どくたーTのオペラベスト3 2001

第1位 8月23日  東フィル・オペラコンチェルタンテシリーズ第22回
ウェーバー作曲「魔弾の射手」
字幕付原語上演、演奏会形式  会場 Bunkamuraオーチャードホール

第2位 11月16日  新国立劇場
モーツァルト作曲「ドン・ジョヴァンニ」
オペラ2幕、字幕付原語上演  会場 新国立劇場オペラ劇場

第3位 7月5日  新国立劇場
マスネ作曲「マノン」
オペラ5幕、字幕付原語上演  会場 新国立劇場オペラ劇場

ベスト歌手
高橋薫子(ソプラノ)

優秀賞 
ワーグナー作曲「ラインの黄金」
ウォルフ=フェラーリ作曲「イル・カンピエッロ」
ヴェルディ作曲「ドン・カルロ」

選考理由

 2001年は、21回22本のオペラを鑑賞することができました。そして本年もオペラを鑑賞する喜びを与えてくれる沢山の公演で出会うことができました。ここに挙げない公演にもそれなりによいところがあり、素晴らしい思い出を与えてもらうことができました。ありがたいと思います。

 その中で私が総じて優れていると思う公演は8つありました。上記6公演と11月に上演された二期会「ホフマン物語」と昭和音楽大学「ドン・パスクァーレ」です。以上が私の今年のベスト8ですが、この内、7本までが後半に聴けたものです。今年は、年後半によい公演が沢山ありました。

 この中で、「ホフマン物語」と「ドン・パスクァーレ」とを外した理由ですが、前者は、タイトルロールの福井敬とオランピア役の森麻季とが非常に出来が良かったのですが、オペラ全体として見たとき、今ひとつインパクトに欠けるので、入賞から外しました。後者は、ソリストの出来は皆揃っていて良かったのですが、合唱とオーケストラの技量が学生のレベルから抜けていないということで、外すことに致しました。

 一番苦労したのは3位の選択です。優秀賞の3本と第3位の「マノン」の間に私の内では大きな違いがあるわけではありません。それぞれに魅力がありました。

 12月の「ドン・カルロ」は、指揮者の情熱に一寸疑問を持ちましたが、歌唱面はとても素晴らしい物でした。特にエボリ公女を歌った藤村実穂子の歌唱は抜群で、大いに感銘させられました。ただ、聴いて時間が経っていないことがあり、他の演奏よりも甘めに評価している可能性が否めません。そこで、今回は敢えて第3位から外すことに致しました。

 「ラインの黄金」は、若手の名手、準・メルクルの繊細な音楽作りに共感致しました。歌唱面も立派で決して面白いとは思えないこのオペラを退屈せずに聴かせてくれました。ただ、私はキース・ウォーナーの演出がどうも好みではないのです。オペラが舞台芸術である以上、共感出来ない演出の舞台を音楽面だけで高く評価することの違和感がありますので、第3位から外すことに致しました。

 「イル・カンピエッロ」と「マノン」、これは本当に迷いました。「イル・カンピエッロ」は多彩な登場人物がそれぞれの役柄を十全に演じ、音楽的にもレベルが高かったと思います。ガスパリーナの高橋薫子、コゾッティ、持木弘の小母さん、ニェーゼの葛貫美穂と歌唱面もよく、粟国淳の演出も楽しむことが出来ました。非常に素晴らしい舞台だったのですが、オペラの性格上仕方がない部分があるのですが、「マノン」と比べるとインパクトに欠けました。そこでベスト3から外すことにしました。

 第3位の「マノン」は、サッバティーニの素晴らしい歌唱に尽きます。サッバティーニの最良の面を見せていただいたように思います。そのインパクトで、3位にすることに致しました。また、ポネルの舞台の美しさにも感銘がありました。

 第2位は「ドン・ジョヴァンニ」。これは当然の選択です。タイトルロールのフルラネットが抜群に良かった。それにドン・オッターヴィオの櫻田亮、ツェルリーナの高橋薫子がまた素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。舞台がフルラネット中心に回っていることが良く分り、美しい舞台も相俟って、オペラの快感を味あわせてくれました。

 しかし、今年最高の名演は、東フィル・オペラコンチェルタンテシリーズの「魔弾の射手」です。演奏会形式で、台詞部分をほとんどカットし、正味1時間30分程度の公演でしたが、音楽的充実度は最高でした。チョン・ミョンフムの指揮者としての才能を改めて認識致しました。オーケストラの傷は結構あったのですが、そんなことが全く気にならない充実土でした。又、歌手も良かったです。マックスのペーター・ザイフェルト、アガーテのペトラ=マリア・シュニッツァー、ガスパールのアルベルト・ドーメン、エンヒェンの高橋薫子の主要4役が皆素晴らしく、「魔弾の射手」の最良の面を十全に伝えていたと思います。私は、オペラは演奏会形式よりも舞台上演を評価する考えの持ち主ですが、その私をしても、これを年間1位に推すに何ら躊躇はありません。本当に素晴らしい演奏でした。

 ベスト歌手は、高橋薫子。文句なしです。上記「魔弾の射手」のエンヒェン、「ドン・ジョヴァンニ」のツェルリーナ、「イル・カンピエッロ」のガスパリーナはどれも素晴らしい歌唱でしたし、他にもモーツァルト劇場「コシ・ファン・トゥッテ」のデスピーナ、「王女様の誕生日」の侍女などで素晴らしい声を聴かせていただきました。どれも高水準の歌唱で、崩れがなく、ミスも少ないという歌唱で、本年活躍したオペラ歌手で随一の力量の持ち主と申し上げます。

 2001年のオペラシーンにおけるT的ベストは以上のとおりです。尚、本選考に賞品はありません。選ばれた方には、「おめでとうございます」を申し上げます。

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