庄野邸公開日(2020年2月11日)

 庄野潤三さんは、1961年4月川崎市多摩区三田の山の上に自宅を新築し、亡くなる2009年9月までこのお宅に住んで、数多くの作品を書いてきました。その50年近い生活については、その街並みの変遷とともに、「夕べの雲」、「雉子の羽」、「絵合せ」、「明夫と良二」、「野鴨」、「世をへだてて」、「鉛筆印のトレーナー」、「さくらんぼジャム」、そして「貝がらと海の音」に始まる晩年シリーズなどの作品で克明に描かれてきました。今回の公開日には2月20日発売予定の日本大学文理学部准教授上坪裕介さんによる庄野潤三論、「山の上の物語」が販売されていました。上坪さんは、この中で、庄野文学を「場所の文学」と喝破されましたが、まさに、庄野文学の地がこの山の上であることは間違いありません。

 庄野潤三が亡くなった後、奥様の千壽子夫人がひとりで暮らしていましたが(と言いながら、隣は御長男の龍也さんの家です)、千壽子夫人も亡くなられ、空き家になられたことを機に、この作家の家を読者の方に公開したいと御長女の今村夏子さん、御長男の庄野龍也さんが考えられ、年に2日だけ公開することにしたものです。その第四回目が2020年2月11日に実施されました。

 第四回目の展示も、過去三回以上にグレードアップしました。パネル作成やレイアウトは、晩年の庄野作品の装幀を担当された河田ヒロさんが行われたそうですが、河田さんのセンスの良さが光るものでした。

 お客様も毎回300人ぐらいいらっしゃるそうですが、今回も大変多くのお客様がお見えになり、家の中にいられないほどでした。大作家への関心の深さだと思います。

 この日もまた、夏子さん、龍也さん、龍也さんの奥様の敦子さん、そして龍也さんの御長女の恵子さん、庄野さんの晩年の作品の装丁を手掛けた画家の河田ヒロさん、夏葉社の島田潤一郎さんらがいらしていて、また、龍也隊長の元で一緒に活動されているたくさんのボランティアの方がいらしてご案内してくださいました。ほんとうにありがとうございました。また、毎度のことながら、夏子さんには、庄野先生に関するいろいろなお話をしていただきました庄野文学の愛好者にとっても、大変参考になったのではないかと思います。

 以下、当日撮影した写真を又紹介いたします。

  
庄野潤三宅まで
生田駅は、谷あいにあります。そのため、「山の上」庄野邸までは、15分程度上り坂を歩かなくてはいけません。しかしながら、とても良い天気で、気持ちよく歩くことができました。 駅裏の急な階段、ここを通れば近道。でも車は通れません。
長沢浄水場から、庄野家に向けて登るZ坂です。生田駅から三田団地の上まで、だらだら坂の上りですが、ここで更に一段の上りとなります。
庄野潤三が、「山の上」と言ったとおり、本当に山の上です(写真のみ本年のものです)
Z坂の中腹から富士山が見えます。庄野潤三のお気に入りの光景の一つでした。
   
庄野家外観・庭
   
庄野潤三の家です。手前に見える平屋建ての建物。庭には、風よけに植えた木が大きくなって、枝が張られています。その木には、梯子がかけられたり、ブランコが吊るされたり。この辺は、長男・龍也さんの御趣味なのでしょう。 玄関わきの壁に貼ってあったご挨拶です。「父の関連書籍」とは、新たに出版が決まった「エイヴォン記」や、上坪裕介先生の「山の上の物語」を指します。
新年に起こった小事件とは、庄野龍也さんが書かれた「ドバトの来る庭」というタイトルのエッセイです。読ませていただきましたが、さすがに大作家の息子。素敵な文章でした。
庄野家の手掘りの井戸です。「夕べの雲」にも登場し、今も現役だそうです。 今回も道端では、関連書籍が販売されていました。中でも「山の上の物語」は市中では2月20日発売。ここでは先行販売。更に消費税もなしでした。
   
庭の鳥の餌箱です。何代目なのでしょうか。庄野さんはこういう餌場に餌を置いて、日々訪れる鳥たちを見て楽しんでいました。 庄野薫三の家の間取り図です。以下はそれぞれの部屋に飾られていたもので、今回初めて撮影した写真を載せます。
   
書斎
今回は書斎の窓際に置いてあった潤三の愛読書。潤三は、これらの10冊ほどの本を何度も何度も繰り返して読んでいたそうです。 書斎の本棚。愛読書がぎっしりとしまわれています。
芥川賞正賞の時計、受賞作である「プールサイド小景」も置いてありました。後ろの鉛筆は、潤三が執筆に用いたステッドラーの4Bの鉛筆。潤三は毎朝長女の部屋の鉛筆削りで鉛筆を削り、執筆するのを日課にしていました。短くなったものは、千壽子夫人が大切に集めて取っておきました。その山です。 潤三の執筆の方法を示す証拠が、書斎のセンターテーブルに置かれていました。
潤三はまず毎日日記をつけ、その日記をもとに創作ノートを作成します。その創作ノートから原稿用紙に様々な経過表をまとめ、下書きにしていたそうです。
同じく、センターテーブルの反対側。「山の上に憩いあり」などの作品に登場する「松のタンコブ」の実物です。隣には、創作ノートと、作品への挿入に用いた夏子さんのお手紙。 番外編。今回購入した上坪裕介さんの「山の上の物語」
上坪先生は、大学入試の対応でいらっしゃいませんでした。
   
お茶の間(居間)
ご近所の栗原茂さんが作られたという「山の上の家」の模型。 エイヴォン記が再刊されるようで、その見本刷りが置いてありました。
「説明は不要ですね。 山の上に井伏鱒二、小沼丹さんたちがいらして、宴会を行ったときに書かれた南画風絵と書
   
六畳の間
   
潤三が愛用していたジャケットとハンチング。 河田ヒロさんが作成された新しいパネル。
   
台所
   
兜のサンドイッチです。 「かき混ぜ」を拵えたすし桶。最終回には、かき混ぜの実物を作って、展示する構想もあるそうです。
   

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