オペラに行って参りました-2020年(その4)

目次

ガラコンサートらしいプログラム 2020年10月24日 「オペラガラコンサート-オペラアリアと重唱の饗宴」を聴く
音楽史的視点は感じられないけれども 2020年10月25日 アリオーソLLC「かぐや姫」(ハイライト)を聴く
サイド席の失敗 2020年11月3日 ジャパン・アーツ/バッハ・コレギウム・ジャパン「リナルド」(セミ・ステージ形式)を聴く
支える、ということ 2020年11月8日 楠野麻衣&丸尾有香 Modestine コンサート Vol.2 You raise me up~あなたに支えられて~を聴く
よくできたハイライト公演 2020年11月14日 NISSAY OPERA2020特別編「ルチア、あるいはある花嫁の悲劇」を聴く
三位一体の凄み 2020年11月18日 新国立劇場「アルマゲドンの夢」を聴く
ベテランの味 2020年11月26日 東京二期会オペラ劇場「メリー・ウィドウ」を聴く
繰り返し歌っている曲と新曲と 2020年11月28日 アンダンド・ベーネ「心の歌・愛の歌」を聴く
綺羅星のごとく 2020年11月29日 日本オペラ振興会「オペラガラコンサート2020」を聴く
レパートリー公演のコロナ対策演出 2020年12月3日 新国立劇場「こうもり」を聴く
重唱の正確さと美 2020年11月29日 町田イタリア歌劇団「ノルマ」を聴く

オペラに行って参りました。 過去の記録へのリンク

2020年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2020年
2019年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2019年
2018年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2018年
2017年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2017年
2016年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2016年
2015年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2015年
2014年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2014年
2013年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2013年
2012年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2012年
2011年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2011年
2010年 その1 その2 その3 その4 その5 どくたーTのオペラベスト3 2010年
2009年 その1 その2 その3 その4   どくたーTのオペラベスト3 2009年
2008年 その1 その2 その3 その4   どくたーTのオペラベスト3 2008年
2007年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2007年
2006年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2006年
2005年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2005年
2004年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2004年
2003年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2003年
2002年 その1 その2 その3     どくたーTのオペラベスト3 2002年
2001年 その1 その2       どくたーTのオペラベスト3 2001年
2000年            どくたーTのオペラベスト3 2000年

鑑賞日:2020年10月24日
入場料:自由席 5000円

主催:水上恵理

コロナ禍におけるトライアル公演
オペラガラコンサート~オペラアリアと重唱の饗宴
会場:銀座ライオンクラシックホール(6F)

出 演

ソプラノ   楠野 麻衣
ソプラノ   水上 恵理
テノール   澤崎 一了
バリトン&司会   牧野 正人 
ピアノ   瀧田 亮子

プログラム

作曲 作品名 曲名 歌唱
ロッシーニ セビリャの理髪師 フィガロのカヴァティーナ「わたしは町の何でも屋」 牧野 正人
ロッシーニ セビリャの理髪師 ロジーナとフィガロとの二重唱「私なのね」 楠野 麻衣/牧野 正人
プッチーニ トスカ トスカのアリア「歌に生き、愛に生き」 水上 恵理
プッチーニ トスカ カヴァラドッシのアリア「星は光りぬ」 澤崎 一了
ドニゼッティ ドン・パスクワーレ ノリーナのアリア「あの騎士の眼差しに」 楠野 麻衣
プッチーニ 蝶々夫人 蝶々さんとピンカートンとの愛の二重唱「可愛がってくださいね」 水上 恵理/澤崎 一了
休憩
プッチーニ ラ・ボエーム ムゼッタのアリア「私が街を歩くと」 楠野 麻衣
プッチーニ ラ・ボエーム ミミ、ムゼッタ、ロドルフォ、マルチェッロの四重唱「助けて、マルチェッロ」 水上恵理/楠野麻衣/澤崎一了/牧野正人
アンコール
ヴェルディ 椿姫 アルフレードとヴィオレッタの二重唱「乾杯の歌」 全員

感 想

ガラコンサートらしいプログラム‐コロナ禍におけるトライアル公演-オペラガラコンサート~オペラアリアと重唱の饗宴

 コロナ禍による休業要請でほぼすべての公演が中止になったオペラ業界ですが、6月ごろから少しずつ公演が再開されています。ただ、ソーシャル・ディスタンスが要請されることで、なかなか本公演は難しく、オペラアリアによるコンサートが増えている印象です。私も6月以降、今回で19回目のオペラや歌曲のコンサートになりますが、例年であればオペラが15回、コンサートが4回という感じだと思うのですが、今年は、オペラが9回、コンサートが10回です。

 そのコンサートも、特定のテーマのコンサートもありましたが、いわゆるガラ・コンサートの形式のものが多くて、同じ曲を何度も聴く機会が多いです。6月以降に限っても、「何でも屋」は4回目、「歌に生き、愛に生き」は3回目、「星は光りぬ」は2度目になります。そのほかの曲は、さすがに6月以降は初めてになりますが、「あの騎士の眼差し」も「ムゼッタのワルツ」もガラ・コンサートの定番です。そういう定番曲だけを集めたコンサートだったわけですが、出来はさすがでした。

 牧野正人の「何でも屋」は、1993年の藤原歌劇団の本公演から何度も聴いていますが、最近は余裕が違います。身体に全てが入っていて、どうしたらいいかが反射的に出てくるのでしょうね。途中息が切れて、一瞬遅くなりそうになったところもあったのですが、何もなかったかのように最後はまとめて見せました。さすがにベテランの風格です。4回聴いた中では、やっぱりこの人の「何でも屋」は別格だな、と思いました。次のロジーナとの二重唱も、若手で溌溂とした楠野麻衣の歌唱をしっかり受けて見せるベテランの芸。ほんとうに受けと捌きが上手い。本当の意味で日本を代表するバリトンの歌を楽しませてもらいました。

 水上恵理もよかったです。「歌に生き」は、冒頭のピアニシモが今一つ上手く行っていなかったのですが、盛り上がってからはしっかりとまとめ、蝶々夫人の二重唱は可愛らしさが見えてBravaです。後半の「ボエーム」の第三幕の四重唱もミミの薄幸な感じをうまく出していたと思います。

 若手のソプラノ・リリコ・レジェーロのホープ、楠野麻衣も聴かせてくれました。「騎士の眼差し」も「ムゼッタのワルツ」も彼女の雰囲気に似合っていました。高音もよく伸び、コケティッシュな感じもしっかり出せていて、見事でした。

 そして澤崎一了。上手い。おそらく今この時点の日本のテノールで、この輝きと響きに勝てる人はいないのではないかという気がします。6月以降、澤崎を聴くのは、8月の「カルメン」におけるホセ、9月のガラコンサートでの「ルイザ・ミラー」のアリア、そして今日ですが、どれも素晴らしいとしか言えない歌唱でした。

 こんな素晴らしいコンサートを聴いたのは僅か30人。その一人になれたこと。贅沢でした。

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鑑賞日:2020年10月25日
入場料:自由席 3000円

主催:アリオーソLLC

全2幕、原語(日本語)上演
平井秀明作曲「かぐや姫」
<紙芝居上演版>ハイライト・コンサート
台本:平井秀明

会場:セシオン杉並ホール

スタッフ

指揮 平井 秀明
ピアノ   木村 裕平 
合 唱 :  ARIOSO VOCAL ENSENBLE 
     
紙芝居イラスト 山岡 正雄
ステージ・マネージャー  富樫 史博
総合プロデューサー  平井 秀明
制 作  アリオーソLLC
共催  :  三浦克次ファンクラブ、子ども音楽育成プロジェクト"こどおん" 

出 演

かぐや姫   高橋 薫子
  三浦 克次
  立花 敏弘
  武藤 直美
車持皇子   村上 敏明 
里の娘   隠岐 彩夏
中納言/天の王   奥村 泰憲
公家   根津 久俊 

プログラム

1 序曲
第1場
2 竹取の歌 アリア 立花敏弘
不思議な竹 レシタティーヴォ 立花敏弘
3 かぐや姫の誕生 二重唱 武藤直美/立花敏弘
めでたい日 レシタティーヴォ 武藤直美/立花敏弘
4 祝宴の歌 混声合唱
5 幼少のかぐや姫 ソロ付き女声合唱 高橋薫子
第2場
車持皇子の憧れ レシタティーヴォ(抜粋) 村上敏明/立花敏弘
6 車持皇子の求婚 アリア 村上敏明
たとえひと目だけでも レシタティーヴォ 武藤直美/村上敏明/立花敏弘
7 恋する里の娘 アリア 隠岐彩夏
11 麻呂のプロポーズ アリア 根津久俊
12 姫の戸惑い アリア 高橋薫子
14 船出の歌 コンチェルタート 高橋薫子/立花敏弘/武藤直美/村上敏明/隠岐彩夏/混声合唱
【第二幕】
第1場
求婚者たちの帰還 レシタティーヴォ(抜粋) 武藤直美/立花敏弘/村上敏明/隠岐彩夏/奥村泰憲
15 間奏曲
16 お見舞いの歌 アリア 高橋薫子
17 中納言の辞世の歌 アリア 奥村泰憲
18 哀悼歌 混声合唱
第2場
褒美は全て麻呂のもの レシタティーヴォ 根津久俊/高橋薫子/立花敏弘
19 狩の歌 付随音楽
20 帝と姫の対話 二重唱 高橋薫子/三浦克次
21 帝の寵愛 アリア 三浦克次
22 媼の悩み アリア 武藤直美
23 別れのアリア アリア 高橋薫子/立花敏弘/武藤直美
フィナーレ
24 戦の時よ 男声合唱
25 天人の到来 合唱+ソリスト
26 愛の二重唱 合唱付き二重唱 高橋薫子/三浦克次/奥村泰憲/混声合唱
27 かぐや姫の旅立ち 混声合唱+ソリスト 高橋薫子/三浦克次/立花敏弘/武藤直美/混声合唱

感 想

音楽史的視点は感じられないけれども‐アリオーゾLLC「かぐや姫」を聴く

 平井秀明が「かぐや姫」というオペラ作品を書いていることは知っていましたが、これまで縁がなく、聴いたことはありませんでした。しかし、今回偶然この公演があることを知り、早速聴きに伺いました。ハイライト公演とうたっていますが、実際は、上記の通り一部カットはあったもののほぼ全曲が演奏され、曲の全容を知るのには十分だったと思います。

 さて、曲ですが、よくまあ、こんなオペラを書いたな、と感心しました。

 我々は、バロックから現代にいたるあらゆる時代のオペラを知っています。そこから派生したオペレッタやミュージカルだって知っています。そう言う音楽史を踏まえる中で、21世紀の現在、「オペラ」を書くとはどういうことなのか、と作曲家は皆、真剣に考えていると思います。その結果、新作オペラは総じて難解です。難解というのは、作曲技法が難解であることが上げられますが、演奏も難解です。私も新作オペラを聴きに言った経験も何度もありますが、その作品を一回聴いただけで理解することは全くないし、歌手の方たちが正しく歌っているのかどうかも分かりません。例えば、古典派の音楽であれば、和声を聴いていれば、始めた聴いたときでも「こういう音にはならないだろう」と思うことはできると思うのですが、現代音楽ではそれは無理です。作曲家の意図がこちらにほんとうに伝わっているのかどうかもよく分からない。

 一方、この「かぐや姫」。驚くほど平易です。前半はおとぎ話風で、わらべ歌や唱歌を思わせるメロディー運び、途中からは大道芸的音色や、あるいは西洋的な音色も入ってきますし、18番の「哀悼歌」はフーガです。日本の音と西洋の作曲技術が用いられていますが、それは融合しているわけではなく、モザイクのように組み合わされている印象です。

 「竹取物語」は、求婚者になぞ解きをさせる、という作品ですが、このような内容ですぐに思い出せる作品は、「トゥーランドット」。しかし、音楽はあの「トゥーランドット」の劇的なものでもなく、あくまでもおとぎ話の音楽でした。子供が見ても楽しめるという点で大変結構ですが、オペラを聴き続けている立場とすれば、もう少し劇的であったり、高度な歌唱技術が必要だったりしたほうが楽しめるのかな、とは思います。

 さらに申し上げるなら、番号オペラ、というのも凄いですよね。ヴェルディの中期以降、明確な番号オペラを書くというのは珍しいと思います。また、オペラの運びは、レシタティーヴォや重唱で物語が進み、アリアでは心情を訴えるというのが定番で、この作品でも例外ではありません。そのため近代のオペラ作品はアリアはまったくなくなったり、使用する場合でも慎重に使用されるわけですが、この作品はソロ歌手全員に一曲以上アリアが与えられ、アリアの連続もある。バロック時代みたいとと思いました。

 その分、紙芝居とは相性がいいようです。今回の紙芝居は、ホリゾントに映写されたイラストですが、曲ごとに切り替わって、所々に入る説明も、それは本来曲の中でやるべきではないか、と思いながらも、物語を理解するうえでは有益でした。

 演奏は、曲自身がそれほど難しいものではないこともあって、皆、しっかりとうたわれていて素晴らしい。ソリストはほんとうに皆立派。ベテランと若手、ともに実力者が揃っただけのことはあります。高橋薫子、三浦克次、立花敏弘、村上敏明、武藤直美と素晴らしく、若手の壱岐彩夏、合唱とソロを兼ねて八面六臂の活躍だった奥村泰憲、根津久俊も聴きごたえがありました。

 合唱は女声四人、男性三人の少人数で、バリトンが一名でした。合唱の音色にするためには、各パート二人は欲しいところです。バリトンの奥村泰憲は大変上手なのですが、一人だとどうしても響きが裸になってしまって、合唱ぽくならなかったのかな、という気がします。また、男声合唱があり、三部に分かれて歌っていましたが、あまり男性三部合唱というのは聞かないので、ほんとうにこれでいいのかな、ひとり欠けていないのかな、とは思いました。

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鑑賞日:2020年11月3日
入場料:B席 3F L58番 8000円

主催:ジャパン・アーツ/バッハ・コレギウム・ジャパン

全3幕、字幕付原語(イタリア語)上演 セミ・ステージ形式
ヘンデル作曲「リナルド」(Rinaldo)<1711年版>
原作: トルクァート・タッソ 叙事詩『解放されたエルサレム』
台本: ジャコモ・ロッシ


会場:東京オペラシティ・コンサートホール

スタッフ

指揮 鈴木 優人
管弦楽   バッハ・コレギウム・ジャパン 
     
演 出 砂川 真緒
衣裳コーディネート  武田 園子
照 明  稲葉 直人
ドラマトゥルク  菅尾 友
演出助手  :  水野 明人 
副指揮  :  平野 桂子 
舞台監督  :  幸泉 浩司 

出 演

リナルド   藤木 大地
アルミレーナ   森 麻季
アルミーダ   中江 早希
ゴッフレード   久保 法之
エウスタツィオ   青木 洋也 
魔法使い   波多野 睦美
アルガンテ   大西 宇宙
使者   谷口 洋介 
セイリーン(人魚たち)   松井 亜希/澤江 衣里 

感 想

サイド席の失敗‐ジャパン・アーツ/バッハ・コレギウム・ジャパン「リナルド」(セミ・ステージ形式)を聴く

 「リナルド」はかつて一度実演で聴いたことがあるとずっと思っていたのですが、何か別な作品と勘違いしていたようで、実は実演初聴です。有名な作品なのですが、現実は上演のハードルが高くてなかなか上演されない。日本では2002年にヘンデル協会が初演し、その後、鈴木雅明指揮のバッハ・コレギウム・ジャパンが一度、昨年北とぴあ国際音楽祭と都合3演出5回しか演奏されていない。わたしは残念ながら、どれも聴いておりません。上演のハードルが高いのは、男性役はカストラートによって歌われたことが関係するかもしれません。

 カストラートは既に絶滅した人種ですが、最近はカストラートの音域を当たり前に歌う、カウンター・テノールという男声歌手が増えてきた。ちょっと前までは、岡本知高にせよ、米良美一にせよ、色もの扱いだったと思いますが、藤木大地が2012年の日本音楽コンクールで優勝してから、古楽をしっかり取り上げるカウンター・テノールが増えてきたという印象です。

 ちなみに「リナルド」はカストラートが4人(リナルド、ゴッフレート、エウスタツィオ、魔法使い)必要なのですが、コロナ禍の影響により海外の演奏家が来日できないにもかかわらず、日本人のカウンター・テノールが3人(魔法使いはアルト)も登場したところ、日本のカウンターテノールの層が厚くなっていることを感じます。その中で、世界的にも活躍の場を広げている藤木大地が実力的にはやはり頭一つ抜けている印象でした。藤木の力は裏声で高音を滑らかに歌うだけでなく、そこの音域で、必要に応じて力強い表情を示せるところにあると思いました。第一幕で歌われる「愛しい妻よ」の表情などに、その素晴らしさを感じました。一方、司令官と弟役を歌った他の二人は裏声でレガートに歌うことに関しては、藤木に遜色ないと思いましたが、一方で力強い歌唱に関しては、二人とも男性的とはなかなかいかないようで、裏声制御のむつかしさを見せつけられた思いです。

 とはいえ、演奏全体としては高レベルのものであったことは疑いありません。

 まず、バッハ・コレギウム・ジャパンの音色が明確で、切れが良い。古楽器及びそのコピー楽器を用いて古楽奏法で演奏するわけですが、古楽演奏のスペシャリストたちだけあって、どの楽器の演奏も間然とするところがありません。ソロ楽器がアリアの伴奏に入るところも多いのですが、通奏低音系のチェロやファゴットによる伴奏も非常に素敵でしたし、リコーダーやオーボエも魅力的に響きました。

 そして、何より鈴木優人の指揮。先月は彼の父親の鈴木雅明が指揮するN響の演奏会を三回も聴く機会があり、時代様式に忠実でそれでありながら、常に鋭いオーケストラコントロールを行う指揮姿に感心したわけですが、父子の血なのでしょうね。音楽の感じ方が、父親と非常によく似ているように思いました。指揮姿も似ている。鈴木親子とバッハ・コレギウム・ジャパンとは30年の強い結びつきがあって、お互いのことを知り尽くしているのでしょうね。その関係性の中で、音楽が組み立てられているからこそのレベルの高さだと思いました。

 歌手陣についてもバッハ・コレギウム・ジャパンの常連たちが集っています。二重唱を一曲だけ歌う人魚を松井亜希と澤江衣里がやり、また、魔法使いをやった波多野睦美もバロック曲には欠かせない存在です。谷口洋介も常連ですし、青木洋也の存在も忘れてはいけません。こういうバッハ・コレギウム・ジャパンの音楽をよく知っているメンバーが脇役で支えたこと(脇役と言ってもバロック・オペラですから、アリアを何曲も与えられています)も音楽の一体感に大きく寄与していたように思いました。

 この作品で一番有名な「私を泣かせてください」はイタリア古典歌曲集に含まれる名曲で、演奏会でソプラノ歌手がよく披露します。私もこれまで何度も聴いていますが、一番記憶に残っているのは、2009年森麻季がリサイタルで取り上げたときのもの。この時の森は極めてストイックにこの曲に挑み、声は全然大きくないのですが、曲全体を自分の制御下において、乱れるところの全くない抜群のバランスと滑らかさで処理をして見せました。ほんとうに素晴らしいものでした。今回は、言うなれば感情表現が過剰で、オペラ的な盛り上がりのある表現でした。他の歌手のバランス等から今回のアプローチを選んだのだろうと思いますし、もちろん悪いことではないのですが、自分自身の好みとしては2009年のストイックさを買いたい気がします。

 とはいえ、森麻季はヘンデルを歌う日本人ソプラノの第一人者です。アルミレーナ役も初役ではない訳で、その美しさと雰囲気は抜群だったと思います。

 もう一人忘れて行けないのは、アルミーダ役の中江早希。敵役ですが、歌唱技術的にも親の仇のように難しいパッセージを与えられています。その激しい表情を抜群の技術で処理していく。第一幕の激しいけれども丁寧に処理した二曲のアリアや、第二幕終盤の二曲のアリアはとても素晴らしかったと思います。特に、私は席の関係で全く見えなかったのですが、二幕のアリアは、日本酒をまき散らしながら、大立ち回りを演じながら、物凄い形相で歌っていたそうで、見ることができず残念でした。

 アルガンテの大西宇宙。この作品唯一の本格的な低音役で悪役。カウンター・テノールによる英雄的な高音アリアもいいですけど、それだけではもちろん飽きるわけで、時々挟まるアルガンテの歌唱でほっとしました。

 以上全体としてまとまりのよい素晴らしい演奏だったと思います。

 演出は、砂川真緒。リナルドはオタクの引きこもりという設定で、RPGの「リナルド」をやっていると、物語の中に取り込まれてしまう、というもの。第一幕における藤木大地のオタク的雰囲気は結構堂に入っていたと思います。その他、いろいろと工夫もあったようですが、私の席からは下手側がほとんど見えなかったので、よく分かりません。

 セミ・ステージ方式ということで、大した演出ではないだろうと勝手に決めつけ、サイド席を選んだのが失敗でした。やっぱり舞台全体が見える後方席にすべきでした。今回の反省です。  

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鑑賞日:2020年11月8日
入場料:自由席 3500円

主催:Modestine

楠野麻衣&丸尾有香 Modestine コンサート Vol.2 You raise me up~あなたに支えられて~

会場:銀座ライオンクラシックホール(6F)

出 演

ソプラノ   楠野 麻衣
メゾソプラノ   丸尾 有香
ピアノ   藤原 藍子

プログラム

作曲 作詞/作品名 曲名 歌唱
ラヴランド グラハム作詞 You raise me up 楠野 麻衣/丸尾 有香
ドニゼッティ 歌曲集「ポジリポの夏の家」 愛は天の声 楠野 麻衣/丸尾 有香
ドニゼッティ 歌曲集「ポジリポの夏の家」 あさやけ 楠野 麻衣/丸尾 有香
ベッリーニ カプレーティ家とモンテッキ家 ロメオのアリア「たとえロメオがあなたの息子を殺したとしても」 丸尾 有香
ヴァッカイ ジュリエッタとロメオ ジュリエッタのアリア「私も一緒に連れて行って」 楠野 麻衣
モンテヴェルディ マドリガーレ集第7巻「コンチェルト」 金色の髪よ 楠野 麻衣/丸尾 有香
休憩
不詳(讃美歌) ジョン・ニュートン作詞 アメイジング・グレイス 楠野 麻衣/丸尾 有香
ウェルナー ゲーテ作詩 野ばら 楠野 麻衣/丸尾 有香
メンデルスゾーン 『6つの歌』作品34-2(ハイネ作詩) 歌の翼に 楠野 麻衣/丸尾 有香
モーツァルト コジ・ファン・トゥッテ フィオルディリージとドラベッラの二重唱「妹よ、ごらんなさい」 楠野 麻衣/丸尾 有香
モーツァルト コジ・ファン・トゥッテ フィオルディリージとドラベッラの二重唱「わたしは栗色の髪の方を取るわ」 楠野 麻衣/丸尾 有香
アンコール
モーツァルト フィガロの結婚 ケルビーノのアリア「恋とはどんなものかしら」 丸尾 有香
プッチーニ ジャンニ・スキッキ ラウレッタのアリア「私のお父さん」 楠野 麻衣
中島みゆき 中島みゆき作詞  楠野 麻衣/丸尾 有香

感 想

支える、ということ-「楠野麻衣&丸尾有香 Modestine コンサート Vol.2 You raise me up~あなたに支えられて~」を聴く

 今回のコロナ禍。フリーランスの仕事をしている方々に特に影響が大きかったわけですが、音楽家の方々も例外ではありません。特に、音楽の仕事を中心にしながらも、アルバイトの収入も生活に欠かせない、ぐらいのレベルの音楽家の皆さんの生活はほんとうに大変だった様子で、本日のトークで、楠野麻衣は、持続化給付金が支給されるまでは、「今月はお家賃払えるけど、いつまで続けられるか」ぐらいのところまで追い込まれたそうです。しかし、いろいろな方々から支援をいただいて、何とか活動を再開できて嬉しい、というお話をされていらっしゃいました。ちなみに、楠野は8月に藤原歌劇団の「カルメン」フラスキータ役で出演し、そこから活動を再開されていましたが、丸尾は今回のコンサートがコロナ後、最初の公開演奏になるそうです。

 本年4月、5月の自粛期間中、練習室も閉鎖されたため、楠野も丸尾もお住いの近くの公園で練習をされていた(二人とも近くに住んでいるそうです)そうで、その中で公園を散歩する人々が励ましてくれたり、足を止めて聴いてくれるのが嬉しかったと言っており、その応援してくれた人々への感謝を込めて、「You raise me up~あなたに捧げられて~」とタイトルを付け、また冒頭に「You raise me up」を、アンコールの最後に「糸」を持ってきて、その気持ちを示しました。

 さて、演奏ですが、総じて二重唱が良かったです。最初のYou raise me up」には、二人の気持ちが込められていてよかったです。ドニゼッティの二曲は、明るい、わくわくするような曲で、ソプラノとメゾソプラノとの絡み方が美しく、特にメゾソプラノのしっかりした声が音楽を下支えし、そこにソプラノの高音が踊っている感じが見事で、いいものを聴かせてもらったと思いました。もう一曲の二重唱は、モンテヴェルディのマドリガレですが、こちらは二人の和音がよく溶け合っていて見事。バロック初期の作品で、ソプラノが必ずしも上に行くとは限らないのですが、近接音同士の響きの美を堪能しました。

 アリアの二曲はどちらもチャレンジングと申し上げてよいでしょう。

 丸尾のロメオのアリアは、レシタティーヴォ・ア・コンパニャート、カヴァティーナ、カバレッタと続く大アリアで、音域的に広く、技巧的な処理も多く、なかなか大変な曲です。丸尾はその細かい技巧を丁寧に処理をしているのはよいのですが、全体の歌いわけ、という点では課題を残したと思います。カヴァティーナはもっと流麗に、カバレッタはもっと明快に歌われた方が、このアリアの持ち味を出せたのではないかと思いました。

 楠野の歌ったヴァッカイの「ジュリエッタとロメオ」のアリアは、長いアリアの一部を切り取ったとのこと。わたしは初耳の曲です。ちなみに、この作品は、この12月に日本初演が予定されており、楠野は、そのカヴァーで入っているそうですが、まだ曲のさばき方が決まっていないのかな、という印象を持ちました。技巧的なかなりの難曲で、楠野も歌い切った時は少し息が切れている感じでしたが、もう少し歌い込んで曲の扱いが決まって来れば、もっと良い仕上がりになるのではないかと思います。

 後半はオール二重唱。最初の三曲は女声のデュエットの美しさを堪能できる選曲で、堪能いたしました。この三曲もメゾソプラノがメロディを歌って、ソプラノがオブリガートを付けたり、ソプラノがメロディを歌って、メゾソプラノが支えたり、いろいろなパターンの二重唱が聴けました。そして、最後は「コジ」のフィオルディリージとドラベッラの二重唱二曲。どちらも二重唱の教科書に載るような曲ですが、なかなか見事。なお、楠野麻衣の声はフィオルディリージというよりはデスピーナなので、デスピーナとドラベッラの二重唱があってもいいのかなと思いましたが、「コジ」にそんな曲はないので、ここは仕方がありません。

 アンコール前半は、アンコール曲の定番。最後の「糸」は気持ちの入った、この「支え」を題材にしたコンサートにふさわしいラスト。「支える」という意味では、メゾソプラノの声がしっかりとしていて、そこにソプラノが乗っかって自在な歌っている感じがどの曲にも見られ、ソプラノにとっては、音楽的にも「あなたに支えられて」のコンサートでした。

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鑑賞日:2020年11月14日
入場料:B席 2F L58番 6000円

主催:(公財)ニッセイ文化振興財団(日生劇場)

NISSAY OPERA 2020 特別編

全1幕、字幕付原語(イタリア語)上演 
ルチア~あるいはある花嫁の悲劇~
原作: ガエターノ・ドニゼッティ作曲、歌劇「ランメルモールのルチア」
翻案:田尾下 哲


会場:
日生劇場

スタッフ

指揮 柴田 真郁
管弦楽   読売日本交響楽団 
ピアノ :  浅野 菜生子 
翻案・演出 田尾下 哲
美 術  松生 紘子
照 明  稲葉 直人
衣 裳  萩野 緑
演出助手  :  平戸 麻衣 
舞台監督  :  山田 ゆか 

出 演

ルチア   高橋 維
エドガルド   宮里 直樹
エンリーコ   大沼 徹
ライモンド   金子 慧一
アルトゥーロ   高畠 伸吾 
アリーサ   与田 朝子
ノルマンノ   布施 雅也
泉の亡霊   田代 真奈美

感 想

よくできたハイライト公演‐日生劇場「ルチア~あるいはある花嫁の悲劇~」を聴く

 2020年秋のNISSAY OPERAは「ランメルモールのルチア」がアナウンスされていて、本年夏以降様々なオペラの大規模公演が行われていることを踏まえると、通常公演がされるかと思っていたのですが、コロナ禍が終了しない状況を鑑みて、スタッフ・キャストへの感染防止を優先したのでしょう。通常のルチアとはかなり違った舞台に仕上げてきました。即ち、舞台はルチアによる独り芝居。「ランメルモールのルチア」というスコットランドの勢力争いを背景にした恋愛悲劇を、その政治的背景も含めて、ルチアの視点で語らせる、というものです。

 すなわち、舞台上に登場するのは、ルチアと泉の亡霊のみです。泉の亡霊は、ルチアの登場のアリア「あたりは沈黙に閉ざされ」で歌われる幻影ですが、このような幻影を見ること自身が、ルチアの性格の特徴を示して、狂乱の場のような悲劇につながります。今回は、この亡霊を明示的に示すことにより、ルチアの一人芝居が、幻影と同様であることを示したかったのかもしれません。本来のオペラでは、ルチアはまがうことなき実在の人物ですが、一人芝居にするために、その存在感を薄くしてその存在が実在なのか、幻影なのか、分からなくしたかったのでしょう。

 さて今回はルチアの一人芝居ですから、ルチアが絡まない部分はすべてカット。そこはほんとうに潔いぐらいです。冒頭のエンリーコのアリアがまず全部カットですし、途中もルチアが絡まない部分はどんどんカットされ、ルチアが絡む部分だけが残されます。合唱部分は基本カットで、どうしても残す必要がある部分は、他の出演者の男声合唱によって補います。この作品は2時間半弱で演奏されることが多いと思いますが、今回は1時間半に凝縮されました。ただ、田尾下哲の演出はよく練られていたとは思います。このようにカットされていても、確かに「ルチア」という女性の視点で見た芝居は成立していました。「ランメルモールのはルチア」という作品に近しくない人は、この内容で十分満足できたのではないのかな、と思います。

 そう思えるほどに仕上ったのは、田尾下の演出もさることながら、やはりルチア役の高橋維の頑張りが大きかったと思います。1時間半ほぼ出ずっぱり。ルチア役はカットが原則ありませんから、通常の舞台であれば2時間半かけて歌う部分を1時間半に凝縮して歌うことになり、その大変さは容易に想像がつくところですが、丁寧にかつ軽やかに処理していきます。登場のアリア「あたりは沈黙に閉ざされ」から始まって、途中の重唱をこなしながら、狂乱の場に至るまでのアプローチ。どの部分も丁寧で、細かいトリルなどもゆるがせにしていかない。声が軽くて、弱音をゆるがせにしないところもいい。また演技も真に迫っていて、見ごたえがありました。高橋は2016年に二期会の本公演でスザンナやツェルビネッタを聴いていますが、正直申し上げて、当時のテクニックはまだ未熟で、どちらもイマイチだったと申し上げます。しかし、今回は高橋自身の成長があって、自分自身で歌唱の流れのコントロールができるようになったのでしょう。出ずっぱりでも最後まで音程もしっかりしているし、感情の迸りもよく分かる立派なルチアだったと思います。Bravaです。

 一方、ルチアに登場する他の歌手は、舞台の左右に設けられた紗の後ろ姿で陰歌のように歌います。ルチアとその他の役柄の方の距離感が音楽的感興を妨げたな、と思いました。 

 宮下直樹のエドガルドがその典型です。宮下は素晴らしいテノールですし、今回も非常にいい声を響かせました。しかし、その歌い方は、プッチーニのようであり、ドニゼッティティではなかったのかな、という気がします。例えば、第一部のフィナーレ、ルチアとエドガルドの二重唱。ここは二人の声がユニゾンになって、その一致で幸せを迸らせるべきところですが、その方向性がずれている感じです。ここはルチアの声にエドガルドが添わせるように歌った方が良いと思うのですが、エドガルドの声が力強く響いて、ルチアの軽さを殺していていたように感じました。

 距離が近ければ、お互いの息遣いがもっと良く分かって二人の声ももっと良く絡んだのだろうと思いますが、実際の距離がお互いの感じ方の差になったのかな、と思いました。他の男性もルチアと無関係に歌っている感じがありました。あのルチアの大変さを考えたら、男声はもっとルチアを思いやって抑え気味で歌った方が良いと思うのですが、みんな朗々と歌う。それが少しうるさく感じました。とはいえ、金子慧一の歌ったライモンドのアリアはルチアを思いやる感じもあって、よかったと思います。

 以上、翻案作品として見ればよくできているし、バランスの問題はあるにせよ、歌手たちも皆立派でいい演奏だったと思います。しかしながら、「ランメルモールのルチア」という作品に親しんでいる身としては、オリジナルの方が良いなと言うのが率直な感想です。

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鑑賞日:2020年11月18日
入場料:C席 4F1列 38番 5940円

主催:文化庁/新国立劇場

文化庁委託事業「令和2年度戦略的芸術文化創造推進事業」/令和2年度(第75回)文化庁芸術祭協賛公演

全1幕9場、日本語/英語字幕付原語(英語)上演 
新制作、創作委嘱作品、世界初演
藤倉 大 作曲 「アルマゲドンの夢」
原作: H.G.ウェルズ
台本:ハリー・ロス


会場:
新国立劇場オペラパレス

スタッフ

指 揮 大野 和士
管弦楽   東京フィルハーモニー交響楽団 
合 唱 :  新国立劇場合唱団 
演 出 リディア・シュタイアー
美 術  バルバラ・エーネス
照 明  オラフ・フレーゼ
衣 裳  ウルズラ・クドルナ
映 像  :  クリストファー・コンデク 
ドラマトゥルク  マウリス・レンハルト
合唱指揮  冨平 恭平
児童ソリスト指導  :  米屋 恵子 
舞台監督  :  高橋 尚史 

出 演

クーパー・ヒートン   ピーター・タンジッツ
フォートナム・ロスコー/ジョンソン・イーヴシャム   セス・カリコ
ベラ・ロッジア   ジェシカ・アゾーディ
インスペクター   加納 悦子
歌手/冷笑者   望月 哲也 
兵士(ボーイソプラノ・ソロ/交替出演)   長峯 佑典/原田 倫太郎/関根 佳都

感 想

三位一体の凄み‐新国立劇場「アルマゲドンの夢」を聴く

 日本の創作オペラを鑑みたとき、「アルマゲドンの夢」は、明らかにエポック・メイキングな作品です。

 日本の創作オペラ史は、端的に言えば、日本人のアイデンティティをどうオペラに昇華するかというテーマを100年にわたって続けてきたということだろうと思います。多くの場合、原作はオリジナルか日本の文学作品、台本は日本語で、日本人のお客さんに向けて書いてある。もちろん、一柳慧の「モモ」(ミヒャエル・エンデ原作)、原加壽子「罪と罰」(ドストエフスキー原作)、「シャーロック・ホームズの事件簿~告白」(ドイル原作)と言った例外はありますが、これらだって上演台本は日本語です。基本は、日本人の書いた原作を日本語で台本を作成し、日本でしか作曲できない作品に仕上げていく。もちろん、そこには西洋言語とは違った日本語を、どうオペラにしていくのか、という試行錯誤があり、もちろんそれは日本の作曲家にとって重要なことであるのは言うを待たないのですが、その代わり、そのような作品は結局日本の中に埋もれてしまう。日本の作品で海外でもしばしば上演されるのは團伊玖磨の「夕鶴」ぐらいで、それだって、娯楽として楽しまれているか、という点ではかなり疑問です。

 一方、今回の藤倉大の作品はインターナショナルです。原作が、ウェルズのSFで英語。これを英国人の台本作家が英語で台本にし、日本人の作曲家が曲をつける。スポンサーは日本人で、実質的なプロデューサーも日本人。上演スタッフの多くは、米国人やドイツ人。歌手も、米国人、豪州人、日本人。初演が日本。そしてテーマは世界のここ数年の状況を反映した非寛容なナショナリズム。

 海外で活躍して、非日本語の作品を多く発表している細川俊夫だって、ここまでインターナショナルな作品は発表していないのではないでしょうか? 少なくとも今回の藤倉大の作品は、日本を感じさせず、世界を感じさせる。このような作品に仕上げられたのは、15歳で単身渡英し、英国でキャリアを築いてきた作曲家であればこそ、だと思いました。

 舞台は、ある意味、圧倒的でした。演出が凄い。最初からどのように上演されるかという演出プランがあって、その演出プランも踏まえた作曲になっていたのではないかと思います。台本、作曲、演出が三位一体になって、それぞれがお互いに影響し合って舞台に昇華させたのではないかと思います。

 もちろん、その成功には、実質的なプロデューサーであり、初演指揮者でもある大野和士の力も十分あったと思いますし、この作品を世界に発信していこうという制作チームの強い意思も感じました。目と耳と双方が合わさったトータルで凄い作品だったと思います。

 作品の内容は、夢と現実の交差。電車の中で見知らぬ二人の男が偶然夢の話を行うことから、夢の中の全体主義による破壊や、人々が虐げられる様子が描かれる。主人公のクーパーは、それに流されるしかなく、美しい妻のベラはエロティックな存在から政治的な存在に変化していく。しかし、独裁者の強い軍隊は革命者であるベラも、日和見の青年に過ぎないクーパーを容赦なく殺戮していく。その殺伐とした中で、最後に「アルマゲドン」のテーマをボーイソプラノが歌い、「アーメン」という祈りの言葉で終わる。

 しかし、最後のアーメンは取って付けたようにも聴こえ、それが救いに繋がっているのか、という点はよく分からなかった、というところです。21世紀においても宗教が精神の助けになる人もたくさんいるのでしょうが、そうでない人もたくさんいる、ということを示したかったのかもしれません。

 舞台は光と映像に満ちたもの。鏡が上手く使われ、美しくもどぎついものだったと思います。合唱が極めて重要で、冒頭に合唱団の演じる軍隊が登場し、アカペラで、アルマゲドンのテーマが歌われます。その力強い合唱は、合唱団が全員子供の顔をした面を被ることによって不気味さを引き立てていました。舞台は黒スーツの男のビジネスマンしかいない電車の中と、きらびやかな夢の世界をシームレスに行き来します。しかし、そのきらびやかな世界も白い軍隊によって覆い隠されていく。その変化が面白い。

 一度見ただけですから、演奏のことは申し上げられませんし、この作品の真の味わいを一度で感じられたとは全く思いませんが、世界の分断が現在の世界の政治的イシューであることを踏まえると、きわめて今日的な作品であると思いました。また、この作品が構想されたのは、2017年ごろからであるそうですが、初演時の今年は、申し上げるまでもなく、世界は新型コロナウィルスによるバンデミックで、世界の分断が加速されています。このコロナ禍の世界が、作品に描かれている世界と奇妙な一致を見せているようでもあり、そこが偶然とはいえ、今日性を高めていると思いました。

 今回の上演はコロナ禍で外国人スタッフが来日困難な中、予定を早めて来日し、二週間の検疫を行った上で練習を開始し、上演にこぎつけたというもので、新作に掛ける思いも伝わってきました。見ることができてよかったです。

 以上、プロダクション全体のパフォーマンスは印象的でしたが、あとは作品が残れるかどうかです。今回の上演は今回の演出があってこその上演だとも思います。曲それ自身の魅力がどれだけあったのか、という点に関しては、私自身はよくわからない、というのが本当のところですが、別な演出での再演も行われても楽しめるような魅力ある作品だったらよいな、と思いました。

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鑑賞日:2020年11月26日
入場料:B席 2FG列 34番 9000円

主催:公益財団法人東京二期会
共催:公益財団法人ニッセイ文化振興財団

全3幕、日本語字幕付日本語上演 
レハール作曲 「メリー・ウィドウ」Die lustige Witwe
原作:アンリ・メイヤック『大使館付随員』(L'Attache d'ambassade)
台本:ヴィクトル・レオン、レオ・シュタイン
訳詞:野上 彰(ワルツのみ堀内 敬三)

会場:日生劇場

スタッフ

指 揮 沖澤 のどか
管弦楽   東京交響楽団 
合 唱 :  二期会合唱団 
演 出 眞鍋 卓嗣
装 置  伊藤 雅子
照 明  齋藤 茂男
衣 裳  山下 和美
振 付  :  新海 絵理子 
合唱指揮  河原 哲也
演出助手  :  島田 彌六 
舞台監督  :  村田 健輔 

出 演

ミルコ・ツェータ男爵   池田 直樹
ヴァランシェンヌ   盛田 麻央
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵   宮本 益光
ハンナ・グラヴァリ   腰越 満美
カミーユ・ド・ロジョン   金山 京介 
カスカーダ子爵   吉田 伸昭
サン・ブリオッシュ   岩田 健志
ボグダノヴィッチ   加賀 清孝
シルヴィアーヌ   柴田 智子
クロモー   福山 出
オルガ   加賀 ひとみ 
プリチッチュ   峰 茂樹
プラシコヴィア   北澤 幸 
ロロ   辰巳 真理恵
ドド   岡田 麻里
ジュジュ   横森 由衣
フルフル   戸森 冴耶
クロクロ   本田 ゆりこ
マルゴ   高橋 広奈 
ニェーグシュ   山岸 門人

感 想

ベテランの味‐東京二期会オペラ劇場「メリー・ウィドウ」を聴く

 1988年4月に転勤のために上京して、最初に見たオペラがミラノスカラ座の来日公演「ナブッコ」、次いで見たのが88年10月の二期会公演「メリー・ウィドウ」でした。それまでも、仙台オペラ協会の公演などで、オペラの生舞台は何度か経験していましたが、「ナブッコ」と「メリー・ウィドウ」を見たことによって、自分が本格的なオペラゴーアーとしての立ち位置が決まったような気がします。それ以来900ほどのオペラ舞台を見ていると思いますが、二期会の「メリー・ウィドウ」は、自分にとって、特別な作品です。

 その88年公演以来、二期会公演はほぼ毎回通ったと思います。数年に1回は必ず演奏してくれるのですが、今回は2010年以来10年ぶりの上演です。「そんな久しぶりだったかな?」というのが正直なところですが、この10年間確かに上演していない。しかし、10年ぶりの二期会公演、やっぱり魅力的でした。

 ただ、今回の公演、今年のオペラを語る上で外せない「コロナ禍」の問題が影を落としていました。そもそもオペラであれば、声の力で、本来抱き合うシーンであっても抱き合わずに終わらせることは可能です。しかし、オペレッタは歌唱と同様に台詞や演技も大切な舞台芸術ですから、ある程度リアルな演技がないと格好がつきません。そこで、今回の上演に当たって東京二期会は、スタッフ・キャスト全員のPCR検査を行って陰性であることを確認のうえ、フェイスシールドを止めてデュエットや踊りを行うようにしたそうです。それでも合唱はほとんどが陰歌で、その結果として、歌のずれもあって気になりました。

 また劇場の密閉も行わなかったようで、換気はしっかりされたのでしょうが、音の感じがいつも聴いている日生劇場とは異なっているように思いました。そもそも日生劇場は音響がそれほど良いホールではないと思いますが、換気のために一部ドアを開けたせいなのか、響きが非常にデッドで、出演者の声が響きで守られない感じが強く、歌手ごとの力量の差が明確に示されたような気がします。

 そんな中で何と言っても素晴らしかったのが池田直樹のツェータです。1950年生まれ、今年70歳を迎えた大ベテランですが、何とも言えない味がある。上記の1988年公演の私の聴いたツェータは、佐藤征一郎でしたが、ダブルキャストのもう一人のツェータが当時まだ40前の池田でした。その時から30年間もツェータを歌っているわけですから、素晴らしいです。10年前の前回の二期会公演でも私は池田のツェータを聴いていますけど、今回はその時より枯れた印象になって、そこにもツェータ独特の可笑しみが感じられてBravoです。

 合わせて、加賀清孝がボグダノヴィッチを峰茂樹がプリチッチュを演じていましたが、こちらもいい。加賀は二期会オペレッタの牽引車の一人で、自らオペレッタの作曲もするような人ですが、こういうベテランが脇を固めていると、舞台に安定感が出てきます。

 ベテラン、ということでもう一人忘れてはならないのが、腰越満美のハンナ。二期会では2005年以来15年ぶりのハンナになりますが、大人の魅力を感じさせるハンナでした。役柄上のハンナはきっとかなり若い女性なのでしょうが、大人の男女の恋の駆け引き、ということになると、熟女の方が雰囲気が出ますね。ちょっとした仕草に色気を感じます。もちろん、歌もいい。ヴィリアの歌にしても、その他の重唱にしても、役柄が完全に身に入っていて、それを的確に表現していく。安心して聴いていられるハンナでした。

 池田と腰越の二つの柱があって、その支えの下に暴れたのが宮本益光のダニロと盛田麻央のヴァランシェンヌだったように思います。宮本益光のダニロは格好いいです。二期会メリー・ウィドウのダニロは、立川澄登に始まって、越智則英、小栗純一、加賀清孝、星野淳と言った面々に歌い継がれて来たわけですが、一番の二枚目だと思うし、男の色気も凄く感じさせられます。フォルテで歌うとき、ちょっと蓮っ葉な歌い飛ばしになってしまうところがちょっと鼻につきましたが、美声ですし、弱音で丁寧に歌う時はほんとうに魅力的な声で、舞台姿の格好良さも相俟って、主人公の魅力があります。宮本ダニロが押して、腰越ハンナががっちりと受け止める感じ、まさに大関と横綱の相撲でした。

 盛田麻央はヴァランシェンヌ、というイメージではなかったのですが、決して悪くない。難を申し上げれば第3幕のカンカンがもっと弾けてくれて、デカパンをしっかり見せてくれればよかったと思いますが、そこが上手く行かなくてもしっかり足は上がっていましたし、見事だったと思います。カミーユとの恋の駆け引きでは、ヴァランシェンヌは、カミーユに対してもっとぎりぎりまで迫るものだと思っていたのですが、今回の演出では、ヴァランシェンヌの気持ちはカミーユにそんなにないというものであっさりとしていました。今回のように、カミーユの片思いを強く見せる方が、「わたしは貞淑な人妻よ」というヴァランシェンヌの最後の振り方に説得力があるように思いました。ちなみに、金山京介のカミーユは高音と低音のギアチェンジが上手く行っていないところがあり、課題を残しましたが、中音部の甘い声は魅力的でした。

 そのほかの出演者は、岩田健志のサン・ブリオッシュ、福山出のクロモーがよく、台詞役ニエーグシュの山岸門人もよかったと思います。

 伊藤雅子の舞台装置が、公使館の庭が半分見えるように作ってあって、綺麗で清潔感があります。眞鍋卓嗣の演出は、コロナの関係で舞台上の人数制限もあったはずですし、登場人物の位置関係などは気にしていると思うのですが、全体としてはバランスの良いもので、そこは見事でした。上演台本も眞鍋によるものですが、このコロナ禍に関係した流行語がいくつも嵌められているのは、現状を見れば当然というところでしょう。ただ、上演時間の制限もあったようで、当初上演予定時間3時間のアナウンスがあったのですが、実際は2時間半ほど。音楽はカットがほぼなかったと思いますし、オペレッタでは珍しくない曲順の変更もなかったので、その分台詞は短くしたものと思います。特に第3幕のカンカンからフィナーレまでの流れは、かなり急展開で、相当台詞を刈り込んだのではないかと思いました。

 沖澤のどかの音楽づくり。悪くはないですが、オーケストラにもっと色っぽさを要求してもよかったのかもしれません。全体としてはあっさりした印象が強いです。

 以上、コロナ禍のおかげでいろいろな制限はあったと思いますがし、色々なところにその影響が感じられたのですが、その制限条件の中で、ここまで洒落た舞台に仕上げたこと、スタッフや関係者にBraviを差し上げます。楽しめました。

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鑑賞日:2020年11月28日
入場料:自由席 3500円

主催:アンダンド・ベーネ

心の歌・愛の歌

会場:東大和市民会館ハミングホール小ホール

出 演

ソプラノ   柴山 晴美
バリトン   柴山 昌宣
ピアノ   今野 菊子

プログラム

作曲 作詞/作品名 曲名 歌唱
杉山 長谷夫 勝田 香月作詞 出船 柴山 昌宣
越谷 達之助 石川 啄木作詩 初恋 柴山 昌宣
多 忠亮 竹下 夢二作詞 宵待草 柴山 晴美
中山 晋平 吉井 勇作詞 ゴンドラの唄 柴山 晴美
小林 秀雄 野上 彰作詞 落葉松 柴山 昌宣
橋本 国彦 西条 八十作詩 お菓子と娘 柴山 晴美
木下 牧子 C. ロセッティ作詩 風をみた人 柴山 晴美
ロッシーニ 音楽の夜会第1集 約束 柴山 晴美
ロッシーニ 音楽の夜会第1集 饗宴 柴山 晴美
トスティ エッリーコ作詩 理想の女 柴山 昌宣
デンツァ トレマコルド作詩 妖精の瞳 柴山 昌宣
休憩
モーツァルト ドン・ジョヴァンニ ドンジョヴァンニのアリア「窓辺においで」 柴山 昌宣
モーツァルト ドン・ジョヴァンニ ゼルリーナのアリア「分かるわよね?愛しいあなた} 柴山 晴美
モーツァルト ドン・ジョヴァンニ レポレッロのアリア「奥様、これが恋人のカタログ」 柴山 昌宣
モーツァルト ドン・ジョヴァンニ ドン・ジョヴァンニとゼルリーナの二重唱「手に手を取って」 柴山 昌宣/柴山 晴美
レオンカヴァッロ 道化師 ネッダのアリア「大空を晴れやかに」 柴山 晴美
ロッシーニ ランスへの旅 ドン・プロフォンドの骨とう品のアリア「あのスペイン人のお宝は?」 柴山 昌宣
アンコール
ヴァヴィロフ   カッチーニのアヴェ・マリア 柴山 晴美
マスカーニ 仮面 タルターリアのアリア「それは一本の道です」 柴山 昌宣
武満 徹 武満 徹作詞 小さな空 柴山 昌宣/柴山 晴美


感 想

繰り返し歌っている曲と新曲と‐アンダンド・ベーネ「心の歌・愛の歌」を聴く

 柴山昌宣・晴美夫妻による「心の歌・愛の歌」シリーズは、二年に一回ほどのペースで続けられており、私が聴くのももう5回目になります。だいたいは、「リタ」、「電話」といった小品オペラ+コンサート、というパターンが多いのですが、今回は「ドン・ジョヴァンニ」から何曲かと日本及びイタリアの曲が取り上げられました。

 プログラムは上記の通りですが、過去に取り上げられた歌が多かったのかな、という印象です。特に夫君の柴山昌宣の歌ったものについては、トスティとデンツァの二曲の歌曲以外は一度は聴いているのではないかしら。一方で、妻の柴山晴美の歌った曲は、私には初聴のものが多く新鮮でした。

 柴山昌宣の歌唱に関してはいつもと同じ印象です。豊かな声量を十分にコントロールして、細かいところまで正確に歌われます。さすがに学生や若い歌手を指導している先生だけのことはあります。そんな訳で、日本の曲もいいのですが、彼の本領はイタリアオペラにあります。それもやはりブッフォ役です。「ドン・ジョヴァンニ」では、ドン・ジョヴァンニとレポレッロの双方のアリアを歌いましたが、ドン・ジョヴァンニよりもレポレッロの方が断然似合っています。彼の歌う「カタログの歌」はもう3度目か4度目の聴取になりますが、さすがに身に付いている歌で、間然とするところがありません。一方で、骨董品のアリア。これまた彼のお得意のするところで、こちらも3度目か4度目になると思いますが、こちらも素晴らしい。ただ、歌いわけの表情は、かつての方がもっと徹底していたように思います。

 柴山晴美の歌は、いくつか彼女の歌うのを聴いたことがある作品もありますが、多くは初めてです。

 彼女は決して声量のある歌手ではありませんが、歌いまわしが丁寧です。ロッシーニの「約束」も「饗宴」も決して易しい曲ではありませんが、それをチャーミングな表情で歌うところが素晴らしい。一方、後半に歌われた「薬屋の歌」はもう少し色気を感じさせてくれてもよいのかな、という印象。「鳥の歌」は彼女の声質からすれば、ちょっと重すぎるのではないか、という気もしましたが、丁寧に歌い上げてBravaでした。

 重唱は今回は1曲。ドン・ジョヴァンニとゼルリーナの誘惑の二重唱。実の夫婦で誘惑の二重唱を歌うと、どうしても予定調和感が強くて、二人の情熱のぶつかり、という感じにならないのが、ちょっと残念だったかもしれません。

 以上、知っている曲が多かったのですが、現実にはなかなか聴く機会のない曲がたくさん聴けたので楽しかったです。

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鑑賞日:2020年11月29日
入場料:S席 1F10列31番 6000円

主催:公益財団法人日本オペラ振興会 藤原歌劇団 日本オペラ協会
企画:藤原歌劇団・日本オペラ協会団会員委員会

オペラガラコンサート2020


会場:東京文化会館大ホール

出 演

ソプラノ   伊藤 晴
ソプラノ   川越 塔子
ソプラノ   佐藤 美枝子
ソプラノ   沢崎 恵美
ソプラノ   長島 由佳
メゾソプラノ   鳥木 弥生
テノール   澤崎 一了
テノール   村上 敏明
バリトン   須藤 慎吾
バリトン   牧野 正人 
ピアノ   藤原 藍子
ピアノ   松本 康子
尺八   田中 黎山
司会   折江 忠道
司会   郡 愛子

プログラム

作曲 作詞/作品名 曲名 歌唱 伴奏
レオンカヴァッロ 道化師 トニオのアリア「プロローグ」 牧野 正人 藤原 藍子(pf)
ポンキエッリ ラ・ジョコンダ エンツォ・グリマルドのアリア「空と海」 村上 敏明 藤原 藍子(pf)
ベッリーニ 夢遊病の女 アミーナのアリア「ああ、信じられないわ」 佐藤 美枝子 藤原 藍子(pf)
ヴェルディ 運命の力 ドン・カルロのアリア「死とは恐ろしいもの~運命の箱~彼は助かった!」 須藤 慎吾 藤原 藍子(pf)
プッチーニ 蝶々夫人 蝶々夫人とスズキの花の二重唱「桜の枝を揺さぶって」 沢崎 恵美/鳥木 弥生 藤原 藍子(pf)
ドニゼッティ ランメルモールのルチア ルチアとエドガルドの二重唱「裏切られた父の墓の前で」 伊藤 晴/澤﨑 一了 藤原 藍子(pf)
休憩
團 伊玖磨 夕鶴 つうのアリア「私の大事な与ひょう」 川越 塔子 松本 康子(pf)
水野 修孝 天守物語 富姫と亀姫の二重唱「おねえさま、お懐かしい」 川越 塔子/沢崎 恵美 松本 康子(pf)
寺島 民哉 紅天女 紅姫のアリア「目覚めよ、生かされしこと~まこと紅千年の」 長島 由佳 松本 康子(pf)/田中 黎山(尺八)
グノー ロメオとジュリエット ジュリエットのアリア「ああ、なんという戦慄が」 伊藤 晴 藤原 藍子(pf)
マスネ ウェルテル ウェルテルのアリア「春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか?」 澤崎 一了 藤原 藍子(pf)
チレア アドリアーナ・ルクヴルール ブイヨン公妃のアリア「苦いよろこび、甘い責め苦を」 鳥木 弥生 藤原 藍子(pf)
ヴェルディ リゴレット リゴレットとジルダの二重唱「そうだ、復讐だ」 牧野 正人/佐藤 美枝子 藤原 藍子(pf)
ヴェルディ 運命の力 ドン・アルヴァーロとドン・カルロの二重唱「アルヴァーロ、偽善者の衣をもって」 村上 敏明/須藤 慎吾 藤原 藍子(pf)
アンコール
ヴェルディ 椿姫 アルフレードとヴィオレッタの二重唱「乾杯の歌」 全員 藤原 藍子(pf)

感 想

綺羅星の如く-「オペラガラコンサート2020を聴く」

 東京文化会館の大ホールって、普通、演奏会の2年前とか3年前に予約するものだろうと思います。しかし、このコロナ禍の中、海外からの公演は実際はかなり難しく、会場のキャンセルなども多かったのでしょう。この日に日本オペラ振興会所属歌手によるガラコンサートが組まれました。開催案内が舞い込んできたのは、9月に入ってからでしたから、最近企画されたのでしょうね。

 登場した歌手は、まさに日本を代表する歌手ばかりです。綺羅星のごとくとはまさにこのことでしょう。日本オペラ振興会には、もちろん他にもたくさん素晴らしい歌手がいらっしゃいますが、それでもこのメンバーでコンサートを開くとなれば、通常ならもっと前から歌手のスケジュールを押さえなければならないと思います。しかし、集まってしまうところが、本年のコロナ禍の厳しさを窺わせます。

 演奏はさすがのレベル。声を出せるならば、Bravo、Brava、Braviの嵐だったと思いますが、それが叶わなかったことが一番残念だったかもしれません。

 最初は牧野正人による「道化師のプロローグ」。「道化師」のトニオは、牧野の得意とする役で何度も聴いておりますが、さすがの貫禄。コンサートの冒頭を飾るのにふさわしい歌唱でした。次いで、藤原のプリモテノールの名前を10年以上ほしいままにしている村上敏明。村上は、コロナ禍の後も精力的に活動されていますが、高音が流石に美しい。本年6月以降、村上の歌を聴くのは何と4回目ですが、全部違う曲で楽しませてもらっています。「ジョコンダ」の「空と海」はテノールのアリアとして有名な一曲ではありますが、村上が歌ったのを聴いたことは今回が初めてです。新しいレパートリーなのでしょうか? 

 佐藤美枝子は最初は「鐘の歌」がアナウンスされていましたが、体調不良とのことで、急遽「夢遊病の女」の大アリアが歌われました。「鐘の歌」は申し上げるまでもなく超難曲ではありますが、と言って、「夢遊病」の狂乱の場だって、十分すぎるほど難曲です。そこを佐藤はほんとうに素晴らしい緊張感で丁寧に歌い上げました。体調不良という気持ちがあるからこそ、細かいところまでゆるがせにしないのでしょう。ほんとうに聴きごたえのある歌でした。

 須藤慎吾の「運命の力」。ヴェルディのバリトンの魅力を示した名曲ですが、須藤は劇的な表情よりも弱音の細かい表情に気持ちを込めて歌ったように見えました。次いでの「花の二重唱」。沢崎恵美は日本オペラではいつも素晴らしい歌を聴かせますが、イタリアオペラはあまり慣れていない様子。スズキを何度も歌っている鳥木弥生と組むと、安定感の鳥木と緊張感の沢崎、という感じになって面白い感触です。

 そして前半の最後は若手二人による「ルチア」の二重唱。伊藤晴がルチアというのはちょっと似合っていないのではないかと聞く前は思っていましたが、聴いてびっくり。軽さはないのですが、豊かな情感が素晴らしく見事。最近絶好調の澤崎一了の歌もまさに見事の一言、輝ける声の素晴らしさを堪能しました。前半の白眉でしょう。

 後半はまずは日本のオペラから3曲。川越塔子のつうのアリアはよかったですが、この中ではごく普通のレベルか。しかし、富姫と亀姫に二重唱。素晴らしいです。妖艶で、声の重なりが見事でうっとりとするほど。このアリアを聴くのは三度目ですが、過去二回はこんな妖艶さを感じたかしら、と、思ってしまいました。Braveです。長島由佳の紅姫のアリアも紅姫の可愛らしさと妖艶さの混じりあった雰囲気が出ていてこちらも見事でした。

 続く3人のアリアも、どれも魅力的です。若手の才能を感じさせる歌でした。そして、リゴレットの二重唱。名手の見事な制御が音楽世界の魅力を広げます。最後の熱い二重唱。これは同級生の歌ですが、お互い息を揃えながら、どんどん熱がこもっていく感じがまさに男声の二重唱という感じで凄かったです。声で聴き手の血をたぎらせる力量、素晴らしいと思いました。

 以上、日本オペラ振興会の歌手たちの実力が発揮された演奏会でした。贅沢な時間を楽しめました。

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鑑賞日:2020年12月3日
入場料:D席 4FL6列 3番 3960円

主催:文化庁芸術祭執行委員会/新国立劇場

令和2年度(第75回)文化庁芸術祭主催公演

全3幕、日本語/英語字幕付原語(ドイツ語)上演 
ヨハン・シュトラウスⅡ世 作曲 「こうもり」(Die Fledermaus)
原作:アンリ・メイヤック/リュドヴィック・アレヴィ 『夜食』
台本:カール・ハフナー/リヒャルト・ジュネ


会場:
新国立劇場オペラパレス

スタッフ

指 揮 クリストファー・フランクリン
管弦楽   東京フィルハーモニー交響楽団 
合 唱 :  新国立劇場合唱団 
バレエ :  東京シティ・バレエ団 
演 出 ハインツ・ツェドニク
美術・衣裳  オラフ・ツォンベック
照 明  立田 雄士
振 付  マリア・ルイーズ・ヤスカ
再演演出  :  澤田 康子 
再演振付 石井 清子
合唱指揮  三澤 洋史
舞台監督  :  高橋 尚史 

出 演

アイゼンシュタイン   ダニエル・シュムッツハルト
ロザリンデ   アストリッド・ケスラー
アデーレ   マリア・ナザロワ
フランク   ピョートル・ミチンスキー
ファルケ博士   ルートヴィヒ・ミッテルハマー 
オルロフスキー公爵   アイグル・アクメチーナ
アルフレード   村上 公太
ブリント博士   大久保 光哉
イーダ   平井 香織
フロッシュ   ペーター・ゲスナー

感 想

レパートリー公演のコロナ対策演出‐新国立劇場「こうもり」を聴く

 2006年のプレミエ公演以来、通算6回目となる新国立劇場「こうもり」。従来と同じ舞台装置を使用していますが、演出の内容は新型コロナウィルス対策でかなり変化していました。やむを得ないのでしょうが、結果として、この演出の持つ面白さやバランスを壊してしまった公演になっていたと思います。またチームとしてのまとまりが以前よりも悪くなっている感じで、繋がりや流れがかなりぎくしゃくしている印象を受けました。個別の歌手に関しても、この状況の中、わざわざ来日してくれた歌手には申し訳ありませんが、実力的に如何か、と思う方もいらして、そこも残念なところでした。

 指揮者のフランクリンはメリハリを付けた音楽づくりを目指していた様子で、クリアな音楽に仕上がっていたと思います。「序曲」や「雷鳴と電光」の音楽は、切れ味のよい颯爽とした音楽づくりでしたし、一方で、「兄弟姉妹になろう」の音楽は、じれったくなるほどゆっくりした音楽で、もう少し速くてもよいのではないかとも思いました。とはいえ、オペレッタの伴奏として見る分には可もなく不可もないレベルの音楽づくりではなかったかと思います。

 音楽のぎくしゃくは、色々なところで感じました。まず2番の三重唱。明らかな出のミスがあって音がずれましたし、大久保光哉のブリントが韻の踏み方も昔ほど切れ味がよくない。なんかモヤッとした感じです。これは、大久保の責任というよりは、三人の息が合っていない感じがそもそもの原因のように思いました。

 アイゼンシュタインを歌ったシュムッツハルト、フォルクスオーパの専属歌手だったそうですが、その割にはセンスが悪い。演出家の責任なのかもしれませんが、細かい演技がかなり滑っている感じで、舞台から浮いている感じです。それでも音楽の流れに影響を与えなければそれでよいと思うのですが、微妙にずれている感じです。これはこの三重唱だけの話ではなく、全体にそういう印象です。第三幕の怒りの三重唱などもそうで、もっとスムーズに流れてもいいと思うのですが、妙に滑っていて、今一つしっくりしませんでした。

 ロザリンデのケスラーはもっと悪い。とにかく声が安定して出ない。どの歌でも冒頭がピアノで、すぐにフォルテになるのですが、そのフォルテが、同じ強さで続くことは少なく、すぐにピアノに変化してしまう。それが曲の内容からそうなるならわかるのですが、強さを維持して欲しいところでもすぐに減衰してしまうし、それではいけないと思うと、また声を張り上げる、といった繰り返しで、落ち着かない。「チャルダーシュ」などはその典型で、聴いていてイライラさせられました。

 このほかにもブレスが荒い人も多く、なんだかな、という感じでした。わざわざこの程度の歌手を呼ぶのであれば、日本人のアンダーの方の方が、十分立派な歌を歌えると思います。ユシュマノフは分かりませんが、大隅智佳子であればもっと立派なロザリンデを歌ったと思います。

 一方、立派に歌った方も多く、まずはオルロフスキーのアクメチーナがいい。「お客をよぶのが好き」のアリアは声が安定していて、オルロフスキーの退屈さを表現する芝居もあまり過剰な演技にならないところもいいと思いました。その後もそれなりに存在感があり、と言って邪魔にもならず、いい感じだったと思います。

 アルフレードの村上公太も立派な歌。この舞台でアルフレードを務めるのが三度目、ということもあって、かなり自在にやって見せます。アドリブのように聴かせるテノールのもろもろのアリアのさわり。それらはもちろん歌う順番やどこを歌うかなどはもちろん決まっているのですが、どのくすぐりも安定していて、堂々とした感じも声のコントロールも抜群だったと思います。

 フランクのミチンスキーも今一つ嵌らないところもあったのですが、オルロフスキーの夜会でのオロオロした感じなどは悪いものではありません。ミッテルハマー演じるファルケ。狂言回しとしての存在感がもう少し強くてもいいのかもしれません。アデーレのナザロワ。悪くないのですが、日本人スーブレットばかりを最近聴いているせいもあるのかもしれませんが、スーブレットとしてはもっと歌も演技も切れ味がいい方が良いのかなとは思いました。よい歌をうあって上手だとは思うのですが、どこかもさっとしているところがあって、そこが気に入りませんでした。

 イーダの平井香織。この舞台三度目のイーダで、さすがに立ち位置をよく分かっています。結び役としてしっかり活躍されていました。

 演出は密を避けるために、本来のスタイルから相当変更になっていました。抱き合ったりするシーンやキスシーンなどは最小限に抑えられていましたし、立ち位置なども全体的に広がっている印象。これまでは、第二幕で常時置いてあった踏み台は、必要な時だけ出てきて、そうではないときは袖に片付けられ、舞台を広く使う工夫をされていました。この立ち位置の変化の影響を一番受けていたのが合唱で、第二幕の合唱は前は三角形に並んでいたように思うのですが、今回はスクエアーに並び、演技をしているよりもいかにも合唱を歌っているという感じになってしまい、オペラの合唱としては如何なものかと思ってしまいました。やむを得ない変更であることはよく分かるのですが、動きがどうしても小さくなってしまい、見た目のダイナミクスと立体感の点で従来の舞台より明らかに見劣りがしましたし、本来演出家が考えていた美のバランスがかなり失われていたように思いました。

 以上コロナ禍の影響が残る中で、レパートリー公演を行う難しさを感じた公演でした。

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鑑賞日:2020年12月19日
入場料:自由席 3000円

主催:町田イタリア歌劇団

全2幕、日本語字幕付原語(イタリア語)上演 
ベッリーニ 作曲 「ノルマ」(NORMA)
原作:アレキサンドル・スメ 『ノルマ』
台本:フェリーチェ・ロマーニ


会場:町田市民フォーラム3Fホール

スタッフ

指 揮 吉田 拓人
ピアノ   越前 皓也 
合 唱 :  町田イタリア歌劇団合唱団 
演 出 柴田 素光
演技指導  川島 慶子
舞台監督  :  原田 統 

出 演

ノルマ   刈田 享子
アダルジーザ   高橋 未来子
ポリオーネ   及川 尚志
オロヴィーゾ   横田 圭亮
フラーヴィオ   岡村 北斗 
クロティルデ   織田 麻美

感 想

重唱の正確さと美‐町田イタリア歌劇団「ノルマ」を聴く

 「ノルマ」はベッリーニの代表作にして、ベルカント・オペラを代表する名曲ですが、演奏される機会は決して多くありません。それは演奏のむつかしさがあるから、ということだろうと思います。ベルカント・オペラの代表作と言いながら、ノルマはソプラノ・ドラマティコの役柄。ポリオーネもテノール・ロブストの役柄です。そうは言ってもベルカント・オペラですから、細やかなパッセージやアジリタだって正確に処理をしなければいけない。更に申し上げれば、アダルジーザはメゾソプラノによって歌われますが、音域的にはソプラノ。要するにノルマとアダルジーザの関係はドラマティック・ソプラノと超ドラマティック・ソプラノの関係です。こういった難しい条件の作品を演奏して上手く行くのはなかなか稀有で、最近では2017年は藤原歌劇団が、2018年は東京二期会が取り上げましたが、どちらも私にとっては満足できる出来栄えではありませんでした。

 今回演奏した「町田イタリア歌劇団」。活動は非常に活発ですが、活動場所は「町田市民フォーラムホール」と収容人数180人ほどのホール。舞台も狭く、音響もデッドで決して良くない。もちろん伴奏はピアノ一台。そのレベルの演奏ですから正直申し上げてそんなに期待はしていませんでした。しかし、その音楽的正確さと美しさは、明らかに藤原公演や二期会公演を凌駕していました。もちろんまだまだだな、と思ったところもいろいろあったのですが、町田でこのレベルの公演を聴けるとは、正直驚きです。

 何と言っても素晴らしかったのは重唱がどれも美しかったこと。第一幕のノルマとアダルジーザの二重唱がまず非常に美しい。二人の強い声がぶつかったとたん。倍音がすぐに迸り、なんだ、この二重唱は、とびっくりしました。こういう音が生まれるのは、二人の音の幅が極めて正確だからこうなるわけで、刈田享子も高橋未来子もきっちり音を作ってきたのだろうなと思いました。ほんとうに素晴らしい。更にこの二重唱にポリオーネが加わった一幕フィナーレの三重唱。速いパッセージで音が絡み合いますが、皆音へのイメージやスピード感が一致しているのだろうと思います。一糸乱れぬ重唱で、きっちりフィナーレを飾ってくれました。

 第二幕の女声の二重唱も素晴らしく、これは下を歌った高橋未来子が正確で安定していた証左でもあります。高橋はソロも素晴らしい。全体に、墨汁をたっぷり付けた筆で一気に書きながらも書き飛ばすところのないようなしっかりした歌でした。今回は原調で歌われたそうですが、そのせいで、リリックな響きも聴こえ、ノルマよりも若い巫女であるという立ち位置が見えた部分もありました。第一幕のアリア「静かなる森で」から素晴らしく、今回の公演の最大の貢献者だったと思います。

 ノルマはソプラノ・ドラマティコ・ダジリダという要するにマリア・カラスのような声が一番似合う役柄です。刈田享子はヴェルディのソプラノ役にその適性を感じることのできる方で、ノルマにはやや声が軽いのかもしれないという感じがしましたが、細かなアジリダの表現は結構明快で、バランス的には悪くないな、と思いました。更には今回のアダルジーザの若さを踏まえると、これぐらいの関係が丁度いいのかもしれないと思います。重唱が見事だったのは、ソプラノとメゾソプラノとの声の類似性もあったのかもしれません。テクニカルに気になったところは、上行跳躍が上手く行ったところと上手く行かなかったところの両方があったこと。しかし、音楽の流れは決して悪くなかったし、主要なアリアはしっかり聴かせてくれて立派でした。

 ポリオーネの及川尚志。ドラマチックな表現で中低音の魅力は素晴らしいものがあります。また高音で歌っているところもしっかりしているのですが、上行跳躍に課題残した感じです。下の音でしっかり歌っていて、そこから素早く上がるのは難しいのでしょうね。

 横田圭亮のオロヴィーゾは低音がもっと響いたほうが役柄的には好ましいと思いましたが、歌はしっかりしていたと思います。また合唱は女声4人、男声3人の7人しかいませんでしたが、特に男声が上手で個々の力量を見せました。

 ピアノは本来のヴォーカルスコアの伴奏よりもかなりいろいろな音を入れていたそうで、確かに音響的にも魅力的なピアノだったように思います。

 以上、皆さん初役ということでまだまだだなと思った部分もありましたが、全体としては非常に素晴らしいまとまりで、「ノルマ」という作品の魅力を見事に示したと思います。Bravissimoと申しあげましょう。

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