2001年NHK交響楽団定期演奏会ベスト3

第1位:11月Cプログラム ネルロ・サンティ指揮

曲目:オール「ヴェルディ」プログラム
   歌劇「ナブッコ」より序曲、ナブッコのアリア「ユダヤの神よ!」
   歌劇「ジャンヌ・ダルク」よりジャンヌのロマンツァ「おお、予言の森よ」

   歌劇「仮面舞踏会」よりレナートのアリア「お前こそ心を汚すもの」
   歌劇「ルイザ・ミラー」より序曲、ルイザとミラーの二重唱「お前、顔色が悪く悲しそうだな」
   歌劇「レニャーノの戦い」より序曲、リーダのカヴァティーナ「何度死を願ったことでしょう」
   歌劇「オテロ」よりヤーゴのクレド「無慈悲な神の命ずるままに」、バレエ音楽
   歌劇「トロヴァトーレ」よりレオノーラのアリア「静かな夜に」
   歌劇「シチリア島の夕べの祈り」序曲
   歌劇「椿姫」よりヴィオレッタとジェルモンの二重唱「ヴァレリー嬢ですか?」

ソリスト:アドリアーナ・マルフィージ(S)、ジョルジョ・チェブリアン(Br)

第2位:9月Cプログラム 準・メルクル指揮

曲目:ストラヴィンスキー 組曲「プルチネルラ」
   ボッケリーニ    チェロ協奏曲 変ロ長調 G.482
             チェロ独奏:クラウディオ・ボルケス
   チャイコフスキー  カプリッチョ風小品 作品62
             チェロ独奏:クラウディオ・ボルケス
   ウォルフ      イタリアのセレナード
             ヴィオラ独奏:川ア和憲
   メンデルスゾーン  交響曲第4番 イ長調 作品90「イタリア」

第3位:12月Cプログラム シャルル・デュトワ指揮

曲目:ストラヴィンスキー/管楽器のための交響曲(1920)
   ラロ/スペイン交響曲 作品21
     ヴァイオリン独奏:ワディム・レーピン
   チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調作品64

選択の理由

 私は、今年NHK交響楽団の定期公演を18回聴きました。内訳はAプログラムが9回、Cプログラムが9回で、会場は全てNHKホールです。この18回の演奏会には、有体に申し上げればかなり酷い演奏もありました。しかし、さすがN響と言うべき演奏も多かったと思います。それらの優れた演奏会の中から、

1)プログラムの構成に優れている。
2)その回に取り上げられた作品の演奏がどれも優れている。
3)クラシック音楽が再現芸術であるという原則に鑑み、初演作品やそれに類する作品は選ばない。

という原則に沿って選んだのが、上記3演奏会です。

 上記3演奏会と競って、選外に漏れた注目すべき演奏会についてまず記します。

 まず1月のAプログラム。N響75周年記念の冒頭を飾るコンサートで、準・メルクルの指揮でヘンツェのオペラ「ヴィーナスとアドニス」が取り上げられました。これは作品に私が結局は入りこめなかったこと、および上記3)の原則により選出いたしませんでした。

 1月のCプログラムも印象の深い演奏会でした。ここで演奏されたドヴォルザークの「新世界交響曲」は、私がこれまで実演で聴いてきた「新世界交響曲」の白眉でした。しかしながら、同時に演奏されたモーツァルトのピアノ協奏曲(独奏:ヘブラー)があまりに問題の多い演奏でした。よって、2)の原則に従い、選外としました。

 2月のAプログラム、デュトワがベルリオーズの劇的交響曲「ロメオとジュリエット」を取り上げました。声楽陣が優れた演奏でしたが、音楽自体に息苦しさを覚える演奏だったので、選外と致しました。

 4月のAプログラムは、ブロムシュテットのヤナーチェクとブルックナーのオーケストラつき声楽曲というなかなかマイナーな取り合わせ。でも、演奏はなかなか良いものでした。とくにブルックナーのミサ曲は緊張感のある名演だったと思います。第3位を12月Cプロと争そいましたが、ポピュラリティの差で選外としました。

 4月Cプロもなかなか良かったです。特にマーラーの第4番がよかった。でも、第1曲目のハイドンがいまひとつだったことと、ソプラノの声量故に選外としました。

 6月のCプロでは、ペンデレツキの「コンチェルト・グロッソ-3つのチェロとオーケストラのための」が初演されました。なかなか面白く聴いたのですが、上記3)の原則により選出いたしませんでした。

 サヴァリッシュの振ったサヴァリッシュN響デビュープログラム(10月Cプログラム)。メインのベートーヴェンは中庸な名演だったと思いますが、シューマンのピアノ協奏曲(園田高弘独奏)を私は全く評価出来ないので、選外としました。

 11月のAプロ、これは良かったと思います。一寸オールドファッションでしたが、それもまた良しです。Cプロの「ヴェルディの夕べ」をベスト1に選んだので、こちらを選外にしましたが、11月Cプロがなければ当然ベスト3入りできる演奏でした。

 12月Aプログラム、ハイドンの「天地創造」これもなかなかの演奏でした。特にスウェーデン放送合唱団の実力が発揮されてよかったです。ただし、ソプラノが今ひとつだったこと、オーケストラの切れ味がよすぎて、天地創造としては一寸息苦しかったかな、と思えることから、選外にしました。

 第3位の12月Cプログラムと致しました。選定の理由は、穴がなかったということに尽きます。レーピンがソロを弾いたスペイン交響曲も、チャイコフスキーの第5番の交響曲も、N響の最高の演奏ではないと思うのですが、しかし、聴き手を興奮させずにはいられないオーラがありました。レーピンの演奏スタイルは一寸嫌味でしたが、そうはいっても技術水準の高さを否定するわけにはまいりません。ハイレベルの演奏の組み合わせと言う意味で、この演奏会は高く評価すべきであると思います。

 第2位の9月Cプログラムは、プログラムの妙味と演奏の水準で選択致しました。準メルクルの演奏では、1月の新世界交響曲が今年の最高だと思いますが、9月のイタリア交響曲も、メルクルらしさが非常によくでた特徴的な演奏だったと思います。厚みのある弦のたっぷりした音は、ドイツ系指揮者としてのメルクルの魅力を十分に見せてくれたのではないかと思います。さらに「プルチネルラ」の音楽の端正さにも魅了されました。ボッケリーニのチェロ協奏曲もボルケスの名人芸を楽しませて頂きました。

 第1位は、11月のCプログラム、「ヴェルディの夕べ」と名付けられた演奏会です。ネルロ・サンティのオペラ指揮者としての魅力を余すところなく伝えようとした演奏会でした。「ナブッコ」の序曲から指揮者の魔法にやられたような気がします。オペラの経験がほとんどないN響を、あれだけオペラティックに響かせるのですから、指揮者のオペラに対する見識の高さと、それに柔軟に対応できるN響の実力に感服致しました。文句なしの本年のベスト演奏会でした。ソリストのマルフィージ(S)とチェブリアン(Br)は、どちらも大向こうを唸らせるような歌手ではありませんでしたが、ヴェルディオペラの歌の魅力を伝えるには、十分の実力を備えていたと思います。

 ベスト指揮者は、ネルロ・サンティ、ベストソリストにはレーピンを選びます。

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2001年12月19日記


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