評伝佐々木邦
ユーモア作家の元祖ここにあり
小坂井澄著
テーミス
2001年7月26日初版発行
2381円(税抜き)
ISBN4-901331-05-1
目次
唯一の評伝が出来るまで | |
第1章 | 生と死のめぐり合い |
第2章 | 「偶然の威力」 |
第3章 | clumsyな生き方 |
第4章 | 負けない父と子 |
第5章 | 話せる先生 |
第6章 | 泣く人は笑うだろう |
第7章 | ガラマサどんの死生感 |
第8章 | すべてに「番」がある。 |
第9章 | 戦争とユーモア |
第10章 | 平和と自由の代償 |
第11章 | 第二の春 |
第12章 | 『赤ちゃん』誕生 |
第13章 | 人生愚挙の完結 |
あとがき |
紹介
佐々木邦の名前が、どれだけ知られているか、私には分りません。昭和1桁に10歳以上だった人たちには、非常に馴染みの深い作家だったことは間違いないのですが、第二次大戦後はメジャーな作家にはなりませんでした。したがって現在70歳台以下の世代にとって、それほど親しみのある作家とは思えないのです。
私は、中高生の頃、佐々木邦が大好きで、当時刊行された全集を購入したほどですが、私と同年代の人達で、佐々木邦を愛好する人はほとんど例外だったに違いありません。それでも、私が高校生時代には「珍太郎日記」がNHKの少年ドラマシリーズ枠で放映されたり、講談社より全15巻の全集が発行されたりして、それなりに読者がいたことは間違いないのですが、それから四半世紀が経ち、リアルタイムで佐々木邦を読んでいた世代は、鬼籍にいる人が多い21世紀になって、初の評伝が出版されたということは、驚くべきことです。
著者の小坂井澄氏はノンフィクションライター。1929年生れの72歳。1983年に『これはあなたの母』で第14回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞されているそうです。略歴をみるとキリスト教関連の著書が多いようです。そういう方が何故昭和初期の人気作家を取り上げる気になったのか、これは良く分りません。著者は、縁だと言っております。
作品自体は、正直言ってあまり面白いものでありません。佐々木邦という人自身が、計画を立てて着実にやり遂げる、というタイプの人だったようで、華のあるひとでは無かった、ということがひとつ。また、巷間伝えられるようなエピソードも無い人でした。亡くなって37年経ち、人物像を知るための基礎資料が少ないという点も、この作品の中身を厚く出来ない理由のようです。
それでも、本書を読むことにより、佐々木邦という作家像をかなり明確に知ることがで来ました。今までは、親が何をしていた人か、兄弟の数、子供や孫のこと、全然知りませんでしたから、この評伝を読んで知ったことは数多くあります。先ず、邦は、家庭的にはあまり恵まれた人ではありませんでした。
邦は四人兄弟の長男で作家、弟の二郎は日本聖公会の主教、その下の弟順三は都立高校(旧制)校長から立教大学総長、末の弟義朗は裁判官。エリート4兄弟でしたが、末弟の義朗は41歳の若さで腸チフスのため亡くなりました。また、邦は長男仙一、長女あや、次男英二を何れも病気あるいは戦争で失っています。末娘とも子はあやの忘れ形見を、邦が養女として迎え入れたものです。
このような運命の翻弄の中で、邦は悲観的諦観的運命感を身につけています。邦が『人生愚挙多し』という境地に達したのは、彼の受けた受難に重なり合っている、というのが著者の主張です。
佐々木邦は、明朗・ユーモア小説の書き手で、その作品は明るく、暖かなトーンで統一されていますが、よく読んでみると、ペシミスティックな人生観や、シニカルで冷徹な批判の目も忘れてはいません。そういったシニカルな視点は、彼の人生を反映しているということが分ります。
作品を読むために作家をどれだけ理解する必要があるのか?という点について、私は確固たる答えを持ち合わせていません。しかし、本篇を読むことで、佐々木邦の作品世界を理解するのに、有意義であろうと思います。
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