NHK交響楽団定期演奏会を聴いての拙い感想-2017年(前半)

目次

2017年01月13日 第1853回定期演奏会 ファンホ・メナ指揮
2017年01月28日 第1855回定期演奏会 下野竜也指揮
2017年02月11日 第1856回定期演奏会 パーヴォ・ヤルヴィ指揮
2017年02月17日 第1857回定期演奏会 パーヴォ・ヤルヴィ指揮
2017年04月15日 第1858回定期演奏会 ファビオ・ルイージ指揮
2017年04月22日 第1859回定期演奏会 ファビオ・ルイージ指揮
2017年05月13日 第1860回定期演奏会 ピンカス・スタインバーグ指揮
2017年05月19日 第1861回定期演奏会 ウラディーミル・フェドセーエフ指揮
2017年06月24日 第1861回定期演奏会 パーヴォ・ヤルヴィ指揮
2017年06月30日 第1862回定期演奏会 パーヴォ・ヤルヴィ指揮

2017年ベスト3
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2016年ベスト3
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2017年1月13日 第1853回定期演奏会
指揮:ファンホ・メナ

曲目: ファリャ 歌劇「はかない人生」−間奏曲とスペイン舞曲
       
  ロドリーゴ アランフェス協奏曲
      ギター独奏:カニサレス 
       
  ドビュッシー 「映像」第3集−イベリア
       
ファリャ バレエ組曲「三角帽子」第1部、第2部

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:伊藤、2ndヴァイオリン:田中(晶)、ヴィオラ:客演(新日フィルの篠崎友美さん)、チェロ:藤森、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、ファゴット:宇賀神、ホルン:福川、トランペット:長谷川、トロンボーン:栗田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川、チェレスタ/ピアノ:客演(フリー奏者の鈴木慎崇さん)

弦の構成:協奏曲:12型、その他:16型

感想

 N響と初共演の指揮者とがお互い探りあっている感じがする演奏会でした。全体的に言えば、指揮者の指示にオーケストラが乗り切れていなかったというところです。それでも、このメナという指揮者、決して悪い音楽を作る感じではなかったので、共演を重ねていけばもっと良い関係が築けるかもしれません。

 最初の「はかない人生」の間奏曲とスペイン舞曲。指揮者について行っていないというわけではないのですが、指揮者の煽りにはほとんど乗らない演奏でした。N響としてはごく当たり前の演奏というところです。

 2曲目の「アランフェス協奏曲」。ソリストの演奏が私の趣味とは違います。カニサレスはフラメンコギターの名手だそうですが、クラシックの曲を演奏するには、ギターそのものの音がもっと美しくあってほしいと思います。響きの濁りが結構耳障りでした。さらに言えば、ギターの音をマイクで増幅しているのですが、そのマイクの音量が結構大きい感じで、かつ、カニサレスが弱音で演奏するところはあまり聞こえず、バランスが今一つのように思いました。クラシックギターは強い音は難しい楽器ですから、マイクを使用するのは仕方がないのかもしれませんが、NHKホールを使用する以上、そういう弱音しかならない楽器の協奏曲を演奏するのはいかがなものかなとも思いますし、またマイクを使用するなら、もっと自然に響くチューニングをしてほしかったと思います。

 イベリアもまた、踏み込んだ表現という点では不満が残りました。デュトワはN響ではこの曲を取り上げていないのですが、デュトワならばもっとオーケストラに切り込んで、N響にしなやかな表現をさせるような気がします。たぶんメナももっと彫りの深い演奏が可能な方だと思いますが、今回はそこまで切り込めなかったのかな、という感じがしました。

 今回の曲の中では「三角帽子」の組曲が一番熱がこもっていた、ということは言えるのかもしれません。たぶん練習も一番長かったのでしょう。指揮者の意思がN響によく伝わっていた感じがします。結果として、指揮者とオーケストラの距離が近く、一番華やかな演奏になりました。

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2017年1月28日 第1855回定期演奏会
指揮:下野 竜也

曲目: マルティヌー リディツェの追悼(1943)
       
  フサ プラハ1968年のための音楽(管弦楽版/1969)
       
  ブラームス 「ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
      ヴァイオリン独奏:クリストフ・ヴァラーティ 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:伊藤、2ndヴァイオリン:白井、ヴィオラ:佐々木、チェロ:向山、ベース:市川、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:松本、ファゴット:宇賀神、ホルン:福川、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チューバ:客演(フリー奏者の岩井英二さん)、ティンパニ:植松、ハープ:客演(フリー奏者の水野ほなみさん)、ピアノ:客演(フリー奏者の秋山友貴さん)

弦の構成:協奏曲:14型、その他:16型

感想

 マルティヌーの交響曲は聞いたことがありますが、考えてみると、それ以外のジャンルの音楽はほとんど聴いたことがありません。「リディツェの追悼」については、そんな作品があることすら知りませんでした。しかし、この曲はマルティヌーの管弦楽曲としては代表的なものらしいです。リディツェは、第二次世界大戦中ナチスの幹部の暗殺事件の首謀者たちを匿ったと濡れ衣を着せられ、村の男は全員殺害され、女子供は全て強制収容所に送られて破壊された村で、大戦中はナチスが自分たちの戦績として宣伝していたようです。ロンドンのチェコの亡命政府は、マルティヌーに子の追悼曲の作曲を委嘱しました。その意味で一種の機会音楽ではありますが、怒りと悲しみを強く感じさせられる曲で、特に終結部は美しいと思いました。演奏も作曲の意図を生かしているのではないかと、思わせるもの。よかったと思います。

 それでもマルティヌーは作曲家の名前は知っておりましたが、フサというかたは初めて聴く名前です。しかしながら、この「プラハ1968年のための音楽」は、愛知工業大学名電高校は全日本吹奏楽コンクールで2回金賞を取っているように、吹奏楽の名曲として、そちらの分野ではかなり有名のようです。

 内に秘めた怒りを感じさせる音楽でした。チェコ音楽では割と有名な「フス教徒の賛歌」を押しつぶすような管弦楽の流れと、暗いピッコロの響きが印象的です。第3楽章の小太鼓による激しいクレッシェンドのドラムロールからアタッカでつながる第4楽章は、軍靴の響きであり、絶望と失意に曲が閉じられるように思いました。下野竜也の解釈も基本的には絶望の音楽として描こうとしたのではないかと思います。吹奏楽版はどんな感じなのだろう、一度聴いてみたいと思わせるN響の演奏でした。

 後半はブラームスのヴァイオリン協奏曲でした。初耳の二曲を聴いた後のブラ・コンは耳に優しいです。N響のメンバーもほっとした様子が感じられました。

 ヴァラーディの演奏は、かっちりした楷書体の演奏だったと思います。ごつごつした感じは全然ないのですが、滑るような演奏でもなく、必要な響きはしっかり示して弾き飛ばさない感じです。ブラームスのヴァイオリン協奏曲としてとりわけ印象的ではありませんが、過不足のない感じの響きを私は素敵だなと思いました。N響の伴奏のほうが自由度が高かった感じです。第二楽章のソロ・ヴァイオリンとオーボエの掛け合いが見事でした。

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2017年02月11日 第1856回定期演奏会
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

曲目: ペルト シルエット-ギュスターヴ・エッフェルへのオマージュ(2009)[日本初演]
       
  トゥール アコーディオンと管弦楽のための「プロフェシー」(2007)[日本初演]
      アコーディオン独奏:クセニア・シドロヴァ
       
  シベリウス 交響曲第2番ニ長調作品43

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:中村、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、ファゴット:宇賀神、ホルン:客演(都響の、有馬純晴さん)、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チューバ:客演(大阪交響楽団の潮見裕章さん)、ティンパニ:久保、ヴィブラフォン:竹島

弦の構成:協奏曲:8-7-6-5-4、その他:16型

感想

 変わった曲や新しい曲を紹介する。それはオーケストラの重要な役目だと思いますし、特に、常任指揮者や首席指揮者の仕事なのだろうと思います。その意味で、今回のヤルヴィのプログラムの組み方、とても良いと思いました。もちろんペルトの曲もトゥールの曲も初めて耳にするものですが、どちらも楽しめました。

 ペルトの「シルエット」という曲。ペルトがパーヴォのために書いた曲なのだそうです。弦楽と打楽器の曲で、打楽器もシンバル類が中心で、音階がとれるのはヴィブラフォーンとチューブラー・ベルだけです。そういう組み合わせの中、音のパーツがしっかり組みあがっていくさまが見事でした。ヴィブラフォーンもただマレットで叩くだけではなく弓でこすったり、いろいろなことをして音色を変えていきます。弦楽もピチカートとアルコを組み合わせながら、少しずつずらして音を構築していく。それが雨だれのようでもありますし、風の音のようでもあります。エッフェル塔の鉄骨の間を風が抜けていくようにも聞こえて面白いです。

 トーゥルのアコーディオン協奏曲。これまた珍しい。4楽章からなる曲なのですが、調性や表情記号で規定されているわけではなく、各楽章が四分音符の速度で規定されているところが面白いです。ちなみに第一楽章は四分音符70、第二楽章が130、第三楽章が60、第四楽章が110だそうです。パーヴォは最初四つできっちり振って、テンポを楽員に示します。オーケストラの流れの中にアコーディオンが現れて、速いパッセージになったり持続音になったり絡み合います。第二楽章は速い楽章なのですが、ヴィブラフォーンとアコーディオンとの掛け合いはスケルツォ的と申し上げtもよいのかもしれません。全体的にはポップス的でもあり、それも、アコーディオンですぐ思い浮かぶタンゴや南米の音楽というよりはユーロポップス的でもありました。第4楽章ではウッドブロックが活躍するのですが、ここで使われるウッドブロックは音階の出るもの。こんな楽器があるのも初めて知りました。

 最後がシベリウスの二番の交響曲。最初の二曲が初耳の曲で緊張して聴いていたので、のんびり聴けるかと思いきや、パーヴォ君、やってくれました。とにかく音楽をデフォルメする。シベリウスの二番、これまで何度となく聴いていますがちょっとない演奏。アッチェラランドやリタルダンドをかけてテンポを揺らすのですが、、それを急に激しくやるようで、弦のトゥッティがついて行けず音が乱れます。またデュナーミクの要求も厳しいようで、フォルテの咆哮とピアノの差が大きい。正直申し上げればやりすぎでしょう。表情豊かなのは素晴らしいことですが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」。この言葉をパーヴォ君に贈りたい。

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2017年02月17日 第1857回定期演奏会
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

曲目: シベリウス ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47
      ヴァイオリン独奏:諏訪内晶子 
       
  ショスタコーヴィチ 交響曲第10番ホ短調作品93

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:甲斐、オーボエ:青山、クラリネット:松本/伊藤、ファゴット:水谷、ホルン:今井、トランペット:菊本、トロンボーン:栗田/新田、チューバ:池田、ティンパニ:植松

弦の構成:協奏曲:14型、交響曲:16型

感想

 第1ヴァイオリンの第1プルトは、篠崎・伊藤の両コンマス。チェロの1列目も藤森・向山夫妻が並ぶという組み合わせによる演奏会。最近、弦楽器セクションはエキストラが多いのですが、今回は最小。クラリネットは前半と後半とでメンバーが入れ替わりましたし、トロンボーンの1番も前半は栗田さんが吹いていたのに、後半は新田さんに替っていました。

 完全にヨーロッパ演奏旅行シフトですね。N響は2月28日から3月8日まで欧州演奏旅行に出かけるのですが、その時持っていくプログラムの一つが、シベコンとタコ10の今回のプログラムです。ソリストは諏訪内ではなくてジャニーヌ・ヤンセンに代わるそうですが、その予行演習を兼ねた演奏会、と申し上げられます。

 なお、会場はほぼ満席。N響の定期公演、土日が満席になることはごくたまにあるのですが、金曜日の夜の公演で満席になるのは久しぶりのような気がします。これはソリスト効果ですね。諏訪内晶子さすがに人気ヴァイオリニストです。

 シベリウスのヴァイオリン協奏曲。ヤルヴィの向いている方向と諏訪内晶子が向いている方向にずれがあるのではないか、とは感じました。諏訪内の指向性は流麗な、この曲の幻想性をより前に示そうとするアプローチだったと思います。一方、ヤルヴィは、もっとゴリゴリと演奏させて、曲の内に秘めたエネルギーを表に発散させようとするような演奏と申し上げてよいでしょう。結果としてその違いのぶつかり合いが、何とも面白い雰囲気を醸し出していました。ただ、そういう違いが、ソリストと指揮者の息が合わないようになるところがあったようで、ちょっと変な響きが聞こえた部分がありました。

 ショスタコーヴィチの10番、こちらはヤルヴィに向いている曲だと思いました。ヤルヴィはとても素晴らしい指揮者だとは思いますが、曲をデフォルメするが如く演奏させることがあります。それがやりすぎのように聴こえるとどうかな、と思います。しかし、このショスタコーヴィチの交響曲のようにもともとオーケストラの咆哮を前提に書かれた音楽は彼の面目躍如です。第一楽章の幻想的な響きと第二楽章(スケルツォ楽章)のアレグロというよりもプレストという感じの疾走感、緩徐楽章の暗さと明るさがないまぜになったような雰囲気、そしてフィナーレの爆発と曲の特徴を対比的にしっかり示して見せます。ホルンがこけたとか演奏技術的には何もなかったわけではありませんが、木管群はとても立派でしたし、速いパッセージでの弦楽のそろい方など流石N響だな、という水準。欧州のお客さんにもぜひ熱狂してもらいたいと思います。

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2017年04月15日 第1858回定期演奏会
指揮:ファビオ・ルイージ

曲目: アイネム カプリッチョ作品2(1943)
       
  メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲ホ短調作品64
      ヴァイオリン独奏:ニコライ・ズナイダー
       
  マーラー 交響曲第1番ニ長調「巨人」

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:客演(都響の遠藤香奈子さん)、ヴィオラ:客演(読売日響の柳瀬省太さん)、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、ファゴット:水谷、ホルン:福川、トランペット:菊本、トロンボーン:客演(
読売日響の古賀光さん)、チューバ:池田、ティンパニ:植松、ハープ:早川

弦の構成:協奏曲:14型、その他:16型

感想

 一言で申し上げれば、ルイージの楽譜の読み込みの深さが光った演奏会だったと思います。N響のシェフ、パーヴォ・ヤルヴィとほぼ同年代の指揮者ですが、パーヴォがどちらかというと楽譜の内容を自分の身体の中に取り込んで発散するタイプの指揮者であるのに対し、ルイージは楽譜の細かいニュアンスまでもしっかり設計して示すタイプの指揮者なのだろうと思います。それにしても指揮姿が美しい。オーケストラの指揮者は総じて指揮姿が美しく、それを意識させられることは稀なのですが、今回、それを強く感じさせられたところ、一流指揮者の一流指揮者たる所以なんだろうなあ、と思いました。

 アイネムの「カプリッチョ」。初めて聴きました。アイネム25歳の時の作品で、ほぼデビュー作だそうですが、確かにいろいろな技法を詰め込んで、自由な雰囲気に仕上がっている作品だと思いました。

 二曲目のメンデルスゾーン。こちらは今一つの演奏だと思います。端的に申し上げれば、ソリストの音圧が弱い。ズナイダーは見た目はかなりの偉丈夫で力強い音楽を聴かせてくれるのかと期待したのですがさにあらず。よく言えば繊細な表現ということになるのでしょうが、私的には弱弱しい音楽に聴こえてしまいました。ボウイングに深さがないと申し上げたらよいのでしょうか、表面をなぞっているような音楽で、ちょっとした拍子にオーケストラに飲み込まれてしまうのではないか、と感じてしまいました。もっと鋭さも欲しいですし、もっと硬質な響きがあってもよいのではないかと思いました。

 マーラー「巨人」。こちらはとても素晴らしい音楽。ルイージは楽譜に書かれたことをそのまま演奏するように楽員に指示しているのだろうと思いますが、その中でのニュアンスの付け方が緻密だと思います。表情記号の解釈こそ指揮者の腕の見せ所なのでしょう。ルイージはテンポ感覚は基本遅めで、リタルダンドをしっかりかけさせているように聴こえました。またピアノは相当音を絞って演奏させ、速度的にも強度的にも全体的に広がりのある音楽に仕上がっていました。

 ルイージの巧さは、この表現の幅がまず計算されていて設計されているわけですが、その計算が巧みで、下品にならないところでしっかり留めているところなのでしょう。聴いていて職人だな、と感じてしまいました。N響メンバーも指揮者の要求にこたえて火を噴くような音楽を奏でました。聴きごたえがありました。

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2017年04月22日 第1859回定期演奏会
指揮:ファビオ・ルイージ

曲目: ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番ハ長調作品15
      ピアノ独奏:ベアトリーチェ・ラナ
       
  ブラームス 交響曲第4番ホ短調作品98

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:佐々木、チェロ:向山、ベース:市川、フルート:甲斐、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、ファゴット:宇賀神、ホルン:福川、トランペット:長谷川、トロンボーン:新田、ティンパニ:植松

弦の構成:協奏曲:14型、交響曲:16型

感想

 素敵な演奏会でした。まずピアニストがよい。ベアトリーチェ・ラナ、名前も初めて聞く方ですが、まだ23歳の若手女流。でもコンクールでは優勝歴を誇り、聴衆賞なども取っていますから、技術的にも表現力的にも秀でたピアニストということなのでしょう。

 そして、それをまさに実感しました。ピアノのタッチが軽く良く指が回るのですが、乱暴にならない。ルイージの伴奏はしっかりとしたシンフォニックな音の付け方で繊細なピアノであればオーケストラの音に飲み込まれるかと思いきや、全然そんなことはありません。結構厚いオーケストラの上に乗って滑っていく感じです。第一楽章はこのオーケストラの支えへの乗り方に、第二楽章はベートーヴェンの初期の作品が持つロココ的な美しさを、そして第三楽章は、ピアノのダイナミズムを感じさせてくれました。若いピアニストを聴くと、技術的にしっかりしているな、と感心させられることが多いのですが、ラナもその一人です。しっかりした技術の上に、何とも言えない雰囲気があって、とっても素敵な演奏を聴かせてくれたと思います。

 ブラームスの交響曲4番。先週、マーラーの1番を聴いたときに書いたのですが、「ルイージは楽譜に書かれたことをそのまま演奏するように楽員に指示しているのだろうと思いますが、その中でのニュアンスの付け方が緻密だと思います」。これを今週も感じました。

 ルイージは、第三楽章から第四楽章をほぼアタッカで演奏させました。これはたぶん珍しいやり方だと思いますが、おそらく、ルイージの中では、第三楽章のアレグロ・ジョコーゾと第四楽章のアレグロ・エネルジコ・エ・パッショナートに関連性を感じたのだろうと思います。そして、第四楽章をよくやられる重厚な演奏ではなく、エネルギッシュかつ情熱的なアレグロで演奏させました。

 ブラームスは北ドイツの作曲家であり、ブラームスの4番は晦渋な作品としてみなされることも多いのですが、表情記号を見る限りただ暗いだけの作品ではないということなのでしょう。それをルイージは演奏で示した、ということかもしれません。これでオーケストラがノーミスだったらよかったのですが、結構目立つ飛び出しがあり、それだけが残念です。

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2017年05月13日 第1860回定期演奏会
指揮:ピンカス・スタインバーグ指揮

曲目: スメタナ 交響詩「我が祖国」(全曲)

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:伊藤、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:佐々木、チェロ:向山、ベース:吉田、フルート:甲斐、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、ファゴット:水谷、ホルン:福川、トランペット:長谷川、トロンボーン:栗田、
チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川

弦の構成:16型

感想

 前回N響の定期で「我が祖国」が取り上げられたのが2009年2月。その時の指揮者がラドミル・エリシュカでした。その演奏はとても評判がよく、確か、毎年4月に発表されるN響の聴衆による2009年ベストコンサートの第一位に選定されました。エリシュカの演奏が高く評価されたのは、演奏に満ちていたお国ものを演奏する愛情だったようです。私もこの演奏を聴いているのですが、確かに素晴らしい演奏であったことはそうなのですが、一般的な方の評価とは逆に、その土臭さというか、ローカリティがちょっと鼻についたのかな、という気がします。

 翻って今回のスタインバーグの演奏。一言でいえばスペクタクルでした。本来この曲は二管編成ですがスタインバーグは管楽器を増強してきました。その内容はオーボエ、クラリネット、ファゴットがそれぞれ本来の2から3本へ増強。ホルンが4本から6本に増強、トランペットが2本から4本に増強です。その結果として管楽器の迫力がはっきり示され、音楽の内容がよりダイナミックに見せたということはあると思います。

 最初の「高い城」はごつごつとした印象が強かったのですが、どうも全体を通して思うと、それぞれの曲の特徴をより強調した演奏なのだろうと思います。有名な「モルダウ」も表情豊かでしたし、第3曲の「シャルカ」は劇的な表現が見事でした。後半に入り、「ボヘミアの牧場と森から」は、田園の表現とポルカのリズムが、「タボール」、「プラーニク」の高揚感もよかったと思います。

 私は楽譜の指示と違うことをやるというのはあまり好きではないので、前回のエリシュカと今回のスタインバーグのどちらがよいかと問われると、演奏の妥当性という意味ではエリシュカということになると思います。しかしながら、表現のダイナミズムで、スタインバーグのほうが、自分自身としては生理的快感が高い。ある意味やりすぎで、下品であるとは言われればそのとおりなのですが。

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2017年05月19日 第1861回定期演奏会
指揮:ウラディーミル・フェドセーエフ指揮

曲目: グリンカ 幻想曲「カマリンスカヤ」
  ボロディン 交響曲第2番ロ短調
  チャイコフスキー 交響曲第4番ヘ短調作品36

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:大林、ヴィオラ:中村(洋)、チェロ:藤森、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:松本、ファゴット:宇賀神、ホルン:今井、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、
チューバ:池田、ティンパニ:植松、ハープ:早川

弦の構成:16型

感想

 ある意味「凄い」演奏会でした。

 ボロディンの2番が終わった瞬間、会場に響く「BOO」の声。よくフライング・ブラボーが批判されますが、これはフライング・ブー。ちょっとフェドセーエフが気の毒でした。どう考えても「BOO」と言われなければならないような演奏ではなかったからです。フェドセーエフがショックを受けていることは客席から見ても一目瞭然でした。そりゃそうでしょう。自分が指揮棒を置いたとたんブーを飛ばされれば。そのあとオーケストラのメンバーの拍手や客席からの拍手で、何とか気を取り直し、最後のチャイコフスキーの4番は演奏してくれましたが、指揮者によってはそのままキャンセルするかもしれません。ちょっと悪意がありすぎるブーでした。

 この御仁、チャイコフスキーの4番が終わった後も「BOO]を飛ばしておりましたが、客席にもこの「BOO」に対する意識があったようで、この「BOO]の一瞬前に最初の「Bravo」が飛び、その後の熱のある拍手で「BOO]をかき消してくれましたのでまあよかったのですが、あのブーはフェドセーエフがよっぽど嫌いな方に違いありません。

 ちなみに演奏は、どの曲も曲自身の持つ歌謡性を強調したもので、歌心のある素敵なものでした。

 「ルスランとルドミューラ」序曲ばかり演奏されることが多いグリンカですが、「カマリンスカヤ」もグリンカのロシア民謡に対する敬意が認められる素敵な曲で、フェドセーエフはお国ものに対する適性を示しながらの演奏だったと思います。

 ボロディンの2番は、個人的には割と好きな曲で、若いころからCDならぬLPで聴いておりました。ただ実演を聴くのは初めてですし、レコードプレーヤーが故障してから20年以上聴いていませんから本当に久しぶりに聴いたな、というところです。フェドセーエフは、全体的に低音を強調した演奏で、ロシアっぽさを感じさせるもの。私が持っていたLPは誰が指揮したものか実はもう忘れているのですが(既に手元にありません)、もっとあっさりした演奏だったという印象があるので、フェドセーエフのけれんみのある演奏もいいな、と思いました。

 最後のチャイコフスキー。こちらもこの曲の持つ歌謡性をしっかり示した演奏。指揮者によってはもっと流麗に流れると思うのですが、フェドセーエフは付点を強調するような割とブレーキの利いた演奏で表情をしっかりつけてきました。最初のファンファーレの後、第一主題はpppぐらいの音から始まってfffぐらいまで盛り上げるダイナミクスもよかったと思いますし、アッチェラランドとリタルダンドの切り返しもしっかり見せてくれました。N響メンバーの力量もさすがで、松本さんのクラリネット・ソロ、宇賀神さんのファゴット・ソロも見事でしたし、ホルンセクションもよかったです。スケルツォでの弦楽器セクションのピチカートもとても立派。フィナーレの盛り上がりも管楽器が悲鳴を上げるような凄まじさでしたが、攻めても破たんしないところが流石N響です。

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2017年06月24日 第1862回定期演奏会
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ指揮

曲目: デュディユー メタボール(1964)
  サン・サーンス ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 作品22
      ピアノ独奏:河村 尚子
  ラヴェル 優雅で感傷的なワルツ
  ラヴェル   「ダフニスとクロエ」組曲 第2番

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:伊藤、2ndヴァイオリン:白井、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:甲斐、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、ファゴット:宇賀神、ホルン:福川、トランペット:長谷川、トロンボーン:新田、
チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川、チェレスタ:客演(フリー奏者の梅田朋子さん)

弦の構成:協奏曲;14型、その他16型

感想

 パーヴォがN響の首席指揮者になって初めての本格的なフランス物の演奏会でした。

 感想は、一言で「N響は上手い」。とにかくきっちりまとめてきます。今日の4曲はどの曲も高水準の演奏でした。

 最初のデュディユーの「メタボール」。クリーヴランド交響楽団のジョージ・セルの委嘱により作曲された作品だそうです。セルといえば完璧主義者として有名で、当時のクリーヴランド交響楽団は世界一の合奏力と言われたわけですから、この作品はオーケストラのヴィルトゥオジティを示すのにちょうどよい音楽になっているということのようです。そして、現在のN響の合奏力ですが、はっきり申し上げて世界の最高レベルにあるわけですから、こういう曲は力量を示すのにうってつけなのでしょう。確かに見事な演奏だったと思います。ただ、よい演奏だったかと問われると分かりません、と答えるしかありません。初めて聴く曲はよく分からないのが本当です。

 二曲目のサン・サーンスのピアノ協奏曲。本日の白眉と申し上げられます。とにかくピアノの河村尚子が素晴らしい。最初がバロック的に始まり、古典的な風貌が強いですが、だんだん速くなっていくのが大きな特徴です。この演奏の速く激しくなっていく感じが非常に劇的でスリリングです。第二楽章のスケルツォの表情が見事で、第三楽章タランテラの疾走感も爽快感があります。とにかく聴いていて血沸き肉躍るような演奏だったと思います。N響はこの息遣いのピアニストに触発されていった感じがします。ピアニストの気持ちがオーケストラに乗り移ってオーケストラも燃えたと申し上げてよろしいと思います。楽しめました。

 後半のラヴェル二曲。N響の技術的力量をはっきり示した演奏でした。で、良かったか?と問われれば「ウーン」の演奏です。「優雅にして感傷的にワルツ」は美しいのですが、この曲が内包している批判性のようなものはあまり感じられなかったのかな、と思います。多分一つ一つの曲の表情の違いをもうちょっと明確にして(これもやりすぎると下品になるのでほんの僅かだと思うのですが)、対比性を上げたほうがよかったのかな、という感じは致しました。

 「ダフニスとクロエ」組曲。こちらも見事な演奏なのですが、熱狂が冷静なのです。技術のレベルが高いから激しく演奏しても乱れないということですし、安定感のある演奏はよいのですが、そこで終わっていると感心するけど感動はできません。こちらももう一押しする場所があったのでは、と思いました。

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