NHK交響楽団定期演奏会を聴いての拙い感想-2012年(前半)

目次

2012年01月13日 第1718回定期演奏会 ラドミル・エリシュカ指揮
2012年01月28日 第1720回定期演奏会 レナード・スラトキン指揮
2012年02月11日 第1721回定期演奏会 ベルトラン・ド・ビリー指揮  
2012年02月17日 第1722回定期演奏会 ジャナンドレア・ノセダ指揮
2012年04月14日 第1724回定期演奏会 ロジャー・ノリントン指揮
2012年04月20日 第1725回定期演奏会 ロジャー・ノリントン指揮
2012年05月13日 第1727回定期演奏会 尾高 忠明指揮 
2012年05月18日 第1728回定期演奏会 広上 淳一指揮
2012年06月09日 第1730回定期演奏会 ウラディーミル・アシュケナージ指揮
2012年06月15日 第1731回定期演奏会 ウラディーミル・アシュケナージ指揮
 

2011年ベスト3
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2010年ベスト3
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2009年ベスト3
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2008年ベスト3
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2007年ベスト3
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2006年ベスト3
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2005年ベスト3
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2004年ベスト3
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2003年ベスト3
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2012年01月13日 第1718回定期演奏会
指揮:ラドミル・エリシュカ

曲目: スメタナ 交響詩「ワレンシュタインの陣営」 作品14
       
  ヤナーチェク    シンフォニエッタ
     
  ドヴォルザーク    交響曲第6番 ニ長調 作品60

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:井野邉、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、バスーン:水谷、ホルン:日高、トランペット:関山、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:久保

弦の構成:16型

感想

 ラドミル・エリシュカは、2009年2月のN響定期演奏会に客演し、スメタナの交響詩「我が祖国」を振って、大変な評判を得ました。2009年の「最も心に残ったN響コンサート」の第一位にも選ばれました。私もその演奏会は聴いているのですが、彼の演奏はとても素敵なものだとは思いましたが、年間ベスト1を取るような演奏ではなかった、そんな気がしていたと思います。

 今回エリシュカの演奏をじっくり聴いて思ったのは、私は、エリシュカの演奏が趣味ではないと言うことです。勿論、ある意味凄い土臭い演奏だったので、こういう演奏が好きな方は沢山いるのだろうな、とは思います。しかし、私は、彼のような切り口は好きではなれません。全体としては、春風駘蕩たる演奏で、飄々としている感じもあります。そこが、エリシュカの人間性なのでしょうが、音楽はそれだけで良いということではないと思います。

 スメタナの交響詩、「ワレンシュタインの陣営」、私は全く初めて聴く作品です。これぞ交響詩、という感じの作品で、音楽で描かれる情景がかなりストレートです。こういう作品は、緩急をもう少し明確にして、ある意味下品に演奏したほうが、曲の魅力が示しやすいと思うのですが、エリシュカには緩のみで急がない。そのせいかどうか分かりませんが、N響のメンバーも、今一つ音楽に乗り切れていない感じで、おどおどした演奏になっているように思いました。

 ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」。この演奏もユニークです。私のテンポ感覚からすると、飄々とした演奏でした。よく言えば大人の風格が感じられる演奏ですが、遅いところはやや間延びして聴こえます。もう少し畳みかけるようなパワーが感じられても良い作品だと思いますが、それが無い演奏です。またこの作品は、12本のトランペットが必要で、沢山のエキストラの方が出演されていましたが、N響の正式トランペット奏者と比較すると、技量不足の方が多いようで、ファンファーレが今一つ締まらない感じがしました。

 ドヴォルザークの6番の交響曲。実演で聴くのは初めてです。今日の三曲の中では、私に一番しっくりきた演奏でした。エリシュカの持っているボヘミア人の感覚とこの作品が、一番呼応している感じです。比較的ゆったり目の演奏で、そういう意味ではエリシュカらしい演奏ですが、そのエリシュカ節が作品に良く合っている感じがします。ある意味野暮ったい演奏ですが、作品の地味な感じにマッチしていました。第4楽章のアレグロが、アンダンテで演奏されるのではないか、という危惧を持って聴いていたのですが、流石はそれは無く、沢山ブラボーを貰っていました。

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2012年01月28日 第1720回定期演奏会
レナード・スラトキン指揮

曲目: ペルト フラトレス(1977/1991改訂)
       
  バーバー    ヴァイオリン協奏曲 作品14
      ヴァイオリン独奏:ナージャ・サレルノ・ソネンバーク
       
  チャイコフスキー    交響曲第6番 ロ短調 作品74 「悲愴」

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、バスーン:客演(東京フィルの黒木綾子さん)、ホルン:今井、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、大太鼓/小太鼓:竹島、ピアノ:客演(フリーの梅田朋子さん)

弦の構成:協奏曲;12型、それ以外;16型

感想

 スラトキン、12年ぶりのN響定期公演への登場です。そのころの私のスラトキンに対する印象は、割とオーソドックスだけれどもリズムに関する感性が高く、曲の構築感というか、見通しの良い演奏をする方だ、という印象でした。今でも好印象で残っているのは、1988年の1055回定期演奏会におけるアメリカ音楽特集や、1993年のマーラーの第5番の交響曲、同じく、ラベッグ姉妹とのモーツァルトの二台ピアノ、三台ピアノの協奏曲、2000年のチャイコフスキーの5番交響曲などです。

 そんなわけで、12年ぶりのスラトキン、期待して伺ったのですが、スラトキン、変わったな、というのが率直な印象です。一言で申し上げるならば、演奏が臭くなりました。ケレンミのあり過ぎる演奏、と申し上げたらよろしいのでしょうか。

 典型的なのが、悲愴交響曲です。この作品は、楽章ごとの表情が全く違い、それを対比的に描くと言うやり方は良く分かります。一つ一つのためを利かせて、表情豊かに進んで見せます。第二楽章のポルタメント、最終楽章のあの見事なまでの慟哭。あういう演奏が好きな方にはたまらないでしょう。でも私には、やり過ぎにしか思えませんでした。濃厚な味付けではありますが、人工調味料の濃厚さ、と言うべきか。もっと薄味で、要所要所には出汁が効いている京料理のような演奏に仕上げて下されば良かったのに、と思います。

 バーバーのヴァイオリン協奏曲。バーバーをことのほか得意とするスラトキンと、この曲をレパートリーの中心に置くと言われるナーシャとの組み合わせ。いい演奏に仕上がるのか、と思いきや、スラトキンの味がナーシャの持ち味を覆ってしまった演奏という感じがしました。スラトキンの音楽構築にケレンミがあり過ぎるのだと思います。

 バーバーのヴァイオリン協奏曲は、1940年代から50年代のハリウッド映画のBGMみたいな作品ですから、まあ仕方が無い部分もあるのだろうと思いますが、N響の演奏が、映画音楽みたいに聴こえます。勿論そこにソリストがしっかり浮かび上がってくれればあまり気にならないのですが、ナージャは、格別美音という訳でもなく、音を張り詰めさせて、オーケストラの上に浮かびあがろうと言う意識もないようです。衣裳も黒い上着に、くすんだ赤のパンツという組み合わせで、そちらも華やかではありません。結果的にソリストがオーケストラの中に埋没した感じになって、映画音楽的な感じがますます強まったのではないか、という風に感じました。

 ソリスト・アンコールは、ガーシュインの歌劇「ポーギーとベス」から「Bess, You Is My Woman Now」が演奏されましたが、弦楽5部の伴奏が付くもので、スラトキンが指揮しました。こういうアンコールは私は初めて見るもので、面白いと思いました。

 最初のペルト。ペルトを代表するオーケストラ作品で、N響でも三度目の演奏です。しかしながら、私は初めて聴きました。弦楽合奏によるメロディアスな旋律をクラベスというウッドブロックのような楽器を挟み込みながら大太鼓を叩くことで区切っていくというものです。もっとへんてこな音楽かと思っていたのですが、旋律線が美しく、静謐な印象の強い音楽でした。N響弦楽陣の上手さが光ります。

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2012年02月11日 第1721回定期演奏会
ベルトラン・ド・ビリー指揮

曲目: ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲
       
  プロコフィエフ    ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 作品19
      ヴァイオリン独奏:イザベル・ファウスト
       
  シューベルト    交響曲第8番 ハ長調 D.944「グレート」

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:客演(読売日響の鈴木康浩さん)チェロ:木越、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、バスーン:水谷、ホルン:今井、トランペット:関山、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、小太鼓・他:竹島、ハープ:早川

弦の構成:協奏曲;14型、それ以外;16型

感想

 一言で申し上げれば、かなり面白い演奏会でした。指揮者の個性が曲の解釈と演奏の両方に出ている感じです。ベルトラン・ド・ビリーという指揮者、私自身は多分全く耳にしたことのない方ですが、「フィルハーモニー」誌によれば、今、ウィーンでは非常に注目されているフランス人指揮者なのだそうです。まあ、確かに、そう言われるだけの変な魅力のある方です。

「牧神」:普段自分が聴いている「牧神」との関係なのですが、微妙なずれを感じます。フルートとクラリネットが微妙にずれているのではないか、という感覚です。オーケストラ全体の微妙なバランスの悪さです。そこが、この指揮者のこだわりなのかな、と思いました。

 プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番。素敵な演奏で良かったです。イザベル・ファウスト、上手なヴァイオリニストですね。モダニズムの傑作をモダニズムの傑作であることを鋭く示すように輝かしく演奏しているのですが、ギスギスした感じがしない。かっちりしたテンポ感覚の中で、音の広がりを素直に表現している感じがしました。第1楽章のヴァイオリンの動かし方は「見事」と申し上げるしかありません。伴奏の中に浮かび上がる旋律線が、微妙な距離感を持って迫ってきます。作品の解釈と演奏技術とが上手く組み合わされた名演奏であると思います。

 シューベルトのハ長調大交響曲。これまで聴いたことのないような「グレート」でした。スタイリッシュな指揮で、全体的に若々しくスピード感あふれる演奏でした。また、音楽全体の構築は、大枠を構成してから細部を磨くと言うタイプの演奏というよりは、細部を細かく演奏しながら、それを全体に広げて行くようなタイプの演奏だったと思います。

 第1楽章の弦楽器の音を聴いていると、フレーズの中の音の強弱が際立ちます。また、普段あまり強調されない内声音が良く聴こえて来ました。シューベルトの「歌」を聴かせるよりも、音楽構成をはっきり示したいという指揮者の意図があったのかもしれません。そう言う意味では、第1、3、4の速い楽章と第2楽章のアンダンテの対比もケレンミが強いほどでしたし、スケルツォやフィナーレ楽章にしてもマルカートな意識の強い演奏だったと思います。

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2012年02月17日 第1722回定期演奏会
ジャナンドレア・ノセダ指揮

曲目: チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23
      ピアノ独奏:デニス・マツーエフ 
       
  カセルラ    交響曲第2番 ハ短調 作品12(日本初演)

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、バスーン:客演(東京フィルの黒木綾子さん)、ホルン:客演(前首席奏者の松崎裕さん)、トランペット:菊本、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:客演(フリーの水野なほみさん)、オルガン(フリーの新山恵理さん)
弦の構成:協奏曲;14型、交響曲;16型

感想

 二週連続面白い演奏会になりました。特に今回はピアニストが凄かったです。非常にダイナミックな弾き方で、いつも聴いているチャイコフスキーのピアノ協奏曲1番とは別の境地がありました。

 マツーエフは今30代後半で、同世代のピアニストの中では、最も活躍しているピアニストの一人だそうですが、その評判が非常に納得できるものでした。使用したピアノはヤマハのコンサートグランド。いつも聴いているスタンウェイと比べると、響きが濁る感じがあります。ペダルを踏んで、フォルテシモで鳴らす音は箱鳴りすると申しますか、抜ける爽快感は無いのですが、土臭い馬力を感じます。チャイコフスキーのこの作品にあるロシアの大地を感じさせるのに、適切だと思いました。

 そう言えば、リヒテルがヤマハのピアノを好んだのは有名ですが、彼もヤマハのピアノのこの低音の響きを愛したのかも知れません。アンコールの「ペール・ギュント」の「山の魔王の宮殿にて」におけるクレッシェンドも正に見事で、低音から沸き上がってくるような響きに大いに感心させられました。

 ノセダの指揮するN響の伴奏は、マツーエフの馬力に押されていた、というのが本当のところ。ややもたついたところがありました。ここでオーケストラも頑張って、丁々発止とやってくれればもっとスリリングが感動できる名演になっていたと思います。

 後半のカセルラ(カゼッラと書かれることが多いようです)の交響曲。初めて聴きました。大体、マーラーの時代にカセルラなどという作曲家がいたこともよく知らない、というのが本当です。しかし、作品は、一寸世俗的な響きのする元気な音楽で、これまで日本で紹介されてこなかったのが不思議に思いました。マーラーにインスパイアされた、と言うだけあって、マーラーのグロテスクな味わいが全体のトーンとしてあるのですが、マーラーのもう一つの特徴である天国的に長い緩徐楽章が無く、オーケストラの効果をひたすら示すような楽曲でした。

 ノセダは、カゼッラに対する思い入れが深いそうで、それだけに、のめり込んだ音楽づくりをしていました。日本初演で楽譜は多分外国から借りてきたのだろうと思いますが、ところどころ面白いボウイングなどもあって、そういうところは、ノセダの指示によるものなのかな、などと考えてしまいました。

 演奏効果が高く、終演後はブラボーの嵐でしたが、初めて聴く作品なので、本当にこういう演奏でいいのかどうかはよく分かりません。しかしながら、ノセダは非常に満足そうでしたし、楽団員たちもノセダに拍手を送っておりましたので、演奏者たちにとってもよくできた演奏だったのではないかと思います。

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2012年04月14日 第1724回定期演奏会
ロジャー・ノリントン指揮

曲目: ベートーヴェン 歌劇「フィデリオ」序曲
       
  ベートーヴェン    ピアノ、ヴァイオリン、チェロとオーケストラのための協奏曲 ハ長調 作品56
      ピアノ独奏:マルティン・ヘルムヒェン
      ヴァイオリン独奏:ヴェロニカ・エーベルレ 
      チェロ独奏:石坂団十郎 
       
  ベートーヴェン    交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:井野邉、チェロ:木越、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:松本、バスーン:客演(京都市響の東口泰之さん)、ホルン:福川伸陽さん(契約団員)、トランペット:関山、トロンボーン:新田、ティンパニ:久保
弦の構成:序曲、協奏曲;10-10-8-6-6、「英雄」;16型

感想

 2か月ぶりのN響で、懐かしい曲を聴きました。

 「三重協奏曲」は本当に久しぶりに聴きます。前回聴いたのは、1989年11月オットマール・スウィトナーが指揮し、ケーベル・トリオ・ベルリンが独奏を受け持った時ですから、22年前のことになります。それ以来、この作品は私には全く縁のない作品で、録音を含めて一度も耳にしたことが無いと思います。実は、どんな曲だったか、完全に忘れていました。

 ベートーヴェンとしては保守的な作品で、ピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲と比べると演奏効果も乏しい作品であることは認めるしかないと思います。また、ピアノ・トリオという室内楽の編成が、オーケストラを引き連れている感じのこの作品は、少人数で響きの美しさを内側に磨いていく感じの室内楽と、大編成で大音量を外側に響かせるオーケストラ音楽とのバランスの難しさもあって、演奏がされにくいということもあるのだろうとも思いました。

 そんな中、今回の独奏者、ピアノのヘルムヒェン、ヴァイオリンのエーベルレ、チェロの石坂は最近のドイツ楽壇を代表する若手の三人であり、三人でピアノ・トリオの活動も行っているだけあって、息がよく合っています。必ずしも傷の無い演奏ではないのですが、お互いの音のクロストークが見事で引き込まれるものがありました。ヴァイオリンとチェロとの語り合いが素敵で、そこを支えるピアノの感じがまた素晴らしい。

 オーケストラは、独奏チェロが活躍するこの作品に配慮したのか全体的には小編成ながら低音楽器を厚くしたもの。ノリントンは、ピアノの陰で指揮台を使わずに、ソリストとオーケストラに指示を与えます。それが作品全体にピュアな室内楽的音響を与えていたようにも思いました。

 「英雄」。かなり面白い演奏でした。まず編成が面白い。「英雄」は本来フルート2本、オーボエ2本、クラリネット2本、ファゴット2本のいわゆる2管編成の作品ですが、今回ノリントンは、木管楽器をそれぞれ4本ずつ入れる倍管の編成にしました。これはベートーヴェン時代のオーケストラは通常2管編成の曲の場合、弦楽器奏者が現代よりもずっと少なかったことが関係あるのかもしれません。第1ヴァイオリンが16人も入る現代のオーケストラでは、ベートーヴェンの期待していた音のバランスが弦楽器に優位に働いていると考えたのかもしれません。

 テンポの取り方も面白かったです。ノリントンはピリオド楽器によるオーセンティックな演奏で有名になった方で、テンポも割と楽譜に忠実に演奏されるという印象が強い方なのですが、今回は遅いところは極端にリタルダンドを掛けているようです。第2楽章の後半であるとか、フィナーレ楽章のコーダの前とかです。結果として楽譜に忠実に演奏される作品であると45分位で演奏される英雄が50分以上かかり、時間だけ言えば往年の大指揮者の演奏時間になりました。

 オーケストラの配置は、第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンとが指揮者の両側に並ぶ対向配置ですが、コントラバスがひな壇の一番後ろに一列に並んでいて、その1台1台に反響板を置くという、これまた特徴あるものでした。更に、トランペットは向かって右側、ホルンは向かって左側に置かれ、二つの金管楽器も対向配置となりました。ノリントンが指揮者ですから、弦楽器奏者には、ノン・ヴィヴラート奏法が要求されます。

 結果的に、これまで慣れ親しんできた「英雄」とは相当に違った演奏でした。まず、コントラバスがやっていることがしっかりとストレートに耳に入ります。N響のコントラバス陣って上手なんだな、という当たり前のことに感動し、またベースの下支えのあるところに音楽が積み上げられていることが、実感として分かります。低音の響きに重心が置かれていますので、ヴィブラートを多用したロマンティックな重厚さとは違うのですが、質実剛健な重厚さはありました。

 また木管が倍管編成になって、かつ弦楽器がピュアな音で演奏しているせいか、木管の細かい動きもよく見えるようになっていました。細かいトリルのような今まで聴き流していたところが耳に残る感じがしました。またホルンとトランペットの音が完全に別な方向から聴こえ、お互いの役割分担が普段よりもはっきり聴こえたように思います。

 この演奏を受け入れがたいと感じた方もいらしたようですが、私にはとても刺激的な面白い「英雄」でした。ノリントン、Bravoです。

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2012年04月20日 第1725回定期演奏会
ロジャー・ノリントン指揮

曲目: ベートーヴェン 序曲「レオノーレ」第2番 ハ長調 作品72
       
  ベートーヴェン    交響曲第4番 変ロ長調 作品60
       
  ティペット    交響曲第1番

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:客演(読売日響の鈴木康浩さん)、チェロ:木越、ベース:吉田、フルート:客演(東京都響の柳原佑介さん)、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、バスーン:水谷、ホルン:今井、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、チューバ:客演(フリーの岩井英二さん)、ティンパニ:植松
弦の構成:ベートーヴェン;10-10-8-6-6、ティペット;16型

感想

 先週のノリントンの「英雄」は相当に面白く感じましたが、今週のベートーヴェン2曲は私の趣味とは一寸違うものでした。一言で申し上げれば、パウゼが長い。これは、楽章間の休みもそうですし、全休符でオーケストラを止めた後再開始する時までの待ち時間も長い感じがします。

 私は、1980年代にEMIに録音されたノリントン/ロンドン・クラシカル・プレーヤーズのベートーヴェン交響曲全集のCDを持っていて、これでベートーヴェンのオーセンティック演奏の楽しみを知ったのですが、その演奏と比較してもかなりケレンミの強い演奏だったと思います。演奏のスピードが速い部分と遅い部分でのコントラストがあり過ぎて、逆に抵抗を感じてしまいます。何もそこまで見得を切らなくてもよいのではないかという感じです。

 そう言う演奏なので、楽器間のメロディーの受け渡しが今一つぎくしゃくした感じがあって、一寸不満でした。ベートーヴェンの4番の交響曲は、普段なら、聴き終るともっとすっきりした気持ちになれるのですが、今回はどこか、引っ張られているような感じがあって、腑に落ちませんでした。

 ティペットの交響曲1番は、N響の定期公演で取り上げられるのは初めてかもしれません。私は初めて聴く曲です。古典的な構成で彩られた現代曲ですが、現代曲だけあって、その本領にリズム感があるのだろうと思います。親しみやすいメロディがあるわけではないのですが、対位法の手法、例えば第4楽章の二重フーガなどが面白く思いました。ティンパニが、ベートーヴェンを演奏するの時よりも大型のものに変えられ、マレットも違っているようでした。そのためか、ベートーベンにおける鋭い響きがもっと厚く柔らかいものに変わったような気がしました。

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2012年05月13日 第1727回定期演奏会
尾高 忠明指揮

曲目: オネゲル 交響詩「夏の牧歌」
       
  ショパン    ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21
      ピアノ独奏:ギャリック・オールソン
       
  デュリュフレ    レクイエム
      メゾ・ソプラノ独唱:加納 悦子 
      バリトン独唱:三原 剛 
      合唱:新国立劇場合唱団 
      合唱指導:冨平 恭平 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:井野邉、チェロ:木越、ベース:市川、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、バスーン:水谷、ホルン:福川、トランペット:菊本、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川、オルガン:客演(小林英之さん)
弦の構成:オネゲル;14-12-9-8-6 ショパン;12-10-7-6-4、デュリュフレ;16-14-11-10-8

感想

 今日の代々木公園は、タイ国フェアのためもの凄い人でごった返しており、NHKホールにたどり着くまでが大変でした。原宿駅から出るのがまず大変で、代々木公園の中も満員電車の中のように混んでいて、原宿駅で電車を下りてからNHKホールにつくまで優に25分以上かかりました。余裕を見て家を出たので、それでも開演3分前に席に着くことが出来ましたが、ひやひやしました。私がNHKホールに行き始めて25年になろうとしていますが、ここまで混んでいた経験は全く初めてのことです。ホールにつくまでにへとへとになりました。

 それでも行った甲斐がありました。尾高・N響のコンビは素晴らしいと思います。

 オネゲルは、特段どうという演奏ではなかったのですが、丁寧でゆったりした感じが良く出ていて良かったと思います。眼を閉じて聴いていると、夏の午後の森のような感覚を感じることが出来ました。この曲は、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンが各1本ずつ使用されるのですが、それらの音がまたいい感じでした。

 ショパンのピアノ協奏曲の2番、オールソンが知的な演奏をされたと思います。この方の演奏、全然気を衒わない。落ちついていて悠然とした演奏です。と言って、いわゆる大陸的な演奏ではなくて、音が軽いのですけど、浮つかない。オールソンの体格には似合わない軽快な音です。粒立ちが良く、しっかりした音を立てながら、どこか、慎重に一歩身を引いた感じで、じっくりとショパンの世界を響かせます。自分から動くというよりも周りを巻き込んで自分の世界を作っていくような演奏。正に巨匠芸でした。

 アンコールは、ショパンの「華麗なる大円舞曲」変ホ長調作品18が演奏されました。こちらは、ピアノ協奏曲とは一転して、オールソンのヴィルトゥオジティを前面に出したもの、アッチェラランドをかけながら追い込んでいく様は、彼の技巧面を強く強調するものでした。オールソンの幅の広さを見せつけられるものになりました。

 デュリュフレのレクイエム。素晴らしい演奏だったと思います。特に新国立劇場合唱団の合唱が素晴らしい。新国立劇場合唱団はオペラの舞台に立つと、多くの場合、強い声の集合として響かせることが多いのですが、今回は柔らかな弱音の響きが印象的でした。如何にもレクイエムを歌う合唱という感じでした。二人のソリストはどちらも十分自分の責任を果たしておりましたが、加納悦子の方が、より慣れている感じがしました。

 N響のサポートも万全のようです。全体として死者への痛みを丁寧に示す音楽に仕上がっていました。

 さて、以上素晴らしい演奏会だったのですが、帰りもタイ国フェアに邪魔されて大変でした。タイ国フェアを見ると、NHKホールの空間の貴重さ加減を感じてしまいました。

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2012年05月18日 第1728回定期演奏会
広上 淳一指揮

曲目: 武満徹 From me flows what you call Time(1990)
      パーカッション(T):竹島 悟史 
      パーカッション(U):植松 透 
      パーカッション(V):石川 達也 
      パーカッション(W):西久保 友広 
      パーカッション(X):村井 勲 
       
  バーバー    弦楽のためのアダージョ
       
  バンスタイン    交響曲第1番「エレミア」
      メゾ・ソプラノ独唱:ラヘル・フランケル 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:木越、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、バスーン:水谷、ホルン:日高、トランペット:関山、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川、チェレスタ/ピアノ:客演(フリーの梅田朋子さん)
弦の構成:武満;14型、それ以外;16型

感想

 選曲の見事さといい、指揮ぶりに込めたパッションといい、広上淳一の魅力全開のコンサートでした。

 ポピュラー名曲が一曲も入っていない、客を選ぶプログラムだけあって、NHKホール3階はかなりガラガラ、という感じでしたが、それだけに熱心なお客さんが多かったのでしょうね。客席の音への浸り方もいい感じで、とても楽しむことが出来ました。

 武満徹の「From me flows what you call Time」は、打楽器協奏曲ですが、東洋的な印象の非常に強い作品でした。タイトルの「From me flows what you call Time」は、大岡信の詩「澄んだ青い水」の一節「この俺から/お前らの『時』は流れ出す」の英訳だそうですが、大岡の詩における「俺」とはアルプスの高峰マッターホルンの「氷の団塊」を指しているのだそうです。私はこの大岡の詩を知らないのですが、大岡信という知的な詩人の詩に触発されて作曲された協奏曲が、武満にとって東洋的な自然を感じさせる音楽になったのは当然のことなのかもしれません。

 流れる音は、風にそよぐ風鈴であり、あるいは秋の刈り穂の間を吹く風の音です。5人の打楽器奏者は、フルートのソロに導かれて、鈴を鳴らしながら登場しますが、この様子に、鈴を鳴らしながら喜捨を求める僧侶の姿を感じたのは私だけではないと思います。自然の風の音、原始的な生命を感じさせる音、東洋のエキゾチズムを感じさせる音、色々な音が交差しながら広がり、如何にも武満徹らしい音楽だなと思いました。

 5人の打楽器奏者は、立派な演奏をされたと思います。パキスタン・ノア・ベルとか、タイ・ゴングとかあまりお目にかかったことのない打楽器を上手に操り、武満の静謐な世界を形作っていきました。Braviです。また、打楽器協奏曲といいますが、打楽器だけで動く部分が多く、オーケストラの活躍する部分は必ずしも多い作品ではないのですが、広上淳一は、打楽器の音に反応しながら身体を揺すり、音楽の中に入っていたのが印象的でした。

 東洋的な神秘の作品に続いて演奏されたのが、バーバーでした。この作品は、西洋音楽としては、非常に静謐な作品ですが、武満の作品の後に聴くと、少し脂肪がある感じの作品です。広上は、この作品をかっちりと演奏しようとした様子でした。楷書の音楽と申し上げて良いでしょう。そのため、クライマックスの力強さが、光り輝くようで良かったと思います。

 バーンスタインのエレミア交響曲。これまた良かったです。武満、バーバー、バーンスタインと続けて聴くと、広上の選曲の見事さが光ります。ある意味一直線上にあるのです。基本静謐な音楽の継続ながら、だんだん熱が帯びてくる感じ、と申したらよいでしょう。

 音楽づくりも、広上のやりたいことがその指揮姿から敢然と見えて、そこが素晴らしい。ある意味トリックスター的、と申し上げても良いほどですが、頭頂からも、背中からも彼の音楽に対する愛情がオーラとなって見えています。手足は当然、全身をフルに使って音楽に立ち向かっていく指揮姿は、見事と申し上げるしかありません。オーケストラもこの姿に十分ついていって、バースタインの世界を見せて行ったものと思います。

 惜しむらくは、ソリストのメゾソプラノがいまいちだったこと。喉の調子が完璧で無かったのか、声ががさついて聴こえました。また、声の伸びも今一つで、声の飛んでくる感じが弱いようでした。

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2012年06月09日 第1730回定期演奏会
ウラディーミル・アシュケナージ指揮

曲目: リムスキー=コルサコフ 組曲「サルタン皇帝の物語」作品57
       
  グリエール    ホルン協奏曲 変ロ長調 作品91(1950)
      ホルン独奏:ラデク・バポラーク
       
  チャイコフスキー    交響曲第4番 ヘ短調 作品36

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:木越、ベース:市川、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、バスーン:客演(前首席奏者の岡崎耕治さん)、ホルン:日高、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川

弦の構成:協奏曲;14型、それ以外;16型

感想

 
東京で梅雨入り宣言が出た日のコンサートでした。朝から雨の一日で、湿気がどこもかしこも漂っている感じでした。その影響が音にも出たのかな、と思えるような演奏会でした。

 最初の「サルタン皇帝の物語」。特に速く演奏するような曲ではありませんが、湿気のせいか、響きが湿って、音が重ためです。このような作品は、少しスピードを上げて、流すような演奏をした方が、曲の魅力が表われるように思いました。

 2曲目のグリエール「ホルン協奏曲」。グリエールという方はソビエト時代の代表的な体制側作曲家だそうで、私は名前を全く聴いたことのない方でした。ホルン協奏曲は、グリエールの晩年の作品ですが、作品の雰囲気は、ロシア国民楽派の方々のそれと似ています。ただし、作品としての魅力はさほど強いものではなく、上手なホルン弾きが取り上げなければ、歴史に名を残すことはなかったのではないかと思います。

 しかし、今回のソリスト、パボラークの演奏は、見事の一言に尽きます。何でホルンをあんなに自在に操れるのか、不思議なほどです。オーケストラの楽器で一番事故の起きやすい楽器がホルンですが、そんなことが信じられないほど、完璧な技術でした。ピストンとマウスピースと朝顔の部分に入れた手で、音域、表情も含めたあれだけ多彩な音を美しく響かせるのですから本当に素晴らしいと思います。演奏した曲は、ホルンのカデンツァを別にすれば名曲とは言い難い作品だと思いますが、彼が演奏したことにより、曲っぷりが三割ぐらい上がったかもしれません。

 最後のチャイコフスキーの4番。アシュケナージの思い入れがてんこ盛りの演奏です。テンポも一寸独特ですし、デュナーミクも広めにとって、冒頭のファンファーレと主題の対比なども、普通よりも差が大きい感じがしました。良く言えば彫りの深い演奏ですが、結局のところ、色々なものが目立ち過ぎて音が微妙にずれ、はっきり申し上げれば、野暮ったい田舎くさい演奏でした。最後が盛り上がる作品ですから、拍手は旺盛でしたが、私が好む演奏ではありませんでした。

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2012年06月15日 第1731回定期演奏会
ウラディーミル・アシュケナージ指揮

曲目: コダーイ ガランタ舞曲
       
  バルトーク    ピアノ協奏曲第2番
      ピアノ独奏:ジャン・エフラム・パウゼ
       
  リヒャルト・シュトラウス    交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」 作品30

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:彫り、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:井野邉、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:客演(東京フィルの斎藤和志さん)、オーボエ:青山、クラリネット:松本、バスーン:水谷、ホルン:福川、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:植松、ハープ:早川、オルガン:客演(フリーの新山恵理さん)

弦の構成:コダーイ16型、協奏曲;14型、シュトラウス;16-16-12-12-8

感想

 
オーケストラに関する定番の問題に「弦楽器奏者の弦が演奏中に切れた場合、どう対応するか?」というのがあります。この回答は、「楽器を順繰りに後ろの奏者と交換し、一番後ろの奏者が舞台袖に行って、弦を張りかえる」です。演奏会の最中に弦楽器の弦が切れることは実は珍しいことではなく、私は何度もお目にかかっています。ところで、今日もそんな場面に出くわしました。チェロの首席奏者である藤森亮一さんが、「ツァラトゥストラ」の演奏中、チェロの弦を切ってしまったのです。

 藤森さんは勿論、自分のチェロを後ろに座っていた西山健一さんに渡し、西山さんのチェロを弾き始めました。通常だと西山さんは、このチェロを後ろに座っている岩井雅音さんに渡すのですが、西山さんはそうしませんでした。燕尾服のポケットから弦を取りだすと、舞台の上であっという間に張り替えてしまいました。藤森さんは熱演型のプレーヤーで、演奏会の最中にチェロの弦を切ってしまうのはあまり珍しくはないのでしょう(私も初めて見た訳ではありません)。それが理由で西山さんが弦を用意していたのかどうかは分かりませんが、演奏している舞台の上で、チェロの切れた弦の交換をするのを見たのは初めての経験でした。

 それはそれとして、アシュケナージの今回の演奏ですが、全体的に申し上げれば良くもなく、悪くもなく、というのが本当のところでしょう。

 最初の「ガランタ舞曲」。速い部分は、N響のヴィルトゥオジティが良く出ていて、よく揃った見事なものだったのですが、ゆっくりした部分の演奏は、密度の薄い感じになっていました。この作品は、N響では2002年にパーヴォ・ヤルヴィが取り上げているのですが、パーヴォの演奏は、もっと引き締まった筋肉質の演奏だったようです。その時も私は聴いているのですが、今回感じた「薄い感じ」は、あまり感じなかったようです。松本さんのクラリネットソロは悪いものではないと思うのですが、何かもやもやします。

 バルトークのピアノ協奏曲2番。直球勝負の演奏だったと思います。パウゼの演奏は、ぐいぐいと前に力を込めて押しやるような演奏。いい演奏ですが、余裕がないと言うか、遊び心の感じられない演奏でした。第1楽章は、バルトークが敢えて弦楽器を使用せずに書いた楽章なわけですから、もう少し、抜いたところの感じられる演奏の方が、楽しめたのではないかという気がしました。勿論、ピアノとオーケストラとが真っ向勝負するのが悪いわけではないのですが、この作品に関して申し上げれば、却って面白さをスポイルした感じがします。

 逆に第2楽章は、ティンパニが頑張ったせいか、ピアノとティンパニの息遣いのずれが見事なユーモアになっていて良かったと思いました。第3楽章はパワーのあるロンド。ピアニストの一所懸命さと、アシュケナージの一所懸命さとがうまく補完し合わなかった感じがあり、今一つ乗り切れない演奏に終わりました。

 アンコールはドビュッシーのアラベスク。これは素晴らしい演奏。パウゼは、こういうエスプリの効いた演奏の出来る方なのですから、バルトークでもこの感覚が表に出れば、もっと面白い音楽になったのではないか、という気がしました。

 「ツァラトゥストラ」。N響としては普通の演奏だったと思います。アシュケナージの得意な作品であり、アシュケナージらしいケレンミも感じられる演奏でしたが、私には正直なところ、あまりピンとこない。先週の「チャイコフスキーの第4交響曲」のような野暮ったさは感じませんでしたが、勿論スマートな演奏ではなく、良しも悪しくも、これがアシュケナージなんだろうな、と思いました。

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