NHK交響楽団定期演奏会を聴いての拙い感想-2019年(後半)

目次

2019年09月15日 第1918回定期演奏会 パーヴォ・ヤルヴィ指揮
2019年09月20日 第1919回定期演奏会 パーヴォ・ヤルヴィ指揮
2019年10月05日 第1921回定期演奏会 井上道義指揮
2019年10月19日 第1922回定期演奏会 トゥガン・ソヒエフ指揮

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2019年09月15日 第1918回定期演奏会
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

曲目: バツェヴィチ 弦楽オーケストラのための協奏曲(1948)
  ヴェニャフスキ   ヴァイオリン協奏曲第2番 ニ短調
      ヴァイオリン独奏:ジョショア・ベル
  ルトスワフスキ   小組曲(1950/1951)
  ルトスワフスキ 管弦楽のための協奏曲(1954)

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:大宮、ヴィオラ:川本、チェロ:藤森、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:松本、ファゴット:水谷、ホルン:福川、トランペット:長谷川、トロンボーン:古賀、チューバ:客演(フリー奏者の田村優哉さん)、ティンパニ:植松、ハープ:早川、ピアノ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)、チェレスタ:客演(フリー奏者の矢田信子さん)

弦の構成:14型、「管弦楽のための協奏曲」のみ16型

:16型

感想

 今年はポーランドと日本との国交樹立100周年ということで、2019-2020シーズンの最初はオール・ポーランド・プログラムで組んできました。ポーランド出身の作曲家としてまず第一に指を折るべきは、申し上げるまでもなく、フレデリック・ショパンですが、パーヴォ・ヤルヴィがそんなストレートな選曲で来るわけなく、ひとひねりしたプログラムで臨んできました。

 4曲演奏されましたが、この中で一番有名なのはルトスワフスキの「管弦楽のための協奏曲」。 N響でも10年に1回ぐらいは演奏されますが、私はこれまでタイミングが悪く、一度も聴いたことがありません。遂に聴けて幸せです。他の三曲はもっとマイナー。私の知る限り、ヴェニャフスキが定期演奏会で取り上げられるのはほぼ30年ぶりですし、残りの二曲はN響初演かもしれません。

 バツェヴィチはポーランド出身の女流作曲家として最も有名な方なのだそうで、自身がヴィオリニストだったこともあって、弦楽曲を中心に作曲をされた方であるそうです。彼女の代表作が「弦楽オーケストラのための協奏曲」。私は初耳です。調性の割とはっきりした新古典主義的な作品で、和音がきれいで聴きやすいと思いました。ものの本によれば、第二楽章は分奏が多くて複雑で結構大変らしいのですが、N響の弦楽奏者はレベルが高いのでしょうね。そういった細かい処の処理も見事で、大変さを感じさせない演奏でよかったです。

 ヴィエニャフスキのヴァイオリン協奏曲。パガニーニに始まるヴァイオリニストが自分のヴィルトゥオジティを誇示するために作曲したと言われる作品の一つです。かつてはよく演奏されましたが、ヴァイオリンの技巧を見せるだけで内容がない、とか言われて、最近は全然聞かない作品です。私が聴くのも1988年以来です。確かにソロヴァイオリンの技巧は大変なものです。美しいメロディラインと相まってうっとりするほど。それをジョショア・ベルが見事な技巧で弾きこなします。この手の曲はヴァイオリンの技巧的美しさを強調するあまり、オーケストラが単なる伴奏に貶められている場合も少なくないのですが、この曲はオーケストラとの対立もあってそこが見事です。ヴァイオリンの細かなフレーズに対抗するフルートの細かで技巧的なパッセージ。それを首席奏者の神田さんが見事に吹き上げ、ソロ・ヴァイオリンとの掛け合いが素敵でした。Braviと申し上げます。

 ルトスワフスキの小組曲。機会音楽だけあって、かなりユニークな作品。パーヴォとN響は曲の持つ諧謔的なところを特に強調するわけではないが、結局のところ、そのような特徴を見せてくれるところ。パーヴォもN響も実力が違うな、と感心しました。

 最後の「管弦楽のための協奏曲」。パーヴォはこの曲によく似合います。大編成が必要で、複雑な構成を持つ曲に特に適性を見せるパーヴォですが、この曲も非常に見事な演奏。曲をだんだん盛り上げていくアプローチは、N響メンバーのヴィルトゥオジティと相まってまさに聴きがいがありました。N響メンバーも流石の実力で、全体が一丸となって進む中、各ソロパートがしっかり浮かび上がって演奏するさまはさすがだと思いました。実力者集団の面目躍如と申し上げるべきでしょう。

 新シーズンの幕開けにふさわしい、気持ちの良い演奏でした。

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2019年09月20日 第1919回定期演奏会
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

曲目: リヒャルト・シュトラウス 歌劇「カプリッチョ」から「最後の場面」
      ソプラノ独唱:ヴァレンティーナ・ファルカシュ
  マーラー   交響曲第5番嬰ハ短調

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:客演(チューリヒ・トーンハレ管弦楽団第一コンサートマスターのアンドレアス・ヤンケさん)、2ndヴァイオリン:大宮、ヴィオラ:川本、チェロ:桑田、ベース:市川、フルート:甲斐、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、ファゴット:宇賀神、ホルン:福川、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:植松、ハープ:早川、ピアノ:客演

弦の構成:カプリッチョ;14型、交響曲;16型

感想

 現実に作曲されたのは20世紀に入ってからですが、一般には世紀末の音楽とみなされるマーラーの交響曲5番とドイツ・ロマン派の最後の大作曲家の最晩年の歌劇の最後の場面という、ドイツロマン派の最後を意識したプログラム。パーヴォ・ヤルヴィの一番得意なところで、演奏もパーヴォの面目躍如、というべきものでした。

 本日は、開演時間が15分ほど遅れました。理由の説明はありませんでしたが、おそらく歌手のトラブルでしょうね。最初の「カプリッチョ」の最初の場面、さほど良いとは思いませんでした。ファルカシュという歌手、私は初めて聴く方で本来の声を知らないのですが、プロフィールに載っているキャリアを見る限り、典型的なソプラノ・リリコ・レジェーロの役柄をレパートリーにしており、マドレーヌというドイツ系ソプラノの主要役を歌うには持ち声が軽すぎるのではないかという印象です。

 今回は場面転換の「月光の音楽」から演奏されたのですが、その演奏は比較的そっと演奏されたという感じで、そこにマドレーヌのモノローグが入れ替わるように入って、最初は悪くないな、と思ったのですが、その後は全然盛り上がらない。凄く声が遠くて、声が散っている印象です。NHKホールは空間が広すぎて、この手の声質の歌手には辛い会場であるのは事実ですが、マドレーヌを歌うのであれば、どっしりと落ち着いて声を飛ばしてほしいと思いました。いろいろ表情を変えながら歌っているようなのですが、声が遠いのでそういったニュアンスの違いなどが明瞭に聴こえてこない。本来はもっと歌える人なのかもしれませんが、調子が悪かったのでしょう。ヤルヴィとN響のコンビは歌手の調子に合わせたのか抑制的に演奏していましたが、やはり盛り上がるところではフォルテにしないわけにもいかず、そうなると声が埋もれてしまい、イマイチの演奏でした。

 後半はまさにパーヴォ・ヤルヴィの個性炸裂の演奏というべきでしょう。パーヴォの特徴ともいえるあざといほどのテンポの揺らし方とデュナーミク。第一楽章冒頭のトランペット・ファンファーレ。菊本さんの美しくも悲し気な響きから曲がスタートしたのですが、ヤルヴィはファンファーレのテンポよりも一段とゆっくり曲を動かしていきます。楽譜の指示がそうなっているからそうしているわけですが、それを聴き手に明確に感じさせるように演奏するのがパーヴォらしい。第一楽章の後半から少しずつ速くなっていき、第二楽章の激しいソナタ楽章はまさに嵐のように激烈なごつごつした音楽で、マーラーの指示をより強調して演奏している感もないわけではないのですが、こういう演奏の方が興奮します。

 スケルツォ楽章では、ホルン1番の福川さんだけが、定位置から下りてきて、ヴィオラの後ろで立ったまま演奏。ホルンソロの魅力が視覚的にも浮かび上がります。第4楽章のアダージェットは静謐な音楽ではありますが、パーヴォが振ると、いつか爆発しそうな熱の内在を感じさせます。そしてフィナーレ楽章。終始ごつごつして、激しさを維持した演奏。最後に向かって盛り上がっていきますが、その盛り上がり方が、美しく盛り上がっていくのではなくごつごつした音を保ちながら盛り上がっていく音楽。世紀末のデカダンな音楽ではなく、マーラーの一番創作意欲が高まっている時代の充実を示した演奏になりました。

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2019年10月5日 第1921回定期演奏会
指揮:井上 道義

曲目: グラス 二人のティンパニストと管弦楽のための協奏的幻想曲(2000)
      ティンパニソロ:植松 透/久保 昌一
  ショスタコーヴィチ   交響曲第11番ト短調作品103「1905年」

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:キュッヒル、2ndヴァイオリン:大宮、ヴィオラ:川本、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:𠮷村、クラリネット:松本、ファゴット:水谷、ホルン:今井、トランペット:長谷川、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:植松、ハープ:早川、ピアノ/チェレスタ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)

弦の構成:グラス;14型、交響曲;18型

感想

 井上道義はリズムの捉え方が非常に的確で分かりやすい指揮者なのだな、ということを痛感した演奏会でした。

 グラスの曲はティンパニストの超絶技巧を前提に、リズムの細かな変化を楽しむミニマリズムの音楽ですが、体感的にリズムの変化が分からないと指揮できるような曲ではありません。そこを的確にさばいていくのは、彼がダンサーでもあるということと関係があるのでしょう。二人のティンパニソロは、指揮を確認しながらというより、二人のタイミングを合わせながら、植松さんは7台、久保さんは8台のティンパニを叩き、その二人の音の響きあいの変化が何とも言えない感覚を生じさせ、その合間に入る、大太鼓、中太鼓、小太鼓、チューブラー・ベル、ウッドブロック、シンバル、タムタムといった非音階系の打楽器がリズムにアクセントをつけ、面白いことこの上ない。

 メロディーも打楽器強調のポピュラー音楽のようで、聴きやすい音楽。初めて聴く作品ですが、ミニマル音楽の楽しさをしっかりと感じさせてくれました。指揮者と二人のティンパニスト、そして、それ以外の打楽器を演奏したメンバーにBravo、Braviを申し上げましょう。

 後半のショスタコーヴィチ交響曲11番もリズム重視の作品、井上道義は打楽器のタイミングをしっかり見据えながら指示を出していきます。タクトなしで、手と全身の表情でリズムを示し、主要な打楽器にリズムの指示を出していく。それが分かりやすい。そのおかげなのでしょう。音楽に一体感が生じ、弦楽器などは通常より1プルト多い大編成なのですが、それでも聴こえてくる和音には雑味がなくぴったりはまっている。もちろんこれはN響奏者一人一人のレベルが高いことの証左ではありますが、指揮が分かりやすく、オーケストラが一体となって、邁進できるように導いているのだろうと思いました。指揮者にBravoとオーケストラのメンバーにBraviを差し上げましょう。

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2019年10月19日 第1922回定期演奏会
指揮:トゥガン・ソヒエフ

曲目: バラキレフ(リャブノーフ編) 東洋風の幻想曲「イスラメイ」
ラフマニノフ パガニーニの主題による狂詩曲 作品43
      ピアノソロ:ニコラ・アンゲリッシュ
  チャイコフスキー   交響曲第4番へ短調 作品36

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:伊藤、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:松本、ファゴット:宇賀神、ホルン:福川、トランペット:長谷川、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川

弦の構成:協奏曲;14型、その他;16型

感想

 N響は機能的に優れたオーケストラですのでどんな指揮者にも合わせてきますが、それだけにリズムをきっちり刻んで、オーケストラの縦の線をしっかり揃えようとする指揮者と相性がいいと思います。その代表例はデットワです。デュトワはフランス音楽のスペシャリストなので、フランス音楽の自由さを出すのに秀でている指揮者という印象がありますが、その根本にあるのは、正確なリズムとダイナミクスでした。

 翻って今回のソヒエフはオーケストラの縦の線を揃えるということについては、あまり重視していないのではなないのか、という印象です。結果として最近のN響にしては珍しく、和声が濁って聴こえるところもありましたし、整然とした音楽ではなかったと思います。

 バラキレフの「イスラメイ」は音色の濃度が濃い演奏。デュナーミクの幅が大きいというより、音にうねりのようなものがありその変化の濃淡がはっきり出ている演奏。輪郭はぼやけているのですが、色彩感の濃厚な演奏で、言うなれば水彩画ではなく油絵のような演奏だなと思いました。

 「パガニーニの主題による狂詩曲」も「イスラメイ」の延長にあるような演奏だったと思います。アンゲリッシュは、変奏ごとの曲想に合わせて大胆に弾き方を変えていきます。その変化が色彩感に富んだもので、濃厚な感じがあります。もちろんそこはピアノですからねっとりとしているというよりは粒立ちがしっかりしているのですが、テクニックのレベルが高いのだろうと思います。その明確な枠組みの中で色彩の変化をきっちりと示している。例の「怒りの日」の捉え方も面白いですし、独特の味がありました。

 オーケストラはそんなピアノに対して淡々とついているというよりは割と主張している感じがしました。それが結果としてラフマニノフの音楽が持つ独特の甘さとこの曲自身の持つデモーニッシュな部分がどちらも主張していて、それがぶつかっている印象です。私はその衝突が面白かったのですが、気に入っていなかった聴衆も割といらしたように思いました。

 最後のチャイコフスキーの第4番。最初はくすんだ音楽で後半に向けてどんどん盛り上げていく演奏。冒頭の金管のファンファーレからして輝かしく響かせない。柔らかいけれどもくすんだ印象になります。さらに最近のN響では珍しくホルン(だと思いますが)が失敗しました。その後も弦楽合奏もあまり美しくなく憂鬱感を前面に出したまま終了した印象です。第二楽章の緩徐楽章。チャイコフスキーのメロディーの美しさを濃厚に表現してきました。第一楽章よりは明るい印象。

 スケルツォは弦がピチカートで演奏するところがこの曲の特徴ですが、一糸乱れぬピチカートという風にはなりませんでした。数音ピチカートで鳴らすわけではなく、数分間ピチカートだけで演奏するのですから、大変であることはよく分かりますが、N響であればもうワンレベル高いところで揃えられると思います。しかし、指揮者はこの楽章でもテンポをしっかり刻んで来ないので、楽器間で微妙なずれが感じられます。そこが残念だったかもしれません。第4楽章は華やかに開始され、そのままフィナーレに突入。盛り上がって終わりました。指揮者の作品の考え方がよく分かる演奏だったと思います。その意味ではいい演奏だったのですが、「好きか」と問われれば、私の好みとは異なる演奏でした。

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