鳥の水浴び
庄野潤三 著: 本体 1700円

発行年月日:2000年4月20日
サイズ:188×128mm :244ページ
ISBN4-06-210059-2

内容紹介

本についている帯にはこう書かれています。

名作「夕べの雲」から35年の時が流れ、多摩丘陵の家は夫婦2人だけの暮らしになった。
よろこびの輪をひろげ小さな楽しみを見つける愛に満ちた穏やかな日々

でも私は、庄野さんのあとがきをそのまま読むのが適当だと思います。尚、原文は縦書きです。

「あとがき

 子供が大きくなり、結婚して、家に夫婦二人きりで暮らすようになってから年月がたった。孫の数もふえた。そんな夫婦がどのようなことをよろこび、どんなことを楽しんで毎日を送っているかを書いてみたい。

 その第一回となる「貝がらと海の音」(新潮社)が出たのが1996年。そのあとに「群像」に連載した「ピアノの音」(講談社1997年)、(中略)と続き、五作目が「群像」に連載したこの「鳥の水浴び」となる。文芸誌への連載という形での私の仕事はと切れずに続いて行く。おかげさまで、といいたい。「庭のつるばら」の「あとがき」に私は、
-同じようなことばかり書き続けて飽きないかといわれるかもしれないが、飽きない。夫婦の晩年を書きたいという気持ちは涌き出る泉のようだ。
 と書いているが、作者のその気持ちに変わりはない。

 庭の水盤に来た四十雀やメジロがちゃんと水浴びをしてくれるかどうか、書斎から私は眺めている。たっぷり水浴びしてくれれば満足する。せっかく水盤の近くまで来ていながら、ろくに水浴びをしないで去るのがいると、がっかりする。私は飽きずに見守っている。仕事にも健康にも恵まれて、こうして書き続けられることを私は感謝している。(後略)」

 ここに出てくるのは、抑制された喜びと悲しみです。全てが慎ましく、穏やかです。今回最大のエピソードは、長女夏子さんの長男、すなわち庄野さんの孫である和雄さんの結婚の話、それ以外は、毎度毎度同じようなエピソードが続きます。庭に来る鳥を愛で、四季折々の草花を楽しみ、宝塚のショーを見、大阪に旅行し、ただ単純な繰り返しのようです。
 しかし、年々歳歳花相似たり、歳歳年々人同じからず、といいます。その年月の経過による作者の目の移ろいを、私は楽しみます。

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