錦織健プロデュース
モーツァルト
コシ・ファン・トゥッテ-恋人たちの学校-に思う。
2002年2月から3月にかけて、テノール歌手の錦織健がプロデュースしたオペラ公演が、全国14都市で合計14回実施されました。
オペラの全国巡業は、昔は決して珍しいものではなく、1950年代から60年代にかけては、労音、民音主催のオペラ公演で、二期会の「カルメン」、「こうもり」、「フィガロの結婚」などの演目が全国各地で上演されていたという話もあります。これらの全国巡業は、オペラ界のスター(例えば、立川清登、島田祐子、栗林義信、岡村喬生)を生み出し、又、これらの巡業に刺激されて地方オペラが始まったという側面もあると思います。
しかし、外国の歌劇場の引越し公演が一般化し、一方において、テレビの隆盛による教養主義の衰退は、オペラの巡業を現実的には難しくして来ました。確かにオペラ公演の数は年々増加し、最近は年間500回以上のオペラ公演が行われているのですが、ここ20年ほどの間に、日本国内製作によるオペラの全国巡業が行われたという話は、私は残念ながら聞いたことがありません。
即ち、多くの歌手は、別のプロダクションを歌う為に全国を回っています。本来、日本の歌手の活躍の場の中心となるべき新国立劇場は、主役級の多くを海外に求め、日本人歌手は脇役でしか歌う場がないのが現実ですし、藤原歌劇団も同様。二期会は、日本人歌手で公演を行いますが、ダブルキャスト3回公演が通常(本年からは4回になった?)で、恵まれている方で同一プロダクションで2回歌うというのが上限です。他のオペラプロダクションでも同様で、折角長時間練習して作り上げて行っても、本番は2回。長時間練習して、本番が1回か2回というのは、大いなる無駄、という側面を感じずにはいられません。
一方、ここ数年、東欧系のオペラハウスの引越し公演では、日本全国を巡業するというのが当り前になってきました。ドイツのバーデン市立劇場の様に毎年来日して、地方巡業している団体もあるのですから、地方にもある一定数以上のオペラ・ファンがいることは間違いありません。これらの東欧オペラ劇場の日本公演の意義の一つは、地方オペラファンの活性化であったと申し上げることも出来ます。
そういう道筋の元で「コシ・ファン・トゥッテ」の全国巡業ではありますが、日本の有数の歌手が、同一のプロダクションで、地方巡業したことは意義深いことであります。これは、地方の観客に対して本物を示す、という意味は当然ありますが、それ以上にひとつのプロダクションを、同一のスタッフ・キャストで作り上げ、繰り返し上演したことに意味があるのです。
今回歌った歌手たちは、皆現役の実力者ですが、おのおのの役をこれまで舞台で歌った経験があるにしても、その合計は、今回の14回に満たない筈です。今回14回歌ったことにより、役への関心も距離のとり方も考え方も変わっただろうと思います。また、1回の公演だけ歌えば良い場合は、調子を本番に向けて整えて行けば良いのですが、今回のようにほぼ40日間に渡って歌いつづける場合は、調子をどう維持していくかが課題だったろうと思います。その辺は歌手の皆様は初めての経験だったのではないでしょうか。
偉そうに、色々なことを書いておりますが、残念ながら、私はこの公演を聴いておりません。この東京公演の日は何かの予定があり、聴きに行けませんでした。全国14公演を行いながら、最大のマーケットである東京では1回しか上演しないのですから、そこは今後一考の余地があるでしょう。また、全国公演といいながら、北海道、東北、四国は巡業の対象に入っていないのも残念です。
錦織健プロデュースオペラの第2弾はロッシーニ作曲「セヴィリアの理髪師」と聞いております。第1弾の反省に立って、より効果的で且つ感動的な公演が出来るように祈念いたします。
この記事を書くに当り、資料を提供してくださいました。ムゼッタちゃん様に厚く御礼申し挙げます。
公演日程表
年月日 | 曜日 | 開始時刻 | 場所 | ホール | 指揮 | オーケストラ |
2002年2月9日 | 土 | 14:00 | 橿原 | 奈良県橿原文化会館 | 現田茂夫 | オペラハウス管弦楽団 |
2002年2月11日 | 月 | 14:00 | 大和郡山 | やまと郡山城ホール | 現田茂夫 | オペラハウス管弦楽団 |
2002年2月13日 | 水 | 18:30 | 大阪 | フェスティバルホール | 現田茂夫 | オペラハウス管弦楽団 |
2002年2月15日 | 金 | 18:30 | 福岡 | 福岡市民会館 | 現田茂夫 | オペラハウス管弦楽団 |
2002年2月17日 | 日 | 17:30 | 熊本 | 熊本県立劇場・演劇ホール | 現田茂夫 | オペラハウス管弦楽団 |
2002年2月20日 | 水 | 18:30 | 鳥取 | 鳥取県立県民文化会館 | 現田茂夫 | オペラハウス管弦楽団 |
2002年2月22日 | 金 | 18:30 | 名古屋 | 愛知芸術劇場・大ホール | 現田茂夫 | オペラハウス管弦楽団 |
2002年2月24日 | 日 | 15:00 | 宇都宮 | 栃木県総合文化センター | 現田茂夫 | オペラハウス管弦楽団 |
2002年3月3日 | 日 | 15:00 | 東京 | 東京文化会館 | 現田茂夫 | 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 |
2002年3月5日 | 火 | 18:30 | 富士 | ロゼシアター・大ホール | 現田茂夫 | 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 |
2002年3月7日 | 木 | 18:30 | 広島 | 広島郵便貯金ホール | 城谷正博 | オペラハウス管弦楽団 |
2002年3月10日 | 日 | 15:00 | 熊谷 | 熊谷文化創造館 | 現田茂夫 | 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 |
2002年3月12日 | 火 | 18:30 | 金沢 | 金沢市観光会館 | 現田茂夫 | 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 |
2002年3月17日 | 日 | 15:00 | 横須賀 | よこすか芸術劇場 | 現田茂夫 | 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 |
スタッフ
芸術総監督 | 錦織 健 | 音楽監督 | 現田 茂夫 |
演出 | 今井 伸昭 | 美術デザイン | 天野 喜孝 |
装置デザイン | 鈴木 俊郎 | 衣装デザイン | 小野寺 佐恵 |
照明デザイン | 古川 靖 | 舞台監督 | 徳山 弘毅 |
演出助手 | 三浦 安浩 | 原語指導 | 河原 広之 |
コレペティトール | 服部 容子 田村 ルリ 戸田 光彦 巻島 佐絵子 平塚 洋子 |
舞台監督助手 | 堀井 基宏 大洞 邦裕 伊藤 奈菜子 |
大道具製作 | 東宝舞台 | 大道具操作 | ア・ラ・セーヌ |
メイク | 吉池 麻野 加藤 由樹夫 |
小道具 | 高津映画装飾 クリエイション |
衣装 | 東京衣装 | 照明 | 若尾綜合舞台 |
床山 | 丸善かつら | 履物 | 神田屋 |
字幕 | 朝日解説事業 | チェンバロ | 東京古典楽器センター |
企画製作 | ジャパン・アーツ タルカス |
製作協力 | クリエイション 二期会 天野喜孝事務所 |
キャスト
フィオルディリージ | 澤畑 恵美 |
ドラベッラ | 坂本 朱 |
デスピーナ | 足立 さつき |
フェルランド | 錦織 健 |
グリエルモ | 境 信博 |
ドン・アルフォンソ | 志村 文彦 |
チェンバロ演奏 | 服部 容子 |
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