2007年NHK交響楽団定期演奏会ベスト3

第1位:11月Aプログラム ネッロ・サンティ指揮

曲目: プッチーニ   歌劇「ラ・ボエーム」
  出演    
  ミミ アドリアーナ・マルフィージ(S)
  ロドルフォ イグナシオ・エンシーナス(T)
  ムゼッタ パトリツィア・ザナルディ(S)
  マルチェッロ ステファノ・ヴェネツィア(Br)
  ショナール 吉原 輝(Br)
  コッリーネ グレゴル・ルジツキ(Bs)
  ベノア/アルチンドロ パオロ・ルメッツ(Bs)
  合唱 二期会合唱団
  児童合唱 東京少年少女合唱隊

 

第2位:12月Aプログラム アラン・ギルバート指揮

曲目: メシアン   ほほえみ(1999)
       
  ベルグ   ヴァイオリン協奏曲
      ヴァイオリン独奏:フランク・ペーター・ツィンマーマン
       
  ベートーヴェン   交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」

 

第3位:5月Cプログラム 尾高 忠明 指揮

曲目: ブルックナー   交響曲第8番 ハ短調(ハース版)

次点:9月Aプログラム アンドレ・プレヴィン指揮

選択の理由

 NHK交響楽団が行う年間27プログラムの定期演奏会うち、2007年は15回を聴きました。その15回に関して申し上げれば、本年は、前半はさほどでもなく、後半に素晴らしい演奏会が多い一年だった、と総括することが出来るのではないかと思います。

 本年1月には、まず名誉音楽監督・デュトワが登壇し、得意のプロコフィエフで素敵な演奏を聴かせてくれました。特に、「アレキサンドル・ネフスキー」がよかった。次いで、2月は、音楽監督アシュケナージの演奏。モーツァルト、マーラー、チャイコフスキーと聴きましたが、どれも今ひとつで、感心できませんでした。

 4月はマティアス・バーメルトが登場しました。このときは、シトコヴェツキの素晴らしいプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲の演奏がありました。5月はロレンス・フォスターと尾高忠明です。尾高のブルックナー8番は、これぞブルックナーの8番と言うべき名演でした。6月はアシュケナージですが、オール・チャイコフスキープログラムは今ひとつ。オール・ベートーヴェン・プログラムは、アシュケナージのNHK交響楽団音楽監督引退公演となり、是非聴きたかったのですが、まさかの売り切れで聴けずに大変残念でした。

 1月から6月までは、良い演奏もありましたが、ありていに申し上げてN響の水準を越えていたのは、1月のデュトワの演奏と5月の尾高のブルックナーだけと申し上げて良いでしょう。

 それと比較すると、後半は好演奏が続きました。

 9月はN響8年ぶりの登場となるアンドレ・プレヴィン。得意のモーツァルトとラヴェルでまさに円熟の演奏を聴かせました。10月は、モーシェ・アツモンと外山雄三。アツモンの指導は楽団員には評判が悪かったそうですが、紡ぎ出された演奏は、非常に素敵なもの。N響正指揮者の外山雄三の「運命」交響曲も大変素晴らしいものでした。11月のサンティは、N響が演奏するのは、「イタリア・オペラ」以来とも言われる、イタリアオペラの傑作、「ボエーム」を演奏会形式でとり上げ、N響の資質の高さと、サンティのオペラ指揮者としての力量をまざまざと見せました。12月は、次期ニューヨーク・フィル音楽監督のアラン・ギルバートが登場し、みずみずしい音楽を作り上げました。

 以上のなかからベスト3候補を選ぶとすれば、1月のCプロ、5月Cプロ、9月Aプロ、Cプロ、10月Aプロ、Cプロ、11月Aプロ、12月Aプロ、Cプロでしょうか。それぞれ近い二つの演奏会からどちらがいいかトーナメント方式で選びます。

 デュトワと尾高、どちらも捨てがたいのですが、日本人指揮者でもあれだけのブルックナー8番を演奏できることに敬意を表して、5月のCプロをとりましょう。プレヴィンのモーツァルトとラヴェル。モーツァルトのほうがプレヴィンの体質に合っているように思います。アツモンと外山は外山をとりましょう。そして、サンティの「ボエーム」とギルバートの演奏は、「英雄」交響曲を演奏したAプロをとります。

 ここで5作に絞られたのですが、日本人の二人の演奏では、尾高のブルックナーのほうがインパクトが大きかったので、尾高を残します。プレヴィンのモーツァルトは珠玉の演奏でしたが、8年前とか10年前に聴いたプレヴィンのモーツァルトと比較すると、演奏の完成度が劣るような気がします。そういうことを踏まえて、ベスト3は上記のようにしました。

 ベテランの職人と新進気鋭、そして日本人指揮者、とバランスのとれたいい選択になったと思います。

 以上、本年のベスト指揮者はサンティ、ベストソリストはドミトリ・シトコヴェツキを選びたいと思います。

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2007年12月18日記

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