NHK交響楽団演奏会を聴いての拙い感想-2024年(後半)

目次

2024年9月14日 第2016回定期演奏会 指揮:ファビオ・ルイージ
2024年9月27日 第2018回定期演奏会 指揮:尾高 忠明
2024年10月19日 第2020回定期演奏会 指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
2024年10月25日 第2021回定期演奏会 指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
2024年11月9日 第2022回定期演奏会 指揮:山田 和樹
2024年11月15日 第2023回定期演奏会 指揮:アンドレス・オロスコ・エストラーダ
2024年11月30日 第2025回定期演奏会 指揮:ファビオ・ルイージ
2024年12月13日 第2027回定期演奏会 指揮:ファビオ・ルイージ

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2024年9月14日 第2016回定期演奏会

指揮:ファビオ・ルイージ

曲目: ブルックナー 交響曲第8番ハ短調(初稿:1887年)

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:郷古、2ndヴァイオリン:大宮、ヴィオラ:佐々木、チェロ:辻本、ベース:吉田、フルート:甲斐、オーボエ:客演(新日本フィルの神農広樹さん)、クラリネット:松本、ファゴット:水谷、ホルン:客演(千葉響の大森啓史さん)、トランペット:菊本、トロンボーン:古賀、テューバ:池田、ハープ:早川、ティンパニ:植松

弦の構成:15-14-12-10-8

会場:NHKホール 

感想

 N響定期会員37シーズン目が開始されました。2024-25シーズンの幕開けは首席指揮者ファビオ・ルイージによるブルックナー第8番。ブルックナーの第8番は初稿と第2稿とがあり、演奏時間として10分ほどの違いがあるそうです。私自身はブルックナーの良い聴き手ではなく、初稿による演奏を聴いたのは初めての経験です。ルイージは初稿に対して思い入れがあるようで、既に録音もあるようですが、そういうルイージの思いにN響がどう対応するのかを楽しみに伺いました。

 そんな私でも分かる違いはあります。例えば第1楽章のフィナーレ。第2稿は主題がピアニシモで演奏されて消えゆくように終わる。それに対して第1稿は、長調に変わり明るい華やかなフィナーレとなります。このどちらがいいかと言えばよく分かりませんが、そんな違いは楽しめます。とはいえくどい感じはあります。ブルックナーの音楽世界に長く浸りたい人にとってはこっちの方がいいのかもしれませんが、個人的には第2稿で十分ですね。

 ルイージの演奏は曲に対する思い入れはあるとしてもすっきりとまとめたと思います。妙に重たくすることもなく、ドイツ的な響きよりもイタリア的響きを求めたと言ってもいいのかもしれません。とはいえ、見せるところはしっかり見せます。この曲はピアニシモのトレモロで始まるわけですが、これに限らず弱音の部分は丁寧に音を出すように指示されていた様子で、ホルンは大変そうでした。ひっくり返りそうになったところもありましたけど、弱音で息の長い音を出すというのはやれていたように思います。一方で、フォルテシモの部分はルイージも全身を弓のようにしならせて激しく指示を出しており、そういったメリハリはありました。

 ブルックナーの第8番の持つ世界観は細かい繰り返しや石造りの大聖堂で聴くような響きで強調されるのだろうと思いますが、そういったキリスト教的な重層も感じました。N響のメンバーは大変そうではありましたが、このルイージのブルックナー観に共感して演奏しているようにも見え、全体的にはいい演奏に仕上がっていたのではないかと思います。

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2024年9月27日 第2018回定期演奏会

指揮:尾高 忠明

曲目: チャイコフスキー ロココ風の主題による変奏曲作品33(フィッツェンハーゲン版)
チェロ独奏:辻本 玲
チャイコフスキー バレエ音楽「白鳥の湖」作品20(抜粋)

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:郷古、2ndヴァイオリン:大宮、ヴィオラ:中村(翔)、チェロ:藤森、ベース:客演(シュトゥットガルト放送響の幣 隆太朗さん)、フルート:甲斐、オーボエ:客演(元読売日響の蠣崎耕三さん)、クラリネット:伊藤、ファゴット:水谷、ホルン:今井、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、テューバ:池田、ハープ:客演(フリー奏者の山宮るりこさん)、ティンパニ:植松

弦の構成:ロココ:10-8-6-4-3、白鳥の湖:16型

会場:NHKホール 

感想

 二曲を聴いて思うのは、N響としては平均的な演奏と言ってよいのではないかということ。美しくもあり、力強くもあり、弱音はしっかり弱かったし、ほぼきっちり揃っていたし、高水準の演奏だったことには間違いありません。でも、ある意味卒のない演奏で、会場の空間にいるからこそわかる心躍るような空気感はなかったかなという印象です。

 最初の「ロココ風変奏曲」、辻本玲の技術と音楽性の双方が光った演奏だったと思います。辻本さんは普段はN響の首席チェロ奏者として、オーケストラのバランスを見て演奏されていると思うのですが、彼の普段の演奏を聴いていると、もう少し踏み込みたいという思いが見えることがままあります。今回は、その「もう少し」の部分を踏み込んでいった演奏になっていたように思いました。主題と7つの変奏、そしてコーダからなる曲ですが、ロココ風の軽快な舞曲を思わせるテーマを様々な演奏形式で展開していく。それぞれの変奏の差異はフィッツエンハーゲン版ならではのもので、奏者のヴィルトゥオジティを示すように書かれていますけど、辻本のチェロはその差異を感情に走ることなく、しかしながら技術的には正確に示してくっきりした表情になっていたのかなと思います。N響のサポートも良かったのですが、ソロのくっきりと比較すると少しどんよりとボケたところがあって、そこがやや残念だったかもしれません。尚、ソリストアンコールはチェロメンバー5人による「鳥の歌」。こちらは大変結構なものでした。

 「白鳥の湖」。楽器間のずれなどを感じるところもあり万全ではなかったと思いますが、一言で申し上げれば手慣れた演奏という印象を持ちました。抜粋版ですが今回の指揮者の尾高忠明による踊りの音楽を中心にした抜粋版ということで、様々な踊りが彷彿とされ、実際のバレエがどうなるのかなと想像しながら楽しみました。とはいえ、現実にバレエが見えないとちょっとストレスです。チャイコフスキーの三大バレエ曲では「白鳥の湖」が一番バレエがあってこそ輝く曲だと思います。言うなればバレエがなくても音楽だけで楽しめる「くるみ割り人形」と比べると、そこまで音楽の魅力がない。だから音楽だけで聴いているとやや退屈な感じがします。それを工夫するのが指揮者とオーケストラの力量だとは思いますが、そこまで面白い演奏でもない。結局のところ、バレエのない「白鳥の湖」は「組曲」だけで私自身としては十分だなという感想を持ちました。なお、コンマス郷古さん、チェロ藤森さん、オーボエ蠣崎さん、トランペット菊本さんにはそれぞれ素晴らしいソロを演奏し、そこは大変満足させていただきました。

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2024年10月19日 第2020回定期演奏会

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

曲目: オネゲル 交響曲第3番「典礼風」
ブラームス 交響曲第4番ホ短調作品98

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:川崎、2ndヴァイオリン:大宮、ヴィオラ:村上、チェロ:辻本、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:客演(東京フィルの荒川文吉さん)、クラリネット:伊藤、ファゴット:水谷、ホルン:客演(京都市交響楽団の水無瀬一成さん)、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、テューバ:池田、ティンパニ:久保、ピアノ:フリー奏者の鈴木慎崇さん

弦の構成:16-15-12-10-8

会場:NHKホール 

感想

 昨年は急なドクターストップで来日が不可能になり、休演になったブロムシュテットの二年ぶりの来日です。N響は今回は何があってもいいように、カバー指揮者としてゲルゲイ・マダラシュを控えて貰うという万全の態勢で準備しました。御年97歳。もちろん現役世界最高齢の指揮者。というより現役指揮者としてこの年まで演奏活動を行ってきたのはブロムシュテットが唯一の存在でしょう。日本でもおなじみのヘルムート・ヴィンシャーマンは100歳まで生きましたが、指揮者として活動していたのは90歳ぐらいまでだったようですし、朝比奈隆やジャン・フルネといった長命で長く指揮台に上っていた方でも90代になって指揮をしていた方はあまり多くはありません。それだけ素晴らしいことなのですが、今回彼の指揮を見て思ったのは明らかな衰えです。

 二年前も既に椅子に座っての演奏でしたが、指揮者としてのオーラがあって指示も的確だったと思います。あの時私が聴いたのはマーラーの9番のプログラムとシューベルトのふたつの交響曲を演奏した2回でしたが、マーラーの9番はある意味一期一会の名演でしたし、シューベルトにしても素敵でした。しかし今回は、そうはいきませんでした。

 もちろんブロムシュテットの頭の中には、自分の理想とする音楽が息づいているのだろうということは感じましたし、それを手で示そうとしているのはよく分かります。しかし、その手の動きはぎこちない感じで、なかなか明確にはならない様子です。N響メンバーはそんなマエストロの意図を一所懸命理解し、アンサンブルとして組み上げようとしていました。

 それが比較的うまくいったのが第一曲目の「典礼風」。3つの楽章に「Dies irae」、「De profundis clamavi」、「Dona nobis pacem...」とキリスト教の宗教音楽ではおなじみの文言がタイトルに付いた音楽は、激しさと静謐、不協和音と美しいメロディ、無機的な流れと鳥のさえずり、それらが綺麗に織り込まれた音楽は晩年を迎えた大マエストロにとってはとりわけ思い入れがあるようで、それをN響団員が必死でくみ取ってしっかりアンサンブルを作り上げました。味のある悪くない演奏ではありましたが、指揮者の思いがどのように伝わっていたのか、という点がなかなか伝わりにくいところもあって、個人的には隔靴掻痒な感じがありました。

 後半のぶらよん。オーケストラの定番曲で、私の何度聴いたか分からない位聴いていますが、アンサンブルの出来としてはこれまで聴いた演奏の中ではかなり厳しい方に入ります。指揮者の疲れもあったのでしょうか、オネゲルよりも指揮が分かりにくくなっているのかも知れません。そんな中、N響のメンバーは周りの音を聞きつつ、指揮にも反応しながら演奏するのですが、どうしてもトゥッティの乱れはありますし、アンサンブルの乱れも出てしまいます。第4楽章は最後がやや走った感じもあります。二曲を聴いて思うのは、N響としてはマエストロの意図を忖度しながら必死てアンサンブルを作っているのですが、上手くいったところもあるけれども上手くいかなかったところもあるということなのだろうな、ということでした。

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2024年10月25日 第2021回定期演奏会

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

曲目: シューベルト 交響曲第7番ロ短調D.759「未完成」
シューベルト 交響曲第8番ハ長調D.944「ザ・グレート」

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:川崎、2ndヴァイオリン:大宮、ヴィオラ:中村(翔)、チェロ:藤森、ベース:客演(シュトゥットガルト放送響の幣 隆太朗さん)、フルート:甲斐、オーボエ:𠮷村、クラリネット:松本、ファゴット:宇賀神、ホルン:客演(千葉響の大森啓史さん)、トランペット:長谷川、トロンボーン:古賀、ティンパニ:植松

弦の構成:16-15-12-10-8

会場:NHKホール 

感想

 97歳のマエストロの心の中にある音楽性は伊達に70年指揮をしていたわけではない凄さ、素晴らしさがあります。ただ、その音楽性の表出にはマエストロの体調や気力、体力が大きく関係しているのもまた事実のようです。

 先週に引き続いてのブロムシュテット鑑賞でしたが、指揮台までコンサートマスターの川崎洋介さんに手を引かれて歩く様子は、先週より足取りがしっかりしているように思いました。ちょっと調子が良かったのだろうと思います。

 それが理由かどうかは明らかではありませんが、第一曲目の「未完成交響曲」の指揮は前回よりも明らかに明確でしたし、指揮の流れも滑らかだったように思います。3/4の拍子の曲ですが、マエストロは要所要所はしっかり1小節を3つに振ってかつ手と顔で指示を出し、ゆったりした部分はひとつぶりにして音楽に乗っている感じ。音楽の流れに乗っている部分と自分から攻めていこうという部分の区分けが明確で、N響のメンバーもマエストロの意図にしっかり応えて演奏したので、音楽が乱れない。ひとつの大きな流れが最初から最後まで滑らかに進み、シューベルトの持つロマン性がストレートに表出され素晴らしいと思いました。

 第二曲目のハ長調大交響曲。こちらもマエストロの内に秘めた音楽性がフィナーレに向かって流れ込み、素晴らしい演奏になったとは思いますが、1曲目の未完成ほどではなかったというのが本当のところ。先週も先に演奏したオネゲルの方が良かったので、おそらく、一曲振るとマエストロもお疲れになり、二曲目はやや集中力が散漫になる部分があるということなのでしょう。

 そんな中でもブロムシュテットはしっかり指示を出し、それに呼応してN響メンバーも音を出しているのですが、その指示がややぎこちなく見えてしまうところがある。それは未完成が三拍子の曲で、こちらのハ長調大交響曲が基本二拍子系の曲だというのも関係するのかもしれません。基本的には軽めに音楽を進めていて良いことだと思うのですが、個人的に大好きな第二楽章は、もう少しじっくり振って歌わせて欲しいとは思いました。第二楽章に関してはもっともっとロマンの香りが欲しいところです。しかしながら第三楽章からフィナーレまでの疾走は心地よい。指揮がややぎこちないせいか、このスピード感のせいかよく分かりませんが、音楽がやや乱れるところはあるのですが、N響メンバーの素晴らしいテクニックで、結局最後は一丸となってフィナーレに突入、素晴らしい最後となりました。Braavoの嵐でしたが理解はできます。N響木管陣の実力が光りました。

 さて、ブロムシュテットの今年のプログラムはこれでおしまい。しかしながら来年10月もまた来日して指揮台に立つ(もう実際は座っての指揮ですが)予定で、プログラムも発表になっています。マエストロが元気でいてくれることを祈りましょう。

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2024年11月9日 第2022回定期演奏会

指揮:山田 和樹

曲目: ルーセル バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」作品43 第1番組曲
バルトーク ピアノ協奏曲第3番
ピアノ独奏:フランチェスコ・ピエモンテージ
ラヴェル 優雅で感傷的なワルツ
ドビュッシー 管弦楽のための「映像」-「イベリア」

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:郷古、2ndヴァイオリン:森田、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:𠮷田、フルート:甲斐、オーボエ:𠮷村、クラリネット:伊藤、ファゴット:宇賀神、ホルン:客演(新日本フィルの日高剛さん)、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、テューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川、チェレスタ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)

弦の構成:16型

会場:NHKホール 

感想

 すみませんが、この回の感想をその次の会の感想を書くときに誤って消してしまいました。演奏が終わって2週間経っており、細かいところの記憶があいまいになっています。

 そんな中なので記憶にあることを簡単に書きますと、

 @ 山田和樹は、オーケストラにしっかり目配りして身体全体でリズムをとってオーケストラに指示を与えていました。そのため、全体的にリズムのしまった、オーケストラもしっかり合ってぶれない音楽になっていました。

 A バルトークのピアノを弾いたピエモンテージはタブレットを持ち込んでのピアノ独奏。前半は今ひとつ乗り切れていない感じもあり、山田が何度もピアニストを見て指示を与えていましたが、後半は素晴らしい演奏に仕上がりました。

 以上です。全体としては素敵な演奏会だったという印象です。

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2024年11月15日 第2023回定期演奏会

指揮:アンドレス・オロスコ・エストラーダ

曲目: ワーグナー 歌劇「タンホイザー」序曲
ヴァインベルク トランペット協奏曲変ロ長調作品94
トランペット独奏:ラインホルト・フリードリヒ
ショスタコーヴィチ 交響曲第5番ニ短調作品47

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:客演(前読売日響コンマスの長原幸太さん)2ndヴァイオリン:森田、ヴィオラ:村上、チェロ:藤森、ベース:客演(元読売日響首席奏者の星秀樹さん)、フルート:神田、オーボエ:𠮷村、クラリネット:伊藤、ファゴット:水谷、ホルン:客演(新日本フィルの日高剛さん)、トランペット:菊本、トロンボーン:古賀、テューバ:池田、ティンパニ:植松、ハープ:早川、ピアノ/チェレスタ:客演(フリー奏者の居福健太郎さん)

弦の構成:16型

会場:NHKホール 

感想

 先週に引き続き、若手指揮者による定期演奏会。

 今回の指揮者はコロンビア出身でヨーロッパで活躍中の若手指揮者エストラーダ。まだ40代後半ですが、ウィーンフィルの日本公演に帯同するなど、ヨーロッパでの信頼感は高い方のようです。私が聴くのは初めて。今回聴いて体的に思ったのはリズムが特徴的でラテンの血が感じられるということでした。

 最初の「タンホイザー」序曲。ドイツドイツしたこれぞ「ワーグナー」というよりはちょっと軽快な印象。と言って、軽すぎる感はなく、そのあたりのバランスがエストラーダの特徴なのかもしれません。N響の高いヴィルトゥオジティがあるからなのでしょうけれどもすっきりしていてあまり濃厚感はなく、私個人としてはこれぐらいがいいかなという印象です。

 2曲目のヴァインベルグのトランペット協奏曲。ヴァインベルグは20世紀後半にソビエトで活躍したポーランド出身のユダヤ系作曲家(1919-1996)だそうで、非常に多作だったそうですけど(Wikipediaによれば、「7曲の歌劇、、22曲の交響曲(番号付き交響曲19曲+第19番の後に書かれた番号のない交響曲「カディッシュ」など3曲)、他の管弦楽曲(室内交響曲4曲とシンフォニエッタ2曲を含む)、17の弦楽四重奏曲、8つのヴァイオリンソナタ(3つはソロ、5つはピアノを含む)、チェロの為の24の前奏曲、6つのチェロソナタ(4つはソロ、2つはピアノを含む)、6つのピアノソナタ、他の器楽曲、そして多くの映画音楽がある。」)私は全く知らず、今回のトランペット協奏曲を聴いたのが初めての経験です。

 作曲されたのは1967年。20世紀後半の中盤も過ぎるころで、現代音楽的特性が含まれていて全然おかしくないのですが、聴いた感じは、20世紀前半のモダニズム音楽です。ショスタコーヴィチと親交の深い作曲家だそうですが、この作品を聴いて感じたのはプロコフィエフの影響です。技巧的でリズムの立った第一楽章にそれを感じ、沈鬱的な第二楽章、そして過去の音楽からの引用やデフォルメが多い第三楽章と聴き進めると、プロコフィエフからショスタコーヴィッチの変遷のようなものが感じられて面白かったです。

 ソリストのフリードロヒは恰幅のいい、いかにもトランペット吹きという印象で、超絶技巧を披露しました。Bravoだと思います。

 最後のショスタコーヴィチの5番。盛り上がる曲ですが予想通り盛り上がって終わりました。全体の印象はリズムが立っている、です。エストラーダの指揮を見ていると、同じ三拍子でも単に1-2-3と振っているのではなく、1-2と3と振っている場所もあれば、1と2-3という感じで振っているところもあり変幻自在です。かなりのアップテンポで進めるところは進めますが、思いっきりブレーキを踏んでリタルダンドをかけたりもして、オーケストラを自在にドライブしていました。彼の得意曲で思い入れもあるのでしょうが、エッジの立った切れ味のいい演奏になっており、「これはフィナーレに向けてどんどん盛り上がるだろうな」と思って聴いていたら、しっかり盛り上がって終わり大拍手でした。それにしても指揮者の息遣いに見事に合わせながらクリアに響かせるN響の力は見事です。特に木管の首席陣、コントラファゴットの低音(今回の奏者、菅原恵子さんは、これでN響をご卒業だそうです)、ホルン陣の奮闘などが良かったと思います。

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2024年11月30日 第2025回定期演奏会

指揮:ファビオ・ルイージ

曲目: ワーグナー 楽劇「トリスタンとイゾルデ」〜前奏曲と愛の死
R・シュトラウス 歌曲「バラの花輪」作品36-1  
歌曲「懐かしい面影」作品48-1
歌曲「森の喜び」作品49-1
歌曲「心安らかに」作品39-4
歌曲「明日の朝」作品27-4
ソプラノ独唱:クリスティアーネ・カルク
シェーンベルク 交響詩「ペレアスとメリザンド」作品5

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:郷古、2ndヴァイオリン:大宮、ヴィオラ:佐々木、チェロ:辻本、ベース:客演
(シュトゥットガルト放送響の幣 隆太朗さん))、フルート:神田、オーボエ:𠮷村、クラリネット:松本、ファゴット:宇賀神、ホルン:今井、トランペット:長谷川、トロンボーン:古賀、テューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川)

弦の構成:16型(歌曲は14型)

会場:NHKホール 

感想

 首席指揮者、ファビオ・ルイージによるドイツ後期ロマン派のほぼ終焉を飾るプログラム。

 最初が「トリスタンとイゾルデ」の「前奏曲と愛の死」。オーケストラピースとしてよく演奏される曲ですが、楽劇としては半音階的進行と解決しない和音がどこまでも続く、後期ロマン派を代表する名曲とされています。そして、「トリイゾ」が書かれたことによって、現代音楽の多様性も生まれたとも言われ、音楽史上に燦然と輝く重要作です。

 そのさわりの部分をルイージ/N響はねちっこすぎず、と言ってあっさりともせず、官能的な味わいも一定程度残しつつ、すっきりとまとめたように思いました。なお、「愛の死」には、ソプラノソロは入りませんでしたが、せっかくカルクを呼んであったのですから、カルク歌ってもらえばいいのに、とは思いました。

 今回の最初と最後の曲は、ある意味狂気の曲ですが、リヒャルト・シュトラウスは常識人の音楽です。シュトラウスは数多くのリートを残しているのですが、「四つの最期の歌」を別にするともともとはピアノ伴奏で書かれ、オーケストレーションされたのは、最初に曲が書かれてからある程度時間が経ってからのようです。多くはシュトラウス夫人のパウリーネが歌うことを前提に書かれていたそうで、シュトラウスの家庭人らしい側面を垣間見せます。歌われている歌詞の内容もそのような味わいのものが多いそうで、今回取り上げられた5曲とも青春の歌であったり、夫婦の情愛の歌であったりします。

 カルクはそのような優しい曲を繊細に歌っていきます。会場がNHKホールですから、もちろん小声で歌っているのではないですが、声を無理に張り上げることはなく、いかにも「詩」を読むように、と言って音楽的流れに掉さすことない歌にまとめていました。弱音がきれいに響くところがカルクの丁寧な表現を象徴しているように思いました。5曲とも素敵でしたが、最後の「明日の朝」が特によかったように思いました。

 最後がまた狂気の音楽です。シェーンベルグといえばいわずと知れた12音音楽の創始者なわけですが、交響詩「ペレアスとメリザンド」はその前の超ロマン派の時代の作品。もうほとんど調性はなく、解決しない和音がひたすら波のように襲い掛かってきます。もちろんフォルテで演奏されるところもあるのですが、管楽器の咆哮も基本は弱音器付きで演奏され、全体的に繊細な音調が細かい動きをもって演奏されます。

 ルイージはそんな曲をすっきりと見せようと指揮したと思います。そのおかげでいろいろな楽器の細かい旋律が交代しながら耳に入ってきて、それが波のように感じられ、そして組み合わされている和音が解決しないものですから、自分が波の中で揺らいでいるように感じました。美しいけど、いつでも沈没してもおかしくないような不安。そんな気持ちになりながら、いつの間にか音楽が終わっていた印象です。

 この作品の味わいを見せるのにちょうどいい演奏ではなかったかと思いました。 

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2024年12月13日 第2027回定期演奏会

指揮:ファビオ・ルイージ

曲目: リスト 交響詩「タッソー」
リスト ファウスト交響曲
テノール独唱:クリストファー・ヴェントリス
男声合唱:東京オペラシンガーズ(合唱指揮:西口 彰浩)

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:川崎、2ndヴァイオリン:大宮、ヴィオラ:村上、チェロ:藤森、ベース:客演(仙台フィルの助川龍さん)、フルート:甲斐、オーボエ:客演(新日本フィルの岡北斗さん)、クラリネット:伊藤、ファゴット:水谷、ホルン:客演(東京フィルの高橋臣宜さん)、トランペット:菊川、トロンボーン:新田、テューバ:客演(フリー奏者の田村優弥さん)、ティンパニ:植松、ハープ:客演(フリー奏者の片岡詩乃さん)、オルガン(東京芸術劇場オルガニストの新山恵理さん)

弦の構成:16型

会場:NHKホール 

感想

 リストの管弦楽曲は、タイトルは有名ですけど実際演奏される機会はあまり多くはありません。私も「前奏曲」と「メフィストワルツ」しか実演で聴いたことがありませんし、録音でもピアノ曲ならほぼ全部聴いたことがあるのに、管弦楽曲を聴いた経験はあまりありません。このゲーテの原作による二曲もタイトルは知っていましたが、聴いたのは初めてです。

 「タッソー」に関しては標題音楽ですが、そもそもゲーテの原作を知らず、タッソーの悲劇と勝利と言われてもなかなかピンとこないというのが正直なところ。一方、ルイージは深い洞察をもってこの曲を演奏しているようで、バス・クラリネットの独特の響きによる主題が心にさし、N響のアンサンブルもいつもながら締まっていてなかなか聴き応えがあったと思います。

 二曲目の「ファウスト交響曲」。こちらはまさに標題音楽。第一楽章が「ファウスト」、第二楽章が「グレートヒェン」第三楽章が「メフィストフェレス」と副題がついている通り、三人の人物描写がなるほどな、という感じであらわされ、面白いのですが、今一つ物足りない感じもあります。これは作品をそう思うのですが、実際の「ファウスト」のストーリーほど音楽的に劇的な感じがしない。いくつも主題が出てきますが、あまり展開しないで次のエピソードに移っていくので、標題をなぞっている感じが強く、深みに入っていく感じがしない。オペラにしたら面白かったかもしれないなとか、グノーは個々からひらめいたものがあるのだろうな、と思いながら聴いていました。

 N響の演奏自体はいつもながら明快で立派なものなのですが、作品の味わいがもっと濃ければもっと楽しめたのかもありません。

 なお、最後にテノール独唱と男声合唱が入るのですが、メンバーが入場するのは第三楽章が終わる直前。オーケストラが普通に演奏する中を合唱メンバー40人が入場してきます。全員が並び終わって一呼吸置くと直ぐにテノールソロを伴った合唱を開始。その合唱はユニゾンのところが多く、最後に分かれるのですが、東京オペラシンガーズだけあって、その響きはさすがのものではありました。 

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