2017年NHK交響楽団定期演奏会ベスト3

第1位:4月Cプログラム ファビオ・ルイージ 指揮

曲目: ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番
      ピアノ独奏:ベアトリーチェ・ラナ
  ブラームス   交響曲第4番

 

第2位:6月Cプログラム パーヴォ・ヤルヴィ 指揮

曲目: シューマン 歌劇「ゲノヴェーヴァ」序曲
  シューマン   チェロ協奏曲
      チェロ独奏:ターニャ・テツラフ
  シューベルト   交響曲第8番「ザ・グレート」

 

第3位:12月Aプログラム シャルル・デュトワ 指揮

  
曲目: ラヴェル 古風なメヌエット
  ラヴェル    組曲「クープランの墓」
  ラヴェル    左手のためのピアノ協奏曲
      ピアノ独奏:ピエール・ロラン・エマール
  ラヴェル   道化師の朝の歌 
  ラヴェル   スペイン狂詩曲
  ラヴェル   ボレロ

次点:12月Cプログラム シャルル・デュトワ 指揮

ベスト指揮者:ファビオ・ルイージ
ベスト・ソリスト:ペアトリーチェ・ラナ(ピアノ)

選択の理由

 NHK交響楽団が行う年間27プログラムの定期演奏会うち、NHKホールで実施される18回の公演を全部聴くことを目標に行動しているのですが、2017年は2016年に引き続き、18回全部聴きました。パーフェクトですね。

 今年の全体的な印象は、なかなか聴けない曲がたくさん聴けたということです。録音も含め初めて聴いた作品が、13曲もありました。N響に通い始めて足掛け30年目になり既に500回以上の定期演奏会を聴いているのですが、それでも13曲もあったのですから、N響初演の曲も多かったのでしょう。そのほか、CDなど録音では聴いたことがあっても実演では初めて聴く曲もありましたし、N響で二度目、という曲もありました。

 N響は保守的なイメージが強いオーケストラですが、実際は多彩なプログラムを演奏しますし、今年は特にその傾向が強かったと言えると思います。知らない曲を聴けるのは楽しいことです。それが高水準であればことに楽しい。よい一年間だったと思います。

 さて、個々の感想のまとめです。

 本年は、1月にまず、下野竜也とスペインのファンホ・メナが登場しました。下野はマルティヌーとフサというあまり演奏されないチェコの作曲家の曲を取り上げました。メナはスペインつながりの4曲、NHKホールで「アランフェス協奏曲」を初めて聴きました。

 2月は、首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィ。欧州への演奏旅行前、ということで、Cプログラムはその予行演習のプログラムでシベリウスのヴァイオリン協奏曲とショスタコの10番。Aプログラムは首席指揮者ならではの、ペルト、トゥールという現代作曲家の作品を取り上げました。

 4月は今年の前半の白眉でした。ファビオ・ルイージがAプログラムではメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とマーラーの「巨人」、Cプログラムではベートーヴェンと「ぶらよん」というオーケストラの王道を行くプログラムでしたが、どちらも大変素晴らしい演奏を聴かせてくれました。

 5月は、ピンカス・スタインバーグが「我が祖国」全曲を、一方ウラディーミル・フェドセーエフはお国もののグリンカ、ボロディン、チャイコフスキーと並べてきました。フェドセーエフが指揮したCプログラムではフライング・ブー事件があり、驚いたのをよく覚えています。

 6月もまたヤルヴィ。Aプロがディディユー、サン=サーンス、ラヴェルのオール・フランス物。Cプロはシューマンの2曲とシューベルトの大交響曲。ヤルヴィにとってはフランス物よりドイツ物がよく似合っているな、と思わせられた6月でした。

 9月もヤルヴィが登場。Aプロがショスタコの「レニングラード」、Cプロがスクリャービンの2番をメインにラフマニノフの4番のピアノ協奏曲ととグリンカの小品を組み合わせた珍曲プログラム。どちらも楽しく聴けました。

 10月Aプログラムは下野竜也が再度登場して、モーツァルトのオペラ・セリアの序曲2曲とアルバン・ベルグというかなり凝ったプログラム。もちろん選曲の意図はウィーン繋がりです。Cプログラムはクリストフ・エッシェンバッハが登場してのブラームス2番と3番というまさにN響の一番得意なところで勝負してきました。

 11月Aプログラムはマレク・ヤノフスキ。メインは英雄交響曲ですが前半のヒンデミットの「木管楽器とハープと管弦楽のための協奏曲」は、多分N響初演。N響首席奏者たちのヴィルトゥオジティを楽しみました。Cプログラムはトゥガン・ソヒエフが登場してプロコフィエフのオラトリオ「イワン雷帝」。エイゼンシュタイン監督の同名の映画の映画音楽として作曲された作品だそうですけど、初めて聴きました。片岡愛之助の語りがよく、まとまった演奏でした。

 12月は例年通り名誉音楽監督のシャルル・デュトワ。Aプロは彼が最も得意としている、オール・ラヴェル・プログラム。Cプロは「火の鳥」全曲を中心としたプログラム。どちらも安定感のある、デュトワとN響の深いつながりが感じられる名演奏でした。

 さて、ベスト3の選択ですが、例年通りトーナメント方式で絞っていきましょう。

 1月の下野とメナ。これは文句なしで下野です。2月のAプロとCプロはメインの差でCプロを取ります。演奏旅行前の仕上げということでオーケストラの奏者もベストメンバーで臨んでおり、これは当然ですね。4月はACプログラムとも非常に高水準で甲乙つけがたいのですが、ソリストの差でCプロを取ります。この日ベートーヴェンのピアノ協奏曲を演奏したラナは若いピアニストでしたが、その音楽性・技術共にバランスの取れた高さを感じました。

 5月はCプロ。ボロディンの2番の交響曲が聴けて良かったです。6月もCプロ。パーヴォはフランス物よりドイツ物がお似合いです。9月はどちらもよかったと思うのですが、Cプログラムで演奏された曲は全て初めて聴く曲で、評価のしようがありません。というわけでAを取ります。10月はACプログラム共に今一つかな、と印象。あえて選ぶならCプログラム。エッシェンバッハのブラームスになります。

 11月はこれまた選びにくいですが、敢えて言えばソヒエフ。12月はACプログラム共に素晴らしい演奏でしたが、自分がラヴェルの作品の方が好きであるという1点で、Aプログラムを取ります。

 1月と2月では2月のパーヴォ、4月と5月とでは4月のルイージ、6月と9月とでは6月のドイツ物、10−12月では12月のAプロです。

 準決勝は2月のパーヴォと4月のルイージですが、これは断然ルイージ。6月のパーヴォ・ヤルヴィと12月のデュトワは甲乙つけがたいですが、オーケストラの乱れがより少なかった6月のヤルヴィにします。3位決定戦ですが、これはデュトワのラヴェルでよいと思います。次点は2月のCプログラムということになるのですが、2月のCプログラムと4月のAプログラムを比較すると、4月のAプログラムの方がよいと思います。また12月のCプログラムも2月のCプログラムよりもよかったと思います。ということで、4月Aと12月Cとの比較ですが、協奏曲の出来の差で12月Cを採ります。

 ベスト指揮者はファビオ・ルイージ、ベスト・ソリストは鮮烈な印象を残したペアトリーチェ・ラナにいたします。

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2017年12月29日記

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