どくたーTのオペラベスト3 2022

第1位  6月12日 NISSAY OPERA 2022公演
ロッシーニ作曲「セビリアの理髪師」
日本語字幕付イタリア語上演 会場 日生劇場

第2位 2月2日 新国立劇場公演

ワーグナー作曲「さまよえるオランダ人」
日本語/英語字幕付ドイツ語上演 会場 
新国立劇場オペラパレス

第3位  10月18日 新国立劇場公演
ヘンデル作曲「ジュリオ・チェーザレ」

 日本語/英語字幕付イタリア語上演 会場 新国立劇場オペラパレス

ベスト歌手
森谷 真理(ソプラノ)

優秀賞 
ドニゼッティ作曲「愛の妙薬」
(新国立劇場公演、新国立劇場オペラパレス、2/11)
伊藤康英作曲「ミスター・シンデレラ」(日本オペラ協会公演、新宿文化センター大ホール、2/19)
モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」新国立劇場オペラ研修所公演、新国立劇場中劇場、2/23)

ヴェルディ作曲「ナブッコ」(藤沢市民オペラ公演、藤沢市民会館大ホール、3/5)
ヴァッカイ作曲「ジュリエッタとロメオ」(ベルカントオペラフェスティバルインジャパン2021公演、テアトロ・ジーリオ・ショウワ、3/17)
ヴォルフ=フェラーリ作曲「イル・カンピエッロ」藤原歌劇団公演、テアトロ・ジーリオ・ショウワ、
4/22)
オッフェンバック作曲「天国と地獄」(東京二期会オペラ劇場公演、日生劇場、11/23)

(優秀賞は上演順)

特別賞
ヴェルディ作曲「ファルスタッフ」
(東京フィルハーモニー交響楽団オペラ・コンチェルタンテシリーズ公演、オーチャードホール、10/23)

選考理由

 2022年はコロナ禍3年目に入り、色々なところで日常とコロナの共存が模索された1年でした。クラシック音楽界もその例外ではなく、前半はまだ外国人の入国規制が続いたものの、後半はそれも撤廃されました。また演奏会の数も例年並みに、ひょっとすると、演奏ができなかった2020年、21年の反動で例年以上の演奏会が行われたかもしれません。オペラ上演も外国からの来日公演はまだこれからのようですが、国内での上演もコロナ前のレベルまで復活したのではないでしょうか。そうは言っても、Bravo禁止は相変わらずだし、合唱はマスクを着用する例もあり、なかなか本来の姿までには戻れなかった1年と言っていいのかもしれません。

 コロナ禍は興行を行う人々にとっては大変なトラブルだったわけですが、その代わり良いこともありました。まずは日本人の実力ある演奏家が日の目を見た例が多かったということです。新国立劇場は、外国人主役、日本人脇役というパターンが多かったわけですが、外国人の来日規制のために日本人キャストを登用せざるを得なくなり、実際に歌った日本人歌手が招聘する外国人歌手よりもずっと良い、という例が少なくなく、日本人歌手の実力を評価し続けたどくたーTとしては嬉しい限りです。

 さて、優秀公演の選定ですが、私自身は本年は51回52本のオペラを拝見することになりました。個人的には年間記録を更新しました。そして、全体的に言えば、上演回数の少なかった2020年、コロナ禍の中で模索された2021年よりも素敵な演奏が多かったと思います。おかげさまでいい意味で記憶に残る演奏が20本強ありました。色々な理由でベスト10から外したのですが、折角なので、タイトルだけ上げておきます。尚、この22公演を見ると前半が13本、後半が9本なので、前半にいい演奏が多かったということになります。

 1月27日「アルバのアスカーニョ」、4月20日「魔笛」、4月23日「エドガール」、5月5日「不思議の国のアリス」、5月19日「オルフェオとエウリディーチェ」、7月9日「ペレアスとメリザンド」、8月6日「ポントの王ミトリダーテ」、8月16日「仮面舞踏会」、9月11日「蝶々夫人」、11月12日「ランメルモールのルチア」、11月25日「咲く」。

 選択した優秀公演を簡単に総括します。

 新国立劇場「愛の妙薬」。素晴らしいバランスで「愛の妙薬」のお手本みたいな演奏。砂川涼子のアディーナは可愛いし、中井亮一のネモリーノも、ちょっと引いた感じに歌った久保田真澄のドゥルカマーラも素晴らしかったです。ベスト3に入れても不思議でない名演でした。
 日本オペラ協会「ミスター・シンデレラ」。今年は日本オペラを5回拝見したのですが、その内4本はよかったです。その中で1本選ぶとすればこの作品になるのかな、というところです。「不思議の国のアリス」も「咲く」も楽しんだのですが、大劇場の本公演で色々な意味で充実していました。山本康寛の演技がおかしかったこと、鳥木弥生の歌唱、
山田正智の垣内教授、声楽アンサンブルが強く印象に残っています。
 新国立研修所「ドン・ジョヴァンニ」は、若い人たちが「ドン・ジョヴァンニ」をやると上手くいかない、という私の経験則を打ち破ってくれた快演。今年は新国立劇場の本公演も含めて3回「ドン・ジョヴァンニ」を拝見しましたが、一番見事な演奏でした。
 藤沢市民オペラ「ナブッコ」。市民オペラのあるべき姿を示したような名演だったと思います。合唱が素晴らしかったし、小林厚子のアビガイッレ、山下裕賀のフェネーナ、工藤和真のイズマエーレといずれも見事な歌唱でした。これでタイトルロールの今井俊輔に存在感があればベスト3に入れたと思います。
 ベルカントオペラフェスティバル「ジュリエッタとロメオ」、外国人の入国規制のため主要役が日本人に変更になって上演されましたが、その変更により登場した3人、伊藤晴、松浦麗、澤ア一了が素晴らしかったことで印象に残る上演。日本初演で、聴くまではタイトルすら知りませんでしたが、とてもいい曲でまた聴きたいと思いました。
 藤原歌劇団「イル・カンピエッロ」、ベテランと若手のバランスが取れた演奏。持木弘と角田和弘の両ベテランテノールのおばさん役が面白過ぎます。もちろん若手の迫田美帆、楠野麻衣、中井奈穂、大塚雄太、海道弘昭なども頑張っていていいアンサンブルになっていました。
 東京二期会「天国と地獄」。オペレッタははっちゃけなきゃね、という演奏。とにかく面白かったです。指揮の原田慶太楼のノリの良さが特に印象的でした。歌手ではバリトンに転向した又吉秀樹が面白く、真面目な役でしか見たことのない増田のり子が弾けていたのも面白かったし、湯浅桃子のぶりっこぶりも凄かったです。楽しみました。

 演奏会形式で素晴らしい演奏を紹介する特別賞は、候補が2本。二期会のエドガールと東京フィルの「ファルスタッフ」。こちらは文句なしにファルスタッフ。チョン・ミョンフンの音楽作りが素晴らしく、外題役のセバスチアン・カターナが素晴らしい。日本人のメンバーも実力派揃いで、演奏会形式でなかったら当然ベスト3に入れるべき演奏です。

 さて、どくたーTの選ぶ2022年のベスト3ですが、第三位は新国立劇場の「ジュリオ・チェーザレ」です。美術館の倉庫を舞台にして彫刻が歌うという演出が新鮮でしたし、森谷真理のクレオパトラの演技も歌唱も圧倒的に素晴らしい。またセスト以下の脇役陣も良かったです。これで、招聘されたシーザー役のマリアンネ・ベアーテ・キーランドが良ければ文句なしだったのですが、この方は声が足りなく歌唱の技巧も大したことがなく、思いっきり足を引っ張りました。だからベスト3から外してもよかったのですが、森谷真理の圧倒的歌唱に敬意を表して第3位といたします。

 第二位は「さまよえるオランダ人」です。外国人の入国規制でオール日本人で行われた上演でしたが、私がこれまで聴いたオール日本人キャストのワーグナーの中では最高の演奏だったと思います。オランダ人の河野鉄平とゼンダの田崎尚美がどちらも素晴らしく、二人の重唱は緊迫感があって極めて感動的でした。これにベテラン・妻屋秀和が絡んだ時生じる味わいは聖と俗とが交錯してこれまた素晴らしい。新国立劇場合唱団も素晴らしく、「水夫の合唱」などは本当に一糸乱れずに歌い切りました。

 そして第一位は日生劇場の「セビリアの理髪師」です。小堀勇介のアルマヴィーヴァ伯爵が圧倒的に素晴らしく、最初から最後まで記憶に残る名唱を聴かせてくれたと思います。山下裕賀のロジーナも極めてよく、「今の歌声」のバリエーションは初めて聴いたものだったかもしれません。黒田祐貴のフィガロも闊達でしたし、久保田真澄のバルトロのとぼけた感じも良かったです。演出は粟國淳のもので2016年の再演だったのですが、歌手が良かったせいか、演出の切れも2016年の時とは段違いによかったです。沼尻竜典と東京交響楽団のサポートもよく、おそらく私がこれまで聴いた最高の「セビリアの理髪師」だったと思います。

 本年のベスト歌手ですが、小堀勇介、山下裕賀、河野鉄平、田崎尚美、小林厚子、砂川涼子などいろいろ考えられますが、歌唱演技ともに頭抜けていた森谷真理こそが今年のベスト歌手に相応しいと思います。

 2022年のオペラ公演におけるどくたーT的ベストは以上のとおりです。尚、例年の如く本選考に賞品はありません。選ばれた方・上演には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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