2018年NHK交響楽団定期演奏会ベスト3
第1位:9月Cプログラム パーヴォ・ヤルヴィ 指揮
曲目: シベリウス レンミンケイネンの歌作品31-1 シベリウス 「サンデルス」作品28 シベリウス 交響詩「フィンランディア」作品26(男声合唱付き) シベリウス 「クレルヴォ」作品7* ソプラノ独唱:ヨハンナ・ルネサン* バリトン独唱:ヴィッレ・ルネサン* 男声合唱:エストニア国立男声合唱団(全曲出演)
第2位:12月Cプログラム トーマス・ヘンゲルブロック 指揮
曲目: バッハ 管弦楽組曲第4番 ニ長調 BWV1069 バッハ(シェーンベルグ編曲) 前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV552「聖アン」 バッハ マニフィカト ニ長調 BWV243(クリスマス用挿入曲付) 合唱:バルザダール・ノイマン合唱団(合唱指揮:デトレフ・ブラチュケ) 独唱:バルザダール・ノイマン合唱団メンバー
第3位:2月Cプログラム パーヴォ・ヤルヴィ 指揮
曲目: デュルフレ 3つの舞曲 作品6 サン・サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 作品61 ヴァイオリン独奏:樫本 大進 フォーレ レクイエム 作品48 オルガン:小林 英之 ソプラノ独唱:市原 愛 バリトン独唱:甲斐 栄次郎 合唱:東京混声合唱団 次点:10月Aプログラム ヘルベルト・ブロムシュテット 指揮
ベスト指揮者:パーヴォ・ヤルヴィ
ベスト・ソリスト:アレクサンドル・トラーゼ(ピアノ)選択の理由
NHK交響楽団が行う年間27プログラムの定期演奏会うち、NHKホールで実施される18回の公演を全部聴くことを目標に行動しているのですが、2018年は1回チケットの入手が間に合わず欠席。都合17回の聴取となりました。
昨年に引き続き、今年の全体的な印象も、なかなか聴けない曲がたくさん聴けたということです。昨年は、初めて聴いた作品が13曲ですごく驚きましたが、本年はそれを上回る19曲と初聴き尽くしでした。本年私がN響で聴いた総作品数が49でしたから、初聴率39%。N響に通い始めて31年目になり既に500回以上の定期演奏会を聴いているのですが、それでも初めて聴く曲がこれだけ多いというのは、最近のN響の攻めの姿勢が分かります。首席指揮者のパーヴォ・ヤルヴィが割と珍しい曲を持ってくるのと、日本人の客演指揮者が攻めのプログラムを用意することが多いのが関係しているのでしょう。
さて、個々の感想のまとめです。
本年は、1月にまず、広上淳一とピーター・ウンジャンが登場しました。広上は、滅多に演奏されないバーンスタインの2曲とショスタコの5番。ショスタコーヴィチの5番がN響のヴィルトゥオジティと広上の歌謡性とがうまくマッチした名演奏でした。東京弦楽四重奏団の元第一ヴァイオリン奏者であるウンジャンは、弦楽四重奏がソロのように入る協奏曲ジョン・アダムスの「アブソリュート・ジェット」とホルストの「惑星」を取り上げました。「惑星」のスリリングさを楽しみました。
2月は、首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィ。Aプログラムは、マーラーの7番、この曲の魅力に迫る演奏でした。Cプログラムはフォーレの「レクイエム」をメインに据えたオール・フランスプログラム。レクイエムにおける東京混声合唱団の合唱の巧さが光る演奏会でした。
4月は桂冠名誉指揮者のヘルベルト・ブロムシュテット。ベートーヴェン・プログラムであるCプログラムが訊けなかったのが残念ですが、Aプログラムで演奏された「幻想交響曲」が実に名演奏。素晴らしいものでした。
5月は、又もヤルヴィ。Aプログラムは、テツラフによるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲とシベリウスの「4つの伝説」全曲。「トゥオネラの白鳥」は何度か聴いたことがありますが、全曲を通して聴くのは録音も含めて初めての経験でした。面白かったです。Cプログラムはショスタコのピアノ協奏曲2番とブルックナーの1番という組み合わせ。ブルックナーは初稿であるリンツ稿で演奏されました。
6月は、アシュケナージ。Aプログラムがドビュッシーの「牧人」、「海」を中心としたオール・フランス・プログラム、Cプログラムはメンデルスゾーンの「ヴァイオリンとピアノための協奏曲」という珍しい作品と、「ハ―リ・ヤーノシュ」、「タラス・ブーリバ」という東欧系2作品の組み合わせでした。アシュケナージはフランス近代物が好きですが、彼に合っているのは断然民族派音楽ですね。
9月もヤルヴィが登場。Aプロがシュトラウス・ファミリーのワルツが五曲とマーラーの4番。世紀末ウィーン繋がりですね。演奏のレベルとしてはごく普通でした。Cプログラムはオール・シベリウス・プログラム。オール・シベリウス・プログラムはオーケストラのプログラムとは時々ありますが、交響曲が1曲も入っておらず、全てが男声合唱付きというのが珍しすぎます。エストニア国立男声合唱団、最高に巧いです。
10月は今年二度目のブロムシュテット。90歳越えの指揮者とは思えないみずみずしい音楽を聴かせてくれます。Aプログラムのモーツァルトの「プラハ」が最高。ブルックナーの9番もブロムシュテットらしさが出た名演奏。Cプロのハイドンもよかったです。
11月はジャナンドレア・ノセダと今年二度目の登場の広上淳一。ノセダはラヴェルのピアノ協奏曲とプロコフィエフ「ロメオとジュリエット」抜粋という組み合わせ。「ロメ・ジュリ」がN響の名人芸がしっかり出ていました。広上はオール・アメリカンプログラム。どれもかなりの珍しい曲でした。
12月は例年デュトワの月ですが、本年はデュトワがセクハラ問題で指揮できない状況なので、3人の指揮者で分担。Aプログラムはヴェデルニコフ、Cプログラムはトーマス・ヘルゲンブロックが指揮台に立ちました。ヴェデルニコフが攻めたプログラム。スクリャービンのピアノ協奏曲もグラズノフの交響曲も初聴きでした。ヘルゲンブロックはバッハの「マニフィカト」を中心としたオール・バッハプログラム。マニフィカトにおけるバルザダール・ノイマン合唱団の演奏が最高に素晴らしく、涙がこぼれるほどのものでした。
さて、ベスト3の選択ですが、例年通りトーナメント方式で絞っていきましょう。
1月の広上とウンジャン。これは文句なしで広上です。2月はどちらのプログラムの捨てがたいですが、自分の好みを優先させてCプロを取ります。樫本大進をソリストに迎えたサン・サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番もよかったですから。
4月は不戦勝。5月は比較すればCというところでしょう。6月はもちろんヤナーチェク、コダーイを演奏したCプログラムです。
9月はもちろんオール・シベリウスプログラム。男声合唱の魅力をふんだんに味わいました。10月のブロムシュテットはAプログラム。11月は知らない曲だらけの広上を取るのは不安です。ノセダを取りましょう。12月はCプロのオール・バッハ・プログラムですね。
1月の広上と2月のCプログラムとの比較ですが、これは文句なしで2月。4,5,6の3か月では4,5の勝負。どちらも捨てがたいですが、4月のブロムシュテットを取りましょう。9月と10月。これは選べません。どちらも素晴らしかった。とりあえず9月のCと10月のA は残します。11月と12月とでは、12月Cのオール・バッハプログラム。
この段階で残ったのが、2月Cプログラム、ヤルヴィ指揮フォーレ「レクイエム」をメインとした演奏会。4月Aプログラム、ブロムシュテット指揮「幻想交響曲」メインのプログラム。9月C、ヤルヴィによるオール・シベリウスプログラム。10月A、ブロムシュテットによるモーツァルト+ブルックナー。12月のヘルゲンブロック指揮によるオール・バッハ・プログラム。
こうやって見ると、今年は声楽の年ですね。ブロムシュテットの最高の至芸も捨てがたいですが、声楽を前面に出した3プログラムをベスト3にしましょう。4位、5位がブロムシュテット。次点は10月Aプログラムでしょうか?
ベスト指揮者はパーヴォ・ヤルヴィ、ベスト・ソリストは樫本大進、クリスティアン・テツラフも捨てがたいですが、アレキサンドル・トラーゼ(ピアノ)にいたしましょう。また、合唱団もそれぞれ特徴があって魅力的でしたが、合唱団そのもの力量は、バルザダール・ノイマン合唱団、エストニア国立男声合唱団、東京混声合唱団の順番だと思います。
2018年12月31日記
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