2003年NHK交響楽団定期演奏会ベスト3
第1位:6月Cプログラム シャルル・デュトワ指揮
曲目:リヒャルト・シュトラウス 歌劇「エレクトラ」作品58
(演奏会形式・字幕付原語(ドイツ語)上演)出演者
エレクトラ : エリザベス・コンネル(ソプラノ) クリテムネストラ : ジェーン・ヘンシェル(メゾ・ソプラノ) クリソテミス : エファ=マリア・ウェストブルック(ソプラノ) エギスト : ジークフリート・イェルザレム(テノール) オレスト : デイヴィド・ピットマン=ジェニングス(バリトン) オレストの守役&年老いた従者 : 大久保 光哉(バリトン) クリテムネストラの側仕えの女官&第5の召使 : 平井 香織(ソプラノ) クリテムネストラの裾持ちの女官&第4の召使 : 薗田 真木子(ソプラノ) 若い使者 : 岡本 泰寛(テノール) 召使頭 : 田中 三佐代(ソプラノ) 第1の召使 : 菅 有実子(メゾ・ソプラノ) 第2の召使 : 大林 智子(メゾ・ソプラノ) 第3の召使 : 栗林 朋子(メゾ・ソプラノ) 城中の家臣や女官&召使の男女 : 二期会 合唱指揮 : 岩村 力 第2位:5月Aプログラム ネルロ・サンティ指揮
曲目:ヴェルディ レクイエム(死者のためのミサ曲)
アドリアーナ・マルフィージ(ソプラノ)
ヤーナ・ムラゾワ(メゾソプラノ)
ミロ・ソルマン(テノール)
フランコ・デ・グランディス(バス)
二期会合唱団 合唱指揮:三澤 洋史第3位:2月Cプログラム ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
曲目:リヒャルト・シュトラウス 13管楽器のためのセレナード 変ホ長調 作品7
ニルセン クラリネット協奏曲 作品57
クラリネット独奏:磯部周平
シベリウス 交響曲第2番ニ長調 作品43
選択の理由
NHK交響楽団は年間27のプログラムで定期演奏会を行いますが、私は、本年はそのうち16のプログラムを聴きました。本年の後半は、音楽監督のデュトワが退任して、何年ぶりかでシェフのいないシーズンとなりました。そのせいか全体の水準は、2002年ほどではなかったのかな、という印象です。そう言いながらも、素晴らしい演奏も多く、今年もオーケストラ音楽を聴く楽しみを味あわさせて頂きました。
印象深かった演奏を1月から順に挙げて行くと、
2月のAプロとCプロ、名誉指揮者ブロムシュテットが素晴らしい演奏を披露しました。ブラームスの2番、シベリウスの2番がメインのプログラムでしたが、それぞれ聴きごたえ十分でした。
デュトワが指揮した4月のAプログラムも良かったです。日本初演となるJ・マクミランの交響曲第3番「沈黙」と「展覧会の絵」、N響の演奏技術レベルの高さに感心致しました。それ以上に素晴らしかったのが6月Cプログラムの「エレクトラ」です。これは、デュトワのN響音楽監督の総決算として取り上げた作品ですが、あれほどの難曲を実に見通しよく、くっきりと演奏してみせました。デュトワのオーケストラトレーナーとしての実力をはっきりと示す名演奏でした。また、音楽的なレベルも高く、ここ数年のN響の演奏の中でも出色の演奏だったと申し上げて良いと思います。
5月客演のサンティの演奏も良かったです。私はヴェルディ「レクイエム」を聴きましたが、その音楽の味わいは、イタリアの臭いがプンプンするもので、ヴェルディの本質を鷲掴みしているように思いました。
9月の日本の若手指揮者シリーズでは、阪哲朗の演奏が素晴らしく、印象に残りました。11月の広上淳一のマーラー「大地の歌」も加納悦子の名唱も相俟って、非常にレベルの高い音楽に仕上がっていたと思います。以上7演奏会がよい印象の残った演奏会でした。
次ぎは、近接した二つの演奏会同士で優劣を競います。
ブロムシュテット指揮の二つのプログラムですが、私はシベリウスをメインとした方を取ろうと思います。ブラームスをメインにしたプログラムも素晴らしかったのですが、これまで聴いたブラームスの演奏の中で最良のものかどうか、という点になると必ずしもそうではないような気がいたします。一方シベリウスは、ブロムシュテットのフィールドの作曲家であり、説得力が違います。ニルセンのクラリネット協奏曲も魅力的でした。
デュトワの2つのプログラムでは文句なく後者の「エレクトラ」。このエレクトラは,日本人歌手陣にもう少し頑張って欲しかったという気持ちが若干あるものの、オーケストラの魅力を引出すという点では、正にここ数年随一の演奏でした。
9月の阪と11月の広上ですが、私は広上を取ります。音楽の説得力の点で、未だ広上に一日の長が認められます。
以上、2月C定期、5月A定期、6月C定期、11月C定期が、私の本年のベスト4です。このベスト4の順位ですが、第一位が6月Cプロデュトワ「エレクトラ」。これは文句無し。第二位が5月Aプロ、サンティ「ヴェルディ・レクイエム」を採ります。一番悩むのが第三位。私の個人的な思いとしては、ブロムシュテットの北欧音楽と、広上淳一のマーラーに差がありません。若手に花を持たせるか、名誉指揮者を尊重するか大いに悩むところですが、聴取してから時間の経った、ブロムシュテットを上にしましょう。
ベスト指揮者は、シャルル・デュトワ、ベストソリストには、メゾソプラノの加納悦子を選びます。
2003年12月23日記
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