屋上

書誌事項

屋上(短編集)
庄野潤三著
初 出 
 屋上        群 像 昭和50年4月号
 五徳        文 藝 昭和50年1月号
 やぶかげ       海  昭和50年1月号
 かまいたち     文学界 昭和50年2月号
 かたつむり     群 像 昭和51年1月号
 家鴨         海  昭和51年1月号
 分れ道の酒屋   別冊文藝春秋 昭和51年6月刊
 菱川屋のおばあさん  海  昭和51年7月号
 写真屋       群 像 昭和51年10月号
 コルクの中の猫    海  昭和52年8月号
 双眼鏡       群 像 昭和52年12月号
 割算        新 潮 昭和53年1月号

 三河大島      群 像 昭和54年1月号
 伊予柑        海  昭和54年7月号
 ある健脚家の回想  文学界 昭和54年11月号

 モヒカン州立公園  群 像 昭和55年1月号
出 版 1980年2月15日 講談社 
0093-163923-2253(0)

紹介 

昭和50年代前半に発表された短編小説の作品集です。庄野さん54歳から59歳にかけての作品。この当時、庄野さんは、連作短編集「鍛冶屋の馬」、ガンビア時代の思い出を書いた「ガンビアの春」、「シェリー酒と楓の葉」、大阪に題材を取った聴き書き小説「水の都」など、精力的に作品を発表しています。その合間に書かれた短編小説群です。長編が取材をもとに書かれた作品が多いので、逆に短編は、一寸見聞きした話題に題材をとっているようです。編年的に纏められているので、庄野潤三の色々な小説手法の展覧会になっています。

それぞれの作品が原稿用紙で10〜20枚の短編で、一つのエピソードでまとめてあります。

簡単に作品を紹介します。

屋上

病院で日光浴を指示された女性の患者が、病院の屋上で日光浴をした時に出会った、おばあさんとの会話。おばあさんの話の情感と口調を楽しみたい。

五徳

13年間使いこんで細くなってしまったガスレンジの五徳の交換の話。燃料屋の末の息子が見てくれて、なんとかしてくれようとするが、うまくいくのだろうか。燃料屋の息子の腰の軽い感じが良く出ていて、面白いです。

やぶかげ

「大家さんの家作にいる奥さん」の話。卵を呑みに来た青大将を見つけたり、子供の清美ちゃんが自動車にはねられたり、事件に巻きこまれ易いタイプの人。でも家族は皆良い人だから、これからはよくなっていくに違いない。

かまいたち

「屋上」と同様の病院でのエピソード。家の中を走りまわっていたら、突然まゆにそって切れてしまった子供と、連れて来たお母さん、そして、やけど治療で通院しているおばあさんのエピソード。

かたつむり

燃料屋の末の息子の話してくれた話。自分の身の廻りのことを作業の傍ら話していく。谷底に住む谷さんのお話。酒の飲めない自分が如何にして、酒席を耐えるか。お父さんへのプレゼントが、床屋で使う、ひげそり用のブラシであることなど。

家鴨

電車の中で聞こえてくる会話。学校帰りの時間。仕事から戻る途中の会社員が話す静岡のお茶の話。会社員の一人の「高山さん」が家鴨を手放した話。電車の中の風景の一断面ながら、抒情に満ちた作品。

分れ道の酒屋

「やぶかげ」同様、井村の娘の和子が関係するエピソード。和子のところで飼っているイヌの為に、しっかりした囲いを鍛冶屋さんに拵えてもらった。それを分れ道の酒屋「枡屋」の主人が、自分の犬小屋のの為に見に来るお話。

菱川屋のおばあさん

佐原・水郷紀行。菱川屋という旅館に泊まり、そこの若主人に水生植物園や香取神宮を案内してもらう。その間に旅館の昔話をする。タイトルのおばあさんは、翌朝、朝ごはんを運んで来て給仕をしてくれる。

写真屋 

「家鴨」と同様、電車の中、及び病院の待合室での会話のスケッチ。

コルクの中の猫 

猫を軸としたエピソードの発展。黍坂から来た和子が大家さんの家の猫の「タマ」がいなくなったことに端を発する。他に野良猫「コゾ」のエピソードに移り、そして、ワインのコルクに焼印された猫のマークに話が移る。

双眼鏡 

庭には入りこんだ野良猫を双眼鏡で眺める。その連想で、泊まっているホテルで、「サマンサ」という猫を連れている、アメリカ人の姉弟のことを思い出す。そのエピソード。

割算

床屋の主人の語る子供の話。主人が子供に余りのある割算を教えようとした時のエピソード。床屋のワガママなおじいさんの話など。

三河大島

蒲郡での海水浴を、夫婦で楽しんだ時の紀行文。大正7年に当時の鉄道院から発行された「鉄道旅行案内」を見ながら、現在の風景を予想する。行き先への期待感。フェーン現象の中での海水浴を楽しむ作者の姿が自然に描かれていて、好編

伊予柑

床屋の主人夫妻の談話。「割算」と同様。この床屋は、本業の傍ら学生向けのアパートを経営している。休み中に下宿人の一人が、区役所から呼ばれているという話から、最近の学生状況に筆が進んでいく。

ある健脚家の回想

昔の英語のテキストに入っていた、C・E・M・ジュードの「ある中年の徒歩旅行者の苦痛と楽しみ」の本文に沿った紹介文と簡単な感想。

モヒカン州立公園

かつてオハイオ州ガンビアに留学していた時にあった出来事のエピソード。モヒカン州立公園にピクニックに行ったところ、同行の青年が崖から落ちてしまった、というアクシデントがあった。このピクニックの顛末の紹介。

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