ウラディーミル・アシュケナージ

（1937.7.6-）

N響前音楽監督。N響桂冠指揮者。N響で指揮した定期公演、34公演（1415-1416、1523-1524、1532-1534、1550-1551、1562-1564、1577-79、1589-91、1596-97、1676-78、1730-32、1784-86、1838-40、1888-89）

旧ソ連ゴーリキー生まれ。中央音楽学校を経て、モスクワ音楽院でピアノを学び、1955年ショパン国際ピアノコンクール第2位、1956年エリザベート王妃国際音楽コンクールおよび1962年チャイコフスキー国際コンクールで優勝した。20世紀後半を代表するピアニストのひとりであるし、現代最高のピアニストと言われることも少なくない。ピアニストとしてのアシュケナージは、その圧倒的なレパートリーで群を抜き、また、その全ての演奏が一定の水準を越えるという点で稀有な存在である。その音色やタッチはきわめて美しく、まさに天才的ピアニストである。

これだけの才能は、譜読みの速さ、的確さに基づいているのは当然であり、より複雑な譜読みを要求される指揮者への道を選んだのは当然かも知れない。1970年以降指揮活動を活発に行うようになった。指揮者の活動の最初は、1970年アイスランド交響楽団への客演と言われている。1974年にロンドン交響楽団を指揮して、プロコフィエフ「古典交響曲」などを録音し初レコーディング。1981年フィルハーモニア交響楽団首席客演指揮者、1987年から1994年までロイヤルフィルハーモニー管弦楽団音楽監督、1988年-1994年クリーブランド管弦楽団首席客演指揮者、1989年-1999年ベルリン放送交響楽団（後にベルリン･ドイツ交響楽団）音楽監督、1998年-2003年チェコフィルハーモニー交響楽団音楽監督を歴任し、2004年9月より2007年8月までNHK交響楽団音楽監督。2007年9月以降N響桂冠指揮者。

指揮者としてのレパートリーも、ピアニストと同様幅広く、これまで指揮者として録音した主要なオーケストラ作品には、チャイコフスキーの後期三大交響曲、シベリウスの交響曲全集、ラフマニノフの交響曲全集、ショスタコーヴィチの交響曲ほぼ全部、リヒャルト･シュトラウスの管弦楽曲の多く、スクリャービンの交響曲全集、ブラームスの交響曲全集、などがあり、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ストラヴィンスキーなどの録音もある。

しかしながら、指揮者としての才能はピアニストとは違ってごく普通のレベルであり、ピアニストとしての名声がなければ、ここまで活躍できたかどうか疑問なところである。これまでのN響との共演の中ではショスタコーヴィチがよく、今後もショスタコーヴィチを中心としたレパートリーでプログラムを組んでいくことを期待したい。