2012年NHK交響楽団定期演奏会ベスト3
第1位:12月Aプログラム シャルル・デュトワ 指揮
曲目: ストラヴィンスキー 歌劇「夜鳴きうぐいす」(演奏会形式・字幕付き)
夜鳴きうぐいす:アンナ・クリスティ 料理人:ディアナ・アクセンティ 漁師:エドガラス・モントヴィダス 中国皇帝:デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン 侍従:青山 貴 僧侶:ジョナサン・レマル 死神:エロディ・メシュン 日本からの使者:村上 公太/畠山 茂 合唱:二期会合唱団(合唱指揮:冨平 恭平/鈴木 彰久) ラヴェル 歌劇「子供と魔法」(演奏会形式・字幕付き) 子供:エレーヌ・エブラール ママ、カップ、トンボ:エロディ・メシュン 安楽椅子、牝猫、リス、羊飼いの男:ディアナ・アクセンティ 火、ウグイス:アンナ・クリスティ お姫様、コウモリ、フクロウ、羊飼いの娘:天羽 明恵 ソファー・木:ジョナサン・レマル 大時計、牡猫:デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン ティーポット、小さな老人、雨蛙:エドガラス・モントヴィダス 合唱:二期会合唱団(合唱指揮:冨平 恭平/鈴木 彰久) NHK東京児童合唱団(合唱指揮:大谷 研二) 第2位:5月Aプログラム 尾高 忠明 指揮
曲目: オネゲル 交響詩「夏の牧歌」 ショパン ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21 ピアノ独奏:ギャリック・オールソン デュリュフレ レクイエム メゾ・ソプラノ独唱:加納 悦子 バリトン独唱:三原 剛 合唱:新国立劇場合唱団 合唱指導:冨平 恭平
第3位:5月Cプログラム 広上 淳一 指揮
曲目: 武満徹 From me flows what you call Time(1990) パーカッション(T):竹島 悟史 パーカッション(U):植松 透 パーカッション(V):石川 達也 パーカッション(W):西久保 友広 パーカッション(X):村井 勲 バーバー 弦楽のためのアダージョ バンスタイン 交響曲第1番「エレミア」 メゾ・ソプラノ独唱:ラヘル・フランケル 次点:2月Aプログラム ベルトラン・ド・ビリー 指揮
ベスト指揮者:シャルル・デュトワ
ベスト・ソリスト:ラデク・バポラーク(ホルン)
選択の理由NHK交響楽団が行う年間27プログラムの定期演奏会うち、2012年は18回を聴きました。今年の特徴は、ビッグ・ネームの指揮者の登場が例年にも増して多かったことがまず挙げられると思います。特に2012-2013年シーズンに入ってからは、プレヴィン、スラットキン、マゼール、エド・デ・ワールト、デュトワと一流どころの指揮者が続々と登場し、立派な演奏を聴かせてくれました。しかしながら、その演奏に感動できたかどうか、ということになると、必ずしもそうはいかないところが、音楽の難しさでもあるし、面白さでもあるように思います。
さて、個々の感想のまとめです。
本年は、1月にまず、ラドミル・エリシュカが登場しました。エリシュカは、2009年にスメタナの「わが祖国」全曲を演奏して、2009年の「最も心に残ったN響コンサート」の第一位に選ばれた方です。今回もお得意のスメタナ、ヤナーチェク、ドヴォルザークを持ってまいりましたが、私の趣味と比べると、泥臭すぎる演奏でした。同じく、1月にはスラトキンが、12年ぶりにN響の定期公演に登場。彼の演奏は、ぐっとケレン味の強いものになっており、私の趣味ではありません。2月はビリーとノセダが登場しました。これはどちらも魅力的な演奏でした。ベルトラン・ド・ビリーは、それなりのこだわりのある演奏をする方。そのこだわり方が、音楽の魅力につながっている感じがしました。ノセダは、カゼッラという日本ではほとんど知られていない作曲家の交響曲を取り上げましたが、なかなか素敵な演奏でした。
4月は、ロジャー・ノリントンによるベートーヴェン中心のプログラム。「英雄交響曲」など、それなりに聴くところがありましたが、最初彼に感じた衝撃的な魅力は薄れてまいりました。5月は尾高、広上の二人の日本人指揮者の演奏を聴きました。これはどちらも名演。ギャリック・オールソンのショパンも素晴らしかったし、デュリュフレの「レクイエム」は実に素晴らしい演奏でした。広上の武満、バーバー、バーンスタインというプログラムの妙も、演奏それ自身も立派。これで、「エリミア」のソリストが良かったら、どこまで凄い演奏会になったかと思います。
6月は、アシュケナージのいつもながらの演奏。例年通り、この人は指揮者よりピアニストの方が絶対に合うのに、という愚痴がまた出てしまいました。ただし、ラデク・バポラークの独奏による、グリエールのホルン協奏曲、これは凄い。さほどの名曲だとは思いませんでしたが、ソリストのヴィルトゥオジティのおかげで、曲の魅力が2割アップした感じです。
前半の演奏会で殊に良かったのは、2月A、C、4月A、5月A、Cだったと思います。
さて後半ですが、9月は名誉客演指揮者のプレヴィンによるマーラー9番。悪い演奏ではなかったのですが、かつてのようなオーケストラコントロールはできなくなっているように思いました。あとは、1月に続きスラットキン。こちらはショスタコのレニングラード交響曲で気を吐きました。10月は世界的大指揮者のロリン・マゼールが登場。さすがの演奏でしたが、私の趣味とは異なるものでした。11月のエド・デ・ワールト、ブルックナーとワーグナーという本格的プログラムで臨みましたが、ワルキューレの第1幕は、テノールがブレーキになって折角の曲の魅力が出せないうちに終了。ブルックナーの8番もつまらない演奏でした。
12月のシャルル・デュトワ。こちらはA,Cプログラムとも名演。ローマ三部作も「ローマの謝肉祭」もよかったし、Aプロの「夜鳴きウグイス」、「子供の魔法」は間然としたところのない名演奏。大変結構でした。
後半の演奏会で私が評価するのは、9月C、12月A,Cです。
以上の8回からベスト3候補を選びます。前半の4つからまず落ちるのは2月のCプロです。カゼルラの交響曲は面白かったけど、本当によかったのかどうかはよくわかりません。4月のノリントンも彼の最高の演奏ではないと思います。したがって残るのは、2月のAと5月の2回です。後半は、9月のCプロは悪くはないけど、12月のデュトワと比較すると見劣りがします。
以上残ったのが、2月のA、5月のA、C、12月A、Cです。デュトワの振った12月のプログラムは、どちらも素晴らしいものでしたが、どちらをとるかといえば、滅多に聴けないストラヴィンスキーとラヴェルのオペラ作品をあれだけ高水準で聴かせたAプロに惹かれます。Cプロは同じデュトワが振ったということで、涙をのんで選外にします。残りは、素晴らしい合唱が魅力的だった5月Aプロ、指揮者の個性をしっかり感じることができた5月のBプロの順になります。ベスト指揮者は、デュトワで文句ないところ。ベスト・ソリストですが、こちらはラデク・バポラークで決まりです。あの胸のすくような演奏は、金管楽器奏者の鑑です。
2012年12月30日記
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