NHK交響楽団定期演奏会を聴いての拙い感想-2009年(後半)

目次

2009年09月19日 第1653回定期演奏会 クリストファー・ホグウッド指揮
2009年09月25日 第1654回定期演奏会 クリストファー・ホグウッド指揮
2009年10月07日 N響アワー公開録音  秋山 和慶指揮
2009年10月17日 第1655回定期演奏会 アンドレ・プレヴィン指揮
2009年10月23日 第1656回定期演奏会 アンドレ・プレヴィン指揮
2009年11月15日 第1658回定期演奏会 ネッロ・サンティ指揮
2009年11月21日 第1659回定期演奏会 ネッロ・サンティ指揮
2009年12月05日 第1661回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮
2009年12月11日 第1662回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮     

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2009年09月19日 第1653回定期演奏会
指揮:クリストファー・ホグウッド

曲目: メンデルスゾーン 序曲「フィンガルの洞窟」作品26(ローマ稿)
     
  メンデルスゾーン    ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64(初稿)
      ヴァイオリン独奏:ダニエル・ホープ 
       
  メンデルスゾーン   交響曲第3番 イ短調 作品56「スコットランド」

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:店村、チェロ:木越、ベース:西山、フルート:客演(フリーの宮崎由美香さん)、オーボエ:青山、クラリネット:横川、バスーン:客演、ホルン:松ア、トランペット:関山、ティンパニ:植松

弦の構成:スコットランド:16型、その他:14型

感想
 新シーズンを飾る最初は、クリストファー・ホグウッドの登場です。ホグウッドといえば、1970年代後半から、エンシェント・ミュージック室内管弦楽団を主宰して、バロックや古典派作品のオーセンティック演奏で一躍名を挙げた指揮者です。私も当時、ヴィヴァルディの「四季」、モーツァルトやハイドンの交響曲の録音を聴いて、大きな衝撃を受けたことを覚えております。そのホグウッドが普通のオーケストラを指揮するようになったのは聞いておりましたが、ついにN響に登場です。大変楽しみに伺いました。

 オール・メンデルスゾーン・プログラムとはアナウンスがありましたが、流石にホグウッドです。普通のコンサートとは一味違います。まずオケ配置。一応ヴァイオリンの対向配置なのですが、通常であれば向かって左から第一ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第二ヴァイオリンと並ぶのが、今回はチェロとヴィオラが反対です。すなわち、異第一ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第二ヴァイオリンと並んでいます。これは、メンデルスゾーン時代の標準的な配置ということなのかしら。また、弦楽器はノン・ヴィヴラート奏法による演奏です。この辺は、指揮者の音楽学者としてのこだわりがあるのでしょう。更に驚いたのは稿にもこだわったことです。最初の「フィンガルの洞窟」はホグウッド自身が校訂した「ローマ稿2」という楽譜で演奏されました。

 普段聴く「フィンガルの洞窟」と比較して、管楽器がより前面に聴こえること、普段聴けないフレーズが登場することなど、聴いていてスリリングでした。完成版が268小節で構成されているのに対し、「ローマ稿2」は311小節あるそうです。そう思えば当然のことですね。しかし、普段聴く「フィンガルの洞窟」と比較して冗長な感じは私は致しませんでした。「ローマ稿2」の方が最終稿よりもより色彩的だからかもしれません。ホグウッドは校訂者の意地を見せてこの作品を的確に演奏したと思います。なかなか面白い演奏でした。

 ヴァイオリン協奏曲は初稿による演奏。初稿は、普段聴きなれているメン・コンとそんなに大きく違うという感じはしませんでした。細かくは、「あれ」、と思うところはありましたがさほどではない。ソリストのホープは、この初稿を世界で初めて録音した方だそうで、初稿による演奏を世界中でされているとのことでした。ソリストの演奏は繊細で細やかな表情を大事にするスタイルではなく、力強さを前面に出す野太さを感じさせるものでした。一方で、N響弦楽陣はノン・ヴィヴラートでの演奏ですが、ソリストは要所要所でヴィヴラートを使い、その部分がオーケストラから浮き上がって聴こえるようでした。私としては、ソリストもノン・ヴィヴラートで演奏して、高音部の華やかさを抑えた方が、今回のホグウッドのスタイルには合うのではないか、と思いました。

 今回の一番の聴きものは、通常の版で演奏された「スコットランド」です。この曲もノン・ヴィヴラート奏法による演奏ですが、これがいいです。ノン・ヴィヴラートの場合は、音を震わせないので、正確な音での演奏が必要なことと、速く音が消えていくので、ストレートなきびきびした演奏にならざるをえないという特徴があります。ホグウッドは古楽器団体を率いてオーセンティック演奏をしていた時もロマンティック表情を排して、ストレートな演奏をする方だったと思いますが、今回の演奏も即物的な演奏でした。弦のふくらみが普通のスコットランドと比較すると若干足りないので、木管、金管がより浮かび上がります。またホグウッドは、管をよく鳴らそうという意図もあったようで、しっかりと演奏させていたという側面もあるのかもしれません。もちろんN響の弦楽部門の力量は一流ですから、ふくらみは足りなくても音色や音の強さはしっかりしていていました。全体としてダイナミクスの幅の広い直截的な演奏で、聴き応えがありました。

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2009年09月25日 第1654回定期演奏会
指揮:クリストファー・ホグウッド

曲目: プロコフィエフ 古典交響曲 ニ長調 作品25
     
  ストラヴィンスキー    バレエ組曲「プルチネルラ」
       
  モーツァルト    フリーメーソンのための葬送音楽 K.477
       
  ハイドン   交響曲第104番 ニ長調 Hob.T-104 「ロンドン」

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:ヤーノシュ・セルメチ(客演)、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:店村、チェロ:木越、ベース:吉田、フルート:客演、オーボエ:茂木、クラリネット:横川、バセット・ホルン:松本、バスーン:客演、ホルン:今井、トランペット:関山、トロンボーン:新田、ティンパニ:久保

弦の構成:古典交響曲、モーツァルト:12型、ブルチネルラ:4-4-4-3-3(そのほかに弦楽五重奏)、ハイドン:14型

感想
 クリストファー・ホグウッドの2つ目のプログラムは、擬古典派及び古典派の音楽によるプログラムです。ホグウッドは、バロックから古典派をテリトリーとする指揮者ですが、現代オーケストラを指揮するときは新古典主義的作品も演奏するということなのですね。というわけで、今回は古典派を装った20世紀作品が二つと十八世紀の作品が二つとなりました。

 演奏は、明らかに本物の古典派のほうが優れていると思います。古典交響曲へのホグウッドのアプローチは、20世紀音楽としてではなく、本物の古典音楽としてのアプローチだったと思います。弦楽器のノンビブラート奏法や、第3楽章のガボットでのゆったりした演奏などが、それを裏付けます。そういう行き方は決して悪いものではないのですが、プロコフィエフの音楽の持つ古典派の衣の陰からのぞく現代的雰囲気は一寸見えにくくなっていたのかな、とも思いました。

 「ブルチネルラ」更によく分からない演奏でした。「ブルチネルラ」に用いられている音楽の原曲は全てバロック音楽あるいは古典派の音楽ですが、ストラヴィンスキーはこの作品を古典派の作品として作曲したわけではないだろうと思います。もちろんホグウッドはそれを承知していると思います。例えば弦楽器奏者のノンビブラート奏法は、この曲だけはやられませんでした。それでも、全体として見るとき、ストラヴィンスキーらしさよりも古典的な雰囲気が感じられ、全体として中途半端な演奏になっていたように思うのです。N響の手だれたちの演奏ですからまとまりは悪くないのですが、なんとなく違和感を覚えました。

 一方、彼の完全なテリトリーである後半の演奏は素晴らしいものでした。「フリーメイソンのための葬送音楽」は名曲ですが、実演で聴いたのは初めての経験かもしれません。ホグウッドらしい直線的表現ながら、落ち着いた素敵な演奏だったと思います。

 更によかったのが「ロンドン」交響曲。私は、ホグウッドが録音した「ロンドン」のオーセンティック演奏のCDを持っております。ここでホグウッドは、通奏低音を演奏に導入するなど当時の演奏を再現する試みを行っているのですが、今回の演奏はごく普通の演奏でした。変わったことをやるのではないかと期待していた聴き手にとっては残念でしたが、でも普通の演奏がとてもいいのです。

 弦楽器は勿論ノンビブラート奏法。ノンビブラート奏法は、演奏家にとっては表現の幅が狭まり大変だそうですが、聴き手にとっては音が濁らずきれいという特徴があります。今回は特に、音の密度が薄めになったため、内声の構造などもよく見通せ、構造のはっきりした演奏になりました。ホグウッドらしい比較的ドライでストレートな演奏ですが、清新でバランスの良い素敵な演奏だったと思います。

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2009年10月07日 N響アワー公開録音「大河ドラマテーマ音楽特集」
指揮:秋山 和慶

司会:西村 朗/岩槻 里子アナウンサー
ゲスト:池辺 晋一郎/加藤 清史郎

大河ドラマテーマ音楽特集    
曲目: 芥川 也寸志 赤穂浪士
  湯浅 譲二    元禄太平記
  林 光    花神
  一柳 慧    翔ぶが如く 
  池辺 晋一郎    独眼竜政宗
  渡辺 俊幸    利家とまつ 
  吉俣 良   篤姫
  大島 ミチル    天地人 
    
川にまつわるオーケストラの名曲    
曲目:  シューマン    交響曲第3番変ホ長調作品97「ライン」 
  ヨハン・シュトラウスU世    ワルツ「美しき青きドナウ」作品314 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:佐々木、チェロ:木越、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:客演、バスーン:水谷、ホルン:今井、トランペット:津堅、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ティンパニ:植松

弦の構成:16型

感想
 N響アワーが放映開始して30年。その30年を記念して初めての公開録音が行われました。N響会員のところには案内状が来たので、とりあえず申し込んでみたところ、当たってしまいました。約3倍の倍率だったそうです。そこで伺ったのですが、テレビの公開録音とコンサートとでは随分勝手が違います。まず、公開録音でもなければ、一生クラシックのコンサートとは縁のなさそうな方々が三分の一はいました。また音質よりも見栄えを優先させているようで、後ろの反響板が無いであるとか、オーケストラのポジションが、通常の定期公演の位置よりも下がっているとか、音響にとって悪いことを平気でやっています。また開演前にステージ・マネージャーが前説に出てきて、拍手の練習をさせるところなぞ、普通のコンサートでは当然あり得ないことです。

 そういう勝手の違う演奏、ということはあるかと思いますが、演奏の質は、私がここ最近覚えているN響の演奏の中では断トツの最低と申し上げなければなりません。N響の本来の実力の5割か6割しか出ていないという感じでした。

 前半のNHK大河ドラマのテーマ音楽は、NHK的には大変重要なものなのでしょうが、所詮は機会音楽であって、芸術性よりも番組の盛り上がり等が優先されるのは致し方がないのでしょう。その中では、芥川也寸志、湯浅譲二、一柳慧の作品が比較的ましだとは思いますが、彼らの代表作にはとてもならないものです。まして渡辺俊幸、吉俣良、大島ミチルの作品に至っては、音楽的内容が薄っぺらで、だから何なの、という感じでした。N響はお仕事だから演奏はしていますが、どうしたって「お仕事」以上のプラスアルファを感じることはできません。こういう音楽の宿命なのでしょうが、わざわざ公開録画で取り上げる必要があったのか、と疑問に思います。

 後半の「ライン」は全体的にもったりした厳しさの足りない演奏でした。秋山和慶には期待していた音があると思うのですが、とてもそんな音は出ていなかったのではないでしょうか。十分に打ち合わせが行われておらず、指揮者とオーケストラがお互い手探りで演奏していた印象です。さらに観客も悪い。交響曲なのに、楽章の間にすべて拍手が入る。「ライン」はそれほど有名な作品ではないかもしれませんが、交響曲が原則4楽章構成(「ライン」は5楽章構成)で、そこまで拍手をしないというのは基本的マナーでしょう。そういうマナーも知らない方が聴きにくる、というのもどうかと思いますし、そういったケアをしなかったNHKのディレクターも如何とも思います。もちろん、初めてクラシック音楽の生演奏を聴く方が来てはいけないということを申し上げる気はないのですが、観客のレベルをN響知ったとたんN響側も緊張感がなくなりました。もちろん基本的技術の高い集団ですから、演奏がボロボロになることはありませんが、おざなりな演奏になったことは否めないところです。

 放映の際には、楽章間の拍手は多分カットされ、音色も録音のミキシングで対応するのでしょうね。結果としてそれなりに聴ける演奏にお化粧するのでしょうが、実態はゲネプロレベル。N響の演奏はお金を払って聴くものだ、とつくづく思いました。

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2009年10月17日 第1655回定期演奏会
指揮:アンドレ・プレヴィン

曲目: W・リーム 厳粛な歌(1996)
     
  リヒャルト・シュトラウス    歌劇「カプリッチョ」作品85から最後の場
      ソプラノ:フェリシティ・ロット 
     
  リヒャルト・シュトラウス    家庭交響曲作品53 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:店村、チェロ:木越、ベース:西山、フルート:客演(渡辺)、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、バスーン:客演(大澤)、ホルン:今井/日高、トランペット:津堅、トロンボーン:新田、ティンパニ:久保、ハープ:早川

弦の構成:厳粛な歌:0-0-12-10-8、カプリッチョ:14型、家庭交響曲:16型

感想
 
 アシュケナージのあとN響の音楽監督を選任できないでいるわけですが、そこでN響事務局が考えた荒技は、アンドレ・プレヴィンを首席客演指揮者に迎えるというものでした。プレヴィンはこれまで何度もN響に客演し、素晴らしい名演を聴かせてくれたわけですからこの選任は極めて順当でありますし、プレヴィンファンである私にとっても、とても嬉しいことでした。

 そのお披露目コンサートが今回の演奏会です。ここでプレヴィンはドイツロマン派の終焉を意識したプログラムを組んできました。それも新しい作品から古い作品へという流れを作りました。

 「厳粛な歌」はリームの現代音楽ですが、そこに流れる音楽の意識は、すでに終わってしまったドイツロマン派に対するオマージュです。大編成オーケストラで演奏される作品ですが、ヴァイオリン、フルート、オーボエ、トランペットというオーケストラのメロディを奏でることを期待されている楽器をすべて排除し、厳粛な音をしっかり出すことを工夫した作品でした。音色は暗く地味で、旋律美はあまり感じられない作品ですが、そのゆったりとした流れは、死をイメージしており、その厳粛な雰囲気は味があると思いました。

 歌劇「カプリッチョ」の最後の場面は、本日の白眉と申し上げるべきでしょう。大変素晴らしい演奏でした。ソリストのフェリシティ・ロットといえば、15年前(1994年10月)に聴いたウィーン国立歌劇場来日公演の「ばらの騎士」でのマルシャリンの名唱で決して忘れることのできない印象を残したソプラノです。あの時の第3幕のゾフィー、オクタヴィアンとの三重唱や最後の寂寥感の表現は筆舌に尽くしがたい素晴らしさだったわけですが、15年経た今回のマドレーヌの歌唱もやはり大変素晴らしいものでした。

 ドイツ後期ロマン派の最後の大オペラ作曲家であったリヒャルト・シュトラウスは、「カプリッチョ」によって言葉と音楽の関係の奇妙さを書いて自分のオペラ作曲家としての掉尾を飾ったわけですが、ロットはこの言葉と音楽の間を揺れ動く女性の心情を声高にではなく、しかしながら明瞭に歌いあげました。もっと衰えが認められるのではないかと危惧していたのですが、全くの杞憂でした。N響の伴奏も実に上手。歌に寄り添う音楽の付けが、絶妙のバランスを保ちます。プレヴィンの老練の技とN響の高いヴィルトゥオジティと歌手の深いテキストの読み込みがこのような名演を可能にしたのだと思います。Braviです。

 最後の家庭交響曲。これもいい演奏。いつもは硬い表情で演奏することの多いN響のメンバーですが、プレヴィンの指揮のもとだと本当に音楽を楽しんでいるような表情で演奏しています。ちょっとリラックス感があります。プレヴィンは足が悪く、指揮台の上り下りには永峰さんや松本さんの手を借りておりましたし、カーテンコールでの行き来では、背中を丸めてとぼとぼ歩く本当に老人・老人しているのですが、紡ぎだす音楽は十分瑞々しくしなやかです。典型的な標題音楽で、オペラを本格的に書こうとしていたシュトラウスの当時の気持ちがわかるような演奏だったと思います。

 なお、今回は大規模曲ということもあったのですが、N響OBの方が数多く出演されていました。第1ヴァイオリン:大沢さん、金田さん、村上さん。第2ヴァイオリン:大松さん、根津さん。チェロ:平野さん。コントラバス:新納さん、クラリネット:磯部さん。

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2009年10月23日 第1656回定期演奏会
指揮:アンドレ・プレヴィン

曲目: プレヴィン オウルズ(2008)(日本初演)
     
  モーツァルト    ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488 
      ピアノ独奏:池場 文美
     
  ショスタコーヴィチ    交響曲第5番 ニ短調 作品47 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:店村、チェロ:木越、ベース:吉田、フルート:客演(宮崎由美香)、オーボエ:青山、クラリネット:松本、バスーン:水谷、ホルン:今井、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、ティンパニ:植松、ハープ:早川

弦の構成:オウルズ:14型、モーツァルト:8-8-6-6-2、ショスタコーヴィチ:16型

感想
 
 プレヴィンは足が悪く、指揮台に上がるのも一苦労です。指揮台から降りるときは、第二ヴァイオリンの男性奏者(本日は横山さん)に助けてもらっています。演奏はイスに座っての指揮になりますが、先週の定期公演では、それでも用意されたイスに寄りかかって、あるいは軽く腰をおろしての演奏でしたが、本日はしっかりと腰をおろしての演奏でした。しかし、音楽の瑞々しさ、しなやかさは変わるところがありません。そこがプレヴィンの魅力です。

 オウルズは、昨年作曲されたプレヴィンの新作です。オウルとは「ふくろう」であり、フクロウが出てくるといえば私はすぐにヤナーチェクの「利口な女狐の物語」を思い出しました。音楽自身のつくりは、あの作品のような神秘性・寓話性を感じさせるものではなく、素直な森のスケッチという印象です。落ち着いた美しい作品で、植生と小動物たちの生活で特徴づけられる森の穏やかな光景を示しているように思いました。その風景画的表現は、かつての映画音楽家プレヴィンを彷彿とさせるものでした。

 モーツァルトのピアノ協奏曲23番。池場文美というピアニストは私にとっては初めて名前の聴く方。アンネ・ゾフィー・ムターのパートナーとして主にヨーロッパで活躍されている方だそうですが、手元にあるピアニスト名艦にも載っていませんでした。ムターとプレヴィンとの関係からすると、プレヴィンが推薦して連れてきたのだと思いますが、これは成功でした。タッチは軽いのですが、基本的な音色の作り方は暗めです。たぶんソステヌートペダルをうまく使っているのだろうと思いますが、落ち着いた印象を与えます。ピアノパートが特別難しい曲ではありませんが、音の立ち上がり方のバランスがよく清澄な響きが美しいです。第2楽章のゆったりしたエレジー。第3楽章の抑制したロンド・フィナーレ。プレヴィンの柔らかな音楽づくりととてもよくあった素敵な演奏でした。オーケストラを徹底的に小編成にしたのもこの作品の可憐さを示すのに有効だったと思います。

 ショスタコの5番。久し振りで聴きましたが、最初、ショスタコの5番ってこんな作品だったかしら、と思わせるゆったりした丁寧な演奏。全体に丁寧にゆっくりとしたテンポで演奏するのですが、そこがプレヴィンのプレヴィンたるところなのでしょう。強い緊張を感じさせる演奏にはなりません。第3楽章のゆったりとした丁寧な流れは、演奏者にとってはプレッシャーだろうなと思いましたが、聴き手には気持ちの良い時間でした。フィナーレの爆発もよかったと思います。プレヴィンの特徴を味わえた演奏でした。

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2009年11月15日 第1658回定期演奏会
指揮:ネルロ・サンティ

曲目: ウェーバー 歌劇「オベロン」序曲
     
  シューベルト    交響曲第7番 ロ短調 D.759「未完成」 
     
  ブラームス    交響曲第1番 ハ短調 作品68 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:木越、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:横川、バスーン:水谷、ホルン:日高、トランペット:津堅、トロンボーン:新田、ティンパニ:久保

弦の編成:16型

感想
 
 サンティはオペラ指揮者なんだなあ、と痛感いたしました。もちろんこれは悪い意味ではありません。作品の見せ方を良く知っているということと、盛り上げ方が歌的であるところがそう思うところです。本日のプログラムは、正統派ドイツロマン派の3曲ですが、サンティの音楽づくりは基本的にゆったりとしていて、十分に歌わせようとするもの。北ドイツ的な厳しさやごつごつした雰囲気はなく、優しい演奏だったように思います。

 「オベロン」序曲は、輪郭をはっきりさせた演奏、デュナーミクを広くとり、部分部分の対比を明確にしたクリアな演奏で、オペラへの期待を否が応でも盛り上げるような演奏でした。こういう演奏こそがサンティの真骨頂なのでしょうね。

 未完成交響曲は、ロマンティックな演奏だったと思います。やや遅めのテンポで、オーケストラに彫りの深い演奏を要求します。そのために全体的にロマンティックな雰囲気が醸し出されるのですが、更にチェロ、コントラバスといった低音楽器の音が充実しており、深みと落ち着きが感じられます。第2楽章も同様の印象です。凡百の指揮者がこのようなゆったりとした彫りの深い演奏をしようとすると、全体に重たい演奏になってしまうことが多いのですが、さすがサンティです。ゆったりとしているのですが、重たくないのです。そういう感覚はさすが名指揮者だと思いました。

 ブラームスの1番も「未完成」と同様の印象です。すなわちしっかりとしているが重たくない演奏でした。ロマンティックな香気が高い演奏でした。特に第2、第3楽章でその感じが強いです。第二楽章の美しいヴァイオリンの音色とオーボエ・ソロ、第3楽章の間奏曲における弦楽、結構でした。このような美しい演奏の意識は第4楽章でも同様で、導入のアダージョが美しく、そこからだんだん盛り上がって、フィナーレのフォルテシモの迫力ある表現まで、一貫したロマンチシズムを感じました。

 演奏会として水準の高いものだったことは間違いありません。

 なお、本日の公演は第二フルート奏者の細川順三さんの定年前の最後の公演でした。細川さんは登場回数の多いフルーティストで、N響のフルートパートのまとめ役だったように思います。お疲れさまと申し上げたいと思います。

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2009年11月21日 第1659回定期演奏会
指揮:ネルロ・サンティ

曲目: レスピーギ 交響詩「ローマの噴水」
     
  レスピーギ    森の神々 
      ソプラノ独唱:アドリアーナ・マルフィージ
       
  ヴェルディ    歌劇「オテロ」から「柳の歌」〜「アヴェ・マリア」 
      ソプラノ独唱:アドリアーナ・マルフィージ
       
  ストラヴィンスキー    バレエ組曲「火の鳥」(1919年版) 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:店村、チェロ:藤森、ベース:西山、フルート:客演宮崎由美香)、オーボエ:青山、クラリネット:松本、バスーン:客演(井上俊次)、ホルン:今井、トランペット:津堅、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:植松、ハープ:早川、ピアノ:客演、チェレスタ:客演、オルガン:客演

弦の編成:ローマの噴水/火の鳥:16-14-12-9-8、他の2曲:14-10-8-7-6

感想
 
 これまでも何度も感じてきたことですが、サンティはニュアンスを大切にする指揮者です。イタリアオペラを得意とする指揮者ですから、アッチェラランドやリタルダンドを多用しながら盛り上げていくような印象があるのですが、むしろテンポは一定で、デュナーミクの付け方や細かい表情の変化の多用で音楽に陰影をつけていきます。

 「ローマの噴水」のような大規模管弦楽を使用する作品では殊にそのようで、テンポをきっちりと決めて、その中で奏者のヴィルトゥオジティを最大限に引き出そうとするものでした。一つ間違えれば全く面白げのない演奏に変わってしまうと思うのに、この表情の多様性が演奏の味わいに深みを与えています。N響のうまさを否が応でも感じさせられる演奏でした。

 「森の神々」は初めて聴く作品です。全体的にソプラノがはかなげな表情で歌います。その上にかぶさるようにオーケストラが入っていきます。基本的にゆったりとした音楽で、サンティはオーケストラにも十分歌わせようとして、艶やかな音楽が出来上がっています。ソプラノはオーケストラの上に乗っかるという感じではなく、オーケストラの細かなニュアンスの変化の波に乗りながら流れていくという印象です。はかなげで美しい音楽だと思いました。

 オテロより「柳の歌」〜「アヴェ・マリア」これは本日の白眉かもしれません。マルフィージは「森の神々」で見せたはかなげな表情ではなく、もっと芯はあるけれどもしかし悲しみをたたえた歌を披露しました。この伴奏役となったサンティ/N響。上手としか言いようがありません。歌手と指揮者とオーケストラの一体感を強く感じました。

「火の鳥」。全体としてはゆっくり目の演奏でした。表情豊かでゆったり目の部分の細かいニュアンスが抜群です。抑える部分と爆発する部分の鋭い対比が見事であります。またN響の技術も上がっているようで、細かいケアレスミスが見出しにくくなっています。結果として端正な「火の鳥」に仕上がっていたように思います。

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2009年12月5日 第1661回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ

曲目: ストラヴィンスキー アゴン
     
  ショスタコーヴィチ    ピアノ協奏曲第2番 ヘ長調 作品102 
      ピアノ独奏:キリル・ゲルシュタイン
       
  リヒャルト・シュトラウス    交響詩「ドン・キホーテ」作品35 
      チェロ独奏:ゴーティエ・カプソン、ヴィオラ独奏:店村眞積

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:西山、フルート:客演宮崎由美香)、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、バスーン:客演(河村幹子)、ホルン:今井、トランペット:関山、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川、ピアノ:客演、マンドリン:客演(青山忠)

弦の編成:アゴン:16型、ピアノ協奏曲:14型、ドン・キホーテ:16-16-12-10-8

感想
 
 デュトワらしい、一寸凝ったプログラムです。「アゴン」とショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番は、私がN響の定期公演に通い始めた1988年以降一度も取り上げられていませんし(この2曲はN響初演かもしれません)、「ドン・キホーテ」だって10年ぶりです。こういうプログラムで一夜の演奏会をまとめてしまうところが、まさにデュトワなのでしょう。

 「アゴン」はニューヨーク・シティ・バレエの委嘱作品で、今でもニューヨーク・シティ・バレエでは良く演奏され、同団の来日公演でも演奏されたことのある作品なのだそうですが、私は全く初めて聴きます。音響は現代風ですが、その中を各楽器のソロがつないでいくような感じの作品です。最初と最後の金管によるファンファーレが素晴らしく、そのほか篠崎さんのヴァイオリン・ソロや弦楽首席級のソロが良かったと思います。ハープとマンドリンが、第2ヴァイオリンの前に置かれていたので、この二つの楽器が大活躍する作品なのかな、と思いましたが、それらはいくつかあるエピソードの一つに使われただけで、その位置に置かれた意味は一寸分りませんでした。

 ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番。ゲルシュタインのピアノが抜群にいいです。非常に指の回る方だ、ということも確かなのですが、その打鍵の迫力や表情の付け方は、まさに天馬が駆け巡るように変幻自在で息をつかせないところがあります。一方、緩徐楽章である第2楽章は、粒立ちの良い音をきっちり出します。基本的には硬質な音なのですが、粒がそろって透明感がある音のためか、冷たい感じがしませんでした。このゲルシュタインというピアニスト、デュトワの棒に対する信頼感が大きいようで、デュトワの棒をずいぶん見ながら演奏していました。その結果、N響の高い技術とピアニストのテンポ感覚とが良く一致して大変素晴らしい演奏になったものと思います。本日の白眉と申し上げて良いでしょう。

 「ドン・キホーテ」。チェロ協奏曲のようでチェロ協奏曲ではないという曲の形式がどことなく座りの悪さを感じていたのですが、今回もその感じはありました。演奏は、さすがN響と申し上げて良いレベルだったと思います。しかしながら、私にとっては、最初の2曲ほどのインパクトはありませんでした。ゴーティエ・カプソンのチェロは、いうなればミッシャ・マイスキーのような感じです。どことなく思索的で、どことなく情緒的。それなりに自在な音を出していてなかなか結構だと思いました。店村さんのサンチョ・パンサもチェロの響きに呼応して素敵でした。N響の音も明晰でだったと思います。

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2009年12月11日 第1662回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ

曲目: チャイコフスキー     ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
        ヴァイオリン独奏:アラベラ・美歩・シュタインバッハー
         
  ヤナーチェク      グラゴル・ミサ曲 
        ソプラノ独唱:メラニー・ディーナー アルト独唱:ヤナ・シーコロヴァー
        テノール独唱:サイモン・オニール バス独唱:ミハイル・ベトレンコ 
        合唱:東京混声合唱団 合唱指揮:松井慶太 オルガン独奏: 小林英之

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:木越、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:横川、バスーン:水谷、ホルン:松崎、トランペット:津堅、トロンボーン:客演(呉信一)、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川、チェレスタ:客演

弦の編成:協奏曲:14型、ミサ曲:16型

感想
 
 デュトワが若いヴァイオリニストと共演する時一番取り上げられる作品がどうも『チャイコン』らしいです。N響でも4回目の演奏になります。アラベラ・美歩・シュタインバッハーは日独混血のヴァイオリニストで、なかなかの美人です。しかし、美人ヴァイオリニストで想像される美音で繊細な演奏とは一寸違います。一言でいえば、男性的な演奏でした。音が太くてどっしりとしていて悠然としています。速いパッセージを技巧的に弾く、という行為はあまり得意ではないようですが、一方で緩徐楽章の歌いあげる部分での歌心は魅力的でした。

 第一楽章のゆったりとしていて雄大な響き、第二楽章の自由闊達な歌心、第三楽章の速い部分は一寸つんのめる感じがあってどうかと思ったのですが、中間部のしっとりした味わい。チャイコフスキーの音楽に隠れている土臭さを感じさせてくれるいい演奏でした。デュトワ/N響の伴奏はさすがに手なれたもの。アラベラ・美歩の特徴を良くとらえた、こちらもやや男性的な伴奏で、良く合っていたと思いました。

 「グラゴル・ミサ」。滅多に聴ける曲ではありません。オーケストラでヤナーチェクというと「シンフォニエッタ」ばかり演奏されるイメージが強く、それ以外はなかなか取り上げられませんからとても嬉しいです。オーケストラだけで演奏される冒頭部分などは、「シンフォニエッタ」を彷彿とさせるものですが、歌が入るとかなり独特の印象を感じます。プログラムに書いてある対訳を見ると、歌われている内容は、普通のミサの典礼文と大きな違いはないようですが、「グラゴル語」という言葉があることすら良く知らないこちらとしては、何を歌われているのかは完全にちんぷんかんぷんでした。

 しかしながら、演奏は基本的に力強さを強く感じるものでした。デュトワの指揮は、敬虔にキリスト教の世界を描くというよりは、この曲の祝祭的気分を前面に出したように思いました。ところどころで見せる指揮台の上でのスウィングしたような身振りと、その時のオーケストラの雰囲気がそれを感じさせます。そしてこの力強さを支えていたのが合唱です。東京混声合唱団は男声60人+女声60人の合計120人の構成で、バランスされた声の迫力がこの曲の持つ民族的雰囲気を良く盛り上げていたように思います。さすがに実力のある合唱団だと思いました。ソリストは、ソプラノのディーナーが素晴らしい。力強い美声が魅力的でした。テノールのオニールも美声の持ち主。新進のヘルデン・テノールという触れ込みですが、声の力よりは本来の声の美しさで勝負していたようで、大編成のオーケストラと合唱の前では、一寸迫力不足のように思いました。アルトのシーコロヴァーは落ち着いた雰囲気の歌、ベトレンコはわずかに力みがあったように思いました。小林英之のオルガンも元気のよい演奏で、この曲の土臭い部分を強調。全体として大変楽しめた演奏でした。

 これで、拍手のフライングがなければ良かったのですが。最後の休符中に拍手をするのは、やはりルール違反/マナー違反ですね。

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