NHK交響楽団定期演奏会を聴いての拙い感想-2017年(後半)

目次

2017年09月16日 第1864回定期演奏会 パーヴォ・ヤルヴィ指揮
2017年09月23日 第1865回定期演奏会 パーヴォ・ヤルヴィ指揮
2017年10月14日 第1867回定期演奏会 下野竜也指揮
2017年10月20日 第1868回定期演奏会 クリストフ・エッシェンバッハ指揮
2017年11月11日 第1870回定期演奏会 マレク・ヤノフスキ指揮
2017年11月18日 第1871回定期演奏会 トゥガン・ソヒエフ指揮
2017年12月2日 第1873回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮
2017年12月8日 第1874回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮

2017年ベスト3
2017年後半のページに行く
2017年前半のページに行く

2016年ベスト3
2016年後半のページに行く
2016年前半のページに行く

2015年ベスト3
2015年後半のページに行く
2015年前半のページに行く

2014年ベスト3
2014年後半のページに行く
2014年前半のページに行く

2013年ベスト3
2013年後半のページに行く
2013年前半のページに行く

2012年ベスト3
2012年後半のページに行く
2012年前半のページに行く

2011年ベスト3
2011年後半のページに行く
2011年前半のページに行く

2010年ベスト3
2010年後半のページへ行く  
2010年前半のページに行く   

2009年ベスト3
2009年後半のページに行く
2009年前半のページに行く

2008年ベスト3
2008年後半のページに行く
2008年前半のページへ行く

2007年ベスト3
2007年後半のページへ行く
2007年前半のページへ行く

2006年ベスト3
2006年後半のページへ行く
2006年前半のページに行く

2005年ベスト3
2005年後半のページに行く
2005年前半のページに行く

2004年ベスト3
2004年後半のページに行く
2004年前半のページに行く

2003年ベスト3
2003年後半のページに行く
2003年前半のページに行く

2002年ベスト3
2002年後半のページに行く
2002年前半のページに行く

2001年ベスト3
2001年後半のページに行く
2001年前半のページに行く

2000年のページに行く


2017年09月16日 第1864回定期演奏会
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

曲目: ショスタコーヴィチ 交響曲第7番 ハ長調 作品60「レニングラード」

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:客演(ミュンヘン・フィル・コンサートマスターのロレンツ・ナストゥリカ・ヘルシュコヴィチさん)、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:川本、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:松本、ファゴット:水谷、ホルン:今井、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:植松、ハープ:早川、ピアノ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)

弦の構成:18型

感想

 2017/2018年シーズンの幕開けとなったのは、首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィによるショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」でした。パーヴォはショスタコーヴィチを得意とする指揮者で、例えば、この二月のヨーロッパ演奏旅行ではショスタコの10番をメインでもっていっていますし、5番も二度定期で取り上げています。今回取り上げられた7番は、ショスタコの交響曲の中では有名な作品ですが、N響では滅多に取り上げられず、私のN響定期会員歴30年をもって聴くのは二度目の経験です。それだけに楽しみに伺いました。

 前回聞いたのは2012年9月で指揮者レナード・スラトキンでしたが、その時の演奏よりも更に整った演奏のように聴きました。精密な演奏と申し上げてもよいのかもしれません。N響の個別奏者のヴィルトゥオジティの高さが光るというべきなのでしょう。オーボエ・青山、フルート・神田、ファゴット・水谷、クラリネット・松本の四人の首席奏者の演奏が素晴らしかったことは申し上げるまでもないのですが、菅原さんのピッコロ、和久井さんのイングリッシュホルン、山根さんのバスクラリネットも素晴らしく、金管も立派でした。この曲は合計10人のバンダ金管奏者が必要ですが、バンダの方はちょっと変な音もあったのですが、N響の本来の奏者の方はそんなこともなく力の差を感じさせられました。

 そのほか、5年前も素晴らしい小太鼓を利かせた竹島さんが今回も立派な小太鼓。弦楽器陣は通常の16型からワンプルト増やして18型に増員しての演奏でしたが、一糸乱れぬ感は通常と変わらず、しかしながらダイナミクスは一層鮮やかであり、増員の効果が出ていたと思います。

 表現的なことを申し上げれば、第二楽章のスケルツォと第三楽章の緩徐楽章が割と抑制的であり、その分精妙な美しさが光ったのかな、と思います。とにかく、パーヴォの大オーケストラをドライブする能力とショスタコーヴィチの音楽に対する深い解釈、そしてN響の能力の高さが高いところで融合した、シーズン開幕にふさわしい素晴らしい演奏だったと思います。

本ページトップに戻る


2017年09月23日 第1865回定期演奏会
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

曲目: グリンカ 幻想的ワルツ
  ラフマニノフ ピアノ協奏曲第4番 ト短調 作品40(1941年版)
      ピアノ独奏:デニス・コジュヒン
  スクリャービン 交響曲第2番 ハ短調 作品29

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:客演(都響の双紙正哉さん)、ヴィオラ:佐々木、チェロ:桑田、ベース:市川、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、ファゴット:宇賀神、ホルン:福川、トランペット:長谷川、トロンボーン:古賀、チューバ:池田、ティンパニ:植松

弦の構成:協奏曲;14型、その他;16型

感想

 指揮者の好みが反映された非常に渋い選曲と申し上げられると思います。私はこの三曲はどの曲も初聴だと思いますし、少なくともこの30年間N響の定期演奏会で取り上げられたことはありません。したがって、演奏の良し悪しを論評することはできないのですが、聴いていて申し上げられるのは、どの曲もすっきりしていないけど、決して聴きにくくないなあ、ということです。別な言い方をすれば、そこそこ聴きやすいぞ、ということです。

 グリンカの作品。ロシア的なロマンチシズムをとても感じさせられる曲。チャイコフスキーのバレエ音楽のワルツなどとどこか通じるものがあって面白く聴きました。

 ラフマニノフのピアノ協奏曲第4番は、1941年の最終改訂版を用いて演奏されました。ラフマニノフ的には完成した版とみなしていたわけですが、聴いていると結構ちぐはぐな感じに聴こえるところも少なくなく、そういうところが滅多に演奏されない原因になっていると思いました。なお、コジュヒンのピアノは粒立ちの良いピアノで、しっかりしていて艶やかな感じがよかったと思います。また低音に迫力があるのですが、だからと言って重くなることはなく、低音の鋭さが印象的でした。

 最後のスクリャービン。面白かったです。凄い保守的な交響曲で、ソナタ形式への偏愛が著しく、ハ短調からハ長調へ向かう調性の変化などもベートーヴェン的と申し上げてもよく、過激なスクリャービンだけを聴いてきた聴き手には、本当にこれがスクリャービン、と思うほどでした。一方、第三楽章ではフルートを小鳥の声のように鳴らす手法など20世紀的な手法も使われており、面白いと思いました。演奏技術については、木管、金管奏者を全員立たせて拍手を受けさせましたので、かなり立派なものだったと申し上げられそうです。

本ページトップに戻る


2017年10月14日 第1867回定期演奏会
指揮:下野 竜也

曲目: モーツァルト 歌劇「イドメネオ」序曲
  ベルク ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出のために」
      ヴァイオリン独奏:クララ・ジュミ・カン
  モーツァルト 歌劇「皇帝ティトゥスの慈悲」序曲
  ベルグ   ルル「組曲」
      ソプラノ独唱:モイツァ・エルトマン

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:伊藤、2ndヴァイオリン:客演(都響の双紙正哉さん)、ヴィオラ:中村(翔)、チェロ:客演(東京交響楽団の伊藤文嗣さん)、ベース:市川、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、ファゴット:宇賀神、サクソフォーン:客演(フリー奏者の大城正司さん)、ホルン:今井、トランペット:菊本、トロンボーン:古賀、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川、ピアノ:客演(
フリー奏者の梅田朋子さん)

弦の構成:モーツァルト;12-12-8-6-4、ベルグ;14型

感想

 下野竜也らしい凝ったプログラムです。モーツァルトとベルクをこのように組み合わせるのはかなり珍しいような気がします。「イドメネオ」はモーツァルトのオペラ・セリアとしては最も上演機会が多いもので、私も何度も聴いておりますが、「序曲」だけ切り出して聴いたのは初めての経験ですし、「皇帝ティトゥス」はもっと珍しい。ベルクのヴァイオリン協奏曲は20世紀のヴァイオリン協奏曲として屈指の名曲ですから演奏される機会も多いですが、「ルル」組曲はあまり演奏されません。面白いと言えば頗る面白いプログラムです。

 演奏はモーツァルトの二曲は特に申し上げることはありません。指揮者の棒も非常に流麗でしたし、N響の演奏も丁寧で快速であり、モーツァルト的美を示すのに十分だったように思います。

 ヴァイオリン協奏曲ですが、繊細な演奏だったと思います。しかしながら、その繊細さにメリハリが感じられないので、美しいけど詰まらない演奏になっていたような気がします。この曲を前回聴いたのは、2014年12月のN響定期で、ソリストはアラベラ・美歩・シュタインバッハーでしたが、今回のカンと比較したとき、第一部と第二部との描き訳がしっかりしていたように思います。カンはその違いを明確に出さない方針だったのか、音楽の色が変わる印象があまりなく、個人的には物足りなかったです。N響の伴奏ももちろん悪いということはないのですが、あまり踏み込んだ演奏にはなっていなかった印象です。

 「ルル」組曲。良かったと思います。この曲が内包する20世紀初頭の猥雑さのようなものが感じ取れる演奏でそこが気に入りました。エルトマンの歌唱は知的な印象で悪くはなかったのですが、NHKホールで大オーケストラを背景に歌うのであれば、もう少し声のある人の方がよいように思いました。N響メンバーのヴィルトゥオジティはさすがで、下野は管楽器奏者全員を立たせていましたが、皆恥ずかし気に立ったところから、楽団員は演奏内容に気になるところがあったのかな、と思いました。


2017年10月20日 第1868回定期演奏会
指揮:クリストフ・エッシェンバッハ

曲目: ブラームス 交響曲第3番 ヘ長調 作品90
  ブラームス 交響曲第2番 ニ長調 作品73

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:佐々木、チェロ:桑田、ベース:吉田、フルート:甲斐、オーボエ:客演(マーラー・チャンバー・オーケストラの吉井瑞穂さん)、クラリネット:松本、ファゴット:水谷、ホルン:福川、トランペット:長谷川、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:植松、

弦の構成:16型

感想

 推進力のある生き生きとした演奏だったと思います。ただし、技術的には雑なところも目立ち、私としてはいまいちの演奏会でした。

 ブラームスの3番。第一楽章、第四楽章のアレグロと、第二楽章のアンダンテ、第三楽章アレグレットの対比をより明確にした演奏だったと思います。それは悪いことではないのですが、ちょっとやりすぎ感がある。このやりすぎ感は、他のところでも感じて、例えばフォルテの強さ。エッシェンバッハは本気で強い音を要求しているみたいで、例えば第一楽章では金管の咆哮がかなり目立つ。もちろんそういうやり方もあるのでしょうが、ブラームスは弦楽が基本という印象があるので、バランス的には私はどうかと思いました。エッシェンバッハは割と極端を要求しているのではないかという気がします。その結果としてホルンの音がひっくり返ったり、といった最近のN響ではあまり見かけない事故も起きましたし、楽器同士のアンサンブルの緻密さもいつもほどではないな、という風に思いました。

 第二番もエッシェンバッハのアプローチは同じです。デフォルメと言ってよいほど極端な演奏をさせたように思います。ただ、彼の指揮はあまり分かりやすい指揮ではないようで、結果としてアンサンブルの乱れが目立ちました。もちろんN響は機能的な集団ですからすぐに修正するのですが、音の揃い方などはいつもほどではないと思いますし、結果として全体としての音の美しさもあまり感じられませんでした。第四楽章の火を噴くようなフィナーレは凄い盛り上がりではありましたが、もっとわかりやすい指揮をする方であれば、この火の噴くようなフィナーレをもっと整然と演奏させられたのではないかという気がします。


本ページトップに戻る

2017年11月11日 第1870回定期演奏会
指揮:マレク・ヤノフスキ

曲目: ヒンデミット ウェーバーの主題による交響的変容
ヒンデミット 木管楽器とハープと管弦楽のための協奏曲
      フルート:甲斐 雅之、オーボエ:茂木 大輔、
クラリネット:松本 健司、ファゴット:宇賀神 広宣、ハープ:早川 りさこ
ベートーヴェン 交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」
 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:伊藤、2ndヴァイオリン:白井、ヴィオラ:中村(翔)、チェロ:桑田、ベース:西山、フルート:甲斐、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、ファゴット:宇賀神、ホルン:福川、トランペット:菊本、トロンボーン:古賀、チューバ:客演(台湾国家交響楽団の宮西純さん)、ティンパニ:植松、

弦の構成:協奏曲;12型、その他;16型

感想

 マレク・ヤノフスキは1980年代から90年代にかけてよくN響に客演していたのですが、そのころはあまり印象深い指揮者ではなかったと思います。しかし、いつの間にかどんどん評価を上げ、ドイツ音楽指揮者として有数の方になった、という印象です。今回はそのドイツ物から、プレロマンのベートーヴェンとポストロマンのヒンデミットを組み合わせるというプログラム。指揮者の好みの強い演奏会になりました。

 しかしヤノフスキの指揮、ヒンデミットもベートーヴェンも同じ方向で処理しているなあ、という印象です。時代の違いを積極的に対比しようとはせずに、どちらもヤノフスキ風に味付けして同じようにまとめ上げたと申し上げればよいのかもしれません。。

 「ウェーバーの主題による交響的変容」は、ヒンデミットのナチスからの迫害時代に構想されたようで、そういった時代の苦労が音楽に入っているかと言えば、あまりそういう感じがしません。ウェーバーの曲風をまさに現代音楽の技術で調理した作品で、精神的というよりは技巧的な作品と申し上げてよいように思います。ヤノフスキの指揮はその技巧性を際立たせようとしたものだったように思います。その成否はよく分かりませんが、聴き手によっては耳心地の良い演奏だったと申し上げられると思います。

 「木管楽器とハープと管弦楽のための協奏曲」は、ヤノフスキも初めて指揮する曲でしたし、日本でもほとんど演奏された機会のなかった曲のようです。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの技量が揃っていないとダメなはずなので、N響だからこそ取り上げられた、と申し上げるべきでしょう。五人の重奏はやはりうまいです。半拍ずらしてからのカノンの切れ味とかさすがだと思いました。

 「英雄」交響曲ですが、指揮者は細かい処にいろいろ指示を出しているようですが、最終的な印象は「割とすっきりしているな」という処でしょう。第一楽章のアレグロは生気あふれる演奏でその疾走感がいいです。第二楽章は一転して指揮者のけれんを感じさせる演奏。このように細かく聴いていくとこだわりの部分はあるのですが、全体としては疾走感のある演奏で、まとまりもすっきりしていました。


本ページトップに戻る

2017年11月18日 第1871回定期演奏会
指揮:トゥガン・ソヒエフ

曲目: プロコフィエフ(スタセヴィッチ編) オラトリオ「イワン雷帝」作品116
      メゾソプラノ:スヴェトラーナ・シローヴァ
バリトン:アンドレイ・キマチ
合唱:東京混声合唱団
児童合唱:東京少年少女合唱隊
語り:片岡 愛之助
 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:客演(都響の鷹栖美恵子さん)、クラリネット:客演(群響の野田祐介さん)、ファゴット:水谷、サクソフォーン:客演(フリー奏者の大城正司さん)、ホルン:今井、トランペット:長谷川、トロンボーン:古賀、チューバ:池田、ティンパニ:植松、
ハープ:早川、ピアノ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)

弦の構成:16型

感想

 エイゼンシュタイン監督の映画「イワン雷帝」は、エイゼンシュタイン第二の頂点ともいわれる傑作だそうですが(ちなみに第一の頂点は、「戦艦ポチョムキン」)、残念ながら見たことがありません。というより、ロシア映画に詳しくないので、そういう作品があったことも実はよく知らなかった。恥ずかしながら、その音楽にプロコフィエフが参加し映画音楽を作っていたことは、今回N響の演奏を聴くまで全く知りませんでした。

 ただ、この映画「イワン雷帝」が、ロシア・ソヴィエトの映画史を語るうえで欠かせない傑作と言われるのは、映画評論家の山田和夫によれば、「「イワン雷帝」はエイゼンシュタインの全作品系列の中でも、まさに総合芸術的、多声的、和音的構成を持つ、エイゼンシュタイン美学の集大成」だからで、その美学にとって「プロコフィエフの音楽は欠かせないもの」であるそうです。

 ちなみにこのオラトリオは、プロコフィエフの死後、アブラム・スタセヴィッチが編曲・再構成をしたもので、プロコフィエフの意思でまとめたオラトリオではないそうです。

 今回の演奏では、語りを歌舞伎俳優の片岡愛之助が受け持ち、映画のストーリーに沿った語りを行い、その物語進行に沿いながら演奏されました。曲そのものはさすがに映画音楽ということもあってか、聴きにくいものでは全くなく、N響の演奏もメリハリのついたしっかりしたものでよかったと思います。合唱も流石の東混、と申し上げるべきでしょう。大変立派な歌唱でした。また、ソリストの二人もしっとりとした落ち着きのある声で、演奏に説得性を持たせていたと思います。

 全く初めて聴く曲なので、ほんとうにこれでよいのか、ということについては何とも言い難いところがあるのですが、聴いていて気持ちの良い素敵な演奏だったと思います。


本ページトップに戻る

2017年12月2日 第1873回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ

曲目: ラヴェル 古風なメヌエット
  ラヴェル   組曲「クープランの墓」
  ラヴェル   左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調
      ピアノ独奏:ピエール・ロラン・エマール
  ラヴェル   道化師の朝の歌
  ラヴェル   スペイン狂詩曲
  ラヴェル   ボレロ

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:白井、ヴィオラ:客演(読売日響の柳瀬省太さん)、チェロ:藤森、ベース:市川、フルート:甲斐、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、ファゴット:宇賀神、サクソフォーン:客演(フリー奏者の大城正司さん)、ホルン:今井、トランペット:菊本、トロンボーン:古賀、チューバ:池田、ティンパニ:久保、
小太鼓:黒田、ハープ:早川、チェレスタ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)

弦の構成:変形16型(15-14-12-10-8) (「クープランの墓」のみ12型)

感想

 デュトワによるオールラヴェルプログラム。

 デュトワはモントリオール交響楽団とのラヴェルの録音で世界的に有名になった方で、彼のラヴェルは格別にものがあります。N響でもラヴェルは何度も繰り返して演奏されており、「スペイン狂詩曲」は今回で三度目、「左手のためのピアノ協奏曲も三度目」、「ボレロ」と「クープランの墓」が二度目、ということになりますが、何度聴いても彼のラベルは素晴らしいと思います。

 N響ではラヴェルはデュトワ以外の方も時々演奏されるわけですが、私の中ではデュトワを基準に聴いているところがあります。「デュトワはこうは演奏しないよな」、とか、「デュトワはもっとセクシーだよな」、などと考えて聴くのが常で、大抵の場合、「デュトワと比べるとダメだな」で終わってしまいます。その本家本元の演奏ですから、安定した良さがあります。N響のメンバーもデュトワの指示をよく分かっているし、それを演奏できるだけの技量もある。最高のものを安心して聴いていられることの良さをつくづく感じました。

 テクニカルなことを申し上げれば完璧というわけではなかったのですが、音楽全体の流れがしっかりして揺るぎがないので、ミスが大きな傷になっていませんでした。

 「左手のためのピアノ協奏曲」を演奏されたエマール。彼はデュトワとの信頼関係が厚いようで、トーンがオーケストラと合いながら、しっかり必要な対立は見せてくれるダイナミックな演奏でよかったと思います。「左手」は曲として重苦しい印象があったのですが、二人にかかると重厚さよりも曲の持つパワーが前面に出る感じの演奏で、曲の新たな一面を見る感じでした。

 それ以外の個別の曲について特に言及することはありません。N響管楽陣の実力をたっぷり楽しみました。「ボレロ」での小太鼓は女性の黒田英美さんが務められましたが、頑張っていらっしゃいました。


本ページトップに戻る

2017年12月8日 第18743回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ

曲目: ストラヴィンスキー 幻想的スケルツォ 作品3
  サン・サーンス   ピアノ協奏曲第5番 ヘ長調 作品103「エジプト風」
      ピアノ独奏:ジャン・イヴ・ディボーデ
  ストラヴィンスキー   バレエ音楽「火の鳥」(1910年全曲版)

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:伊藤、2ndヴァイオリン:白井、ヴィオラ:佐々木、チェロ:桑田、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、ファゴット:水谷、ホルン:今井、トランペット:長谷川、トロンボーン:古賀、チューバ:
客演(台湾国家交響楽団の宮西純さん)、ティンパニ:久保、ハープ:早川、チェレスタ:客演(フリー奏者の楠本由紀さん)、ピアノ:客演(フリー奏者の成田良子さん)

弦の構成:16型、協奏曲は14型

感想

 デュトワの一番得意な近代大管弦楽プログラム。

 サン・サーンスのピアノ協奏曲。非常に技巧的な曲で、技巧に走りすぎると鼻につく曲でもありますが、ディボーデとデュトワとの信頼関係があるのでしょう。技巧的なところの示し方と音楽的なバランスが良くてエキゾチックな雰囲気が上手く盛り上がっていました。ピアノはさすがに巧みだなと思います。技巧的な聴かせどころをしっかり聴かせるのですが、それが大仰になりすぎないのがディボーテの真骨頂なのでしょう。曲も持つ軽さもしっかり表現していました。デュトワ/N響の対応も、あかるい響きに呼応した明晰なもので、素敵だったと思います。ディボーデとデュトワとの信頼関係をすごく感じたのは、第三楽章の入りの部分。第二楽章からアタッカで続く第三楽章ですが、ここはピアノがアレグロでスタート。そこを聴きながらテンポを確認して指揮を始めるデュトワの姿が、いかにも友のテンポ作りを楽しんでいる感じでよかったです。

 「火の鳥」はたくさんの版があって、よく取り上げられるのが1919年版の組曲。N響でもこの20年間に6回演奏されていますから、良く演奏されている曲と申し上げてよいでしょう。全曲版はそれと比較するとずっと演奏機会は少なく、2002年以来の15年ぶりの演奏になります。ちなみに2002年に指揮したのもデュトワでした。もう一つ付け加えると1919年版を直近の演奏したのもデュトワで2014年のことになります。

 演奏は、デュトワとN響の長い良好な関係を感じさせる演奏でした。技術的なことを申し上げればいろいろと気になるところはあったのですが、音楽的にはデュトワのもっていき方とN響の反応がとても素敵で、N響はデュトワのやり方をよく理解して伸びやかに演奏しているし、デュトワはそれに乗ってますますいい指揮になるという感じで、お互いの良さの相乗作用で色彩感の見事な演奏になっていたのではないかと思いました。

 流石デュトワとN響、上質なものを安心して聴ける良さを味わいました。


本ページトップに戻る

NHK交響楽団のページに戻る


SEO [PR] ギフト 音楽配信 コンサート情報 わけあり商品 無料レンタルサーバー