気持ちが伝わってこない。第三幕の「さよなら過ぎ去った日々」は今回の中では一番安心して聴けましたが、その次の「パリを離れて」の二重唱はあまりうまくいっていませんでした。全体的に声量ももう少し欲しい所です。

 アルフレードの金山京介。鈴木ヴィオレッタよりは全然よかったのですが、この方もかなり不調。中音部はすっきりとした甘い美声で、田舎の純朴な青年像をしっかり演じていらっしゃいましたが、高音部と低音部がどちらもだめです。高音は全てかすれてしまう抜けた音で、アクートが全く決まらない。だからと言って低い方の腰の据わった音もなく、テノールを聴く楽しみを思いきり奪われていると思いました。

 フローラ役の中野瑠璃子は声量不足で存在感をあまり感じさせないもの。アンニーナの佐田山千恵はしっかりした歌で、役目を果たしていました。男声脇役陣はドゥフォールの東原貞彦が一頭抜けている感じ。第二幕第二場のアルフレードとのやり取りに存在感がありました。川久保博史のガストンは、冒頭のアルフレードを紹介するところがちょっと上ずっている感じでした。

 いろいろ小さな事故はありましたが、とりあえず大きな破たんなくゴールにたどり着いた感じです。聴き手に音楽の魅力だけを伝えてくれるような舞台の方がよいに決まっていますが、こういうドキドキ感の強い演奏もまた楽し、です。合唱団の方は楽しそうでしたし、良かったのではないでしょうか。

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鑑賞日:2018年3月18日
入場料:B席 6000円 2F 6列35番

主催:公益財団法人東京二期会/Bunkamura

東京二期会オペラコウチェルタンテ・シリーズ

オペラ2幕、字幕付原語(イタリア語)上演/セミ・ステージ形式
ベッリーニ作曲「ノルマ」(Norma)
台本:フェリーチェ・ロマーニ

会 場 Bunkamuraオーチャードホール

スタッフ

指 揮  :  リッカルド・フリッツア   
管弦楽  :  東京フィルハーモニー交響楽団 
合 唱  :  二期会合唱団 
合唱指揮  :  佐藤 宏 
演 出  :  菊池 裕美子 
映 像  :  栗山 聡之 
照 明  :  大島 祐夫 
舞台監督  :  幸泉 幸司 

出 演

ノルマ  :  大村 博美 
アダルジーザ  :  富岡 明子 
ポリオーネ  :  樋口 達哉 
オロヴィーゾ  :  狩野 賢一 
クロティルデ  :  大賀 真理子 
フラーヴィオ  :  新海 康仁 

感 想

ドタキャンの影響・・・東京二期会オペラコンチェルタンテ・シリーズ「ノルマ」を聴く

 今、日本人ソプラノで誰に一番「ノルマ」を歌って欲しいかと問われたら、私は大隅智佳子と答えます。2018年時点でソプラノ・リリコ・スピントで技術と声の両面のバランスで一番優れている日本人ソプラノは多分大隅です。ほかにも素晴らしいソプラノはたくさんいらっしゃいますが、ガラ・コンサートなどで大隅と一緒に歌ってもらうと、現実に大隅以上の魅力のある歌手はなかなかおりません。だから、二期会がノルマをセミステージ形式で上演し、大村博美と大隅智佳子のダブルキャストで上演すると聞いたとき、何の迷いもなく、大隅の出演日のチケットを求めました。そして本日会場に赴いたところ、大隅はキャンセル。歌うのは昨日もノルマを歌われている大村博美に替ったことに大いなる驚きを感じました。

 このキャンセルは本当にドタキャンだったようで、私は大隅が急にインフルエンザにでも感染し、やむを得ず降板したのかな、と思ったのですが、主催者の説明は急病による降板ではなく「諸事情により出演いたしません」とのこと。諸事情の内容を事情通の方に伺ったところ、ちょっと信じられないような内容。これが本当であれば大隅智佳子には何の責任もないのに降板したことになり、大隅ノルマを楽しみにしてきた観客を裏切ったことになります。事実かどうかは分からないので詳細の記載は避けますが、主催者の不手際としか言いようがありません。とにかく結果として、大隅はキャンセル、期待して伺った観客も困惑し、昨日に続けて歌った大村博美も大変だったと思います。

 さて、演奏の全体的な出来を申し上げれば、第一幕は「いまいち」、第二幕は「なかなか」という処でしょうか。その責任は大村の歌唱にあった、と申し上げましょう。さすがに二日連続の「ノルマ」は大変だった様子で、第一幕は声のコントロールが上手くいっていない感じでした。声をセーブしすぎていた印象もあります。例えば登場のアリア「清らかな女神」は、ピアノを強調する歌唱で、そのレガートな表情はひとつの行き方だとは思いますが、声が飛んでこず、歌に芯がない感じで今一つでしたし、アダルジーザとの二重唱はアダルジーザの方が存在感があって、違和感がありました。一方第二幕は、山を乗り越えたという安心感からか、ずっと自在な歌になって、余裕が出てきていました。結果として大村ノルマは第二幕の方が断然よかったです。特に自らを火刑に処する最終場面の歌唱は、緊張感のある立派なものでした。

 そのほかの歌手陣はみな立派でした。まずアダルジーザ役の富岡明子。響きに厚みがあり、それでいて重たくなりすぎない、大変すばらしい歌唱でした。今日の立役者と申し上げてよいと思います。特にノルマとの二重唱では声質が大村と富岡はよく似ていて、その分響きの均質化が見られました。多分声の質はもっと違った方が奥行きが出て、作曲家の意図に合うのではないかという気がしましたが、類似の声の二重唱は美しいです。Bravaと申し上げましょう。

 樋口達哉のポリオーネもさすがにベテラン、しっかりと役どころを果たして立派。狩野賢一のオロヴィーゾ、新海康仁のフラーヴィオもよかったと思います。

 今回の公演、オペラコンチェルタンテ、ということで舞台の上にオーケストラが乗り、その後ろに高台を設えてその上で歌唱演技をするというもの。男性歌手は全員燕尾服姿で女性歌手もみな多分自前のドレス姿。舞台装置はなく、ホリゾントに映される映像で場面を示します。主要歌手は簡単な演技をしますが合唱団は動かない。そうであればセミステージ形式と銘打たずに完全に演奏会形式でもよかったのかな、と思いました。

 フリッツアの指揮はかっちりとしていて揺るぎがないもの。ベッリーニを古典派につながる人と見做しているのだろうと思いました。東京フィルの演奏もかっちりしたもので、舞台に乗っている分パワフル。推進力の見える演奏でよかったと思います。

 それでノルマがアナウンス通り大隅智佳子だったらどれだけ素晴らしい演奏になったのかな、と思います。やっぱりこの交代はたいへん悔やまれるものでした。

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鑑賞日:2018年4月8日
入場料:D席 4860円 4F R6列4番

主催:新国立劇場

新国立劇場開場20周年記念特別公演

オペラ4幕、字幕付原語(イタリア語)上演
ヴェルディ作曲「アイーダ」(AIDA)
台本:アントニーオ・ギスランツォーニ

会場 新国立劇場オペラ劇場

スタッフ

指 揮 パオロ・カリニャーニ
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
合 唱 新国立劇場合唱団
合唱指揮 三澤 洋史
バレエ 東京シティ・バレエ団
児童バレエ ティアラこうとう・ジュニアバレエ団
演出・美術・衣装 フランコ・ゼッフイレッリ
再演演出 粟國 淳
照 明 奥畑 康夫
振 付: 石井 清子
音楽ヘッドコーチ 石坂 宏
舞台監督 大仁田雅彦

出 演

アイーダ イム・セギョン
ラダメス ナジミディン・マヴリャーノフ
アムネリス エカテリーナ・セメンチェク
アモナズロ 上江 隼人
ランフィス 妻屋 秀和
エジプト国王 久保田 真澄
伝令 村上 敏明
巫女 小林 由佳
バレエ・ソリスト 土肥 靖子(第1幕第2場)
  清水 愛恵(第2幕第2場)
    キム・セジョン(第2幕第2場)

感 想

なんてったって、スペクタクル-新国立劇場開場20周年記念公演「アイーダ」を聴く

 オペラの趣味は保守的で、オーソドックスなストーリーに忠実な演出が好きです。それでかつ舞台が豪華だったらそれに越したことはありません。新国立劇場のオペラの舞台の中で一番お金がかかっているのが多分ゼッフィレッリ演出の「アイーダ」です。綺麗だし、豪華。1998年1月新国立劇場開場第三作として製作されたこの舞台は、五年毎の節目にそのシーズンの目玉として上演され、今回も20年周年の目玉として上演されました。

 何度見ても素晴らしい舞台だと思います。豪華絢爛を絵にかいたような舞台ですが、そこにゼッフイレッリならではの細かい演技が加わって、実に分かり易く納得いく舞台です。特にアムネリスの描き方が上手い。アイーダとラダメスに音楽的な魅力が集中している作品ですが、アムネリスがどう演じるかでドラマとしての奥深さが全然変わります。今回もアムネリスに感動させられました。

 演奏ですが、カリニャーニのオーケストラドライブがかなり前のめりで全体を引っ張っていく指揮。休憩も含め3時間50分の上演時間とアナウンスされていましたが、実際は3時間45分程度で終演しました。オーケストラもきびきびした演奏で、締まった感じが良かったと思います。昔、オーケストラ・ピットに入った東京フィルはあまり評判がよくないことが多かったわけですが、技量的なレベルが上がったようで、テクニカルな目だったミスがなくなったのが素晴らしいと思います。

 歌手たちも総じて良好でした。個々人を比較すると、全体的な出来は5年前の舞台の方が良かったと思いますが、だからと言って今回の舞台が悪いものでは全くありません。

 まずアイーダを歌ったイム・セギョン。初めて聴く韓国人ソプラノですが、声の力が半端ではありません。最初の聴かせどころである「勝ちて帰れ」は、オーケストラも合唱も厚くてソリストにとって歌いやすい曲ではないと思いますが、声に力があり、朗々と響く歌声は、合唱やオーケストラを従える感じがあってよかったです。ただ、この方は声の力と美しさで勝負する方のようで、細かい感情表現はまだこれからなのかな、という感じを持ちました。第三幕の「おお、わが祖国よ」も力強い、悪く言えば一本調子の歌唱になってしまい。もっと繊細な表情を出していかないとこの曲の持つ切なさが見えてこないと思いました。とはいうものの、アジア人ソプラノでアイーダをこれだけのレベルで歌えるというのは、素晴らしいことだと思います。大変感心いたしました。

 ラダメス役のマヴリャーノフはかなりリリックな声の持ち主。ラダメスが 武将だとすれば少しなよなよ感があって似合わないかなという印象。歌唱は冒頭の「清きアイーダ」がリリックな表現で清新に聞こえ悪くはなかったし、第3幕、第4幕の表情もさほど悪くはないのですが、この方、高音のアクートが貧弱です。やっぱりラダメスで高音を張らないのはダメだろう、と思います。中音がなよっとした表情でも高音をしっかり張れれば印象も変わると思いましたが、全体的に物足りない印象です。

 それに対してアムネリスを歌ったセメンチェク、良かったです。艶のあるいい声で、低音がよく響きます。響く低音は一つ間違えると下品に聞こえますが、この方低音はドスが入って迫力があるにもかかわらず、品が悪くならないところに力量を感じます。最初アイーダの声に驚かされたのですが、聴いていると、セメンチェクの方がいろいろ細かいところで丁寧に歌われていて好感を持ちました。第二幕第一場でのアイーダとの二重唱や四幕第一場でのラダメスとの二重唱からモノローグに至る持って行き方や繊細な表情は、大変素晴らしいものだったと思います。今回の歌手で一番見事だったと申し上げましょう。

 アモナズロは堀内康雄のキャンセルに伴い、カヴァーで入っていた上江隼人が歌いました。二期会を代表するヴェルディ・バリトンでしっかり歌われていましたが、アモナズロとしては少し軽量級な感じがしました。もう少しポジションを低くとって重厚に歌われた方がアモナズロらしさが出たのではないのかなと思います。

 ランフィスを歌われたのは前回に引き続き妻屋秀和。さすがの声でした。安定した美しい低音はこの舞台を下からさせていました。同じ低音役でも久保田真澄のエジプト国王は、妻屋と比較すると声が飛んでいませんでした。伝令は藤原歌劇団を代表するテノールの一人である村上敏明。日本を代表するプリモだけあって、ちょっとしか歌わないにもかかわらず鮮烈な印象が残りました。小林由佳の巫女も立派でした。

 合唱がよかったのは申し上げるまでもありません。 

 以上、指揮者の音楽の進め方とそれについていったオーケストラ、魅力的な歌手、そしてゼッフイレッリの繊細で豪華な舞台が相俟って見応えのある舞台でした。

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