NHK交響楽団定期演奏会を聴いての拙い感想-2013年(後半)

目次

2013年09月21日 第1761回定期演奏会 ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
2013年09月27日 第1762回定期演奏会 ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
2013年10月19日 第1764回定期演奏会 ロジャー・ノリントン指揮
2013年10月25日 第1765回定期演奏会 ロジャー・ノリントン指揮
2013年11月08日 第1766回定期演奏会 ネッロ・サンティ指揮

2013年11月15日 第1767回定期演奏会 トゥガン・ソヒエフ指揮
2013年12月01日 第1769回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮
2013年12月06日 第1770回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮

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2013年09月21日 第1761回定期演奏会
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

曲目: ブラームス 交響曲第2番 ニ長調 作品73
  ブラームス   

交響曲第3番 ヘ長調 作品90

 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:小野富、チェロ:向山、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、バスーン:水谷、ホルン:福川、トランペット:菊本、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ティンパニ:久保

弦の構成:16-16-12-10-8

感想

 2013-14年の新シーズンに先立ちまして、N響はチェロの首席奏者として向山佳絵子さんを迎えました。向山さんは言うまでもなく、N響チェロ首席奏者・藤森亮一さんの奥様。N響は伝統的にご夫婦で団員、という方も多かったのですが、首席奏者二人が夫婦、というのは初めてのケースでしょうね。この強力な布陣が、N響の発展につながることを強く願うところです。

 それはさておき、名誉指揮者ブロムシュテットによるブラームス。86歳になられたということですが、正に矍鑠そのもの。指揮台に上がる歩き姿だって、指揮ぶりだって若い時と大きな違いが無いようにも思います。耳だってしっかりしていて、N響とのリハーサルでは、昔と同様、細かいニュアンスをチェックされていたらしい。大したものだとは思いましたが、そこがちゃんと演奏に反映されたかと申し上げると、正直申し上げてよく分かりません。

 ブラームスの第2番は私が知っているブラームスの2番とはちょっと違った音楽でした。一つは音のバランスです。第一楽章でことに顕著だったのですが、割と低音楽器の動きが見えるように構築されていました。それはひとつの行き方なのでしょう。ただ、低音楽器や内声が目立つせいなのか、スコアの縦の線がそろっていない気がしました。

 もちろんブロムシュテットはN響の演奏をすごく喜んでおり、拍手も凄く多かったので、私がブラームスの2番をよく知らないだけのことなのでしょうが、私には違和感がある演奏でした。

 後半の第3番。こちらは普通のブラ3。N響ならば、音の粒立ちをもう少し綺麗に出来るだろうな、とは思いましたが、テンポもバランスも立派で、普通のN響の演奏になっていたと思います。

 拍手はこちらももの凄く、ブロムシュテットも非常に喜んでおりました。私は、音楽指導のやり方は昔通りというものの、あの楽員と握手する姿はどこか好々爺的なものを見てしまいました。N響の観客は長老に指揮者には温かい拍手を送るのが伝統ですが、昔、彼がもっと厳しい音楽を演奏していたころ、こんなに拍手を受けていなかったなあ、と思うと、流石に、彼の来日ももうないかもしれないなあ、と観客も感じているのかな、と思いました。

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2013年09月27日 第1762回定期演奏会
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

曲目: ブラームス ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
      ヴァイオリン独奏:フランク・ペーター・ツィンマーマン 
       
  ブラームス   

交響曲第4番 ホ短調 作品98

 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:市川、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、バスーン:宇賀神、ホルン:福川、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、ティンパニ:久保

弦の構成:協奏曲14-14-10-8-6、交響曲:16-16-12-10-8

感想

 ファゴットの宇賀神広宣さんは、大阪フィルから移籍されて、2013-14年の新シーズンから契約団員となりました。正団員になった暁には、首席奏者になられる見込みです。

 さて、名誉指揮者・ブロムシュテットによるブラームス。凄い人気でした。会場はほぼ満席。当日券売り場は長蛇の列だったようです。演奏も、先週の交響曲2/3番よりも今回の方がより良かったように思います。

 まず、ツィンマーマンをソリストに迎えてのヴァイオリン協奏曲。流石に現代を代表する名手。その演奏は素晴らしいものでした。細かいところまできっちり引ききり、繊細な表情をしっかり出しています。その演奏は室内楽的美しさと申し上げても良いのかもしれません。それだけに、客席との距離が一寸遠かった感じがします。第1楽章は、ツィンマーマンがオーケストラの前で演奏しているにもかかわらず、オーケストラの後ろの方から音が音が飛んできているような感じがしました。

 N響の演奏も悪くはないのですが、ツィンマーマンの繊細さと比較すると、一寸音が強い感じで、微妙にバランスが悪いと思いました。そこが一寸残念。それでも、第二楽章のオーボエの独奏によるテーマを独奏ヴァイオリンが受け継ぎ、オーボエ、フルートによるオブリガートが入るあたり、絶妙に素敵でした。青山さん、神田さん、流石です。

 ブラームスの4番、楽譜が新ブラームス全集のヘンレ/ブライトコプフ版を使っているそうで、細かいところが普段聴いている「ぶらよん」と違っていました。例えば、第四楽章の冒頭。ブロムシュテットの演奏は、これが86歳の指揮者の演奏かと思うほど若々しいもの。第一楽章の颯爽とした推進力は音楽に全くゆるみを与えません。第二楽章は、N響の見事なアンサンブル能力を示しました。いうなれば、縦糸と横糸とがしっかり織り込まれて美しいタペストリーとして仕上がる感覚です。こういうアンサンブルが噛み合った音楽は、すっきりしていて、気分よく聴けます。

 第三楽章の快活なスケルツォと第四楽章の変奏曲にしても、エネルギッシュで、若々しい感じがします。こういう締まった演奏はとても素敵だと思いました。 

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2013年10月19日 第1764回定期演奏会
指揮:ロジャー・ノリントン

曲目: ベートーヴェン 「エグモント」序曲
     
ブリテン 夜想曲 作品60
      テノール・ソロ:ジェームス・ギルクリスト 
       
ブリテン 歌劇「ピーター・グライムズ」から「4つの海の間奏曲」 作品33a
       
  ベートーヴェン   

交響曲第8番 へ長調 作品93

 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:ヴィスコ・エシュケナージ(ゲスト・コンサートマスター)、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:佐々木、チェロ:向山、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:青山、イングリッシュ・ホルン:和久井、クラリネット:伊藤、バスーン:水谷、ホルン:福川、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川

弦の構成:ベートーヴェン10-10-8-6-6、夜想曲:8-8-6-4-4、4つの海の間奏曲:16型

感想

 今回のノリントンのベートーヴェンは彼の原点回帰した演奏と申し上げて良いと思います。オーセンティック演奏への拘りですね。弦楽器のノンヴィヴラート奏法はいつもの通りですが、ティンパニを強く響かせて、リズムを強く意識させるところや、金管の鋭い響き(強い響きではありません)が、相対的に弱い弦楽器(何せ、通常60人いることも珍しくない「ベト8」の弦楽奏者が40人です)、が浮き上がって聴こえるところなど、ノリントンらしさが充満していました。

 私は、ノリントンをEMIから最初の「ベートーヴェン全集」を出した頃から聴いていますから、こういう彼の原点回帰のような演奏は大歓迎なのですが、やはり、最近の比較的丸くなったノリントンしか知らない聴き手には衝撃的だったのでしょうね。最初の「エグモント序曲」が終わると、結構執拗なBooが飛びました。

 しかし、そこで負けないのがノリントン。最後の「べと8」では、この鋭角的な減衰の速い音楽を更に徹底して見せました。ティンパニには、硬いマレットで、ベートーヴェン時代に使われたと思われる小型ティンパニをガンガン叩かせます。そのリズムの切れの良さは出色ですが、第1楽章、第2楽章がおわると、客席を眺めましては、「これこそ俺の音楽だ」と、どや顔して見せます。それが何ともおかしかったです。

 なお、ベートーヴェン8番の交響曲は軽快で、リズムの切れが良く、大変素敵な演奏でした。

 さて、中間に演奏されたブリテン2曲。「夜想曲」は恥ずかしながら初めて聴く曲。8曲からなる歌曲集ですが、弦楽合奏を伴奏にして、曲ごとにファゴット、ハープ、ホルン、ティンパニ、イングリッシュ・ホルン、フルート&クラリネットのオブリガートが入る形式。歌詞の内容は、「夢」、「夜」、「幻影」、『幽霊」といったものが含まれています。

 こういう詩の内容ですから、ジェームス・ギルクリストは、声を朗々と張り上げることはせずに繊細に表現していきます。そういう意味では悪くない演奏ですが、曲とNHKホールとの関係を考えると、流石にこの曲にはNHKホールは広すぎます。もっと狭い響きの良いホールで演奏すれば、曲のニュアンスが明快に伝わってくるとは思うのですが、遠くで響いている感じがずっと付きまとい、なかなか音楽に入り込むことが出来ませんでした。

 「4つの海の間奏曲」は、本日唯一の大オーケストラ編成による曲。他の3曲がある意味室内楽的でしたから、この大オーケストラの演奏が、観客には清新に映ったかもしれません。拍手はたいへん多かったです。

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2013年10月25日 第1765回定期演奏会
指揮:ロジャー・ノリントン

曲目: ベートーヴェン 序曲「レオノーレ」第3番 作品72
     
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 作品37
      ピアノ・ソロ:ラルス・フォークト 
       
  ベートーヴェン   

交響曲第5番 ハ短調 作品67 「運命」

 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:ヴィスコ・エシュケナージ(ゲスト・コンサートマスター)、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:甲斐、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、バスーン:宇賀神、ホルン:今井、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、ティンパニ:植松

弦の構成:レオノーレ3番:10-10-8-6-6、ピアノ協奏曲:8-8-6-4-4、運命:14型(ただし木管は倍管)

感想

 良しにつけ、悪しきにつけ、ノリントンらしい演奏と申し上げましょう。非常に尖った演奏で、観客の評価も賛否両論、BooとBravoが交錯したカーテンコールを見たのは久しぶりです。私には面白い演奏会だったのですが、受け入れられない方にとっては腹が立ったでしょうね。

 その中で比較的普通だったのは、「レオノーレ」序曲。ノンヴィヴラート奏法でフレージングを豊かに聴かせるというノリントンらしさは勿論あるのですが、先週の「エグモント」序曲ほどは、鋭角的な演奏ではなかったと思いました。というか、後半のぶっ飛び方からすれば、この程度で驚くわけがないということだったのかもしれません。

 ピアノ協奏曲は、本当にオーセンティックを意識した演奏。ピアノこそスタインウェイのフルコンサートグランドですが、ピアノの蓋を外して、ピアニストは客席を背にして座ります。弦楽器はピアノを囲むようにして座り、指揮者はピアノの奥に立っています。

 今回は指揮者がいましたが、本来の意識としては、このスタイルはピアニストの弾き振りです。つまり、ノリントンの意識の中では、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の3番ぐらいまでは、ピアニストの弾き振りが本来の演奏スタイルだ、というのがあったに違いありません。更に申し上げれば、ピアノのピッチを少し下げて調律していたのではないでしょうか。自分が普段聴いているベートーヴェンのピアノ協奏曲の3番よりも渋い音がしていたような気がします。

 演奏自身は、全体に少人数だったこともあって、透明感のある素敵なものでした。フォークトも鳴りにくいピアノを割とがんがん弾いて、陰影の豊かな音楽に仕上げていたと思います。ただし、あの人数(弦楽器30人、管楽器12人、ティンパニ、ピアノ各1)では、NHKホール内を豊かに鳴らすという点では非力でした。ヴァイオリンの音が遠い感じがしました。王宮のサロンみたいなところでやればいいのでしょうが、NHKホールに向いた編成ではなかったと思いました。

 「運命」交響曲。尖っていました。第1楽章の荒々しい疾走感はノリントンならではでしょう。第一楽章が終わると得意のどや顔で観客を見ました。拍手がパラパラ起きると、ノリントンは拍手をもっとせい、と要求しました。この辺りも破天荒です。その後も普通ならもっとスタカートに演奏する部分をマルカートに演奏したり、普段聴く運命交響曲とは随分味わいの違う音楽になっていました。

 14型の弦に対し、木管が倍管というのは、ベートーヴェンの時代は、2管構成のオーケストラは、第1ヴァイオリン7、第2ヴァイオリン6、ヴィオラ5、チェロ4、コントラバス3に対して、木管が各2だったということを踏まえてやっているのだろうと思いますが、その結果として、木管の味が色濃く出る結果にはなっていました。

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2013年11月08日 第1766回定期演奏会
指揮:ネッロ・サンティ

曲目: ヴェルディ 歌劇「シモン・ボッカネグラ」(演奏会形式/字幕付原語上演)
     

シモン:パオロ・ルメッツ
マリア/アメーリア:アドリアーナ・マルフィージ
フィエスコ:グレゴル・ルジツキ
ガブリエレ:サンドロ・パーク
パオロ:吉原 輝
ピエトロ:フラノ・ルーフィ
射手隊長:松村英行
侍女:中島郁子
合唱:二期会合唱団

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:市川、フルート:甲斐、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、バスーン:水谷、ホルン:今井、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チンバッソ:客演(フリーチューバ奏者の岩井英二さん)、ティンパニ:久保、ハープ:早川

弦の構成:16型

感想
 「シモン・ボッカネグラ」は、落ち着いた作品で、ヴェルディ中期の傑作の一つだと思うのですが、舞台を見る機会はあまりありません。私が舞台上演を聴いているのは2回。1回は1994年の藤原歌劇団公演で、もう一つは2009年の大田区民オペラの上演。藤原公演は、ブルゾン、コロンバーラ、渡辺葉子が主要三役を歌っているのですが、作画に記憶がほとんどありません。4年前の大田区民オペラ公演は、市民オペラとしては本当に出色の出来で、上江法明のシモン、山口俊彦のフィエスコ、大隅智佳子のアメーリアが皆立派な演奏を聴かせてくれて深い感動を覚えました。

 さて、それらの経験から今回のNHK交響楽団の演奏会形式の「シモン・ボッカネグラ」、とても期待して行ったのですが、感動は大田区民オペラで覚えたものとは全然別モノでした。

 まず、N響の演奏の実力は流石だと思います。ヴェルディが晩年改訂した改訂版での演奏とはいえ、所詮はオペラの伴奏音楽ですから、彼らにとって難しいということは全くないのだろうとは思いますが、豊かな表情と言い、巧みな音色といい、レベルの高い演奏を行ったと思います。

 ネッロ・サンティはこの渋いオペラをスコアなしで振る。彼にとってもそれほど指揮する経験が多いとは思えない作品ですが、音楽全部が身体の中に入っているのでしょうね。やはり凄いと思います。

 歌手陣は、サンティがN響で演奏会形式オペラを上演するときにいつも招聘する、サンティ組と言ってよいメンバーです。即ち、サンティは2007年に「ラ・ボエーム」、2010年に「アイーダ」を演奏会形式で取り上げているわけですが、外題役を歌ったルメッツは、ボエームでは「ベノア/アルチンドロ」で、アイーダでは「アモナズロ」で登場していますし、フィエスコ役のルジツキも、ボエームではコッリーネ役を、アイーダではランフィス役を歌っています。サンドロ・パーク、吉原輝、フラノ・ルーフィ、松村英行もサンティ/N響と共演経験があります。

 それだけに、サンティの感覚が分かっていて、サンティの意識に沿った演奏をされていたと思います。ミスはところどころにあるのですが、個別の歌を微視的に見て行けばすごく立派だと思います。まず、フィエスコ役のルジツキが出色の出来。プロローグのアリアが良かったですし、シモンと絡む二重唱がどの部分も良好で、良い歌を聴かせてもらったと思います。外題役のルメッツも良かったです。「?」と思う部分もなくはなかったのですが、シモン・ボッカネグラという二面性のあるキャラクターをそれなりに表現していたと思います。また、この男性の低音歌手二人は声量的にも十分満足いくレベルで、良かったと思います。

 サンティの愛嬢・マルフィージは声量的には不満足ですが、細かい表現や表情はしっかり歌い込んでおり、悪いものではありませんでした。パークのガブリエレは、音が一か所落ちていましたが柔らかい高音が魅力的。吉原輝のパオロも、このメンバーの中では声の非力さを感じましたが、歌そのものは良いものだったと思います。

 以上のように個別の部品で見れば、指揮、オーケストラ、合唱、ソリスト、どれをとっても立派な演奏なのですが、それが組み合わさった時どうかと言えば、感動できない演奏でした。私には、4年前の大田区民オペラの方が断然楽しめました。

 この理由は大きくは二つあると思います。一つは会場です。NHKホールは広すぎて音の抜けが良すぎるのですね。例えば、シモンとフィエスコの二重唱などは濃密な熱さを感じさせるように歌っているわけですが、会場の風通しが良いせいか、私の席まで飛んでくる間に冷やされてしまう感じです。その距離感に違和感があります。

 もう一つは衣裳だと思います。このオペラはアメーリア以外はほぼ男性歌手であり、主要役二人がバリトンとバスなわけですが、今回男性歌手は全員燕尾服で登場。これだと歌を聴くまで、誰がどの役を歌うのかが分からない。また、聴き手にとってもさほど親しいとはいいがたいシモン・ボッカネグラですから、視覚的補助がないとなかなか音楽に入り込めないところがあったと思います。

 演奏会形式のオペラは音楽的な技法が複雑な作品では凄く効果的だと思いますが、「シモン・ボッカネグラ」に関してはあまり向いていないように思いました。

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2013年11月15日 第1767回定期演奏会
指揮:トゥガン・ソヒエフ指揮

曲目: ボロディン 交響詩「中央アジアの草原にて」
  ラフマニノフ   

ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18

      ピアノ独奏:ボリス・ベレゾフスキー 
  プロコフィエフ    交響曲第5番 変ロ長調 作品100 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:客演(読売日本交響楽団の鈴木康浩さん)、チェロ:向山、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、バスーン:宇賀神、ホルン:福川、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川、ピアノ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)

弦の構成:協奏曲;14型、他;16型

感想

 未だ36歳の若い指揮者による演奏。世界的には、既にトゥールーズ・キャピタル交響楽団の音楽監督として非常に評価の高い指揮者であるわけですが、N響とのマッチングは今一つかな、というのが今回の印象です。

 ボロディンは、取り立てて言うほどもない演奏。悪いものでは勿論ないのですが、指揮者の技量が良く見えるような曲ではありませんし、N響の力から言えばこれぐらいは演奏するだろうな、という演奏でした。

 続くラフマニノフ。ピアノストとオーケストラが協奏しているというよりは、競争しているような演奏でした。ベレゾフスキーのピアノは、ダイナミックな力感あふれる演奏で、ラフマニノフのこの作品の持つ詩情はやや抑えられた演奏。そうであるなら、オーケストラは少し押さえて、もう少し抒情的な響きを目指した方が良いと思うのですが、ソヒエフのの指揮ぶりはピアノに対抗しようとする姿勢がありありと分かるもので、動きが激しく、オーケストラの音が生々しく響きました。ピアノとオーケストラの音がぴたりとはまっていれば、こういう演奏もありかな、と思うのですが、微妙な位相のずれがあって、心地悪く聴こえました。私はオーケストラがもう一歩引いて、ピアノの音wp包み込むようにして、この曲の雄大な抒情性を引き出すような演奏の方が好きですね。

 プロコフィエフの交響曲。指揮者がオーケストラを引っ張る演奏でしたが、ラフマニノフほど指揮者の動きは大きくありませんでした。指揮者の若々しさが、N響の自発性をうまく引き出せた感じの演奏て、私は良いのではないかと思いました。それにしてもN響は上手いと思います。第二楽章のスケルツォの冒頭のヴァイオリンの一糸乱れぬユニゾンなどは流石だなと思いました。細かいことを申し上げれば、トライアングルやタンバリンの音はもう少し響いて欲しい、であるとか、管楽の小さなミスとかありましたけど、全体として見事だったと思います。

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2013年12月01日 第1769回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ指揮

曲目: ストラヴィンスキー バレエ音楽「カルタ遊び」
  リスト   

ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 

      ピアノ独奏:スティーヴン・ハフ 
  ショスタコーヴィチ    交響曲第15番 イ長調 作品141 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:白井、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、バスーン:宇賀神、ホルン:今井、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:植松、チェレスタ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)

弦の構成:ストラヴィンスキー、リスト:14型、ショスタコーヴィチ:16-14-12-12-10

感想

 デュトワ/N響のコンビは何度聴いても素敵だと思います。特に今回みたいなデュトワ得意の曲を並べたプログラムの場合、その良さが引き立つ感じがします。

 ストラヴィンスキーは、エスプリの効いた洒脱な音楽。N響では2001年のサヴァリッシュ指揮以来の演奏です。私は、2001年の演奏も聴いていて、その感想も公開しておりますが、その時の演奏は、結構重くて、私は満足していなかったようです。今回の演奏は、軽妙洒脱でなかなかカッコいいもの。素敵でした。こういう風に演奏してくれるところがデュトワの真骨頂なのでしょう。

 リストのピアノ協奏曲。ハフとデュトワは何度も共演していますが、お互いの信頼関係があるのでしょう。まずまずクールな演奏で良かったです。ハフは今回は技術的には完璧ではなかったと思いますが、リストのピアノ協奏曲第1番の本来の持ち味である、技巧的クールさはしっかり出せていたように思います。

 ショウスタコーヴィチの交響曲第15番。ショスタコーヴィチがどこまで意識していたかについては分かりませんが、ウィーン古典派から始まる交響曲というジャンルのの掉尾を飾る作品です。デュトワの音楽作りは、そういうことを意識した演奏だったように思います。そのためには、それぞれの断片断片の特徴を典型的に示していくことが大事だと思いますが、N響管楽器奏者たちのヴィルトゥオジティは高く、メリハリを示していたと思います。本日の演奏会の白眉でした。

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2013年12月06日 第1770回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ指揮

曲目: プーランク グロリア
     

ソプラノ独唱:エリン・ウォール、合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平) 

  ベルリオーズ    テ・デウム
     

テノール独唱:ジョセフ・カイザー、
合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)/国立音楽大学(合唱指揮:永井宏)、
児童合唱:東京放送児童合唱団(合唱指揮:大谷研二) 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:小野(富)、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:甲斐、オーボエ:青山、クラリネット:松本、バスーン:水谷、ホルン:福川、トランペット:関本、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川、オルガン:客演(フリー奏者の勝山雅世さん)

弦の構成:16型

感想

 デュトワは12月にN響定期に登場して、オペラや声楽付の大規模なオーケストラ曲を振るのは毎年恒例になりました。今年はフランス近現代を代表する二人の作曲家の宗教曲です。

 聴きどころは両曲とも合唱ですが、その合唱は、必ずしも十分とは言いかねるところがありました。新国立劇場合唱団は男声48人、女声52人の合計100人で登場しましたが、その多くはエキストラでしょう。新国立劇場では今ホフマン物語を上演中であり、合唱団のコアなメンバーはそちらに出演中です。N響と共演したのは、今回ホフマン物語で降り番の人が中心で、多分それでは全然足りないのでエキストラを沢山補充しています。そのせいか、ぴったり合って美しく響くところもあるのですが、男声の高音が苦しそうだったり乱れたりもしていました。新国立劇場で聴くときのオペラ合唱とはかなり違うテイストの歌だったと思います。

 後半の「テ・デウム」は前半の「グロリア」以上に大編成の合唱が必要ということで、国立音大の学生が入りました。それで迫力が出、ウーデクス・クレデリスの響きなどは壮大で大伽藍を揺るがすような感じですが、二つの合唱団の息遣いの一致は難しく、最初のテデウムは、入りが微妙にずれました。

 以上合唱には不満も残るのですが、全体としては非常に感動的なステージだったと思います。デュトワの曲の運び方が上手なのでしょう。

 「グローリア」は軽く明るい表情の部分と、重厚で劇的な表情の部分の対比が見事で、またデュトワの特徴である風通しの良さも感じられて、大変結構だったと思います。ソプラノ・ソロはやや線が細く、NHKホールには一寸向かない方だとは思いますが、繊細な表情が見事で素敵だったと思います。

 「テ・デウム」はまずはオルガンの重厚な音が素晴らしい。オルガンに導かれることによって二重フーガが見事に合いだした感じでした。児童合唱は子供的というよりは中性的な響きで、素敵でした。テノール・ソロも良く、フィナーレに向かってどんどん盛り上げていくデュトワの棒運びには、いつもながら感心いたしました。

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