散歩道から

書誌事項

散歩道から
庄野潤三著
随筆集
1995年9月20日第一刷発行
講談社、1553円(税別)、ISBN4-06-207835-X
初出:1991年から1995年各雑誌、新聞等

紹介

平成3年から平成7年に掛けて書かれた随筆・短文集。合計57編。ほとんど全てのお話は、自分の日常生活を短文にまとめたものと自作や他の作家の作品に関するお話。三部構成で。第一部は、身辺で起きたもろもろのお話で、小説の題材となるようなものばかりで、庄野さんの読者にはおなじみのものです。第二部は書評あるいは本の紹介などの文章を集めたもの。第三部は、亡くなった先輩・兄弟・友人たちへの追悼の文章。

 タイトルの「散歩道から」。

 ズボンのバンドに万歩計をつけて、大体一万五千歩を目安に歩くそうです。午前に二回、午後に一回。散歩を始めたのは、脳内出血のリハビリだったようですが、それが楽しみになりました。そのことを庄野さんはこう書きます。

 「散歩は今や晩年の私の大切な日課であり、気晴らしとなった。日に三回の散歩はみないいが、中でも午前中の机の前での仕事が終わって出かける昼前の散歩は、仕事が済んだあとのほっとしたよろこびが重なって、楽しい。
(中略)
十年前の入院していた頃を思えば、こうして歩けるのは何という仕合せであろう。」

 庄野さんの1990年代以降の作品は、ご自身の晩年を強く意識して書かれています。しかし、どの作品も人生の晩秋の慎ましやかな楽しみが綴られていて、素敵です。この原動力の一つは健康であることであり、健康を維持するための秘訣が楽しみである散歩のように思います。

 他の文章で特にTが気に入ったもの。10編にしようと思ったけれど16になりました。

「うり坊の話」
「じいたんのハーモニカ」
「子供が小さかったころ」
「『夕べの雲』の一家」
「梅見のお弁当」
「新宝塚大劇場への旅」
「旅から帰って」
「有美ちゃんのおみやげ」
「誕生日の贈り物」
「ざんねん」とでびら
「ミュージカル「シーソー」の記」
「小沼丹の『清水町先生』」
「福田宏年『バルン』氷河紀行」
「『サヴォイオペラ』余録」
「旅さきの井伏さん」
「英二伯父ちゃんの薔薇」

 以下蛇足。
 本書、「散歩道から」は1995年に出版されているのですが、そのとき、広告を見逃していて買いそびれ、本屋に出かけて思い出す度に探していたのですが、中々見つかりませんでした。先日、出張の帰りに八重洲ブックセンターを覗いた所、発見し、早速購入して帰りの電車の中で読みました。何年越かで見つけて非常に嬉しかったです。さて、本書を購入したのは火曜日だったのですが、同じ週の金曜日、別の目的で新宿の紀伊国屋を覗いたところ、文芸書のコーナーに本書が一冊置いてありました。前、紀伊国屋を探した時には無かったので、最近入荷したのでしょうか?。見つかるときは、こんなものなのだなあ、と思った次第です。

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