NHK交響楽団定期演奏会を聴いての拙い感想-2012年(後半)

目次

2012年09月15日 第1733回定期演奏会 アンドレ・プレヴィン指揮
2012年09月21日 第1734回定期演奏会 レナード・スラトキン指揮
2012年10月14日 第1736回定期演奏会 ロリン・マゼール指揮
2012年10月19日 第1737回定期演奏会 ロリン・マゼール指揮
2012年11月11日 第1739回定期演奏会 エド・デ・ワールト指揮
2012年11月16日 第1740回定期演奏会 エド・デ・ワールト指揮
2012年12月01日 第1742回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮
2012年12月07日 第1743回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮



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2012年09月15日 第1733回定期演奏会
指揮:アンドレ・プレヴィン

曲目: マーラー 交響曲第9番 ニ長調

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:木越、ベース:西山、フルート:甲斐、オーボエ:青山、クラリネット:松本、バスーン:客演(東京フィルの黒木綾子さん)、ホルン:今井、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:植松

弦の構成:16型

感想

 アンドレ・プレヴィンのマーラー。普通のマーラーとは一寸違う感じがします。一言で申し上げれば嫌らしくないマーラー、これは正しくない。いやらしさをあまり感じさせないマーラーです。

 オーケストラ・コントロールに関しては、プレヴィン、年老いたな、というのが正直なところ。いつものN響の精妙なハーモニーが今一つ甘く、バランスの崩れるところが何度かありました。そこをフォローしていたのが、コンサートマスター。篠崎コンマスは、指揮者の意図をい幕噛み砕きながら、全体に伝える役目を果たしていました。大変だったろうと思います。

 曲の作り方の特徴は、下品にならないことが挙げられると思います。特に第2、第3楽章。ここは、やる気になれば相当ケレンミの強い演奏に持ち込むことも可能ですが、プレヴィンという指揮者の生来の紳士的な部分が表に出るのでしょうか、濃い表情を積極的に出さない。淡々と演奏している訳ではなく、細かく指示を出しているのですが、濃厚な表情には持ち込まない。これは、面白いと思いました。

 マーラーの持つ世紀末的嫌らしさを際立たせない演奏は、第4楽章のアダージョの美しさを引き立てます。特に管打楽器が無くなり、弦楽器だけで演奏されるフィナーレの壊れそうな美しさは、正にプレヴィンの美意識なのだろうと思いました。あの消えていく美は、涙を呼ぶほど美しいものでした。

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2012年09月21日 第1734回定期演奏会
指揮:レナード・スラトキン

曲目: リャードフ

8つのロシア民謡 作品58

       
  ショスタコーヴィチ    交響曲第7番 ハ長調 作品60「レニングラード」 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:市川、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、バスーン:客演(大阪フィルの宇賀神広宣さん)、ホルン:日高、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ハープ:早川、ピアノ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)、ティンパニ:久保

弦の構成:16型

感想

 本年1月定期以来のスラトキンの登場です。1月のメインはチャイコフスキーの「悲愴」で、その演奏の濃厚な味付けに私はあまり納得できなかったのですが、今回の「レニングラード」は指揮者の色を強調すると言うよりは、作品自体の奇妙な味に上手に焦点を当てた演奏で、楽しめました。

 「レニングラード」交響曲は有名な作品である割には、コンサートで取り上げられることの少ない作品で、N響定期公演でも少なくとも25年は取り上げられて来ませんでした。私にとっても初めての実演経験です。実演を聴いて思うのは、CDでは分からなかった作品の奇妙な構成です。表面的には平明で元気が出る音楽ですが、よくよく聴いてみると、ショスタコ独特の語り口に暗さを秘めています。

 第一楽章の「戦争の主題」は、あたかもラヴェルの「ボレロ」のようにだんだん大きくなりますが、ここが既にスケルツォですよね。第2楽章が本来のスケルツォですが、第一楽章が激しいので、本来のスケルツォの持つ軽妙さを楽しめないように書かれている。第三楽章の緩徐楽章も単純な緩徐楽章ではなく、中間部に激しい部分を置いてフィナーレ。最後の最後は人間賛歌で終わりますが、その途中は非定形的な山あり谷ありです。

 スラトキンは、曲の持つ非定形的な山谷を、あまり自分のタクトで引き上げようとはせずに描いて見せました。それに応えるN響奏者の名人芸。小太鼓(竹島さん好演)、大太鼓(植松さん力強い)、シンバル(石川さん上手い)といったパーカッション陣が良く、木管の首席奏者たちの美しい音色も流石です。ことに神田さんのフルート。ピッコロ(客演:東京佼成ウィンドの丸田悠太さん)も好演でした。その他、金管楽器。バンダが一番後ろの列に並ぶと言う変則的なものでしたが、それだけに、金管の迫力も素晴らしかったと思います。いつものことながら、弦楽陣の多彩さも流石です。

 結果的にN響の上手さを否応なしに感じさせられる演奏になっておりました。

 第1曲目に取り上げられたリャードフ。小品ながら、ロシアの民謡の全ての形式を取りこんだと言われる作品だけあって、その多彩な表情が素敵です。スラトキン/N響は、その表情の違いを明確に、しかも肌理の細かい演奏で表現し、こちらも結構な演奏でした。

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2012年10月14日 第1736回定期演奏会
指揮:ロリン・マゼール

曲目: チャイコフスキー

組曲第3番 ト長調 作品55

       
  グラズノフ    ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品82 
      ヴァイオリン独奏:ライナー・キュッヒル 
       
  スクリャービン    法悦の詩 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:井野邉、チェロ:藤森、ベース:西山、フルート:甲斐、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、バスーン:客演(東京フィルの黒木綾子さん)、ホルン:今井、トランペット:関山、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:久保

弦の構成:14型(協奏曲)、16-14-12-12-10(その他)

感想

 私がクラシック音楽を本格的に聴き始めた40数年前、マゼールは既に世界的指揮者でした。それ以来録音や、ニューイヤー・コンサートのテレビ中継で馴染み深い指揮者ではあったのですが、実演を聴くのは今回が初めてです。40年前から結構毀誉褒貶のある指揮者で、それは日本でもそうなのですが、海外でもその様です。10年ほど前ニューヨークに出張した時、マゼール指揮のニューヨークフィルの演奏評がニューヨークタイムズとウォールストリートジャーナルに載っていたのですが、評価が全くの逆、ニューヨークタイムスはかなり批判的な書き方をしていたのに対し、ウォールストリートジャーナルはべた褒め。好悪の分かれる方なのだな、と思ったことを思い出します。

 それだけに、今回の演奏会は楽しみでした。そして、聴いた今の私の立場は、ニューヨークタイムスほど批判的にはなれませんが、ウォールストリートジャーナルほど手ばなしでもない感じ。

 チャイコフスキーの組曲は、チャイコフスキー的美を前面に押し出すような演奏で、音に深みがあって、それでいて表面が良く磨かれた銀の皿のような演奏。N響の上手さとマゼールの美学を示すものでした。個人的には一寸罅があって、そこから内包するパワーを噴き出すような演奏が好みなのですが、どこまでも美しく、立派な演奏に終始しました。

 グラズノフもロシア的な土臭さよりも都会の洗練を感じさせる演奏。キュッヒルは、ウィーン・フィルのコンサートマスターだけあって、オーケストラの上への乗り方が上手です。オーケストラに寄り添う様な演奏。全体的に幸福感の溢れる演奏になっていて、とても気に入りました。私にとっては本日の白眉。

 スクリャービンもいい演奏。全体の構成から割り返していくようなプロポーションのしっかりした演奏でした。作品自体が、ちょっと奇妙で、それなりに気を衒った演奏も可能だと思うのですが、マゼールは全体の設計図を部分部分の設計図に落とし込むような丁寧な演奏で、作品の輪郭をきっちりと描くような演奏をして見せました。

 立派な演奏で素晴らしく、流石世界的な指揮者の演奏だと思えるのですが、磨きの掛け方が自分の趣味と微妙に異なっていて、音楽に入り込めない感じがありました。

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2012年10月19日 第1737回定期演奏会
指揮:ロリン・マゼール

曲目: ワーグナー(マゼール編曲)

言葉の無い「指環」〜「ニーベルングの指環」管弦楽曲集


オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:ヴェスコ・エシュケナージ(ゲスト・コンサートマスター)、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:佐々木、チェロ:木越、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:松本、バスーン:水谷、ホルン:日高、ワーグナー・チューバ:今井、トランペット:菊本、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:植松

弦の構成:18-16-14-14-12

感想

 ワグネリアンではありません。どちらかと言えばワーグナーは苦手。とはいっても、これまで数多くのオペラを聴いている身とすれば、ワーグナーを避けて通るわけにはいかない。なんだかんだ言っても、東京リングは2チクルスとも見ましたし、その他、日本のメジャーな団体が上演するワーグナーは、それなりに聴いていると思います。

 また、クラシック音楽を録音中心に楽しんでいた頃、「ワルキューレの騎行」であるとか、「ジークフリートのラインへの旅」とかは時々聴いておりましたが、こうやって、本来16時間かかる楽劇のさわりのオーケストラの部分を1時間強に凝縮した今回の作品は、素直に楽しめば良いとは思うものの、どこか肩透かしに会ったようで、今一つ楽しめません。私はやっぱりオペラ好き、声好きなんですね。ここで、ブリュンヒルデが、ここでジークフリートが、と思っても、その声を聴けないのは残念です。

 それでも演奏は立派です。流石に金管楽器がよろけた部分がなかったとは申し上げませんが、全体とすれば、マゼールの美学とN響の能力とがうまく噛みあった演奏になったと申し上げてよいと思います。例えば、底からピアノで響き上がるような低弦楽器の迫力はよかったですし、日高さんのホルン、今井さんのワーグナー・チューバの音色も素敵でした。

 また迫力と言う観点では、弦楽器72名、木管楽器16名、金管楽器18名、打楽器5名、ハープ2名、合計115名の陣容は流石に凄かったです。合唱が入らない曲でこの人数がNHKホールの舞台に上がるのは稀ですが、それだけの音はしていたと思います。

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2012年11月11日 第1739回定期演奏会
指揮:エド・デ・ワールト

曲目: 武満徹

遠い呼び声の彼方に!(1980)

      ヴァイオリン独奏:堀正文  
       
  武満徹    ノスタルジア〜アンドレイ・タルコフスキーの追憶に(1987)
      ヴァイオリン独奏:堀正文 
       
  ワーグナー    楽劇「ワルキューレ」第一幕(演奏会形式・字幕付き) 
      ジークリンデ:エヴァ・マリア・ウェストブレーク 
      ジークムント:フランク・ファン・アーケン 
      フンディング:エリック・ハルフヴァルソン 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:市川、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、バスーン:客演(新日本フィルの河村幹子さん)、ホルン:日高/客演(元首席奏者の松崎裕さん)、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:植松

弦の構成:16型(遠い呼び声の彼方に)、8-6-4-4-2(ノスタルジア)、16-16-12-12-8(ワルキューレ)

感想

 武満徹の音楽は昔から好きでしたが、最近ますます好きになったような気がします。彼の音楽の持つどこか、日本的なところに惹かれるのでしょうか。勿論、N響の演奏の良さが関係しているのは間違いないようにも思います。

 「遠い呼び声の彼方に!」は、N響の美しい和声の波に、堀のヴァイオリンが浮かび上がるような演奏でした。「ノスタルジア」は、何度も演奏している堀ならではこその重みを感じさせる演奏だったと思います。このニ曲については、指揮者の意識が前面に出ると言うよりは、長い期間武満を演奏してきたオーケストラの特徴が色濃く出ていたように思いました。どちらにしても、ゆったりとしたチャーミングな演奏だったと思います。

 後半のワーグナー。デ・ワールトは、オペラ指揮者としての明晰な仕事を見せてくれたと思います。「ワルキューレ」という長大なオペラの骨格を示すようなバランスを取った演奏で結構でした。N響もなかなか演奏されないワーグナーのオペラでしたが、指揮者の意図に応えて、かっちりとした枠組みでしっかりと演奏されていたように思いました。

 一方、歌手陣には問題がありました。特にテノール。フランツ・ファン・アーケンは、はっきり不調でした。冒頭から輝きの不足した歌唱でしたが、特に輝いた声の欲しい第三場はまともに声が出ない状態。昨日の疲れが取れないうちに歌ったので、こんな風になったと思いますが、そこを何とかするのがプロのように思います。ソプラノとバスが良かったので、とりわけ残念な気持ちが強いです。

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2012年11月16日 第1740回定期演奏会
指揮:エド・デ・ワールト

曲目: ブルックナー

交響曲第8番 ハ短調(ノヴァーク版)


オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:木越、ベース:吉田、フルート:甲斐、オーボエ:青山、クラリネット:松本、バスーン:水谷、ホルン:今井、ワグナーチューバ:日高、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:石川

弦の構成:16型

感想

 ブルックナーは好きでもなければ、よく聴くわけでもありません。それでもN響定期公演を25年も聴き続けていれば、主要な交響曲は何度も耳にしています。ブルックナー最高傑作と言われる8番の交響曲についても、ワルベルグやらスクロヴァチェフスキやら尾高忠明やらで聴いていますが、今日のノヴァーク版によるデ・ワールトの演奏を聴いていて、ブル8のノヴァーク版って、結構詰まらない音楽ではないのか、と思うに至りました。

 N響の個別の奏者の力、これは大したものであります。今井さんを中心としたホルン陣や、木管のそれぞれ魅力的な音色、弦のあのトレモロだって全然悪いものではありません。ところが、それがアンサンブルとして纏まると、音楽の求心性が失われてしまいます。糊しろがぴったり合わず、微妙にずれている音楽になっている。また、音楽のグラデュエーションが明確ではなく、突然様子が変化する感じがします。色むらのある音楽で、私は全く支持することができませんでした。

 私は、あーあ、ワルベルクはよかった、尾高はよかった、と過去の名演に思いを馳せていたのですが、考えてみると、私がブル8を聴いて感心しているのは、皆ハース版なのですね。そう言えば、ノヴァーク版で演奏されたスクロヴァチェフスキの演奏もあまり良いとは思いませんでした。とすると、デ・ワールトの音楽解釈にも私に相容れなかったのかもしれないけれども、ノヴァーク版を聴かされた、と言うことが一番の問題だったのかも知れません。

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2012年12月01日 第1742回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ

副指揮:岩村 力

曲目: ストラヴィンスキー

歌劇「夜鳴きうぐいす」(演奏会形式・字幕付き)

      夜鳴きうぐいす:アンナ・クリスティ  
      料理人:ディアナ・アクセンティ 
      漁師:エドガラス・モントヴィダス 
      中国皇帝:デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン 
      侍従:青山 貴 
      僧侶:ジョナサン・レマル 
      死神:エロディ・メシュン 
      日本からの使者:村上 公太/畠山 茂 
      合唱:二期会合唱団(合唱指揮:冨平 恭平/鈴木 彰久) 
       
  ラヴェル    歌劇「子供と魔法」(演奏会形式・字幕付き) 
      子供:エレーヌ・エブラール
      ママ、カップ、トンボ:エロディ・メシュン
      安楽椅子、牝猫、リス、羊飼いの男:ディアナ・アクセンティ 
      火、ウグイス:アンナ・クリスティ 
      お姫様、コウモリ、フクロウ、羊飼いの娘:天羽 明恵 
      ソファー・木:ジョナサン・レマル 
      大時計、牡猫:デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン 
      ティーポット、小さな老人、雨蛙:エドガラス・モントヴィダス 
      合唱:二期会合唱団(合唱指揮:冨平 恭平/鈴木 彰久)
      NHK東京児童合唱団(合唱指揮:大谷 研二) 
       

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:木越、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、バスーン:客演(東京フィルの黒木綾子さん)、ホルン:今井、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チューバ:客演(東京フィルの大塚哲也さん)、ハープ:早川、ティンパニ:久保、ピアノ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)

弦の構成:16型

感想

 デュトワ/N響の力を否が応でも感じさせられる演奏でした。

 「夜鳴きうぐいす」も、「子供と魔法」もタイトルこそそれなりに知られていますが、上演機会はあまり多くはありません。私の実演経験はどちらも1回ずつです。

 「夜鳴きうぐいす」は、2001年の東フィル・オペラ・コンチェルタンテシリーズで、沼尻竜典指揮の演奏を聴いています。この時の「夜鳴きうぐいす」役は佐藤美枝子で、佐藤の技巧的な技を楽しんだ記憶があります。唯、曲に対する興味は、その時併演されたツェムリンスキーの「王女様の誕生日」の方に向かって、この曲の味わいを楽しむまでには行きませんでした。

 「子供と魔法」は、本年5月。二期会ニューウェーブオペラで聴きました。カルタンバック指揮/東京交響楽団。おもちゃ箱をひっくり返したような演奏で、若手の必死の努力を楽しんだわけですが、お世辞にも完成度の高い演奏とは言えませんでした。

 それらと比較すると、今日のN響、レベルが違うと申し上げて過言ではありません。デュトワが指揮すると、いつものN響よりも一段と上手になったような気がします。デュトワが演奏すると、トゥッティ奏者の音が普段よりもさらに揃うせいか、いつもより透明度が高くなります。その中で、木管奏者の華麗な響きがします。神田さんのフルート、菅原さんのピッコロ、一寸とちったけど、オーボエ陣、伊藤さんのクラリネット、山根さんのバスクラリネット、菊川さんのトランペット、新田さんのトロンボーンみんな素晴らしいと思いました。

 そうそう、弦楽器の一列目も流石です。「子供と魔法」のカーテンコールで、デュトワは吉田秀さんを最初に立たせましたけど、確かに素晴らしかったと思いました。

 「夜鳴きうぐいす」はデュトワの明快な指揮の中、曲が本来持っている幻想性を浮かび上がらせるような演奏でよい。超ロマンティックな雰囲気を楽器の力で見せるところが流石デュトワ、N響と言ったところです。

 歌手陣は、「夜鳴きうぐいす」を歌ったアンナ・クリスティが抜群によい。細かいところを言えば、上方跳躍が必ずしも完璧ではなかったような気がしますが、コロラトゥーラで囁くように歌う技術は、極めて見事です。本当にナイチンゲールが啼いているように思いました。Bravaです。

 漁師役のモントヴィダスも良い、軽くてスッと通る声が魅力的です。料理人のディレナ・アクセンティ、侍従の青山貴もよかったと思います。王様役のジョンソンは、ハッとするような美しいバリトンの声を持っているのですが、本質的にはキャラクター・バリトン。台詞に応じた多彩な表情が魅力的でした。

 後半の「子供と魔法」。5月の二期会のニューウェーブとは全く別物の名演。デュトワ/N響の場面に合わせた描き分けがとても上手で、例えばラグタイムのスウィングの仕方だって、いつものN響とは違うスマートなもの。何てスタイリッシュでカッコいいんだろうと、最初から最後まで感心しっぱなしでした。

 歌手陣はベテランがいい。まずは、デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソンですね。彼の大時計と牡猫は正に出色。声と内容とがあそこまで合っていると、何とも素晴らしいとしか言いようがありません。一緒にデュエットするディアナ・アクセンティの牝猫もとっても素敵です。

 エロディ・メシュンのカップ、モントヴィダスのティーポット、アンナ・クリスティの火もよかったと思います。天羽明恵は、最初のお姫様のところで一寸ヒヤッとしましたが、後は無難にまとめた感じです。

 合唱、児童合唱も又見事。二期会合唱団のオペラに対する感受性の高さをまた感じましたし、東京放送児童合唱団はの対応力もまた感じ入りました。

 とにかく、立派で、且つ楽しめる演奏でした。デュトワ/N響/ソリスト/合唱にBraviisimoと申し上げましょう。

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2012年12月07日 第1743回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ

曲目: ベルリオーズ

序曲「ローマの謝肉祭」 作品9

       
  リスト    ピアノ協奏曲第2番イ長調 
      ピアノ独奏:ルイ・ロルティ
       
  レスピーギ    交響詩「ローマの祭り」
      交響詩「ローマの噴水」
      交響詩「ローマの松」

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:松本、バスーン:客演(東京都交響楽団の岡本正之さん)、ホルン:福川、トランペット:菊本/関山、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:植松、ピアノ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)、チェレスタ:客演(フリー奏者の楠本由紀さん)、
オルガン:客演(フリー奏者の小林英之さん)、マンドリン:客演(フリー奏者の青山忠さん)

弦の構成:協奏曲;14型、その他:16型

感想

 先週も同じことを書きましたが、デュトワ/N響の力を否が応でも感じさせられる演奏でした。

 まずは、何といっても「ローマの謝肉祭」が素晴らしい。あのフィナーレの一糸乱れぬ行進は、N響以外どこが可能か、と思うほどの見事さでした。デュトワのベルリオーズは定評のあるところですが、さもありなん、と思いました。

 ついで、ロルティをソリストに迎えてのリスト・ピアノ協奏曲第2番。ロルティは、イタリアのファツィオリ社のピアノで演奏しました。ファツィオリはイタリアの高級グランドピアノの専門メーカーだそうで、私はこれまで知りませんでした。日本にも数台輸入されているそうですが、かなり珍しいものです。音は、普通のスタンウェイのコンサートグランドと比較して、低音部の響きに深みがるような気がしました。ダイナミクスの広いリストの作品には向いているのかもしれません。

 唯、演奏は、悪くはないと思うのですが、あまりピンときませんでした。ファツィオリのピアノは、ブリリアントな響きに特徴があるそうですが、ロルティの体質なのか、華やかさにやや欠けるところがあって、それが、そのように感じさせる原因かもしれません。

 ローマ三部作。デュトワはこの三部作を明らかに一曲として演奏したかったようです。そのため順番も、一番地味な「噴水」を真ん中に持ってきたのだろうと思います。しかし、お客はその意図を理解するのが遅すぎました。私は、「ローマの祭り」の拍手は仕方がないと思います。しかし、「ローマの祭り」が終わって、拍手をもらっても、デュトワが振り向かなかったことで、観客は気が付かなければいけない。しかし、「ローマの噴水」の後もしっかり拍手が沸き起こりました。これは如何かと思いました。

 演奏は、流石にデュトワらしいと言うべきか、華やかさと正確さとがバランスされた演奏。立派だと思います。観客がデュトワの意思にもっとより添えれば、もっと素敵な演奏になっていただろうと思いました。

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