NHK交響楽団定期演奏会を聴いての拙い感想-2010年(後半)

目次

2010年09月10日 第1679回定期演奏会 ネヴィル・マリナー 指揮
2010年09月25日 第1681回定期演奏会 ネヴィル・マリナー 指揮
2010年10月15日 第1682回定期演奏会 ネッロ・サンティ指揮
2010年10月22日 第1683回定期演奏会 ネッロ・サンティ指揮
2010年11月14日 第1685回定期演奏会 アンドレ・プレヴィン指揮
2010年11月19日 第1686回定期演奏会 マルクス・シュテンツ指揮
2010年12月04日 第1688回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮
2010年12月10日 第1689回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮


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2010年09月10日 第1679回定期演奏会
指揮:ネヴィル・マリナー

曲目: ベルリオーズ 歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲
     
  シベリウス    ヴァイオリン協奏曲 二短調 作品47
      ヴァイオリン独奏:ミハエル・シモニアン 
       
  ベートーヴェン    交響曲第7番 イ長調 作品92 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:松本、バスーン:客演(前首席奏者の岡崎さん)、ホルン:松ア、トランペット:客演、トロンボーン:栗田、ティンパニ:植松

弦の構成:協奏曲:14型、その他:16型

感想
 N響の新シーズンが、始まりました。今シーズンの冒頭を飾るのはネヴィル・マリナー。1924年生まれといいますから、御年86。それにしてはお元気です。高齢の指揮者が登場すると、音楽が硬化してしなやかさに欠けることが多いのですが、マリナーはそういう片鱗が見えなかったとは申しませんが、生気の溢れる演奏になっていたと思います。全体的にはなかなか良い演奏会で、シーズンの冒頭を華やかに飾りました。

 最初に演奏された「ベアトリスとベネディクト」序曲は、あまり演奏されない作品ですが、マリナーらしい選曲だと思います。マリナーは、かつて「アカデミー室内管弦楽団」を率いていた時、歌劇の序曲や小品をよく録音しておりました。それだけに、彼のレパートリーの広さを示すにはうってつけの作品だということなのでしょう。演奏は、一言で申し上げれば元気の良いもの。演奏会の冒頭を飾るには、ふさわしいもののように思いました。

 二曲目のシベリウスのヴァイオリン協奏曲にはロシアの若手ヴァイオリニスト、ミハエル・シモニアンが登場しました。まだ24歳とのことで、おじいさんと孫との共演という感じですね。若手、ということもあるのでしょうが、一寸とんがった、ケレンミの強い演奏をする方です。足でリズムをとりながら演奏していくのですが、結構広い範囲を動き回り、一寸目障りな感じでした。マリナーの持つテンポ感覚とシモニアンのテンポ感覚に微妙なずれがあり、そこが対立的でした。オーケストラとソリストとが、もう少しお互い譲り合った演奏をするのかと思いきや、お互いしっかり対抗していたところが面白く感じました。シモニアン自身はN響と掛け合う部分よりも、カデンツァなどソロで演奏する部分の方がのびのびしている感じがしました。

 最後のベートーヴェンの7番。べらぼうに良い演奏だとは思いませんでしたが、音楽のアプローチが、第4楽章に向けて徐々に盛り上げていくやり方のため、観客には大いに受けていました。最初は遅めのテンポで、十分にためを作って演奏させていたのですが、だんだん速くなり、第4楽章のアレグロ・コン・ブリオは、怒涛のごとくの勢いでした。楽章間のつなぎも、ほとんどアタッカといってよいほど短いもので、そういうやり方で作品の一体感を作って行ったと申し上げてよいのでしょう。

 マリナーの指揮は、腕の振りを見る限り特別流暢でもなく、年齢相応のぎこちなさが見えるのですが、出てくる音楽は結構瑞々しい。そういう様子を見ると、N響は長老指揮者に優しいな、と思います。名指揮者が振った演奏会であることは確かですが、そういう指揮者を盛り上げようとするオーケストラの姿勢が良かったと思いました。

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2010年09月25日 第1681回定期演奏会
指揮:ネヴィル・マリナー

曲目: シューマン 序曲、スケルツォとフィナーレ 作品52
     
  シューマン    ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
      ピアノ独奏:アンティ・シーララ 
       
  シューマン    交響曲第3番 変ホ長調 作品97 「ライン」 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:店村、チェロ:藤森、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、バスーン:水谷、ホルン:日高、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、ティンパニ:久保

弦の構成:協奏曲:14型、その他:16型

感想
 
 伝統的にそうなのですが、N響ファンは、長老指揮者に優しいと思います。「ライン」交響曲が終わった直後の「ブラボー」の声と激しい拍手は、本日の演奏を批判的に見ている私にとっては、気恥ずかしいほどのものでした。あれと同じ演奏を若手の日本人指揮者がしたとすれば、観客にお許しを貰えるのでしょうか。凄く疑問です。

 最初の「序曲、スケルツォとフィナーレ」。一言で申し上げれば凡演でした。特にいけないのがスケルツォ。タタターンというリズムが基本なのですが、そこに、スケルツォらしい刻みの深み、あるいは揺れが感じられないのです。だらっとした詰まらない演奏に終始しました。フィナーレも特に高揚する感じではなく、あっけない演奏でした。

 ピアノ協奏曲。シーララというピアニスト、あまり上手ではありませんでした。私でも分かるようなミスタッチが何箇所もあることがまず気に入りません。又、演奏のスタイルが、リリシズムの仮面に隠されたケレン、という感じで、妙な作りこみを感じさせられる点で、私は支持できませんでした。シーララは、恐らく小さい音を繊細に演奏するのを得意とするピアニストなのだろうと思います。小さい音で演奏する時、その表情の多彩さが光ります。しかし、デュナーミクの幅が本質的に小さい方のようで、オーケストラと戦う感じがしません。ピアノパートはくっきりとしない様子で終始しました。

 N響の演奏も今一つでした。ピアニストと指揮者の間でテンポ感覚の微妙なずれがありました。これもミスタッチの原因なのかもしれません。マリナーはオーケストラの音量を絞って、ピアノの音をくっきりと浮かび上がらせようと努力しておりましたが、あまり成功しなかった感じです。

 ライン交響曲。音量は、最初の二曲とはうって変わり、大音量での演奏でした。こういう元気の良い演奏は私も好みなのですが、残念ながら、元気だけれども荒っぽい演奏でした。弦楽器奏者は、ボウイングに微妙なずれがあって、音が澄んできません。全体的に乱暴で、精緻な雰囲気を見出すことはできませんでした。そのためか、第三楽章の緩徐楽章は、ロマンティックな雰囲気に乏しく、第四楽章は荘重に、と書かれているにもかかわらず、一寸慌てているような雰囲気も見えました。恐らくマリナーの指示に対する解釈が楽員同士で微妙に異なり、その調整が付かずに本番になったのでしょうね。

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2010年10月15日 第1682回定期演奏会
指揮:ネッロ・サンティ

曲目: ヴェルディ 歌劇「アイーダ」(字幕付き原語上演、演奏会形式)

出演
エジプト王  :  フラノ・ルーフィ(バス) 
アムネリス  :  セレーナ・バスク・アリーニ(メゾ・ソプラノ) 
アイーダ  :  アドリアーナ・マルフィージ(ソプラノ) 
ラダメス  :  サンドロ・パーク(テノール) 
ランフィス  :  グレゴル・ルジツキ(バス) 
アモナズロ  :  パオロ・ルメッツ(バリトン)
エジプト王の使者  :  松村 英行(テノール) 
女祭司長  :  大隅 智佳子(ソプラノ) 
合唱  :   二期会合唱団 
合唱指揮  :  河原 哲也 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:木越、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、バスーン:佐藤、ホルン:今井、トランペット:井川、トロンボーン:栗田、チンバッソ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:久保

弦の構成:16型

感想
 
 サンティのN響定期公演におけるオペラ全曲は、2007年の「ボエーム」以来ということになります。あの「ボエーム」は、「ボエーム」という作品の構造が見通せる名演だったことは記憶に新しいところですが、3年ぶりに取り上げたのはヴェルディの「アイーダ」で、イタリアオペラを指揮する、古いスタイルの最後の大御所と言われるサンティの最も得意とすると言われている作品です。ちなみに、サンティが日本でアイーダを振ったのは今回が初めてではなく、1989年のアレーナ・ディ・ヴェローナの引っ越し公演、1995年の読売日響の定期演奏会に続く三度目です。

 サンティの演奏は、ロマンティックな色彩の強い、テンポを動かす演奏です。思い切ったリタルダンドなど、手の内に完全に入った作品を演奏しているという印象でした。前回の「ボエーム」は、ある意味解析的な演奏だったのですが、今回の「アイーダ」は、よりオペラっぽい印象の強い演奏になっていました。それにしてもN響の演奏は見事です。演奏をする側としてはそれほど難しい作品ではないと思いますが、指揮者の指示に的確に反応して、オーケストラのケレンを見事に示していたと思います。また、個々のの方々の技量が凄いと思います。神田、甲斐、菅原のフルート陣、加藤さんのバス・クラリネットなどが特によく、サンティもかなり満足していたようでした。

 終演後、舞台裏に引っ込んでいた女声合唱をサンティ自ら呼びに行って並ばせたところなどから見ても、いい演奏だったと思われていたのでしょう。

 指揮・オーケストラの素晴らしさと比較すると、歌手陣はいまいちの方が多かった、と申し上げざるを得ません。まずいけないのは、マルフィージの外題役です。マルフィージの声質は純粋リリコで、アイーダのようにスピントの強い役柄には向かないと思います。更に調子も万全ではなかったようで、声が乾いた感じで、高音が浮いてしまい抑えが効かない様子でした。繊細な表現はそれなりにしっかりできていましたが、アイーダに期待される中声部のしっかりした声が出ておらず、満足できませんでした。

 サンティ・マルフィージのコンビは何度も聴いておりますが、今回のマルフィージがこれまでで一番悪かったように思います。

 アムネリスのバスクアリーニも今一つ。基本的にピッチがN響とずれていたようで、登場部分は微妙に音程がずれておりました。その後は修正しており、四幕一場の表現などは、ラダメスを翻意させることのできない王女の悲しみを良く表現しており、良かったと思います。

 サンドロ・パークのラダメスは良かったと思います。最初の「清きアイーダ」は声を力任せに押す部分があって、必ずしも満足は出来なかったのですが、それ以外は上々。何しろ声が良いです。本来持っている響きが柔らかく、美しいのが魅力。第三幕、四幕の表現が見事でした。

 男声低音陣は、皆結構でした。特に良いと思ったのは、フラノ・ルーフィのエジプト王。アモナズロのルメッツも力強い歌唱で悪くありませんでした。

 特筆しなければならないのは大隅智佳子の祭司長です。非常に見事な歌唱で、落ち着いた声が素敵でした。マルフィージよりも大隅にアイーダを歌わせたかったです。恐らく、大隅とマルフィージの役柄を交換したほうが、演奏会としてはより成功したでしょう。

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2010年10月22日 第1683回定期演奏会
指揮:ネッロ・サンティ

曲目: メンデルスゾーン 交響曲第4番 イ長調 作品90 「イタリア」
     
  ドヴォルザーク    チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
      チェロ独奏:堤 剛 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:店村、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、バスーン:客演(東京交響楽団の福士マリ子さん)、ホルン:今井、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ティンパニ:植松

弦の構成:14-12-10-8-7

感想
 
 良しも悪しくも、サンティらしい演奏会でした。それが本日の魅力でもあり、欠点でもあったということだろうと思います。
 
 「イタリア」はイタリア的演奏だったと思います。ヨーロッパの音楽を大くくりに申し上げると、対位法を音楽の中心におくドイツ音楽と、メロディーとカンタービレのイタリア音楽、という風に分けられると思うのですが、メンデルスゾーンという対位法のバックグランドの作曲家の作品を、イタリア音楽のように演奏しました。チェロやコントラバスによる伴奏をしっかり鳴らせてクッションを作った上に、メロディーラインを美しく響かせる。こういう見た目おおらかな演奏がサンティの真骨頂だと思います。「イタリア」でこのような演奏を聴いたことがなかったので、かなり新鮮に感じました。お客さんには賛否両論だったようで、演奏直後にBooが飛びましたし、一方熱狂的なBravoもありました。

 一方、ドヴォルザークはいまいちだったと申し上げるのが正直なところです。ソリストとオーケストラの向いている方向が違うのです。堤剛のチェロは、かなり自由なもので、自在にチェロを操り、渋い音を響かせます。堤にはドヴォルザークはこう演奏すべきだという信念のようなものを感じ、例えば、カデンツァの演奏などはとても立派なものだと思いました。

 しかし、オーケストラと合わせると今一つしっくりきません。これは、恐らく対位法の音楽とメロディーとカンタービレの音楽の対立なのでしょうね。堤の音楽はある意味内省的で、深く深く掘り進めて行くような音楽。渋い厳しさを感じます。一方サンティの目指すところは、もっと明るく開放的な音楽なのだろうと思います。サンティ/N響は、ソリストを尊重して合わせようとはしているのですが、基本的な向きが違うので、どこか波長がずれているのでしょう。私にはあまり感心できませんでした。


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2010年11月14日 第1685回定期演奏会
指揮:アンドレ・プレヴィン

曲目: 武満 徹 グリーン
     
  ガーシュイン    ピアノ協奏曲 ヘ調
      ピアノ独奏:アンドレ・プレヴィン 
       
  プロコフィエフ    交響曲第5番 変ロ長調 作品100 


オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、バスーン:森田/佐藤(ガーシュインのみ)、ホルン:日高、トランペット:関山、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:久保、
弦の構成:14型(交響曲以外)、16型(交響曲)

感想
 
 指揮者とオーケストラの信頼関係が高いことが、演奏に良い影響を与えてくれると思われる、典型的な演奏会でした。2010-11シーズンが始まり、私にとって今シーズン5回目のN響になりますが、多分その中では一番良い演奏会だったと思います。プレヴィンの魅力あふれる演奏会でした。

 第一曲目の「グリーン」、あまりピンとこない作品でした。突然、演奏が途切れるように終るのが特徴ですが、なぜ、こんなところで、止めてしまうのかしら、という様な雰囲気の作品でした。観客も拍手のタイミングがつかめず、一寸困惑気味でした。

 ガーシュインのへ調のピアノ協奏曲。プレヴィンが、弾き振りで演奏いたしました。私は、N響が一番不得意とするところが、アメリカ音楽、特にジャズのイディオムに満ちた作品だと思います。これまでも、その系統の作品を演奏して少なからず、曲に似合わない重たい演奏になっているのを聴いています。しかし、本日は、プレヴィンの薫陶よろしく、かなりスウィングした演奏になっておりました。しかし、それでもまだ重い雰囲気は残っておりました。

 しかし、プレヴィンのピアノ・ソロは抜群に良い。この作品を本当に手中にしているのでしょう。息遣いがN響とは全然違います。ジャズの雰囲気もしっかり含まれ、リタルダンドのかけ方や、後打ちっぽいリズムの取り方が流石です。重たい雰囲気のN響も、プレヴィンのピアノと共演すると、少しは浮かれだす、という感じがしました。オーケストラがもう一段はじけてくれれば、もっと面白くなったと思いますが、まずは上々です。

 プロコフィエフの交響曲第5番。素晴らしい演奏でした。プレヴィンは、今でこそモーツァルトの大家として知られていますが、若いころはロシア音楽やイギリス音楽、アメリカ音楽の演奏家としてまずは注目されたことを思い出します。音楽のもって行き方に無理がなく自然で、瑞々しい。彼は足が悪くて、動きはぎこちないですが、音楽はしなやかです。

 更にN響の演奏技術の高さ。今回のプログラムは、協奏曲以外を来年のアメリカ演奏旅行に持っていくプログラム、ということがあって、弦楽器の一列目は、堀/篠崎(第一ヴァイオリン)、山口/永峰(第二ヴァイオリン)、佐々木/小野富(ヴィオラ)、藤森/桑田(チェロ)、吉田/西山(コントラバス)と言う風に、ほとんどエキストラがいませんでした。それだけに弦楽器群は特に素晴らしいです。一矢乱れず、とでも言うのでしょうか、本当に立派な演奏で、感動的でした。

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2010年11月19日 第1686回定期演奏会
指揮:マルクス・シュテンツ

曲目: マーラー 交響曲第2番 ハ短調 「復活」
      ソプラノ独唱:クリスティアーネ・リポーア
アルト独唱:アンケ・フォンドゥング
合唱:東京音楽大学
合唱指導:篠崎義昭、阿部純


オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:山口、ヴィオラ:店村、チェロ:木越、ベース:吉田、フルート:甲斐、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、バスーン:客演(東京フィルの黒木綾子さん)、ホルン:客演(前首席奏者の松崎裕さん)、トランペット:関山、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:久保、オルガン:客演
弦の構成:16-16-12-9-8

感想

 
 名演でした。マーラーの「復活」は、大規模なオーケストラと二人の独唱、それに合唱を必要とするので、そう滅多に聴くことはなく、私にとっても三度目の実演ですが、多分私にとって、一番素晴らしい「復活」でした。N響を指揮する若手外国人指揮者は、海外で評判を得た方が来ることが多いのですが、評判倒れだな、と思うことが少なくありません。しかし、今回指揮したシュテンツは、私の見るところ、パーヴォ・ヤルヴィ以来の俊英です。こういう方を待っておりました。

 まず何と言っても、全体の組み立てが上手です。多分「p」の音色を基準に組み立てているのだろうと思います。弱音の作り方がとても上手です。底から、全体を見通す構成力が高いです。だから、緊張感に溢れた音楽を作りながらも風通しが良いのだと思います。

 そして、N響の弱音の美しいこと。N響は、弱音をゆっくり演奏するのが得意ではないオーケストラだとばっかり思っていたのですが、こんなに美しく揃った弱音を聴かせてくれるのであれば、その汚名は返上したと申し上げなければなりません。とにかく弦も、管も、小さい音で演奏する部分が緊張感が満ちあふれていて、耳を澄ませて聴きたいと思わせる厳しさがありました。弱音がしっかりとしているので、強音の爆発が、対抗的に素晴らしくなるのです。打楽器群のドラムロールも凄かったし、ホルン、トランペット、トロンボーンの演奏もとてもよかったと思います。

 東京音大の合唱もグッドジョブでした。特に男性合唱がいいです。抑制された弱音が綺麗で、大変感心いたしました。

 ソリスト二人は、アルトのフォンドゥングが良く、ソプラノは今一つ。ソプラノは、全体の音量のバランスがつかみ切れず、合わせるのに苦労していました。しかし、その瑕疵は音楽全体の魅力を無くすようなものではありません。とにかく、N響とシュテンツの精妙な美を大いに讃えたいと思います。

 なお、今回の演奏会では、コントラバスの第一プルトの向かって左側(即ち、吉田さんの隣)に、元ベルリン・フィル首席奏者のクラウス・シュトールさんが客演で入りました。多分、彼が入ることで、若手奏者には大きな刺激になったでしょう。それも楽しめたことでした。

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2010年12月4日 第1688回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ

曲目: ショパン ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11
      ピアノ独奏:ユリアンナ・アヴデーエワ
       
  ストラヴィンスキー    交響詩「うぐいすの歌」
       
  ドビュッシー    交響詩「海」


オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:店村、チェロ:藤森、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、バスーン:佐藤(ショパンのみ)/森田、ホルン:日高、トランペット:客演(京都市交響楽団の菊本和昭さん)、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:植松、
弦の構成:14型(ショパン)、16型(ストラヴィンスキー)、16-14-12-12-8(ドビュッシー)

感想
 
 N響名誉音楽監督による定期演奏会。デュトワは、レパートリーの広い指揮者ですが、一番得意とするのはフランス音楽と、ストラヴィンスキーのようなフランスと関係の深い音楽であることは、申し上げるまでもありません。N響を長く聴いているものにとって、デュトワのフランス音楽は、あまりにも聴き慣れていて、「又か」と思う部分があるのですが、聴いてみれば、やはり第一級の演奏だと思います。「海」も「うぐいすの歌」も、立派な演奏でした。

 最初のショパンの協奏曲を演奏したアヴデーエワと言う方は、本年10月、ワルシャワで行われた第16回ショパン国際ピアノコンクールの優勝者で、マルタ・アルゲリチ以来45年ぶりの同コンクールでの女性優勝者となる方、だそうです。N響デビューは、同コンクール優勝者の副賞として用意されていたもので、ほぼ満席のNHKホール、即ち3000人以上もの聴衆の前で演奏できるのは、本人にとってもとても嬉しいことであるに、違いありません。

 演奏は、若さの気負いを感じさせるものでした。コンクールに向けて徹底的にさらってきたショパンの協奏曲ですから、技術的にはほぼ完璧の演奏。細かいところにも気を配り、全体のバランスも落ち着いて見据えた演奏です。その中で、細かいフレージングには、アヴデーエワのアイディアを込めているのでしょうか。トリルの入れ方や、一寸したリタルダンドに個性があるようです。ただ、今回使用している楽譜は、通常のものと異なるエキエル版だそうですので、その効果が出ているのかもしれません。

 音色が取り立てて綺麗な方だとは思いませんでしたが、音の粒立ちが良く、一音一音しっかりと、内声部も弾き飛ばしがないので、音楽として豊饒です。指揮者やオーケストラをよく見ながら演奏しており、協奏する意識が高かったのだろうと思います。デュトワ/N響は、この作品はお手の物ですし、流石にこなれた演奏でした。ファゴットの佐藤さんの演奏が特によかったです。アンコールは、ショパンのマズルガイ短調作品67-4。こちらも甘美な演奏で、結構でした。

 第2曲目の交響詩「うぐいすの歌」は、オペラ「ナイチンゲール(夜啼き鶯)」の音楽を交響詩に変更したもの。私が、この交響詩を聴くのは初めてのことですが、原曲のオペラは、2001年、沼尻竜典指揮、東京フィルの演奏会形式の上演で聴いたことがあります。その時は、佐藤美枝子さんがとても素晴らしい歌唱を披露してくれたことを覚えております。今回は、佐藤さんの歌った部分は基本的にフルートの役割だったようです。フルート・神田さん、ピッコロ・菅原さんの演奏は、立派なものでしたが、高音ソプラノ好きのどくたーTとしては、何となく喰い足りなさを覚えてしまいました。

 オペラが作曲された1914年は、ストラヴィンスキーの作曲歴から言えば、原始主義時代ですが、作品の味わいは、いわゆる三大バレエとは全然違っていて、超ロマンチシズムに近いものです。その雰囲気と中国的エキゾチシズムが上手く混在させた味わいが魅力の作品です。流石にデュトワの見通しの取り方は上手なもので、よいまとまりで終わりました。

 「海」、何も申し上げることはありません。デュトワの手の中に完璧に入っている作品を、デュトワらしく、しっかりと演奏して見せた、ということでしょう。絵画的、色彩的広がりが素敵で、大変結構だと思いました。 

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2010年12月10日 第1689回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ

曲目: ブリテン 戦争レクイエム 作品66
      ソプラノ独唱:タチャーナ・パヴロフスカヤ
テノール独唱:ジョン・マーク・エンズリー
バス独唱:ゲルト・グロホウスキ
合唱:東京混声合唱団(合唱指揮:松井慶太)
合唱:NHK東京児童合唱団(合唱指導:加藤洋朗)


オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:中野、オーボエ:北島、クラリネット:客演(前首席奏者の横川晴児さん)、バスーン:菅原、ホルン:今井、トランペット:客演(新日本フィルの服部孝也さん)、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、オルガン:客演、ピアノ:客演
室内オーケストラのメンバー
1stヴァイオリン:斎藤真知亜、2ndヴァイオリン:大林修子、ヴィオラ:井野邉大輔、チェロ:藤村俊介、ベース:西山真二、フルート:神田寛明、オーボエ:青山聖樹、クラリネット:伊藤圭、バスーン:岡本正之(東京都交響楽団)、ホルン:松崎裕(前首席奏者)、ハープ:水野なほみ(フリー)、ティンパニ:植松透
弦の構成:16型
合唱団:ソプラノ30名、アルト31名、テノール29名、バス29名、合計119名

感想

 
 感動しました。合唱を含めた声楽部が殊に見事です。
 
 作品は、20世紀を代表するレクイエムとして、あまりにも名高いですが、三管のフルオーケストラに室内オーケストラ、合唱、児童合唱、ソリスト3名という莫大な人数が必要で、演奏されることは滅多にありません。私も、いつか実演を聴きたいと思って30年経ちますが、ようやく夢がかなった気持です。それにしても、あの結構広い、NHKホールの舞台が、オーケストラと合唱で埋め尽くされている姿は壮観です。その上、舞台裏には児童合唱団が控えているのです。これだけ規模の大きい作品はなかなかありません。

 作品は、ラテン語の通常の典礼文の間に、第一次大戦中に西部戦線で戦死した英国の詩人・オーウェンの戦場で書かれた詩が、入れ子のように入り組んでいきます。典礼文担当がフルオーケストラとソプラノと大人の合唱であり、オーウェンの詩を担当するのが二人の男性ソロと、室内オーケストラ、そして、その両者をつなぐ天使の声が、舞台裏の児童合唱です。なお、今回のソリストの出身は、ソプラノがロシア、テノールが英国、バスがドイツですが、これは、ブリテンが初演した時の三人のソリストの出身地と同じです。

 エンズリーは、透明な声が見事なテノールで、その瑞々しさが最大の魅力だと思います。戦場の若い詩人の気持を歌いあげるにはうってつけと申し上げてよいと思いました。一方、ソプラノのパヴロフスカヤは、ドラマティック・ソプラノ。密度のある強い声が魅力です。この声で歌われるラクリモーザは素敵な演奏でした。バスのグロホウスキも本当の声は、バリトンでしょう。そんなに低くないところの声が落ち着いた魅力があります。テノールとバリトンの対比的掛けあいは、この作品の大きな魅力の一つですが、二人の声の混じり具合は、絶妙で、そこもいいものでした。

 合唱もすばらしいです。少し控えめの男声がことによく、女声も良いです。よく練られた表現で、流石「東混」という感じです。児童合唱による天使の声も柔らかく、ホールを包み込む感じで、結構でした。

 オーケストラの演奏も良かったですが、室内オーケストラを担当した皆さんの技量は流石です。弦楽器はフォア・シュピーラークラスで固め、管楽器は首席奏者級を並べましたから、悪いはずはないのですが、魅力的な伴奏です。殊にチェロ、コントラバスの低音楽器に魅力を感じました。

 いつも思いますが、デュトワは、このような大規模な作品を上手にさばきます。作品の性質から言って、華やかな演奏ではありませんが、見通しの良いバランスのとれた演奏になっていました。特に、最後の第6部「我を許したまえ」で、対立していた典礼文と、オーウェンの詩と天使の声が合わさって纏まっていくわけですが、そこに向けての道のりの取り方が、デュトワの真骨頂なのでしょう。

 以上、大変満足した演奏ですが、一つ苦言。字幕スーパーが付いたのですが、プログラムに対訳なし。このような声楽曲では、字幕よりもプログラムに対訳を載せて欲しいと思います。詩は字幕を見て分かるものではなく、全体の構成を見て分かるものと考えるからです。

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