オペラに行って参りました-2023年(その5)

目次

音プラライオンの雰囲気 2023年6月30日 オンプラゾリスデン「白馬亭にて」を聴く
スタンディングオベーション 2023年7月1日 日本オペラ協会「夕鶴」を聴く
ベルカントオペラの難しさ 2023年7月1日 オペラ企画ルーチェ「ドン・パスクワーレ」を聴く
会場を突き破る声 2023年7月8日 オペラカフェマッキアート58「宍戸茉莉衣×別府美沙子デュオコンサート」を聴く
高校生は楽しめたのだろうか? 2023年7月12日 新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室「ラ・ボエーム」を聴く
舞台では何でも起こります 2023年7月13日 東京二期会オペラ劇場「椿姫」を聴く
最後は関西人 2023年7月22日 3ソプラノズコンサート、3人の蝶々さんで紡ぐ「Madama Butterfly」&GALAを聴く
箱を上回る響き 2023年7月27 日 東京フィルハーモニー交響楽団「オテッロ」を聴く
幅広い関心 2023年7月28日 丸尾有香ライブ@紀尾井町サロンホール~歌の花束をあなたにVol.2を聴く

オペラに行って参りました。 過去の記録へのリンク

      
2023年 その1 その2 その3 その4 その5 その6 その7 その8 どくたーTのオペラベスト3 2023年
2022年 その1 その2 その3 その4 その5 その6 その7 その8 どくたーTのオペラベスト3 2022年
2021年 その1 その2 その3 その4 その5 その6   どくたーTのオペラベスト3 2021年
2020年 その1 その2 その3 その4 その5   どくたーTのオペラベスト3 2020年
2019年 その1 その2 その3 その4 その5   どくたーTのオペラベスト3 2019年
2018年 その1 その2 その3 その4 その5   どくたーTのオペラベスト3 2018年
2017年 その1 その2 その3 その4 その5   どくたーTのオペラベスト3 2017年
2016年 その1 その2 その3 その4 その5   どくたーTのオペラベスト3 2016年
2015年 その1 その2 その3 その4 その5   どくたーTのオペラベスト3 2015年
2014年 その1 その2 その3 その4 その5   どくたーTのオペラベスト3 2014年
2013年 その1 その2 その3 その4 その5   どくたーTのオペラベスト3 2013年
2012年 その1 その2 その3 その4 その5   どくたーTのオペラベスト3 2012年
2011年 その1 その2 その3 その4 その5   どくたーTのオペラベスト3 2011年
2010年 その1 その2 その3 その4 その5   どくたーTのオペラベスト3 2010年
2009年 その1 その2 その3 その4     どくたーTのオペラベスト3 2009年
2008年 その1 その2 その3 その4     どくたーTのオペラベスト3 2008年
2007年 その1 その2 その3       どくたーTのオペラベスト3 2007年
2006年 その1 その2 その3       どくたーTのオペラベスト3 2006年
2005年 その1 その2 その3       どくたーTのオペラベスト3 2005年
2004年 その1 その2 その3       どくたーTのオペラベスト3 2004年
2003年 その1 その2 その3       どくたーTのオペラベスト3 2003年
2002年 その1 その2 その3       どくたーTのオペラベスト3 2002年
2001年 その1 その2         どくたーTのオペラベスト3 2001年
2000年              どくたーTのオペラベスト3 2000年

鑑賞日:2023年6月30日

入場料:15列13 番 7000円

主催:一般社団法人オンプラゾリスデン

オンプラゾリスデン公演

オペレッタ3幕 日本語訳詞上演
ベナツキー/シュトルツ作曲「白馬亭にて」
(Im weißen Rößl)
原作:オスカー・ブルーメンタール/グスタフ・カデルブルグ「白馬亭にて」
台本:ラルフ・ベナツキー、ハンス・ミュラー・アイニゲン、エリック・シャレル、作詞:ロバート・ギルバート
日本語台本・翻訳:菊地 美奈

会場 渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール

スタッフ

演出 三浦 奈綾
管弦楽 アルプス音楽団(団長/トロンボーン:竹田年志、ピアノ:瀧田亮子、チェロ:富樫亜紀、フルート(ピッコロ):千装智子、打楽器・他:竹川由紀乃)
音楽監督 瀧田 亮子
公演監督 納谷 善郎

出演者

皇帝フランツ・ヨーゼフ 池田 直樹
ヨゼファ(白馬亭の女将) 栗田 真帆
レオポルト(給仕長) 谷 友博
シードラー(弁護士) 高田 正人
ギーゼッケ(工場長) 上田 誠司
マレーネ(その妻) 浪川 佳代
オッテリエ(その娘) 大野 康子
ジーギスムント(ギーゼッケのライバル会社社長の御曹司) 荒木 俊雅
ヒンツェルマン教授 鶴川 勝也
ゾフィー(その妻) 杣友 恵子
クララ(その娘) 菊地 美奈
グステル(給仕) 末吉 朋子
キャシー(ウェイトレス) 北島 佳世
ロッテ(ウェイトレス) 勝又 恵子
エマ(ウェイトレス) 月村 萌華

感 想

音プラライオンの雰囲気‐オンプラゾリスデン「白馬亭にて」を聴く

 銀座7丁目の日本最古のビアホール「銀座ライオン」の5階にあった音楽ビアプラザ・ライオンは音楽を楽しみながら生ビールを呑めるというお店で、私も昔は何度か伺いました。お酒を呑んでいる客席と舞台が近いのが特徴で、ここで育って、大きなオペラの舞台で活躍されている方も多いと思います。そんな楽しいホールもコロナ禍や他にも理由があったのかもしれませんが、三年ほど前に閉店し、個人的にはちょっと残念だったのですが、出演されていた音楽家の方々も同様に思ったようで、そのメンバーで「一般社団法人オンプラゾリスデン」を立ち上げ、演奏会を行っています。

 大きなオペレッタ公演としては昨年「ボッカチオ」を上演し、今年が「白馬亭にて」となりました。この作品は、9年前に「音プラ・ライオン」でも上演されているそうですが、私は聴いておりません。日本でもこれまで何度か演奏されているようですが、私には縁がなく、今回初めての聴取となります。

 日本ではあまり有名ではないので簡単に概要を書いておきますと、ベナツキ―を中心とした何人かの作曲家グループで作られたリゾート・オペレッタで、舞台はザルツガンマーグードのヴォルフガング湖畔に現存するホテル「白馬亭」。1930年にベルリンで初演されて大人気を博しますが、ナチスには嫌われ、ナチスが敗北した後、人気が再燃したそうです。主要楽曲は以下の7曲、即ち、「ヴォルフガングの白馬亭にて」"Im weißen Rössl am Wolfgangsee" (ベナツキ―)、 「彼がとても美しいのは、ジーギスムントのせいではない」"Was kann der Sigismund dafür, dass er so schön ist" (ギルバート) 、「ザルツカンマーグートでは楽しい時間を過ごせます」"Im Salzkammergut, da kann man gut lustig sein" (ベナツキー) 「きっと素晴らしいことが!」"Es muss was Wunderbares sein" (ベナツキ―)、「ワルツこそ、我が恋歌」 "Mein Liebeslied muss ein Walzer sein" (シュトルツ) 、「見ることなんて!」"Zuschaun kann i net" (グラニッシュティーデン) 、「全てが空色」"Die ganze Welt ist himmelblau" (シュトルツ)(以上()内は作曲者)で、8回映画化されているとのことです。

 物語はリゾートで起きる恋愛ドタバタ劇で、最後は3組のカップルが誕生し大団円。聴いていて楽しいことこの上ありません。

 演奏は夫々が芸達者でそこが楽しめるところ。声に関して言えば、客演になる谷友博の歌が圧倒的。この舞台ではレオポルトが実際の主人公で、音楽的にも要なので、そこに谷をもってこれたことは公演の成功に大いに影響したと思います。役の性格と歌のバランスも抜群で、色々な意味で別格だったと申し上げてよいと思います。

 あと池田直樹の存在感も別格です。好々爺的な感じで登場しますが、台詞の声も明確でよく通るし、二期会オペレッタで40年以上歌っていたのは伊達ではありません。

 この二人に次いで魅力的だったのは高田正人のシードラー。やはり声に魅力がある。シードラーという役はキャラクターテノールの持ち役だと思いますし、高田もそういう意識で役に取り組んでいたと思いますが、所々で偽物のプリモテノールのように聴こえてしまうところがある、そこがちょっと残念だったかもしれません。

 栗田真帆のヨゼファは、声量的には谷や高田に敵わないのですが、芸達者な演技で、ホテルの女将の雰囲気を上手く出していたと思います。二人の娘役。大野康子のオッテリエは、華やかな高音が魅力的ですし、菊地美奈のクララはかなり屈折した役柄で、歌よりも演技で楽しませてもらいました。それ以外の方も三人のウェイトレスに至るまでみな魅力があり、また身体も動いて、オペレッタ的な楽しみがありました。唯一、ちょっと残念だったのは、声に力のある杣友恵子がほとんど歌わなかったこと。役柄上、仕方がないのですが。

 今回の台本作成担当の菊地美奈は、音プラ・ライオンの音楽監督で、あの場のことをよく知っています。それを意識した台本にまとめたように思います。ウェイトレスが着ていた衣裳は、昔、音プラ・ライオンで出演する歌手たちが着ていた衣裳とかなり似ているように思いました(ひょっとして同じかな?)。アンサンブルはアルプス音楽団ですが、多くはピアノとチェロ、フルート、それにパーカッションによる伴奏でしたが、武田年志のトロンボーンが演奏されたり、カウベルの演奏があったり、あるいはアルプホルンの演奏があったり、この辺もかつての音プラ・ライオンを彷彿させてくれるものであり、かつて音プラ・ライオンに通われたと思しき年配の方々にとっては懐かしかったのではないかと思います。

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鑑賞日:2023年7月1日

入場料:B席 3階3列28番 6400円

主催:公益財団法人日本オペラ振興会

日本オペラ協会公演

日本オペラシリーズNo.85

オペラ1幕 日本語字幕付原語(日本語)上演
團伊玖磨作曲「夕鶴」
原作/台本:木下順二「夕鶴」

会場 テアオロ・ジールオ・ショウワ

スタッフ

指揮 柴田 真郁く
管弦楽 テアオロ・ジールオ・ショウワ管弦楽団
児童合唱 子供の城児童合唱団
児童合唱指導 吉村 温子
演出 岩田 達宗
美術 島 次郎
衣裳 半田 悦子
照明 原中 治美
舞台監督 菅原 多敢弘

出演者

つう 佐藤美枝子
与ひょう 藤田 卓也
運ず 江原 啓之
惣ど 下瀬 太郎

感 想

スタンディングオベーション‐日本オペラ協会「夕鶴」を聴く

 感動的な演奏に対してスタンディングオベーションで演奏者を称える。これはとても大事なことだし、聴衆の意思の表示の方法として尊重されるべきだと思います。演奏する側も素直に嬉しいでしょう。しかし、スタンディングオベーションによって演奏者に感動を伝えるにしてもおのずとやり方があるのではないでしょうか。

 私もこれまでスタンディングオベーションの場にいたこともありますし、自分がやったこともある。でもそれは必ず通常の拍手が一段落して、演奏者が呼び戻されてからおずおずと始まる。2-3人がパラパラと立ち始め、それがだんだん広がっていくというのが一般的です。カーテンコールが始まったとたんにスタンディングオベーションが始まったのは、クラシックの演奏会では全くの初体験。びっくりしました。運ず役の江原啓之が登場した途端、会場のあちこちから一斉に立ち上がるのですから驚かずにはいられません。私の丁度前の人も立ち、正直あっけにとられました。

 それでも江原がプリモで非常に素晴らしい歌を歌ったというのであれば納得もできます。しかし、江原は運ず。そもそも華やかな役でも聴き応えのあるアリアがある役でもありません。悪役としてストーリーの中では重要ですし、音楽的にも易しい役ではありませんが、最高に上手な歌を歌っても普通ならスタンディングオベーションが出るような役ではない。更に申し上げれば、今回の出演者の中で運ずが一番実力に欠ける。もちろんこれだけの舞台に出演するわけですから一定以上の力量はあるのでしょうが、他の3人と比較すると格落ちであることは否めない。滅茶苦茶悪いということはありませんが、惣どとの兼ね合いにおいて、もう少し突っ込んだ歌を歌った方が味が出るのは間違いないと思います。だからスタンディングオベーションには凄く違和感がある。

 更に申し上げれば、運ずをおいたとしても、スタンディングオベーションに値する公演ではなかったというのが本当のところでしょう。

 今回使われた舞台/演出は2013年兵庫文化センターで初演され、2018年2月、日本オペラ協会が新宿文化センターで使用したもの。その時のつうが佐藤美枝子でした。その時の佐藤の歌唱は本当に素晴らしいもので、当時私は「主役の佐藤美枝子、素晴らしいと思いました。初役だということですがそれを感じさせないさすがの歌。歌唱技術的にはベルカントな歌唱だと思いますが、言葉一つ一つが明晰に聴こえてきて、感情の込め方もさすがにベテラン、しっかり見せてくださいました。一番の聴かせどころである「私の大事な与ひょう」の透明感と粘度のバランスの取れた感じが絶妙でしたし、後半の変わっていく与ひょうに対する感情表現、布が織り上がった後の諦念、どれをとってもたいへん見事だったと思います。」と書きました。

 しかし今回の佐藤は素晴らしかったとは思いますが、前回ほどではなかった、というのが私の評価。細かいミスも見られましたし、声自身の張りも前回ほどは強くもなく、ベテランの安定感でつうの心の陰りの部分を上手に見せていたとは思いますが、このような陰影が見える歌い方は意図的にやったものではなく、調子がイマイチだったため結果としてそうなってしまった、という風に聴こえました。

 与ひょうについても前回の中井亮一と今回の藤田卓也とを比較すると、中井の方が良かった気がします。中井は演出の意図通り最初から最後までイノセントな与ひょうを演じたのですが、藤田与ひょうはイノセントな与ひょうを演じながらも声がプリモテノールになってしまうところがある。もちろん藤田はプリモテノールですからプリモっぽく歌ってもいいのでしょうが、もっと自分を抑えて無邪気に見せたほうが更によかったと思います。

 また前回は脇を固めたのが運ず:柴山昌宣、惣ど:泉良平というベテランの名手ですから、そこも比較にならないところがあります。

 柴田真郁の音楽作りは割とくっきりとしていて良いと思いました。そんなわけで悪い公演ではなかったのですが、2018年公演を聴いている身としては、完成度で前回ほどではなかったと思うのです。だからスタンディングオベーションには違和感を持つのでしょう。

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鑑賞日:2023年7月1日

入場料:自由席 4000円

主催:オペラ企画ルーチェ

オペラ企画ルーチェ公演

オペラ3幕 日本語字幕付原語(イタリア語)上演
ドニゼッティ作曲「ドン・パスクワーレ」
(Don Pasquale)
台本:ジョヴァンニ・ルッフィーニ、ガエターノ・ドニゼッティ

会場 たましんRISURUホール小ホール

スタッフ

指揮 上條 力秀
管弦楽 ヴァイオリン:新島 七樹/桑原 絵莉香
ヴィオラ:田中 杏佳/チェロ:平 ひとみ
トランペット:平山 卓真/ピアノ:舟本 いずみ
合唱 ルーチェ合唱団
演出 青木 素子
照明 古屋 直子
舞台監督補 佐藤 尚之

出演者

ドン・パスクワーレ 藤原 啓
マラテスタ 三輪 直樹
エルネスト 谷川 佳幸
ノリーナ 大澤 伴美
公証人 佐藤 肇

感 想

ベルカントオペラの難しさ‐オペラ企画ルーチェ「ドン・パスクワーレ」を聴く

 オペラ・ルーチェは大澤伴美が主宰するオペラ団体。大澤が自分で歌いたい役の作品を上演する自主公演団体です。今年で創立10年と言うことで、例年のピアノ伴奏によるオペラ全曲公演ではなく、管弦楽を入れた公演になりました。そして、演目は「ドン・パスクワーレ」。オペラ・ブッファの最後を飾る傑作でありますが、しっかりした演奏に仕上げるのはかなり大変です。新国立劇場や藤原歌劇団でも取り上げていますが、上演回数は決して多くない。それはかなり難しい作品で、きっちりまとめるのが大変だからでしょう。それを自主公演団体が取り上げる。その意気込みは素晴らしいと思いますが、ちょっとチャレンジングです。

 見せていただき思うのは、もちろん最後まで流れましたが結構傷だらけで、何とかまとめた、というところです。はっきり申し上げれば、まあ、格好がついていたのはエルネストの谷川佳幸だけ。他の3人は結構厳しかったというのが本当のところです。

 大澤伴美のノリーナは一言で申し上げれば役に似合っていないのです。本人は軽く歌おうとしているし、高音のアクートもしっかり決めているのですが、所作がノリーナに期待されるおきゃんな感じがあまり出ておらず、歌も今一つ嵌っていないところがある。登場のアリアの「あの騎士の眼差しに」などはしっかり歌われていて見事なのですが、落ちついた感じになってしまって、もっと前に進む感じが出たほうが良かったと思いますし、結婚してからの変わり身の感じもただ怖い感じになっていて、もう少し可愛らしさが入ってこないと如何なのかなと思います。他にも上手くいっていない感じのところが色々あり、ちょっと残念だったかなという印象。

 三輪直樹のマラテスタ。三輪の声は素晴らしいバリトンでその響きは大いに感心しました。ただ、歌いまわしは摺り上げたりすることが多く、今一つすっきりしない感じ。早口の入り方などは悪くないのですが、曲として聴くと、もう少し上手くまとめられそうな感じがしてもどかしい感じがします。

 藤原啓のドン・パスクワーレ。雰囲気はドン・パスクワーレに似合っていると思うのですが、早口など曲に乗り切れていないところがある。以上の3人とも今一つだと思うのですが、掛け合い部分もちゃんと形にしているので、練習はきっちりやられてきたのだろうと思いました。

 それでも上手くいていないところは多い。この作品のひとつの聴きどころに第3幕のマラテスタとドン・パスクワーレの早口の二重唱があるわけですが、これは息を合わせて行かないとどうしてもずれます。新国立劇場レベルでもずれるときはずれる。ですから、ずれたことが大きな傷だとは思いませんが、ブレスがずれていて現実に曲もずれている。にもかかわらず、VISをやったのは如何なものか。あの程度の合い方でVISをやるのは賛成できません。

 谷川佳幸のエルネストは高音が上手く上がり切れていないなどのトラブルがありましたが、他の3人と比べると舞台なれしているというか、舞台に溶け込んでいる感じがありました。その辺が経験なのでしょうね。

 ドン・パスクワーレは言うなれば結婚詐欺みたいなお話で、老人が馬鹿にされいじめられる作品で、演出がエグイとドン・パスクワーレが気の毒になります。今回の青木素子の演出はその「老人虐め」の面はあまり出さず、可哀想な感じはあまりしないのですが、コミカルな感じも今一つ切れが悪く、靄っとした演出になりました。これが舞台全体の重さにも繋がったのかもしれません。

 上條力秀の音楽作りもあまり追い立てることもなく、弦楽アンサンブルも取り立てて上手でもなく、それも靄っとした印象に繋がっているのかもしれません。ベルカントオペラのオペラブッファをいい感じに上演するむつかしさ、大変さを感じさせる演奏でした。

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鑑賞日:2023年7月8日

入場料:自由席 3500円

主催:オペラカフェマッキアート58

宍戸茉莉衣×別府美沙子デュオコンサート

会場 マリー・コンツェルト

出演者

ソプラノ 宍戸 茉莉衣
ソプラノ 別府 美沙子
テノール 吉田 連
ピアノ 松井 理恵

プログラム

作曲 作品名/作詩 曲名 歌手
岡野貞一 高野辰之 朧月夜 宍戸 茉莉衣/別府 美沙子
ペルゴレージ 奥様女中 セルピーナのアリア「私の怒りんぼさん」 宍戸 茉莉衣
メノッティ 電話 ルーシーのアリア「もしもし!もしもし!」 別府 美沙子
モーツァルト 魔笛 タミーノのアリア「なんと美しい絵姿」 吉田 連
プッチーニ ラ・ボエーム ミミのアリア「私の名前はミミ」 宍戸 茉莉衣
プッチーニ ラ・ボエーム ムゼッタのアリア「私が街を歩くと」 別府 美沙子
モーツァルト 羊飼いの王様 アミンタとエリーザの二重唱「王座に着くためにお行きなさい、愛しい人」 宍戸 茉莉衣/別府 美沙子
ヨハン・シュトラウス2世 こうもり アイゼンシュタイン、ロザリンデ、アデーレの三重唱「一人になるのね~泣き泣きお別れ」 宍戸 茉莉衣/別府 美沙子/吉田 連
休憩   
トスティ パリアーラ 薔薇 宍戸 茉莉衣
ドビュッシー ヴェルレーヌ 月の光 別府 美沙子
R・シュトラウス ヘルマン・フォン・ギルム 万霊節 吉田 連
木下 牧子     不思議の国のアリス     序曲 ピアノ独奏
アリスのアリア「ねえねえ、教えて」 宍戸 茉莉衣
アリスとユリの花の二重唱「ユリのヴォカリーズ」 宍戸 茉莉衣/別府 美沙子
アリスとジャックの二重唱「タラの歌」 宍戸 茉莉衣/吉田 連
アリスと姉の二重唱「夢のあと」 宍戸 茉莉衣/別府 美沙子
アンコール   
ヨハン・シュトラウス2世 こうもり 全員の合唱「ぶどう酒の流れる中に」 宍戸 茉莉衣/別府 美沙子/吉田 連

感 想

会場を突き破る声-オペラカフェマッキアート58「宍戸茉莉衣×別府美沙子デュオコンサート」を聴く

 隣の大山駅は何度か使ったことがあるのですが、中板橋駅に降りるのは生まれて初めて。小さな商店街の路地の奥に洒落たホールがあります。初めて伺いましたが、代々木上原のMusicasaに雰囲気の似たホールです。総席数90というところでしょう。ここに、60人ほどのお客様を集めて行われた充実したコンサートでした。

 何といってもプログラムが洒落ている。

 オペラカフェマッキアート58は二期会研修所第58期牧川修一クラス卒業の有志によって作られた団体で、これまで年1回程度オペラを上演してきました。この中で過去に取り上げた作品からの代表的なアリアと本日登場した二人のソプラノの違いを見せる音楽で組まれ、コンサートの定番のような曲が少ないのが良かったと思います。そしてどの曲も見事な演奏。

 別府美沙子と宍戸茉莉衣はどちらもソプラノ・リリコ・レジェーロですが、響きのポイントが別府の方が高くて、宍戸がもう少し低いようです。ですから、「ボエーム」であればミミが宍戸、ムゼッタが別府になるのでしょう。であれば、「こうもり」なら、ロザリンデが宍戸、アデーレが宍戸になりそうですが、そこは見た目の雰囲気、少女キャラの宍戸がアデーレ、奥様キャラの別府がロザリンデというのは納得できるところです。

 歌はみんな素晴らしい。特に別府美沙子。別府の滑らかに流れながらも強く華やかな高音には、マリー・コンツェルトの空間は小さすぎます。反響が耳に痛いほどです。「電話」のアリアも「ムゼッタノワルツ」も落ち着いて歌われた「月の光」もどれも素晴らしいし、聴いていて安心感と満足感がある。この世代トップの実力のソプラノ・リリコ・レジェーロと申しあげて良いと思う程です。Bravaでした。

 宍戸茉莉衣もよい。別府のような会場を突き破る声はないのですが、それでも十分な広がりと艶やかさを持った音楽。セルピーナのお茶目な雰囲気と「薔薇」は素晴らしかったと思います。ミミのアリアは全体としてはいい雰囲気の素晴らしい演奏だったのですが、1箇所だけ、音が違っていたのではないかと思われるところがあり、そこだけが僅かな傷になっていたかもしれません。

 ゲストの吉田連。一年ぶりで聴きましたが昔よりも更に進歩している印象を受けました。元々実力者で二期会の本公演でも大きな役を歌っているほどですが、それが更に磨きのかかった感じです。タミーノのアリアはテノールならだれでも歌うような定番の曲ですが、最近あまりいい演奏を聴いていなかったような気がします。一方吉田の歌は甘くて流れもいい塩梅に盛り上がり、こんな素敵なタミーノのアリアを聴くのは本当に久しぶりだと思いました。もちろんシュトラウスもいい。

 この3人が歌う重唱。これが素晴らしい。「羊飼いの王様」の第1幕の最後に歌われる二重唱は私は初めてでしたけど、宍戸と別府の似ているけれども違う音色の微妙な差を聴き分けるのに丁度いい感じ。それを期待した選曲だったのでしょうが、期待通りの効果が出ていたと思います。そして、前半最後が「泣き泣きお別れ」。お互い別れを悲しむふりをしながら、実際はオルロフスキー公の夜会に期待いっぱいのきもち。「こうもり」第一幕の見せ場のひとつですが、三人ともそれぞれのキャラを上手に立てながら、しかし音楽的にはパワーと面白さが同居した素晴らしい三重唱でBraviでした。

 今回のメインは昨年の5月に滝野川で上演した木下牧子の「不思議の国のアリス」から抜粋。昨年のこの公演も素晴らしく、特に主役のアリスを演じた宍戸と姉・ユリの花を歌った別府は特に印象に残りました。その二人がまたアリスと姉・ユリの花を歌われて、昨年の素晴らしさをまた思い出しました。昨年ジャックは又吉秀樹で、吉田連は音痴な帽子屋を歌ったのですが、今年はジャック。ジャックの歌う「タラの歌」はこの作品の頂点をなすナンバーで昨年の又吉も見事に歌われたわけですが、吉田の歌もいい感じでした。

 アンコールはシャンパン・ソング。こちらも楽しくまとめ、休日の昼下がりにぴったりの素晴らしいけどくつろいだコンサートでした。

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鑑賞日:2023年7月12日
入場料:指定席 4400円 4F 3列 3番

主催:新国立劇場

新国立劇場会場高校生のためのオペラ鑑賞教室2023

オペラ4幕 字幕付き原語(イタリア語)上演
プッチーニ作曲「ラ・ボエーム」(La Bohéme)
台本:ジュゼッペ・ジャコーザ/ルイージ・イリッカ
原作:アンリ・ミュルジュ

会場 新国立劇場オペラパレス

スタッフ

指 揮 阪 哲朗
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
合 唱 新国立劇場合唱団
合唱指揮 三澤 洋史
児童合唱 多摩ファミリーシンガーズ
児童合唱指導    高山 佳子 
     
演 出 粟國 淳
美 術 パスクアーレ・グロッシ
衣 裳 アレッサンドロ・チャンマルーギ
照 明 笠原 俊幸
舞台監督 髙橋 尚史

出 演

ミミ 木下 美穂子
ロドルフォ 工藤 和真
マルチェッロ 青山 貴
ムゼッタ 九嶋 香奈枝
ショナール 高橋 正尚
コッリーネ 伊藤 貴之
ベノア 畠山 茂
アルチンドロ 晴 雅彦
パルピニョール 寺田 宗永

感 想

高校生は楽しめたのだろうか-新国立劇場高校生のためのオペラ鑑賞教室2023「ラ・ボエーム」を聴く

 夏休みの直前の1週間は新国立劇場は、例年高校生向けのオペラ鑑賞教室を行う訳ですが、演目は前シーズン最後に取り上げられた作品が多いようです。今年もその例に漏れず、6月から7月初めに上演された「ラ・ボエーム」。ストーリーが分かりやすく、音楽的にはかなり複雑に書き込まれているが聴きやすく、内容もボーイミーツガールのお話、ということでオペラ初心者が初めて見る舞台としてうってつけの作品だと思います。そう学校側も考えたのでしょうか? お客さんの9割以上が高校生。一般客は多分100人に満たなかったと思います。

   個人的には、6月末に聴いた新国立劇場の本公演「ボエーム」が、初日に聴いたことが原因だったのでしょうがまだチームワークにややぎくしゃくしたところがあって、オール日本人チームのこちらの舞台に物凄く期待しておりました。そして演奏を聴きましたが、バランスの取れたいい演奏ではありましたが、期待が大きすぎたのか、期待ほど素晴らしい演奏ではなかったというところです。

  まず音楽全体のコントロールが本公演で指揮した大野和士の方が上手い。今回の阪哲朗だってもちろんいい感じでコントロールしていたのですが、メリハリの付け方が大野の方がちょっと劇的で阪は全体的に落ち着いている印象を持ちました。この音楽作りの違いは結局好みだと思うのですが、「ボエーム」が貧乏学生たちの野放図な生活を描いているという点において、落ち着きよりも劇的な説得力を取りたいと思います。また高校生向けということを考えたとき、指揮者の気迫のようなものがあった方が、高校生の舞台への意識が増すようにも思いましあ。

  ミミを歌った木下美穂子。流石に上手いし、切々と訴える歌唱は本当に素晴らしい。登場のアリア「私の名前はミミ」は、本公演におけるマリアネッリの歌唱より木下の歌唱を採りたい。それでも全盛期の木下の声を知っている身からすると、衰え始めているのはまぎれもないところ。先日の「夕鶴」で佐藤美枝子の歌唱を聴いた時も思ったのですが、聴かせどころではないつなぎのところのフレージングの質が落ち始めている。ブレスコントロールが甘くなっているのでしょうか、数年前であったら何でもなかったところが息が続かないとか、切り返しが上手く行かないといったことが始まっているようです。木下は自分の衰えを自覚して上手に制御していたとは思いますが、それでも若干上手くいっていないところがあったと思います。

  工藤和真のロドルフォ。体調が万全ではなかったのか、今一つの歌だったと思います。まずは「冷たい手」のハイC。音はCまで上がっていたと思うのですが、響きに華やかさが欠ける。スコーンと抜けた感じがないのです。そこが残念。それ以外の部分でもプリモテノールなのですからもう少し前に出でもいいとは思うのですが、結構アンサンブルの中に埋没している印象があります。ボエームはアンサンブルオペラですから、アンサンブルとしてのバランスがいいことは重要ですが、もう少しテノールが目立った方がいいバランスだと思います。本公演のコステロはそこがちょっと前に出すぎて逆の意味でいい感じではなかったです。ちょうどいい感じに納めるのは難しいのでしょうね。

  青山貴のマルチェッロ。今回の公演で一番良かったのは青山です。存在感はあるし、野放図な行動のアンサンブルもいい感じで響いていたし、先日の本公演の須藤慎吾のマルチェッロよりも青山の方が良かったと思います。

 九嶋香奈枝のムゼッタ。悪くない。でもいっぱいいっぱいのところで歌っているという印象です。身体が小さく声量のある方ではないので、どうしてもそのように歌わざるを得ないというところがあるのでしょうが、本公演におけるマステランジェロのムゼッタが素晴らしかったので、比較するともう少し余裕のある歌であってほしいと思ってしまいました。

  高橋正尚のショナールはアンサンブルの中で十分な存在感を示していました。伊藤貴之のコッリーネ。こちらは上手い。低音の響きが安定していて、「外套のアリア」もいい感じで響き、本公演のフランチェスコ・レオーネよりも断然素晴らしいと思いました。

  べノアは畠山茂。いい歌唱ですが、もう少し踏み込んだ表現をした方が印象が強くなったのではと思います。アルチンドロとパルピニョールは本公演からの連続登場。安定したいい演技・歌唱でした。

  というわけで、6月28日に聴いた本公演と比べて遜色ない公演だったと思います。しかし、期待したほどではなかったと思うのは、大野和士の音楽づくりの方が自分の好みに合っていることと、今回のミミ、ロドルフォが期待していたほどはよくなかったことが関係しているのだろうなとは思います。

新国立劇場高校生のためのオペラ鑑賞教室2023「ラ・ボエーム」TOPに戻る
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鑑賞日:2023年7月13日
入場料:C席 8000円 4F R1列 7番

主催:公益財団法人東京二期会

二期会創立70周年記念公演

オペラ3幕 字幕付き原語(イタリア語)上演
ヴェルディ作曲「椿姫」(La Traviata)
原作:アレクサンドル・デュマ・フィス
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ

会場 東京文化会館大ホール

スタッフ

指 揮 アレクサンダー・ソディー
管弦楽 読売日本交響楽団
合 唱 二期会合唱団
合唱指揮 佐藤 宏
     
演 出 原田 諒
装置 松井 るみ
衣 裳 前田文子
照 明 喜多村 貴
振 付 麻咲 梨乃
再演演出 澤田 康子
舞台監督 村田 健輔

出 演

ヴィオレッタ 谷原 めぐみ
アルフレード 村上 公太
ジェルモン 今井 俊輔
フローラ 小泉 詠子
アンニーナ 藤井 麻美
ガストン 大槻 孝志
ドゥフォール 小林 由樹
ドビニー 山下 浩司
グランヴィル 峰 茂樹
ジュゼッペ 山中 志月
仲介人 岸本 大
給仕 寺西 一真
ダンサー 内山智恵、輝生かなで、鈴木萌恵、 千葉さなえ、玲実くれあ
岩下貴史、岡崎大樹、上垣内 平、谷森雄次、宮澤良輔

感 想

舞台では何でも起こります-二期会創立70周年記念公演「椿姫」を聴く

 2020年2月、コロナ禍が始まる直前に初演された椿の花をモチーフにした舞台での再演です。プレミエの時も谷原めぐみがヴィオレッタを歌い、きっちりと歌われていたのですが、とても他の方との関係性を考える余裕はなかったようで、一番の聴かせどころである第二幕のジェルモンとの二重唱が凄く素っ気なく歌われていたという印象が残っています。一方でプレミエ公演は指揮者のサグリパンティがとても素晴らしい音楽コントロールをされ、全体としてきっちりと整った公演になりました。当時の私の評価は「「椿姫」のお手本のような演奏だったと申し上げられる」と書いています。

 その演奏の再演ですし、タイトルロールも一緒、となればもっといい舞台になるのを期待するのは当然のところ。しかし、現実にはかなり厳しい演奏になりました。残念な舞台と申し上げて差し支えないでしょう。多分、その原因は指揮者にあります。アレキサンダー・ソディーは今年40歳という若手のイギリス人指揮者。欧州では最近目覚ましい活躍をされている指揮者とのこと。推進力のある演奏を好む方のようです。私も基本的に推進力のある切れ味のいい演奏は大好きなのですが、どうも、ゲネプロとテンポを変えてきた気がします。

 終演時間のアナウンスはゲネプロの時の進行時間から決めると思うのですが、当初アナウンスされた終演時間が21時10分。ところが実際は21時5分過ぎには終わっていました。一般にオペラで終演予定時間より遅れることはあっても早くなることは珍しい。開演時間を18時30分といっても、色々な事情で、演奏が開始されるのは、18時35分とか40分になり、今回も演奏を始めたのは35分過ぎだったと思います。しかし、前半が終わって休憩に入った時点でほぼ時間通り、終演はアナウンスよりも5分速いのですから合計10分。これをやられると歌う方はかなり面食らうと思います。

 そのスピード感覚の違いが影響したか、冒頭の導入曲がかなりガチャガチャになっていて、最初からタイミングが揃わない。歌っている方はひやひやだったと思います。ガストンかアルフレードがソロで入る部分が完全に歌えなくなってしまい(入るタイミングを見失ったようです)、歌が完全に抜け落ちてしまいました。こういうトラブルがあるとみんなが更に動揺するようで「乾杯の歌」にも影響が残り、アルフレードやヴィオレッタが歌うところも今一つ乗り切れない感じで、更にバックコーラスもあんまりよくない感じになりました。

 谷原めぐみもスピードに面食らったのか、第一声の「Flora, amici, la notte che resta」が不安定。その感じがずっと尾を引いていたようで、「ああ、そは彼の人か~花から花へ」もかなり残念。落ち着かない感じで、高音も上がり切れないし、低い音も抜けた感じになる。またプレミエの時は全然感じなかったのですが、今回は全体的に声が籠っている感じがあって、言葉がはっきりしないように思いました。結果的に第一幕は何とかまとめただけの舞台になってしまいました。

 第二幕冒頭の「燃える心に」。村上公太のアルフレードはかなり調子を戻して歌っていて決して悪いものではありませんでしたが、第1幕の影響を引きずっていた感じで、もう少し踏み込んだ歌になればいいのに、と思いました。続く、ヴィオレッタとジェルモンとの二重唱。プレミエの時はヴィオレッタとジェルモンがお互い無関係なように歌っていて残念だったのですが、今回はそんなことはなくヴィオレッタとジェルモンはお互いが向き合って歌っていたと思います。特に今井俊輔のジェルモンは、子を想う父親らしい雰囲気をしっかり出して、歌いまわしも上手くいい感じでした。一方、谷原ヴィオレッタもジェルモンにいい感じで合わせていたのですが、弱音で歌うところが抜けてしまった感じになってしまって、ピアノで歌うにしても身体は緩まないで欲しいところです。

 「プロヴァンスの海と陸」はとてもいい。「Ma」のアクートがもう少し綺麗に決まるともっと良かったと思います。

 休憩が終わってからの第二幕の後半(第二場)は、気持ちを切り替えて臨んだようで、前半よりはずっといい感じで進みました。指揮者対策もとれて、前半のようなガチャガチャした感じはなくなって良かったと思います。そして、第3幕。「さよなら、過ぎ去った日々」はしっかり歌われていましたが、もう少し劇的な表情があった方がいいと思います。また「パリを離れて」の二重唱は、もっと甘い表情があった方が良かったかなと思います。

 おそらくこういう感じになったのは、歌手に「速い」という意識が出来て、スピードに意識が向いてしまったのかな、と思います。スピード感のある音楽はとても素敵ですが、しっかり歌えないのでは話にならない。オペラのバランスの難しさを感じました。

二期会創立70周年記念公演「椿姫」

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鑑賞日:2023年7月22日

入場料:自由席 3000円

主催:オールソプラノズ/ブリランテムジカ/プッチーニオペラ研究会

3ソプラノズコンサート、3人の蝶々さんで紡ぐ「Madama Butterfly」&GALA

会場 ガルバホール新宿

出演者

ソプラノ 平野 雅世
ソプラノ 松岡 万希
ソプラノ 山口 安紀子
ピアノ 松本 康子

プログラム

作曲 作品名/作詩 曲名 歌手
プッチーニ            蝶々夫人            3人の蝶々さんで紡ぐ”Madama Butterfly"  
登場「私は世界一幸せな娘」 平野 雅世/松岡 万希/山口 安紀子
第3幕のアリア「私の可愛い坊や」 平野 雅世
序曲「結婚式の参列とアメリカ国歌」 ピアノ独奏
第1幕より「私は一人で教会に行ってきました」 平野 雅世
第1幕愛の二重唱より「愛らしい眼をした乙女よ」 平野 雅世
第2幕シャープレスとの二重唱より「日本の神様は怠惰だわ」「夫は約束しました」 松岡 万希
第2幕シャープレスとの二重唱より「この子を忘れることができるでしょうか」 松岡 万希
第2幕のアリア「母さんは芸者に戻るくらいなら」 松岡 万希
第2幕より「あの人が帰り、私の愛が勝利した」 山口 安紀子
第2幕のスズキとの二重唱より「この部屋を花でいっぱいに」 山口 安紀子
第2幕のアリア「ある晴れた日に」 山口 安紀子
休憩   
ドヴォルザーク ルサルカ ルサルカのアリア「月に寄せる歌」 山口 安紀子
レオンカヴァッロ 道化師 ネッダのアリア「鳥の歌」 松岡 万希
ガーシュイン ポーギーとベス クララのアリア「サマータイム」 平野 雅世
ヴェルディ シチリア島の夕べの祈り エレーヌのアリア「ありがとう、愛する友よ」 松岡 万希
ヴェルディ 運命の力 レオノーラのアリア「神よ平和を与えたまえ」 山口 安紀子
アンコール   
ヴェルディ 椿姫 ヴィオレッタとアルフレードの二重唱「乾杯の歌」 平野 雅世/松岡 万希/山口 安紀子

感 想

最後は関西人-3ソプラノズコンサート、3人の蝶々さんで紡ぐ「Madama Butterfly」&GALAを聴く

 関西出身で関西のみならず東京でも活躍されている平野雅世、山口安紀子はおなじみの歌手。同様に兵庫県出身で京都市芸大から東京芸大の大学院を卒業した松岡万希も関東でも活躍されているようですが、私は聴くのは初めて。この3人が3ソプラノズというユニットで関西で何度もコンサートを開いているのは知っておりました。そのユニットが東京で初公演を行うということで伺ってまいりました。ガルバホールに伺うのは久しぶり。コロナ禍以降では初めてだと思います。70席ほどの会場はほぼ満員。実力派ソプラノの強い声にとって会場は狭すぎる感じで、声の力にノックアウトされそうな感じでした。Braveな演奏会だったと思います。

 前半は3人ともレパートリーとする「蝶々夫人」のダイジェスト。今回は蝶々さんだけで、ピンカートンもシャープレスもスズキもいませんから、亡くなった蝶々夫人の魂の回想として、平野が歌うときは松岡が、松岡が歌うときは山口が、山口が歌うときは平野がナレーターとして入って、本来の物語順ではなく、蝶々夫人が歌う色々な部分が断片的に紹介されました。ストーリーはバラバラで、本来の「蝶々夫人」がどういうオペラか、ということを知らない人にとってはちょっとわかりにくかったようにも思いますが、私は元のお話を思い浮かべながら楽しみました。

 全体を聴いて思うのは3人の声の微妙な違いと、蝶々夫人だけしかいない不自然さでしょうか。山口蝶々さんは一番ドラマティック。高音から中低音まで滑らかに歌い、その響きの強さは安定した体幹を感じさせるものです。一番の聴かせどころである「ある晴れた日に」と「花の二重唱」を歌ったのは、さもありなん、というところでしょうか。平野蝶々さんはリリック。抒情的な表情に覗く厳しさがここぞというときに効果的です。今回平野はこの作品で一番ドラマティックな幕切れのアリアをまず歌い、緊迫感をがっちり見せた後に、ピンカートンとの愛の二重唱を甘く幸せそうに歌ってみせる。この落差、幅の広さが魅力だったと思います。

 そして松岡蝶々さんですが、バイプレーヤー的魅力と申しあげたらよいでしょうか。それが第二幕の不安に物語が進む部分の雰囲気とよくマッチしていたと思います。松岡の歌ったアリア「母さんは芸者に戻るくらいなら」は不安の頂点の時に歌われるアリアですが、その小クライマックスを上手に盛り上げたかなと思います。

 アリア以外の部分は蝶々さんだけ、というと凄く中途半端に聴こえてしまって、ピンカートン、シャープレス、スズキはやっぱり欲しいなとは思ってしまいました。一方で、「蝶々夫人」というオペラは、蝶々夫人が歌う部分をほぼつなげただけで50分も必要であり、このオペラはまさにプリマドンナオペラだな、と改めて感じたところです。

 後半はお得意のアリアを聴かせます。ちなみに平野は「アドリアーナ・ルクヴルール」のアリアと「椿姫」の「ああ、そは彼の人か~花から花へ」がアナウンスされていたのですが、体調不順から回復されたばかりということで「サマータイム」1曲に変更になりました。この「サマータイム」はちょっとグルーミーな雰囲気のある素敵なもので、チレアやヴェルディも歌えるのではないかと思いましたが、平野によれば喉にかかる負担が全然違うそうで、いい判断だったのだろうと思います。

 山口の選択は「ルサルカ」のアリアと「運命の力」のアリア。リリックなアリアとドラマティックなアリアと言ってしまえばその通りなのですが、どちらもレガートで十分に息を込めてそこに声を載せるといい感じになる曲だと思います。山口はこのコンサートの直前までイタリアでレッスンを受けて来たそうです。彼女は元々中音部に力がある方ではありますが、レッスンの効果があったのか中音部のどっしりした響きに更に安定感が出たように思いました。

 松岡はちょっと重たい「鳥の歌」と「シシリア島の夕べの祈り」で歌われるボレロ風のアリア。南イタリア繋がりですね。聴きものは「シシリア」のアリアでした。この曲は細かい音の動きが多く、トリルやアジリダ的なところも沢山あって難しいのかなかなかコンサートでおり上げる人は少ないように思います。でも彼女のレパートリーなのでしょう。身にしっかり入った歌で、細かいところもしっかり歌われて素晴らしかったです。

 そしてアンコールは、平野山口ヴィオレッタに対する、男前松岡アルフレードによる「乾杯の歌」。松岡が宝塚張りの白燕尾で登場すると、オペラの世界から宝塚の世界に変ります。こういうところが関西人のノリですね。

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鑑賞日:2023年7月27日
入場料:B席 6300円 2F L2 52番

主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団

第156回東京オペラシティ定期シリーズ

オペラ4幕 字幕付き原語(イタリア語)上演/演奏会形式
ヴェルディ作曲「オテッロ」(Othello)
原作:ウィリアム・シェイクスピア
台本:アッリーゴ・ボーイト

会場 東京オペラシティコンサートホール

スタッフ

指 揮 チョン・ミョンフン
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
合 唱 新国立劇場合唱団
合唱指揮 冨平 恭平
照 明 稲葉 直人
音 響 青木 央
舞台監督 蒲倉 潤

出 演

オテッロ グレゴリー・クンデ
デズデーモナ 小林 厚子
イアーゴ ダリボール・イェニス
ロドヴィーコ 相沢 創
カッシオ フランチェスコ・マルシーリア
エミーリア 中島 郁子
ロデリーゴ 村上 敏明
モンターノ 青山 貴
伝令 タン・ジュンボ

感 想

箱を上回る響き-東京フィルハーモニー交響楽団第156回東京オペラシティ定期シリーズ「オテッロ」を聴く

 昨年の10月の東京フィルハーモニー交響楽団のオペラ・コンチェルタンテは、「ファルスタッフ」でした。そして、本年は「オテッロ」。ヴェルディの晩年の二大傑作をチョン・ミョンフンが聴かせる。作品の素晴らしさという点では「オテッロ」と「ファルスタッフ」は甲乙つけがたい大傑作なわけですが、演奏の素晴らしさも昨年と本年、甲乙つけがたかった、と申しあげるべきでしょう。昨年のファルスタッフの時も思ったのですが、チョン・ミョンフンが振ると、いつもの東フィルとは一味違った、魅力的な音が出てくる。そこが指揮者の力量なのでしょう。

 そして、「ファルスタッフ」と「オテッロ」を比較すると、前者は喜劇、後者はドラマティックな悲劇です。昨年はオーチャードホールで聴いたわけですが、今年は東京オペラシティ。ホールの特性の違いも確実にあって、オーチャードは音が外に広がっていく印象。それに対して、東京オペラシティは、音の広がる方向が客席への一方方向で、その分、色々な音が凝縮されて更に熱が上がっているように聴こえる。熱力学で言うなれば、ポンプで空気を圧縮すると熱が上がるわけですが、東京オペラシティコンサートホールでオーケストラが咆哮すると、それと同じような現象が起きていると申しあげてもいいかもしれない。本来であれば会場の広さを超えるような響きをホールの壁で凝縮されて音が集まって響く。作品、会場、指揮者の心持、オーケストラメンバーの気持ち全てがひとつに揃ったダイナミズムと言うべきなのでしょう。響きすぎている感じもありましたが、素晴らしい音だったと思います。

 そのオーケストラのダイナミズムに劣らず素晴らしかったのが合唱。今回、合唱は、舞台の上の2階の回廊の部分に並んだわけですが、あの位置で新国立劇場合唱団のメンバーがフォルテを歌うと、その熱の上がり方はオーケストラの後ろで歌うよりも効果的ではないか、という気がします。上から降り注いでくるオペラの手練れたちによる合唱の音色はそれだけで十分に魅力的でした。

 その演奏の土台に乗ってくるソリストたちも素晴らしい。タイトル役のクンデ。素晴らしいオテッロ。合唱の間から顔を出してうたった登場のシーンの「Esultate!」の第一声がまず立派。その後の英雄的な場面は例えば下降跳躍で降りた低音が抜けた感じになったり、今一つ乗り切れていない感じもあったのですが、第2幕以降の嫉妬への狂い方や壊れ方の表現、表情が抜群にうまい。一音、一音がしっかりしていて丁寧な処理が見事です。全体的に素晴らしいのですが、その中でも後半の方が説得力がある。どんどん盛り上がって、熱が上がってくる感じがいいと思いました。

 イヤーゴ役のイェニスは大柄の偉丈夫。イヤーゴは言うなれば小悪党でイェニスみたいな偉丈夫は役に似合わないと思うけれども歌自体はよかった。一番の聴かせどころである「クレド」の悪辣な迫力が見事。それ以外はもっと小悪党っぽい歌にした方が良いと思うけど、音楽的な魅力はありました。また、第4幕で全ての悪事が露見した後の腹黒さの表現は非常に迫力があってよかったと思います。

 デズデーモナの小林厚子が素晴らしい。特に一番の聴かせどころである、柳の歌からアヴェ・マリアに至る歌唱は正確な上に気持ちがしっかり入っていて、共感せざるにいられない。今回一番よかったのは、結局第4幕の前半のこの部分だと思います。もちろん、第1幕のオテッロとの愛の二重唱も見事だったし、第2幕のカッシオを取りなすところの歌唱もよかったけど、第4幕は別格だったという印象です。

 カッシオ役のマルシーリア。なかなかきれいな声のリリック・テノール。重唱でしか絡みませんが、存在感のしっかりあるカッシオでよかったと思います。

 日本人脇役は何といっても中島郁子のエミーリアが素敵。村上敏明のロデリーゴも十分な存在感で自分の役割を果たしました。相沢創のロドヴィーゴもしっかりした歌で、存在感がありました。

 以上、歌のまとまりが良く、素晴らしい響きと音の圧力で魅力的な上演となりました。

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鑑賞日:2023年7月28日

入場料:自由席 3500円

主催:アトリエRa-Ra

丸尾有香ライブ@紀尾井町サロンホール~歌の花束をあなたにVol.2

会場 紀尾井町サロンホール

出演者

メゾソプラノ 丸尾 有香
ピアノ 藤井 麻理

プログラム

作曲 作品名/作詩 曲名
ロジャース 南太平洋 ブラッディ・マリーの歌う「バリハイ」
ロジャース 回転木馬 ジュリーの歌う「もしもあなたを愛したら」
シューベルト キプロスの女王ロザムンデ ロマンス「満月は丘の上に輝き」
ルビンシュタイン   「夜」作品41-1a
モリコーネ ニューシネマ・パラダイス 愛のテーマ
ルーチョ・ダッラ   カルーゾ
ビゼー カルメン カルメンのセギディーリャ「セビリアの城壁の側に」
休憩
ストサート オズの魔法使い ドロシーの歌う「虹の彼方に」
中田 喜直 作詩:竹久 夢二 6つの子供の歌より4番「風の子供」
アイルランド民謡 作詞:フレデリック・ウェザリー ダニーボーイ
トマ ミニヨン ミニヨンのアリア「君よ知るや、南の国」
モーツァルト 皇帝ティートの慈悲 セストのアリア「行きます、でも愛しい人よ」
ロジャース サウンド・オブ・ミュージック 修道院長の歌う「全ての山に登れ」
アンコール 
モーツァルト フィガロの結婚 ケルビーノのアリア「恋とはどんなものかしら」
ロウ マイ・フェア・レディ イライザの歌う「踊りあかそう」

感 想

幅広い関心 -丸尾有香ライブ@紀尾井町サロンホール~歌の花束をあなたにVol.2を聴く

 丸尾有香は藤原歌劇団の団員として、「ランスへの旅」、「フィガロの結婚」、「清教徒」などに出演のメゾソプラノであることはよく知っていたけれども、こんなマルチな関心のある方だとは知りませんでした。プロフィールを見ると、確かにミュージカルの出演経験も豊富です。私はミュージカル映画が好きで随分いろいろなものを見たけれども、ミュージカルの舞台を見たのは過去3回だけで、舞台への関心はどうしてもオペラとオペレッタになる。その私の個人的偏見を申し上げれば、オペラ歌手がミュージカルに出演することはそれほど珍しいことではないと思いますが、それをキャリアとしてカウントする人はあまり多くない印象です。

 今回のコンサートは丸尾の歌手活動15周年記念ということで開催したそうですが、ミュージカルは彼女にとって本当に大切なものなのだな、と思わせるプログラムでした。本当の冒頭の曲はアナウンスされていなかった「バリ・ハイ」であり、アンコールの最後が「踊りあかそう」であったことがそれを物語っています。今回は自ら司会を勤めて進めるスタイルだったのですが、その中で彼女にとってミュージカルの舞台経験は凄くいい勉強になったそうで、その思い出の舞台である「回転木馬」や「サウンド・オブ・ミュージック」からのナンバーは彼女にとって大切な経験だったということを仰っていました。そして、その演奏は、確かに彼女の歴史を形作って来たものだったのだろうと思わせるものでした。

 今回披露されたミュージカル・ナンバーは全部で5曲で、皆彼女にとっては大切なナンバーだと思いますが、一番良かったのは「全ての山に登れ」。自分でも自信のある一曲なのでしょうが、「生きていれば何度も直面するこれらの困難から逃げずに、毎回、その都度立ち向かっていきなさい」というメッセージが込められているこの曲に彼女の15年の思いが詰まっているようで、とても染み入る歌でした。

 彼女にとっての「全ての山」とは、オペラの山であり、ミュージカルの山であり、歌曲の山のようです。そしてこれらの共通する「歌」には歌詞が付いている。その歌詞が由来する言語に関しても彼女の興味はマルチのようです。今回歌われた歌詞は英語、ドイツ語、ロシア語、イタリア語、フランス語、日本語で、このマルチな方向性も、きっちりわかるのは日本語だけ、英語はたどたどしく、イタリア語は一部単語が分かるぐらいの私にとってはこの選択肢の幅は驚きです。今回ロシア語の歌にも挑戦されたわけですが、この2年ほどロシア語の勉強をする中で曲を選び、披露したというのが凄いと思いました。

 そういうマルチプルな彼女の側面を示すために、プログラムもかなり吟味したように思いました。なかなか普段聴けないような作品が並ぶのも楽しいです。

 演奏は十分に準備されたことが分かる丁寧なもの。その中でも説得力があったのはミニョンのアリア、セストのアリア、そして「全ての山に登れ」です。この3曲こそが、敢えて言えば、「全ての山に登れ」こそが、今回の頂点だったように思います。そういう風な効果を期待してのプログラム編成だったとは思いますが、その目的は達成されたものと思います。

 もう一つ素敵だなと思ったのは、丸尾もピアニストの藤井麻理も凄い笑顔でした。もちろん、歌を歌うその瞬間はきっちりした顔で歌いますし、藤井についても唇を真一文字にして力強くピアノを演奏するのですが、曲が終わるとその瞬間、笑顔がこぼれる。その笑顔がとてもよく、その笑顔を見るだけでも楽しめたコンサートのようにも思いました。

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