NHK交響楽団定期演奏会を聴いての拙い感想-2014年(後半)

目次

2014年09月27日 第1789回定期演奏会 ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
2014年11月15日 第1793回定期演奏会 ネヴィル・マリナー指揮
2014年11月22日 第1794回定期演奏会 ネッロ・サンティ指揮
2014年12月05日 第1796回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮
2014年12月12日 第1797回定期演奏会 シャルル・デュトワ指揮

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2014年09月27日 第1789回定期演奏会
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

曲目: モーツァルト 交響曲第41番ハ長調 K.551「ジュピター」
     
チャイコフスキー 交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:白井、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:甲斐、オーボエ:青山、クラリネット:松本、バスーン:宇賀神、ホルン:福川、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:植松

弦の構成:モーツァルト:変則12型(12-12-8-6-4)、チャイコフスキー:変則16型(16-16-12-10-8)

感想

 いつものブロムシュテットで、ヴァイオリンの左右対抗配置。

 それにしてもブロムシュテットはお元気です。先日マゼールが亡くなるなど、1920年代生まれの指揮者がどんどんリタイアされる中、87歳のブロムシュテットは若いころと変わらない指揮姿を見せています。

 音楽のつくりはそれでも昔とはずいぶん変わってきているように思います。

 モーツァルトは指揮棒なしでの演奏。指揮姿がやわらかで、それに伴うN響の演奏も優美です。ただ精密な演奏というのとは違って、輪郭が僅かに霞んだ演奏なのですが、それがまた魅力的です。

 第二楽章などは、休符でしっかり楔を打ちながら演奏していくので、優美ですがだれない。アクセントの付け方が、ピリオド楽器での演奏のように露骨ではないけれども、きっちり入っていて、一寸ロマンティックな味わいがあるところなど、流石ブロムシュテットと言うべきでしょう。オーソドックスというほどにはありふれておらず、だからと言って過激では決してない、老成した指揮者の芸だと思いました。

 チャイコフスキーは、モーツァルトよりも音楽の振りが大きい。勿論、これは音楽作品自身の持っている特徴の違いなのですが、それ以上にブロムシュテットの音楽の運び方に違いがあると思いました。モーツァルトの自然と比較すればチャイコフスキーの人工と申し上げてもよいかもしれません。

 第二楽章は、通常の演奏と比べると遅め。アレグロという感じではありません。トリルの部分は「もたもたしているかも」と思えるほど。一方、第三楽章のマーチはかなり早い演奏で、「そこまで急がなくてもよいのでは」と思うような演奏でした。この対比の強調が、チャイコフスキーの「悲愴」交響曲では必要とブロムシュテットは考えたのでしょう。

 第四楽章の沈鬱はオーソドックスに攻めました。最後のコントラバスのピチカートが切なく響きました。

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2014年11月15日 第1793回定期演奏会
指揮:ネヴィル・マリナー

曲目: ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61
      ヴァイオリン独奏:セルゲイ・ハチャトゥリアン 
     
ブラームス 交響曲第1番ハ短調 作品68

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:白井、ヴィオラ:佐々木、チェロ:向山、ベース:市川、フルート:神田、オーボエ:青山、クラリネット:伊藤、バスーン:宇賀神、ホルン:今井、トランペット:関山、トロンボーン:新田、ティンパニ:植松

弦の編成:ベートーヴェン:12型、ブラームス:16型

感想

 10月はいろいろな予定のバッティングでN響には出かけられませんでした。それで2か月ぶりのN響。

 本来なら、レナード・スラットキンが客演して、ラヴェルを演奏する予定だったのですが、スラットキンが体調を崩し、来日不可能ということで、ネヴィル・マリナーが登場。マリナーは今年二月来日してN響を振ったのですが、その時は二週連続の大雪で、私は出かけることが出来ませんでした。その意味では、私個人としては、まあまあな変更です。勿論スラットキンには早く良くなって、また素敵な音楽を聴かせてほしいと思っております。

 プログラムに関しては、ラヴェル(スペイン狂詩曲、亡き王女のためのパヴァーヌ、「ダフニスとクロエ」組曲第二番)がブラームス交響曲第一番に変更になりました。このラヴェルはとても魅力的ですが、ぶら1に変わったことにより、ベートーヴェン、ブラームスと正にオーケストラの王道のプログラムとなりました。

 如何にも名演が期待できる感じでしたが、私には疑問符が付く演奏会でした。はっきり申し上げれば、ハチャトゥリアンが壊した演奏会と申し上げてよろしいと思います。

 ハチャトゥリアンのベートーヴェン・ヴァイオリン協奏曲、極めて遅い演奏でした。この作品、通常は40分前後で演奏され、30分台で演奏されることも珍しくないですが、今回の演奏はほぼ50分かかっていました。これはどうもマリナーの趣味というより、ハチャトゥリアンの趣味らしい。最初マリナーがゆっくり目に主題提示したのですが、それをソリストは全然速めようとはしませんでした。ゆっくり丁寧に演奏することにより、曲の細かい一音一音までしっかり響かされ、その意味で、クリアな演奏であったわけですが、遅い分だけだれる。

 音楽にゆるみが生じてしまって、私には楽しめない演奏になっていました。聴いていて、いつ終わるのか、という感じでした。N響のメンバーにも、そういう気分が漂っていました。それが後半のブラームスにも悪影響を及ぼしたような気がします。

 後半のブラ1.前半の反動があるらしく、オーケストラメンバーが指揮者を煽っていました。マリナーは、それを抑えに行くような感じで指揮をしていく。第1楽章は、結構慌てた感じの音楽になっていたように思います。マリナーが締めるとオーケストラも落ち着くのですが、また慌て始める感じです。スピードが揺れる感じがありました。楽員の間でも温度差があるようで、音の微妙なずれがあり、綺麗に揃った音楽にはなっていませんでした。

 全体で約45分、最終的にはブラ1としては標準的かやや速めの演奏で終わりましたが、ブラームスはもっと堂々としたつくりの方が宜しかったのではないかと思いました。ベートーヴェンが40分前後で演奏され、ブラームスが50分弱ぐらいで演奏されれば、もっと聴き応えのある演奏会になっていたのではないかという気がします。

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2014年11月22日 第1794回定期演奏会
指揮:ネッロ・サンティ

曲目: ロッシーニ 歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
     
ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」作品9
       
  チャイコフスキー    イタリア奇想曲 作品45 
       
  レスピーギ    交響詩「ローマの松」 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:岡崎慶輔(ゲスト・コンサートマスター)、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、バスーン:水谷、ホルン:福川、トランペット:菊本、トロンボーン:新田、チューバ:客演(都響の佐藤潔さん)、ティンパニ:植松、ハープ:早川、ピアノ:客演(フリーの梅田朋子さん)、チェレスタ:客演(フリーの楠本由紀さん)、オルガン:客演(フリーの新山恵理さん)

弦の編成:16型(ただしチェロは9本)

感想

 N響にしては珍しいプロムナード・コンサート。一番長い「ローマの松」で20分で、4曲の正味の演奏時間合計は55分といったところで、普通ならもう1曲加えるところです。イタリア関係ということであれば、ビゼーの交響曲「ローマ」あたりが良かったかもしれません。

 短い演奏会だったということもあって、一曲一曲はじっくり演奏されていました。

 「どろぼうかささぎ」序曲。クレシェンドはしっかりしますが、アッチェラランドはかけないスタイル。弦の透明感が高いせいか、ゆっくりした演奏なのですが、だれた感じがしないすっきりとした演奏でした。良い演奏だったと思います。

 「ローマの謝肉祭」。こちらもすっきりとした演奏。サンティはノリントンとは違って、ノンビブラート奏法支持者じゃないはずですから本当はもっと音に幅があっても良いような気がしますが、ピッチの良く揃った演奏でとても良いと思いました。

 「イタリア奇想曲」。前半の二曲とは異なり、サンティのケレンをいっぱい盛り込んだ演奏。ゆっくりしたテンポで各楽器にいろいろなことをやらせますから、表情のとても濃い演奏になりました。木管が特に良いと思いました。和久井仁さんのイングリッシュホルン、水谷さんのファゴットが素敵でした。

 「ローマの松」。こちらも表情の濃い演奏。でも四つの松の色分けが流石で、彩色感の強い演奏でした。

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2014年12月05日 第1796回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ

曲目: ドビュッシー 歌劇「ペレアスとメリザンド」
      全5幕/演奏会形式・字幕つき

出演者

ペレアス  ステファーヌ・デグー(バリトン)
ゴロー  ヴァンサン・ル・テクシエ(バス・バリトン) 
アルケル  フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ(バス) 
イニョルド  カトゥーナ・ガデリア(ソプラノ) 
医師  デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン(バリトン) 
メリザンド  カレン・ヴルチ
ジュヌヴィエーヴ  :  ナタリー・シュトゥッツマン 
羊飼い  :  浅井 隆仁(バリトン) 
合唱  :  東京音楽大学(女声12人/男声31人) 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:篠崎、2ndヴァイオリン:白井、ヴィオラ:佐々木、チェロ:藤森、ベース:吉田、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:松本、バスーン:水谷、ホルン:福川、トランペット:菊本、トロンボーン:客演(京都市立芸術大学名誉教授の呉信一さん)、チューバ:池田、ティンパニ:植松、ハープ:早川

弦の編成:16型

感想

 デュトワはだいたい年に1回大規模な声楽曲を演奏し、オペラを演奏会形式で演奏することも少なくないのですが、今回は特別の演奏会だったと思います。オペラ史上最も重要な作品の一つであり、ドビュッシーの最高傑作とも言われる「ペレアスとメリザンド」。当然ノーカットで30分の休憩を入れた全演奏時間は3時間20分。通常のN響定期2回分です。

 「ペレアスとメリザンド」は元々象徴主義的なメーテルリンクの戯曲にほぼそのまま音楽を付けた内容ですから、なかなか舞台上演にはかかりません。日本では二期会やモーツァルト劇場が取り上げていますが、私は見たことがありません。しかし、名曲であるということでオーケストラの演奏会で取り上げられることは珍しいことではなく、私は今回で4回目の聴取となります。

 今回聴いて思ったのは、やはりこのオペラは難解だということです。四回目にして見えてくるところがかなりありました。そしてその理解を助けてくれたのは、デュトワのコントロールと歌手たちの良く考えられた歌唱だったと思います。

 デュトワの指揮は非常に繊細でした。控えめに弱音を大切にしながらオーケストラをコントロールしていくわけですが、その弱音を奏でるN響の弦楽陣、木管陣が実に見事、弱音ではあるけれどもしっかり密度のある弱音で、柔らかくホールを包みます。正味二時間半、ノーミスという訳にはいかないのですが、小さな傷よりも流れの見事さに耳を傾けてしまう演奏です。

 こういった繊細な演奏をしなければならないとき、N響の実力は光ります。これまで新日本フィルや東京フィルでこの曲を聴いていて、それぞれ繊細な演奏をしていたわけですが、繊細さのきめ細やかさの水準が違うな、というのが、今回のデュトワ/N響の演奏を聴いた正直な感想です。元気な音楽を聴いて興奮することはしばしばありますけど、こういう繊細な音楽を聴いて胸が熱くなったのは、久しぶりのことかもしれません。聴いている途中から陶酔してしまいました。率直に名演と申し上げます。

 歌手陣も素敵。フランス人を中心としたキャスティングがこのオペラを演奏するのに良かったことは間違いありません。特にメリザンドとゴローが良い。

 ヴルチのメリザンドは本当に考え抜かれた歌唱でした。この曲で唯一アリア的な第三幕冒頭のアカペラ「私は日曜の午後に生まれ」が透明な美声で柔らかく響き素敵だったのですが、それだけではありません。全体を通じてのメリザンドの解釈がイノセントであることで一貫していました。メリザンドは実は不思議なキャラクターで色々な表現が可能なのだろうと思いますが、色々な表情を出していくよりも一貫した解釈の方が、分かりやすいのだろうと思います。

 ゴローのテクシエもよい。前半の冷静な歌唱と段々疑惑が嫉妬に変化していくときの狂気の示し方が実に分かりやすい。嫉妬のゴローとその嫉妬が分からない(分からないふりをしている?)メリザンドの掛け合いは、その対照的な雰囲気によって、音楽の厚みを増していました。

 もう一人の主人公であるペレアスも私のこれまで聴いたペレアスでは文句なしに最高です。テノールによって歌われることの多いこの役ですが、デグーのハイバリトンの声は美しく、ペレアスの無垢ではあるがちょっと陰影のある感じを良く表現していたと思います。

 脇役陣では、何といってもシュトゥッツマンのジュヌヴェエーヴが最高。あの柔らかな低音はドビュッシーの音楽を奏でるに打ってつけなのだなと思いました。そして、アルケル王を演じたゼーリヒも端正な歌唱で貢献していましたし、イニョルド役のガデリアも子役の感性を上手に示していたと思います。

 優れた歌手陣とデュトワの繊細なコントロール、そしてそれに呼応して繊細な表現を高レベルで成し遂げたN響の力があっての名演奏であったと思います。

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2014年12月12日 第1797回定期演奏会
指揮:シャルル・デュトワ

曲目: 武満 徹 弦楽のためのレクイエム(1957)
     
ベルク ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出のために」
      ヴァイオリン独奏:アラベラ・美歩・シュタインバッハー 
       
  ドヴァルザーク    交響曲第9番 ホ短調 作品95 「新世界から」 

オーケストラの主要なメンバー(敬称略)
コンマス:堀、2ndヴァイオリン:永峰、ヴィオラ:佐々木、チェロ:向山、ベース:西山、フルート:神田、オーボエ:茂木、クラリネット:伊藤、バスーン:宇賀神、ホルン:福川、トランペット:関山、トロンボーン:新田、チューバ:池田、ティンパニ:久保、ハープ:早川

弦の編成:協奏曲;14型、その他16型

感想

 デュトワらしいプログラムの典型ですが、それでもいつもと違った音が聴こえたように思うのは、私の耳の進歩なのか、デュトワの変貌なのか。

 それを凄く思ったのは、新世界交響曲の演奏です。第一楽章前半のトランペットの音が今一つぱっとしないとか、そういう傷はいくつか感じたのですが、こう演奏するんだっけ、と思うようなところが幾つもありました。トリルが無くなっていたりとか、音の動きが普段聴く「新世界」と逆になっていたりとかですね。勿論、私はスコアを確認しながら聴いているわけではないので、本当にそうだったかどうかは断言することは出来ないのですが、面白い「新世界」でした。

 全体的には、よく構成が見通せる即物的なデュトワらしい演奏だと思うのですが、第二楽章はロマンティックな演奏でした。これは、イングリッシュホルンの池田昭子さんの手腕ですね。微妙にテンポを動かしながら、あの有名な哀愁のあるメロディーを吹いていく。それを支える、クラリネットやファゴットもそのテンポの揺れに乗っていくので、その楽章は、全体的に微妙にポルタメントがかかった感じなるというか、哀愁感が盛り上がるのですね。全体としては元気の良い音楽ですけど、第二楽章のロマンティックな感じと、その他の楽章の元気の良さの対比が楽しく聴けました。

 ベルグのヴァイオリン協奏曲は、素敵な演奏。シュタインバッハーの持っている技術なのか、デュトワのアプローチの上手さなのか、音楽のポイントがすっと耳の中に入ってくるような演奏。とても良い演奏です。こういう現代ものの作品て、演奏者が譜面づらは演奏で来ていても、自分の考えがなくて、面白くない演奏になることはままあるわけですが、シュタインバッハーは、この曲について何か思うところがあるようで、バランスの良い演奏をしたのではないかと思います。勿論、二十世紀のヴァイオリン協奏曲として最も重要な作品で、演奏される機会も非常に多い曲ですので、どう演奏するのが良いのか、という集合知みたいなものが、出来ているのかもしれません。

 最初の「弦楽のためのレクイエム」。武満作品は、デュトワにとってもとても重要なようで、折に触れて取り上げますが、「弦レク」はその中でも特別のようで、N響定期で取り上げるのは、3回目だと思います。演奏は、N響弦楽陣の力量を示す流石のもの。良かったです。

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