野菜讃歌

書誌事項

野菜讃歌
庄野潤三著
随筆集
1998年10月12日第一刷発行
講談社、1700円(税別)、ISBN4-06-209374-X
初出:1995年から1998年各雑誌、新聞等

紹介

平成7年から平成10年に掛けて書かれた随筆・短文集。合計44編。一番長いのは、日本経済新聞に連載した私の履歴書。それ以外のお話は、例の如く、自分の日常生活を短文にまとめたものと自作や他の作家の作品に関するお話。

タイトルとなった「野菜讃歌」という随筆で、庄野さんは例えば次のように書く。

 茄子。
 茄子も好きで、よく食べる。妻に訊いてみると、私がいちばん好むのは、縦割りに三つに切ったのをフライパンで油で両面ともいためておいて、その上に味のついたお出しをかけ、けずりがつおと刻み葱をふりかけて食卓に出したものだという。お出しの味がしみたのがおいしい。
 味噌汁に茄子を入れたのもいい。先ず茄子をつまんで食べ、次に汁を口へ運ぶ。

巧いものですね。平明で、無駄がなくて、その上美味しそうで。私(つまりT)は、茄子が好きなものだから、思わず味を想像しちゃいます。

他にも、一寸いい話がたくさんあります。「この夏のこと」というタイトルで紹介される下駄の話。「我が庭の眺め」での狸の話。「名言」におけるあくびの話。自分と宝塚の郷真由香との比較。みな一寸ほのぼのとさせられます。遠藤周作さんに対する追悼文も非常にいい文章です。

私の履歴書の30回目(最終回)には庄野さんの晩年の仕事と楽しみのことが簡潔にまとめてあります。すなわち、両親の写真へのお茶のお供え、かきまぜ、妻の料理、宝塚、大阪へのお墓参り、そして散歩。いつもの庄野ワールドの小道具です。

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